『イタリア貴族殺害事件』は強請られていたというイタリア人伯爵が死亡し、強請っていたと思しきイタリア人が逮捕されるエピソードです。この記事ではあらすじと登場人物、ネタバレ、感想考察などをまとめています。
項目 | 内容 |
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シーズン | 5 |
エピソード | 5 |
放送日(英国) | 1993年2月14日(日) |
放送日(日本) | 1994年4月9日(日) |
出演者 | キャスト一覧 |
あらすじ
ヘイスティングス大尉が新車購入を決断した日、イタリア人伯爵の召し使いであるグレイブスがポワロのマンションへとやってくる。グレイブスはミス・レモンのお相手で、ポワロもヘイスティングス大尉も彼を歓迎している様子だった。何気ない会話の最中、グレイブスは機密書類を盗まれた伯爵が脅迫されているという話題を話すのだった。
その日の夜、ポワロは伯爵が重傷であるという報せを受け、伯爵の自宅へと駆けつけるが、既に伯爵は亡くなっていた。召し使いであるグレイブスは、死んだ伯爵が怪しいイタリア人に脅されていたという内容を証言し、そのイタリア人が逮捕される。
事件概要
グレイブスは殺人の前日に、イタリア人が伯爵の家を訪れたと証言します。そのイタリア人は書類を持っており、それをネタに伯爵を強請っていたようです。グレイブスによれば、伯爵とイタリア人は殺人が起きた日にディナーの約束していたようで、実際、伯爵の自宅には食事の準備がありました。用意された食事は手をつけられたようですが、死んだ伯爵の胃の中は空っぽで、さらに、夜なのにカーテンが開けたままであるなどの不審点がありました。そして、現場からは、グレイブスが目撃したという書類だけではなく、金もなくなっているようでした。
容疑者となり、その後捕まったイタリア人はマリオ・アスカニオという男でした。彼は機密書類をもっていたようですが、逮捕前に燃やしてしまっており、残っているのは燃えカスや灰だけでした。伯爵殺害の容疑で逮捕されたアスカニオですが、伯爵の自宅から盗まれたと思しき金は所持していないようでした。
登場人物
- エルキュール・ポワロ
ベルギー出身の私立探偵 - アーサー・ヘイスティングス
ポワロの友人 - ミス・レモン
ポワロの有能な秘書 - ホーカー医師
ポワロの友人 - フォスカティーニ伯爵
事件の被害者。イタリア貴族 - グレイブス
フォスカティーニ伯爵の執事 - パオロ・アスカニオ(原作)/ マリオ・アスカニオ(ドラマ)
フォスカティーニ伯爵の来客 - ジェームス・ジャップ警部(ドラマ)
スコットランド・ヤードの主任警部 - ブルーノ・ビッツィーニ(ドラマ)
イタリア車販売店の経営者 - マルゲリータ・ファブリ(ドラマ)
イタリア車販売店の店員
ネタバレ
伯爵殺害の犯人はエドウィン・グレイブスです。彼は伯爵を殺害し、その罪をイタリア人に着せようとしました。犯行の動機は金で、グレイブスのねらいは伯爵がイタリア人のアスカニオから手に入れた金でした。
死んだフォスカティーニ伯爵は、実は偽者で、彼は強請られていたのではなく、逆にアスカニオの雇い主を強請っていました。グレイブスは伯爵が強請られているような話をしていましたが、これは嘘です。グレイブスが実際に目撃したのは、金を渡すイタリア人の姿でした。強請りのネタとなった書類は反ファシスト支援の証拠となるもので、アスカニオの雇い主は、大尉が車を購入したディーラーの社長でした。
犯人のグレイブスは伯爵が強請りで手にした金を手に入れるため、まずポワロのところへ行き、伯爵が強請られているという嘘の情報を伝え先入観を与えました。翌日、伯爵を殺害し、アスカニオが前日のランチで使った食器などを並べます。そして、取り調べに対して、伯爵はイタリア人とのディナーの約束があったという嘘を証言します。さらにグレイブスは、犯行時刻を捏造する壊れた時計を用意し、伯爵のふりをして電話もかけています。グレイブスはイタリア人に罪をきせるために、様々な細工をしましたが、伯爵の胃の中身が空、カーテンを引くのを忘れる、電話の受話器を丁寧に戻すなどのミスを犯します。これらの状況証拠は、電話やディナーの前に伯爵が殺されていたことを示唆していました。
グレイブスは盗んだ金を彼自身が所有する船舶の中に隠していました。ヘイスティングス大尉らとのカーチェイスの末、グレイブスは捕まりますが、大尉の乗っていた車は大破します。その車はどうやら、大尉に納車されるはずの車だったようです。
トリック
犯人が探偵に偽の情報を与えるというトリックが登場します。偽の情報を掴ませる、先入観を与えるというのは言い換えれば単なる嘘ですが、このエピソードの場合、犯罪が起こる前に嘘がつかれています。多くは、事件発生後の証言で、アリバイなどに関して嘘をつくことが多いです。
犯人は強請りの加害者と被害者を反対にしていました。死んだのは、強請りの被害者だと思われていた人物(伯爵)だったため、やや珍しい状況になっています。通常、ミステリー作品では、強請りで殺されるのは加害者の場合が多いと思います。
また犯行時刻を偽るため、犯人は壊れた時計を現場に置き、被害者を装った偽の電話もかけています。犯行時刻をずらす場合、偽造した犯行時刻にアリバイを用意するなどして、容疑者から外れるというのが常套手段だと思います。
原作とドラマの違い
デヴィッド・スーシェさん主演のドラマは、原作に忠実な部分が多いですが、いくつかの変更点もあります。
- 人間関係の複雑化
ビッツィーニやマルゲリータ・ファブリは原作には登場しません。ミス・レモンとグレイブスが恋人関係にあるという設定もドラマオリジナルです - ヘイスティングスの活躍
ヘイスティングスが新車を購入するエピソードが事件に絡み、彼の記憶力(写真の文字を覚えている)やカーチェイスでの活躍が描かれます - ジャップ警部の登場
原作の短編には登場しないジャップ警部が、ドラマ版では捜査に加わっています - フォスカティーニ伯爵のペット
ドラマ版では伯爵が猫を飼っており、この猫が事件の重要な要素となります - 食事の量
原作では3人分の食事が用意された形跡がありました。ドラマ版では2人分に変更されています - 時計の時刻
止まっていた時計の時刻が、原作の8時47分からドラマでは9時10分に変更されています - アスカニオの名前
原作のパオロ・アスカニオが、ドラマではマリオ・アスカニオとなっています
感想と考察
ミス・レモンの恋人らしき人物が犯人でした。ミス・レモンは、さぞかし落胆しているかと思いきや、もう既に、犯人は見切りをつけられていたようです。破局の原因は伯爵が飼っていた猫の処遇で、犯人はその猫を殺そうとしていました。たしかに、人を殺すような人間は猫なんてもっと簡単に殺してしまいそうです。
犯人の用意した筋書きは、強請りの加害者が被害者を殺した上で、脅迫のネタと金を盗んで逃げたという内容でした。強請りというもの自体が完全な捏造であるなら、強請られていたという嘘の証言には意味がありますが、本当に強請りがあったのなら、それを正直に話せばよかったようにも思えます。犯人は加害者と被害者を逆にしたわけですが、むしろ、被害者が加害者を殺して取引に使った金を取り戻したという方が、筋が通っているように思えます。
余談
大尉の新車が大破しました。既視感のある光景です。大尉は、なかなか高そうな車を購入しているわけですが、大尉、何もしてなさそうに見えるけれども結構金はあるようです。
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