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ホロー荘の殺人|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ53】

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【殺人ゲームのワンシーンですね……それは本物の殺人事件だった!】『ホロー荘の殺人』は、被害者のすぐそばで拳銃を持った妻や関係者が立ちすくんでいたという事件です。この記事では、あらすじと登場人物、ネタバレ、原作とドラマの違い、感想などをまとめています。

The Hollow
項目 内容
No. 53
シーズン 9
エピソード 4
長さ 1時間33分
放送日(英) 2004年4月26日(月)
放送日(日) 2005年8月26日(金)
出演者 キャスト一覧
原作者 アガサ・クリスティー
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あらすじ

 別荘を購入したポワロが、別荘近くにあるホロー荘の夕食に招待される。翌日、ポワロはランチのため、再びホロー荘を訪れる。執事に案内されて東屋へ向かうと、プール脇にガーダ、ヘンリエッタ、ルーシー、エドワードの4人が立ち尽くしていた。彼らの視線の先に、ジョン・クリストウ医師が倒れている。殺人ゲームだと思ったポワロは明るく振舞うが、ジョンの血は本物だった。まだ息のあったジョンだったが、「ヘンリエッタ」というダイイング・メッセージを残して息絶える。声を掛けられたヘンリエッタは、ガーダの握っていた銃を奪い取り、プールに投げ捨てるのだった。

事件概要

被害者のジョン・クリストウ医師はヘンリエッタ・サバナークと不倫をしていました。ヘンリエッタは妻ガーダの親戚なので、ジョンは妻の親戚に手を出したということになります。ジョンは、夕食のあと姿現した女優のヴェロニカとも何やら怪しい雰囲気だったりします。そんなジョンが殺され、死体のすぐ近くに、拳銃を持った妻のガーダが立っていたという状況です。妻のガーダが犯人としか思えないわけですが、彼女は犯行を否定します。そして一族はガーダが犯行を否定しているということを事件発覚直後に知ることになります。

ガーダ本人が否定しているといっても、極めて怪しい状況には間違いないので、警察はガーダを疑います。犯行を否定するガーダは、落ちていた銃をなんとなく拾ってしまったという内容を話し、捜査の結果、被害者を撃った拳銃はガーダが握っていた銃とは別のものであるという事実が判明します。つまり、犯行に使われた拳銃はどこかに消えてしまい、ガーダの供述通りであれば、現場に謎の拳銃が落ちていたということになります。

二丁も拳銃があるというのは想像し難いかもしれませんが、ホロー荘の主人であるルーシー・アンカテルの夫ヘンリーが銃をコレクションしているため、ホロー荘には拳銃が売るほどあります。そのコレクションで全員が銃の試し撃ちに興じていたため、銃の使い方がわからない人物はいないといえる状況です。

その後、ホロー荘の主人であるルーシーが卵の籠に拳銃を入れて持ち運んでいたことが発覚します。そしてそれを執事が片づけたという流れですが、結局その拳銃も凶器ではないことが判明します。さらにもう一つ拳銃がみつかるのですが、それは、ヘンリエッタの彫刻の中に隠されていました。どうやらこの拳銃が凶器らしく、ヘンリエッタが非常に疑わしくなります。

他にもヘンリエッタを疑う根拠はあります。プールのそばに立てらている東屋で落書きがみつかりますが、これはヘンリエッタが書いたもので、事件発生時でなければ、それを残すことはできないようでした。なお、東屋にあった毛皮はヴェロニカのものです。マッチはヴェロニカがホロー荘で頂いたもののようなので、あの晩、ヴェロニカは東屋に立ち寄ったということになります。

登場人物

  • エルキュール・ポアロ
    ホロー荘の近くのコテージを借りていた名探偵。事件に巻き込まれる
  • ジョン・クリストゥ
    被害者。医師
  • ガーダ・クリストゥ
    ジョンの妻。事件現場で拳銃を手にジョンの傍らに立っていた。ジョンを盲目的に崇拝している
  • ヘンリエッタ・サヴァナク
    彫刻家。ジョンの愛人の一人で、ジョンの最期の言葉を受け、ガーダを庇うために行動する
  • ルーシー・アンカテル
    ホロー荘の女主人。ヘンリー卿の妻。奇抜な言動で捜査を攪乱するが、 ガーダを庇おうとする
  • ヘンリー・アンカテル卿
    ホロー荘の主人。ルーシーの夫
  • エドワード・アンカテル
    ルーシーのいとこ。ヘンリエッタに想いを寄せている
  • ミッジ・ハードカースル
    ルーシーの従妹。エドワードに想いを寄せている
  • ヴェロニカ・クレイ
    女優。ジョンの元婚約者。事件前夜にホロー荘を訪れる
  • ガジョン
    ホロー荘の執事。ルーシーに忠実
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ネタバレ

