『あなたの庭はどんな庭?』はポワロの名が付いた薔薇が披露される園芸展で、ポワロは車いすの女性に空の種袋を渡されます。この記事ではあらすじと登場人物、ネタバレ、トリック解説、感想・考察などをまとめています。
項目 | 内容 |
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シーズン | 3 |
エピソード | 2 |
放送日(英国) | 1991年1月6日(日) |
放送日(日本) | 1991年9月14日(土) |
出演者 | キャスト一覧 |
あらすじ
園芸展で車いすの老女に空の種袋を渡されたポワロ。帰宅後、その老女からポワロ宛てに手紙が届いていることに気付く。翌日、屋敷を尋ねたポワロは種袋を渡した老女アメリア・バロビーが毒殺されたことを知る。姪、その夫、ロシア人の女性カトリーナ・レイガーと暮らしていたバロビーは、一体誰に殺されたのか?
事件概要
アメリア・バロビーの死因はストリキニーネによる毒殺です。バロビーは薬を服用しており、この薬を管理していたのはカトリーナでした。カトリーナには不審な行動をとっており、逃亡も図っています。姪のメアリ・デラフォンテンの夫であるヘンリーはソ連の社会主義の女性という理由でカトリーナを疑っています。
被害者が死ぬ前にポワロに手渡した種袋のパッケージには、STOCKSやCatherine the Greatなどの言葉がプリントされています。この種袋が何を意味しているのかは謎です。
登場人物
登場人物名 | 説明 |
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エルキュール・ポワロ | 主人公 ベルギー出身の私立探偵 |
ミス・レモン | ポワロの秘書 事件の捜査を手伝う |
アメリア・ジェーン・バロビー | 被害者 ポワロに相談を持ちかけた老婦人 |
メアリー・デラフォンテン | バロビー夫人の姪 ローズバンク荘の女主人 |
ヘンリー・デラフォンテン | メアリーの夫 ローズバンク荘で暮らしている |
カトリーナ・ライガー | バロビー夫人の看護婦兼付き添い ドラマでは亡命ロシア貴族という設定 |
シムズ | 原作では地元警察の警部 ドラマでは医師 |
ニコライ | ドラマに登場するソビエト大使館員 カトリーナの恋人 |
ネタバレ
犯人は姪のメアリーとヘンリーです。動機は遺産で、投資に失敗した二人は金に困っていました。被害者が空の種袋で伝えようとしていたのは、STOCKS=株というメッセージでした。これは、犯人の動機を意味しています。容疑者となったカトリーナですが、彼女は実はソ連の貴族でした。
トリック
ストリキニーネには苦みがあるため、簡単に飲ませることはできません。そこで、犯人は牡蠣を使いました。牡蠣は丸飲みするということを利用し、被害者に気付かれず、毒を飲ませました。使用した牡蠣の貝殻は庭の飾りのようにして処分し、証拠隠滅を図ります。牡蠣を庭に隠した時、犯人はベルも一緒に処分しています。埋めた理由は、忌々しいベルだったからです。このベルをポワロが見つけ、牡蠣の飾りを目にすることになります。
犯人夫婦は、ストリキニーネの瓶を使って、殺害の罪をカトリーナになすりつけようとしていました。カトリーナは遺産の相続人であるため、動機があるといえます。
ドラマと原作の違い
『あなたの庭はどんな庭?(原題: How Does Your Garden Grow?)』は、アガサ・クリスティの短編小説です。日本国内では短編集『黄色いアイリス』に収録されています。ドラマと原作の違いは下記の通りです。
- チェルシーフラワーショーの開催
ドラマでは、ポワロの名を冠したバラが発表されるフラワーショーが冒頭に描かれ、そこでバロビー夫人とポワロが出会います。夫人がポワロに渡す空の種袋の謎(「ストック」=株の無断流用を示唆)もドラマオリジナルです - ジャップ警部の登場
原作では地元警察のシムズ警部が捜査にあたりますが、ドラマではジャップ警部が担当します。これにより、シムズは医師として登場します - ミス・レモンの活躍
原作ではミス・レモンが初登場するエピソードとなっています。ドラマではポワロの捜査に同行し、重要な手がかりを見つけるなど、より積極的に事件に関わります - ヘイスティングスの花粉症
