『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?(2022年版)』のあらすじと真相、登場人物と相関図、ドラマと原作の違いなどをまとめています。原作はアガサ・クリスティの長編推理小説で、2022年にドラマ化され、日本国内では2023年に放送されました(2024年3月に再放送)。
あらすじ
主人公のボビーが崖から転落した男性を発見。駆けつけたボビーは「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」というダイイング・メッセージを耳にする。特に事件とは関係がなかったボビーだったが、命を狙われることになったため、幼馴染のフランキーと共に、独自に調査を進める。
ボビーとフランキーが疑ったのは、死体発見時、崖の下に姿を現したロジャー・バッシントン=フレンチという男性だった。このロジャーについて調べるため、意図的に事故を起こし、フランキーはロジャーの屋敷に忍び込む。そこには、ボビーが死体発見時にみた写真の女性がいるようだった。
登場人物とキャスト
主な登場人物と2022年版ドラマのキャストです。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ボビー・ジョーンズ Bobby Jones |
ウィル・ポールター Will Poulter |
牧師の息子 ノッカーと中古車販売を始める予定 |
フランキー・ダーウェント Frankie Derwent |
ルーシー・ボイントン Lucy Boynton |
伯爵令嬢 |
ノッカー・ビードン Knocker Beadon |
ジョナサン・ジュールス Jonathan Jules |
ボビーの友人 エンジンのない車を購入 |
ロジャー・バッシントン=フレンチ Roger Bassington-ffrench |
ダニエル・イングス Daniel Ings |
崖に現れた男 |
ニコルソン博士 Dr. Jasper Nicholson |
ヒュー・ローリー Hugh Laurie |
療養所の医師 |
モイラ・ニコルソン Moira Nicholson |
メイブ・ダーモディー Maeve Dermody |
ニコルソン博士の妻 |
ヘンリー・バッシントン=フレンチ Henry Bassington-ffrench |
マイルス・ジャップ Miles Jupp |
ロジャーの兄 |
シルヴィア・バッシントン=フレンチ Sylvia Bassington-ffrench |
エイミー・ナトール Amy Nuttall |
ヘンリーの妻 |
アメリヤ・ケイマン Amelia Cayman |
モーウェナ・バンクス Morwenna Banks |
崖で死んだ男の妹 |
レオ・ケイマン Leo Cayman |
リチャード・ディクソン Richard Dixon |
アメリヤの夫 |
相関図
細かな登場人物が多いですが、メインの人物はそれほど多くありません。
1話
小さな村にある牧師館で暮らすボビー・ジョーンズは、ある日、トーマス医師と一緒にゴルフをしていた。その最中、二人は崖の下に転落したらしき男性を発見する。すぐに男性のもとへ駆けつけるが、男性は既に瀕死状態だった。トーマス医師は助けを呼びにいき、ボビーはその場に残った。しかし男性は、最期に「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?(Why didn’t they ask Evans?)」と呟き、息を引き取ってしまう。
ボビーは亡くなった男性のポケットに入っていた女性の写真を一瞥し、突然姿を現したロジャー・バッシントン=フレンチにその場を託す。翌日、ボビーは幼馴染で伯爵令嬢のフランシス・ダーウェント――愛称はフランキー――と再会し、崖で死んだ男性について知ることになる。
フランキーが新聞で得た情報によれば、亡くなった男性の名前はアレックス・プリッチャードで、ボビーが見た写真の女性というのは、アレックスの妹であるケイマン夫人のようだった。その後、ボビーは検死審問でケイマン夫人の実物を目撃するが、その姿は写真とはだいぶ違っていた。写真に写っていたのは美人、しかし、現在は普通の中年女性だった。審問が終わった後、ボビーはケイマン夫婦にアレックスが呟いた最期の言葉「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」を伝えることになる。
その後、ボビイは奇妙な出来事に見舞われることになる。まず、海外から仕事のオファーがあった。その仕事を断ると、後日、ビールにモルヒネが混ぜられ命の危機に直面する。さらにボビーは崖下でみた女性の写真とケイマン夫人が別人であることに気付く。その直後、最悪なことに、トーマス医師が亡くなってしまう。
2話
