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名探偵ポワロ

満潮に乗って|ポワロ57【あらすじ・ネタバレ解説・感想・考察】

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「満潮に乗って」のあらすじとネタバレ、トリック考察、感想です。爆発事件で死んだ大富豪の財産を若い未亡人が受け取り、その未亡人の兄が財産を支配している…という発端のエピソードです。

Taken at the Flood
項目 内容
シーズン 10
エピソード 4
長さ 1時間33分
放送日(英国) 2006年4月2日(日)
放送日(日本) 2007年5月3日(木)
出演者 キャスト一覧
原作者 アガサ・クリスティー
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あらすじ

二年前に起きたゴードン・クロード邸の大爆発事件によって、大富豪のゴードンや使用人達が命を失った。ゴードンの妻であるロザリーンとロザリーンの兄であるデビッド・ハンターも爆発に巻き込まれたのだが、幸いなことに、軽傷ですむのだった…。その後、爆死したゴードンの遺産は未亡人のロザリーンに相続された。生前、面倒見のよかったゴードンは自分の弟や妹を経済的に支援しており、ゴードンが亡くなった後も、一族はゴードンの遺産を頼りにしていた。しかし、ロザリーンが引き継いだ財産はすべてデビッドが支配し、ゴードンの一族には、びた一文も渡そうとはしなかった。

解説

デビッド・ハンターというドケチな男が遺産を独り占めし、妹のロザリーンは迷惑電話に悩まされています。そんな状況の中で、まず、ゴードンの妹であるキャサリン・ウッドワードがポワロに重婚の調査を依頼します。そして、弟のジェレミー・クロードと妻のフランシスも何かを企んでいる様子です。なお、ジェレミーは顧客の年金を失ってしまい金に困っています。

爆死したゴードンの妹や弟が何やら画策する中、イノック・アーデンという謎の人物が宿屋に現れます。この謎の男がロザリーンの元夫ロバート・アンダヘイを名乗り、デビッド・ハンターを脅します。アンダヘイという男はアマゾンで死亡したはずなのですが、死んでいないのなら、ロザリーンは重婚となり、相続した遺産を失うことになります。

そしてこの重要人物であるロバート・アンダヘイが宿屋で死体となって発見されます。アンダヘイと顔見知りのポーター少佐が、公けの場でアンダヘイに間違いないと証言し、アンダヘイが死んだということがもっともらしくなります(しかしそのあと、少佐は拳銃自殺してしまう…)。

犯行があったと思しき時刻に、宿屋でその姿を目撃されたデビッドはアリバイを語らず、逮捕されます。その後、ロザリーンが大量のモルヒネを摂取し重傷を負ってしまいます。自殺を図ったようにみえるロザリーンですが、大量のモルヒネを飲み込んだにも関わらず助かるという謎を残します(鏡台の箱にはモルヒネのアンプルが入っています。ロザリーンは情緒不安定なので、モルヒネを服用していますが、中毒状態となっています)。

以上が、ストーリーの流れです。以下では、宿屋の殺人事件について簡単にまとめます。

被害者のロバート・アンダヘイは後頭部に傷があり、現場(宿屋の客室)にあった火かき棒が凶器だと推測されますが、傷とは一致しません。客室の暖炉周辺には一部ホコリのないブロックがあり、その他、口紅もみつかっています。セシリー・レドベター(伯爵という名前の犬の飼い主)が娼婦を目撃しているので、その娼婦が忘れていったのかもしれません。

アンダヘイの死亡推定時刻は死体発見前日の18時から21時です。このとき宿屋に現れたのは、アンダヘイに脅迫されたデビッド、爆死したゴードンの甥ローリー・クロード、そして、謎の娼婦です。このうちデビッドは2回宿屋を訪れています。順番はデビッド→ローリー→デビッド→娼婦の順で、デビッドもローリーも、アンダヘイは生きていたと話していますが、娼婦は行方不明のため、証言そのものがありません。