犯人はガーダ・クリストウです。一族の誰もがガーダの犯行を疑っていましたが、ガーダが無実を主張したため、一族はガーダをかばうことにしました。ルーシー・アンカテルや執事が拳銃の話をしたのも、ヘンリエッタが東屋に落書きを残したのも、凶器を彫刻に隠したのも、すべて、ガーダを守るための偽装でした。

動機は夫の不倫です。ある時まで、ガーダは夫の不倫に気付いていませんでした。しかし、女優のヴェロニカがホロー荘にやって来たあの夜、ガーダは、東屋で夫がヴェロニカと交わっているのをみてしまいます(マッチや毛皮が東屋に残っていたのはそのため)。ガーダは夫に対して崇拝のような感情を抱いていました。そんな夫の不貞を目の当たりにしたガーダは殺意に目覚めてしまいます。

ガーダは二丁の拳銃を盗み出し、一方で夫を撃ち、すぐに凶器となった拳銃を捨てました。そして、ただ盗んだだけの拳銃を片手に持っていました(拾ったというのは嘘)。捨てられた拳銃はヘンリエッタが回収し、ルーシー・アンカテルは凶器を捏造するために一芝居うったということでした。

ヘンリエッタは、ガーダが無実を主張する前に、ガーダの持っていた拳銃をプールに捨てたりしていますが、これは、被害者のジョンに名前を呼ばれたためです。ヘンリエッタは、ジョンのダイイング・メッセージにガーダをかばってくれという意味が込められていたと解釈し、拳銃を始末しました。なぜそこまでしたのかというと、ヘンリエッタは死んだジョンを愛していたからです。

ポワロが抱いていた違和感の正体は銃のホルスターでした。ガーダは犯行に使用した銃のホルスターをコートのポケットに入れたままでした。凶器のホルスターを所持しているというのは、ガーダにとって非常に不利な状況です。ポワロは死体発見時、ガーダのホルスターを目にしていたということのようです。

 事件関係者をネタバレありでまとめると次のようになります。

名前 説明 解説
ジョン・クリストウ
John Christow
医師
被害者
いろいろ不倫していた男
妻に拳銃で撃たれて死亡する
ガーダ・クリストウ
Gerda Christow
被害者の妻
犯人
夫と女優のまぐわいをみてしまい精神的に何かが壊れる
拳銃を二丁盗んで犯行におよぶ
ヘンリエッタ・サバナーク
Henrietta Savernake
被害者の不倫相手
彫刻家
ガーダの親戚だがジョンと不倫をしていた
ガーダをかばうため凶器を隠すなどの偽装を重ねる
ルーシー・アンカテル
Lucy Angkatell
ホロー荘の女主人
サー・ヘンリーの夫
プールサイドにいた人物の一人
凶器を捏造するため籠に拳銃を入れていたと話す

トリック

 事件発生後に関係者が共犯になるというトリックが登場しています。凶器が見つからないという状況だったので、凶器の捏造も登場しています。これは、関係者が嘘をつくというトリックでした。他にも、自分に疑いが向くよう事後に証拠をつくるというトリックも登場しています。これは、誰かに濡れ衣を着せるために証拠を残すというのと似ています。

 親戚達がかくまってくれるというのは、犯人の性格が影響しているように思います。犯人は誰からも愛されるような人物だったと言えるかもしれません。

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原作小説とドラマの違い

原作は1946年にアガサ・クリスティによって発表された第37作目の長編小説「ホロー荘の殺人」です。原作とドラマはほとんど同じ内容ですが、原作は人間ドラマがメインとなっており、ミステリーの内容は薄めです。一方、ドラマは原作を凝縮したようなストーリーで、ミステリー要素が薄いということはありません。

ドラマは登場人物が少し変わることが多いですが、このホロー荘も登場人物が削られたり、設定が変えられていたりします。原作小説にはデイヴィット・アンカテルという親戚が登場したり、ドラマですこし登場したエルシー・パターソンが、原作では姉という設定になっていたりします。原作とドラマの違いをまとめると以下のようになります。