ドラマではヘイスティングスが花粉症で留守番をすることになり、ポワロの香水が原因だったというコミカルなオチが追加されています。彼がミス・レモンの完璧なファイルを散らかす場面も描かれます - カトリーナの背景設定
ドラマではカトリーナが亡命ロシア貴族であり、ソビエト大使館との関わりが描かれます。これは原作にはない設定です - 庭のベル
ドラマでは庭に埋められた呼び出し用のベルが、カトリーナによる救護を遅らせるための仕掛けとして登場します - メアリーの自殺未遂
ドラマの終盤、メアリーが除草剤を飲んで自殺を図ろうとしますが、夫のヘンリーが中身をウイスキーに入れ替えていたというドラマオリジナルの展開があります
感想と考察
庭の映像をみて、なにも違和感を抱きませんでした。「綺麗なお庭ですね」と素直に思いました。しかし、あそこで牡蠣に気付いても、丸飲みのトリックまではわからないように思います。伏線のようではあるけど、真相までは辿り着かないという、ちょうどいい塩梅の仕掛けだったと思います。私は草むしりくらいしかしませんし、牡蠣も滅多に食べないので、先入観なく、トリックを楽しめた気がします。
牡蠣について
生牡蠣については、噛む派と丸飲み派があるようです。海外では、特に論争も起きているような気配があります。食文化の違いを知っているどうかで、トリックへの意見が分かれそうでもあります。
ダイイングメッセージ?
被害者が渡した種袋はダイイングメッセージというべきではないと思いますが、それに近いと思います。このメッセージに名前はついていないのでしょうか。生きていたのでリビングメッセージですが、ほぼ全てのメッセージはリビングです。リビングとダイニング(ダイイングの言い間違え)で、なんかいい感じになっている気もします。
ストック
STOCKSという文字を見て、私は株だと思いました。しかし、当然のように、それが何を意味しているのかはわかりませんでした。ネットの辞書を見てみると、STOCKはTOEIC350点以上の単語だそうです。とても簡単な単語でした。果たして、350点以下をとれる人は存在するのだろうか、と思います。ちなみに、Catherine the Greatはエカチェリーナ2世の別名だそうです。ロマノフ朝第8代ロシア皇帝らしいです。
トリックについて
毒を飲ませるトリック、トリック解明の伏線となる映像、被害者の謎のメッセージと、ミステリー要素が豊富です。最後、追い詰められた姪が自殺を図りますが、飲んだのは夫が隠れて飲んでいたお酒だったというオチまであります。これは直接事件には関係ありませんが、夫が何かを飲んでいるシーンがあり、結末につながる伏線だったといえます。
丸飲み
丸飲みすると苦みは感じないというのは、確かにそうかもしれません。特に、牡蠣の中に毒物を入れておけば、苦みは感じないはずです。牡蠣表面に振りかけるだけだと、口に入れたときに、苦みに気付くかもしれませんが、丸飲みしたものを吐き出すのは難しいので、成功する確率は高いように思います。
牡蠣
牡蠣を使うという方法に対して、ポワロは犯人が牡蠣を購入したという事実と庭に植わった貝殻を根拠に、犯人を追い詰めます。貝殻を買ったということを隠すためには、変装などが必要だったかもしれません。貝殻の処分も、庭に隠すというのはとても面白いですが、そのままだと気付かれやすいので、粉々に砕くなどの工夫が必要*1だったと考えられます。とはいえ、解剖されて胃の中から牡蠣が見つかると、毒殺方法が簡単にバレてしまいそうです。
*1:急いで隠す必要があったため、庭に、貝殻のまま隠したとも考えられます
ストリキニーネ
ポワロの最初の事件であり、作者アガサ・クリスティーの初商業出版作品でもある「スタイルズ荘の怪事件」でもストリキニーネが登場します。ヒトに対する致死量は1mg/kg(青酸カリの5倍の毒性)です。摂取すると、最悪の場合、呼吸麻痺により死に至ります。
映像の伏線
庭に植えてある牡蠣は、真相が明らかになる前に、しっかり映されています。こういった仕掛けがるエピソードで私が知っているのは、古畑任三郎「vsクイズ王」や名探偵モンク「復讐殺人」などです。
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