動機という点ではデビッドがとても怪しいです。ただ、彼にはロンドンにいたというアリバイがあります。アリバイを証言したのがリン・マーチモントという女性で、彼女はデビッドと電話をしています(電話交換手と話したので、ロンドンからの電話に間違いないという理屈です)。

なお、アデーラ・マーチモント(リンの母親)とキャサリン・ウッドワード(ポワロに調査を依頼し断られた女性)は、アリバイを尋ねられて相手が思い浮かべた言葉を当てるゲーム(ハングマン)をやっていたと話しています。この二人や、キャサリンの夫である医師のライオネル・ウッドワードにも隠し事がありますが、殺人にはさほど関係がありません。

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ネタバレ

宿屋に現れたアンダヘイを殺した犯人はローリー・クロードです。ローリーはアンダヘイが偽者であることに気付き、カッとなって偽者を突き飛ばしてしまいました。その結果、偽者は頭を打ち、死亡してしまいます。その後、ブロックの血痕を拭き取ったり、火かき棒を用意したりして、デビッドに罪をなすりつけようとしました。

偽者を仕込んだのは、年金がなくなったことで金に困っていたフランシス・クロードとジェレミー・クロードの夫妻です。そして、偽のアンダヘイを演じていたのはフランシスの兄でした(名前はチャールズですが、ほぼ登場していません)。ポーター少佐は彼らの共犯者で、アンダヘイが本物であると偽証していました。少佐はこのことを悔い、自殺しています。

ローリーが犯行に至った経緯ですが、まずローリーは、イノック・アーデン(アンダヘイの宿泊名)とデビットの会話を盗み聞きしていた旅館の店主から、宿屋にアンダヘイがいることを教えられます。相続に関する重要人物であるアンダヘイが現れたと知ったローリーはフランシスの自宅を訪ねるわけですが、そこで、チャーリーの写真をみます。このとき、アンダヘイの顔を目撃していたローリーは、アンダヘイとチャーリーが同一人物であることに気付きます。直後、ローリーは宿屋へと急ぎ、犯行に及びます。フランシスやジェレミーに見下されていると感じていたことや、チャールズの態度などに怒りを感じたことなどが動機となります。

犯人はローリーですので、デビッドが2回目に宿屋を訪れた時、アンダヘイは既に死んでいました。危機的な状況に陥ったデビッドはリンを利用してアリバイを作り、娼婦に変装してもう一度宿屋に姿を現しました。デビッドがロンドンへ行ったというのは嘘で、電話交換手は妹のロザリーンが演じていました。

さらなる真実

自殺したとロザリーンですが、実際は、デビッドが自殺に追いやっていました。デビッドの動機は口封じで、実はロザリーンも偽物でした。その正体はアイリーン・コーリガンで、彼女はゴードン・クロード邸で働いていたメイドでした。本物のロザリーン・クロードは爆発事故で死亡しています。そして、爆破事件は事故ではなくデビッドによるガス爆発を装った殺人でした。デビッドはゴードン・クロードとロザリーンに締め出しを受け、これが爆発の動機となります。

ロザリーン(アイリーン)は、モルヒネを大量に摂取したはずですが、飲み込んだのはひまし油でした。実はモルヒネのアンプルは、ライオネル・ウッドワード医師によって、ひまし油とすり替えられていました。医師もモルヒネ中毒でしたが、金がなかったため、医者という立場にありながら、モルヒネを入手することができずにいました。

なお、キャサリン・ウッドワードの秘密ですが、実は彼女こそが電話の犯人でした。キャサリンが迷惑電話をかけていることに気付いた姉のアデーラ・マーチモントは彼女を問い詰めていました。

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トリック考察

 替え玉・成り済ましトリックが重ねて登場します。爆破事件における相続人という替え玉と、重婚を偽証するために仕込まれた元夫の替え玉は、仕掛けた人物が異なります。そのため、別の人物が同時期に同じ替え玉トリックを使ったのは偶然ということになるかもしれません。しかし、偽の元夫が爆破事件の真相のヒントになっているように思えます。