  • ガーダの最期
    原作ではポアロが毒入りのお茶をすり替えることで、ガーダがそれを飲んで死亡します。ドラマ版ではガーダが自ら青酸カリを注射して自殺します
  • 凶器の発見場所
    原作では凶器はポアロの別荘の生垣から見つかります。ドラマ版ではヘンリエッタのアトリエにある馬の彫刻の中に隠されています
  • 登場人物の描写
    ドラマ版のガーダは原作よりも共感できる人物として描かれています。一方で、ジョンは女たらしの側面が強調され、より好色な人物になっています。また、ミッジやエドワードなど、一部の登場人物の内面的なエピソードが省略され、原作に比べて関係性が単純化されています
  • 登場人物の省略
    原作に登場するルーシーの親戚であるデイヴィッド・アンカテルは、ドラマ版では登場しません
  • 全体の雰囲気
    原作は登場人物たちの嫌な部分や後味の悪さが残る物語です。ドラマ版は後味の悪さが軽減されています
  • ポアロの台詞
    ポアロとヘンリエッタの「あなたは私より利口ですか ?」といった会話はドラマオリジナルです。切れ者同士の頭脳対決を表現するような会話といえます

感想

不倫して殺され、死に際、不倫相手に事後処理を頼むという。かっこつけている場合か、と思ってしまいました。奥さんが殺さなくても、きっと、他の誰かに殺されていたのではないかと思える被害者でした(そういう被害者が多かったりするわけですが)。

原作の感想

『ホロー荘の殺人』は登場人物たちの複雑な感情、人間関係、そして内面に抱える「虚しさ(Hollow)」を深く掘り下げた作品です。ガーダのジョンに対する盲目的な献身と、それが裏切られたときの反動の大きさが、物語の核心です。ヘンリエッタやルーシーがガーダを庇うために張り巡らせる偽装工作も巧妙でした。

 原作小説のレビューをご紹介します。

プールサイドで血を流す男とピストルを手にした女、しかもその場面をポアロが目撃するという場面設定も鮮やかだ。誰が犯人か?と推理しながら読んだけど、いつものように外れました。

ロマンスというか愛憎劇が濃いめでポアロ要素が薄め。

ジョンとヘンリエッタとガータという三角関係の、三人三様の心理描写はなかなか巧み。ポアロはほとんど活躍しない話だけれど、私はこの作品がとても好き。

日本版オリエントが放送されていたので再読。これは謎解きというよりクリスティお得意の心理描写が優れた作品でしたね。

魅力的な登場人物が多く、謎解きよりも人間ドラマを楽しめた。

事件の話やポアロの出番が少なく登場人物の心理描写がとても多い本。ミステリ期待で読むととても疲れる。

ロケ地

ドラマ「ホロー荘の殺人」は、主にイギリスのサリー州を中心に撮影が行われています。メインの舞台ともいえるホロー荘はHampton Estate(ハンプトン・エステイト)という場所で撮影されています。ホームページに名探偵ポワロの「ホロー荘の殺人」で使われたと書かれているため、間違いないです。公園や農場を含む広大な土地がHampton Estateと呼ばれているようです。

  • ホロー荘 (The Hollow)の外観はサリー州ファーナムにある「ハンプトン・エステイト」が使用されました。邸内の複数の場面は、ロンドン北部にある「ハイ・カノンズ」でも撮影されています
  • ポワロの別荘(レストヘイブン荘)はサリー州ハンブルドンのクリケット・グリーン前にある「アドマーズ・コテージ」が使用されています
  • ダヴコーツはハンブルドンの「ヴァン・ハウス」が使用されています
  • 最寄り駅はサリー州ラジウィック近郊の「元ベイナーズ駅」です
  • ガーダが車を止めた交差点はハーレー街のすぐ東側にある「マンスフィールド・ストリートとダッチェス・ストリート、マンスフィールド・ミューズの交差点」が使用されています
  • ヘンリエッタのアトリエはハーレー街に程近い「デボンシャー・クローズ」で撮影されています
  • 検死法廷から出るシーンはサリー州ウィトリーにある「キング・エドワーズ・スクールのクイーン・メリー・ハウス前」で撮影されています
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