 どちらの替え玉も、基本的には嘘で成り立っていると思います。本人はもちろんですが、ロザリーンの方は兄が妹だと嘘をついていました。アンダヘイの方は少佐という立場ある人物が片棒を担いでいます。

原作

原作は第38作目の長編小説「満潮に乗って」ですが、ドラマ化にあたって変更されている部分が多くなっています。爆発事件の真相やいたずら電話、モルヒネが医師によって盗まれたことなどはドラマオリジナルで、原作小説にこのような内容は登場しません。ドラマではモルヒネが盗まれたことで、ロザリーン(アイリーン)の命が助かっていますが、原作では違う展開が描かれています。

みんなの感想

 原作小説のレビューをご紹介します。

あまり有名な作品ではないと思うが、クリスティが大好きな恋愛要素や犯人トリックなどもあって、かなりの名作だと思う。

大富豪の遺産を独り占めする未亡人と遺産を独り占めされて困る親族、戦争の爪痕、登場人物の三角関係、未亡人の前夫が生きている話す謎の男…などなど、横溝正史さんの“犬神家の一族”を思い起こさせるような小説でした。

人間ドラマがメインで、伏線の張り方も見事だし、犯人もかなり意外だと思うのですが、ちょっとばかり地味なんですよね。

この作品はドラマ版を見てから読んだのだが、ドラマ版よりもアレコレとマイルドだったのが印象に残る。

先にドラマを見ていたので大まかなストーリーは知っていたけど、読ませるなぁ。本当に面白いぞ。

感想

犯人が最後、悪あがきをします。爆弾を爆発させる、みたいなことを言い出すわけですが、こういうとき、ポワロは若干頼りない感じもします。ドラマで機敏なダンスを披露したこともあるポワロなので、見た目とかで判断してはいけないのですが、たぶん戦闘タイプではないと思います。

まとめ

 名探偵ポワロ「満潮に乗って」について、あらすじ、真相、トリック考察および解説、感想・雑談をご紹介しました。最後に、主な登場人物、ロケ地、タイトルの意味についてご紹介します。

登場人物

 事件関係者は以下の通りです。

名前 説明 解説
ローリー・クロード
Rowley Cloade
ゴードンの甥
アンダヘイ殺害の犯人
アンダヘイがクロード夫妻の親戚(チャールズ)であることに気付く
夫妻やチャールズへの怒りにまかせ偽アンダヘイを殺害してしまう
デビッド・ハンター
David Hunter
ロザリーンの兄
爆発事件の犯人
遺産を手に入れるため妹夫婦を爆死させる
アンダヘイ殺害を疑われそうだったので売春婦などのトリックを仕掛けた
ロザリーン・クロード
Rosaleen
未亡人
爆発事件の共犯者
本物のロザリーンは爆発事故で亡くなっている
メイドがロザリーンを演じていた

ロケ地

殺人現場となった宿屋(夫人と犬がいたホテル、イノック・アーデンが宿泊したホテル)は本当にホテルとして使われているようです。

拡大地図を表示することで外観などを確認できます。

タイトルの意味

英語のタイトルは“Taken at the Flood”で、これはシェイクスピアの悲劇「ジュリアス・シーザー」の一節から引用されているようです。わたくし、シェイクスピアなんて単語は、一生のうちに2、3回くらいしか口にしないであろうと思えるほど、シェイクスピアとは縁のない生活を送っておりますが(2、3回あるというのはたぶんクイズとかで)、なんかカッコいいので、その一節というのをご紹介したいと思います。

There is a tide in the affairs of men. Which, taken at the flood, leads on to fortune; Omitted, all the voyage of their life. Is bound in shallows and in miseries.
人の成すことには潮時がある。うまく満ち潮に乗れば成功するが、その期をのがすと、一生の航海が不幸災厄ばかりの浅瀬につかまってしまう。

機会に恵まれれば成功するというようなことだと思いますが、だいたいの登場人物は、満潮に乗ろうとして上手くいかず失敗している印象です。個人的には、いろいろあったリン・マーチモントが満潮に乗れるといいなと思ったりもします。

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