トーマス医師は自殺と判断された。このとき語られたのが、億万長者のジョン・サヴィッジだった…。納得できないボビーはフランキーと情報を共有し、現場に姿をみせたロジャー・バッシントン=フレンチを疑う。そして、ロジャーの邸宅前でわざと事故を起こして、自宅に潜入する計画を立てる。潜入したのはフランキーで、その間、ボビーは近くのアングラーズ・ハームという宿に滞在することにする。
客人として振舞うフランキーは、ロジャーの兄で当主のヘンリーがモルヒネ中毒であること、ヘンリーの妻であるシルヴィアとロジャーはすぐ近くにあるニコルソン博士の療養所にヘンリーを入院させようとしていることなどを知る。
一方、ボビーは宿で特徴的なキーホルダーをみかける。それは崖下で亡くなった男性が持っていたものに違いなかった。宿にはアラン・カーステアーズという男性が宿泊しており、宿屋の店主によれば、部屋に荷物を置いたまま出て行ったきりだという。
その後、療養所の悪い噂を耳にしたボビーはフランキーの身を案じ、夜、邸宅に忍び込む。そこで、写真の美しい女性を目撃することになるが、女性は意味深な台詞を残してどこかに姿を消してしまう。翌日、その女性はモイラという名前で、ニコルソン博士の妻だということが判明。モイラは夫であるニコルソン博士に異常者扱いされ、電気治療を迫られているとボビーに打ち明ける。そんなモイラにボビーは、モイラの写真を所持していたアラン・カーステアーズについて尋ねる。しかし、彼女は首を横に振るだけだった。
ボビーの友人であるノッカーが襲われるなどの事件も起きる中、死体の身元を偽っていた思しきケイマン夫婦を目撃したボビーは、潜入中のフランキーに危険を伝える。が、あっさり無視されてしまう。
翌日、住人達が外出している隙に、ボビーがロジャーの屋敷へとやって来る。そこで、フランキーとボビーは互いの情報を共有し合う。まず、崖の下に突然現れたロジャーにはトーマス医師の死に関してアリバイがあった。怪しいのは、モルヒネ中毒のヘンリーとニコルソン博士である。しかし、「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」の謎は全く解けない。
3話
ニコルソン博士がフランキーとボビーの事故について疑い始める中、ボビーはモイラからニコルソン博士が妻であるモイラやヘンリーを殺そうとしていることを聞く。モイラは崖の下で死んだアラン・カーステアーズを知らない様子だったが、実は顔見知りで、アランはモイラを守ろうとしていたことなどの話を聞く。
一方、フランキーはロジャーと共に出掛け、フランキーがモイラの写真について問い詰めると、ロジャーは写真を捨てたことを認める。写真は二枚あったと主張するロジャーは、そのうちの1枚を友人であるモイラのために捨てたのだという。その後、バッシントン=フレンチの屋敷で銃声が響き、手に拳銃を握ったヘンリーの死体が発見される。ヘンリーの死は自殺と考えられるが、遺書らしきものはなかった。
ボビーは崖で死んだアラン・カーステアーズと自殺した大富豪のジョン・サヴィッジが親しかったことを知り、さらにサヴィッジがローズ・テンプルトンなる女性に手紙を送っていたことも判明する。生前、サヴィッジは医師からは異常なしと診断されていたにも関わらず、どういうわけか自分は癌であると信じて自殺してしまった。フランキーがサヴィッジについて調べると、亡くなる前に遺言が書き換えられており、遺産はローズに相続されているようだった。
真相に近づきつつあったボビーとフランキーだったが、犯人達に捕まり、監禁されてしまう。
事件概要
崖の下で見つかった男性は最初ケイマン夫人の兄ということになっていましたが、のちに、別人であることが判明します。男性の本当の名前はアラン・カーステアーズで、このアランが「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」と呟いて亡くなります。エヴァンズなんて名前の人物は登場していないわけですが、実は、1話の時点で姿をみせていたりします(ドラマ冒頭のシーンではありません)。
死んだアラン・カーステアーズは、病気だと思い込んで自殺したジョン・サヴィッジと親しい間柄でした。サヴィッジは大富豪で、薬の過剰摂取で亡くなる前に遺言を書き換え、遺産をローズ・テンプルトンという女性に相続しています。つまり、サヴィッジが死んでローズは莫大な財産を手に入れたということになります。
サヴィッジの友人だったアランは、何故かモイラの写真を持っていました。モイラとアランの関係は全くわからず、モイラ自身も最初は特に身に覚えがない様子でした。
アランの死体が弟だと言っていたケイマン夫妻は非常に怪しいです。もっと怪しい黒い服の男も登場していますが、彼らは共犯者であって、黒幕は他にいます。なお黒い服の怪しい男はミスター・エンジェルと呼ばれ、ノッカーと争った結果、死んでしまいます。
ネタバレ
ボビーとフランキーはノッカーの助けを借りて無事に解放される。その後、ジョン・サヴィッジの遺言書に署名した料理人と庭師を探し、遺言書にメイドのグラディスは署名していなことが明らかになる。
当時、グラディスだけはサヴィッジと面識があったのだが、料理人と庭師はサヴィッジの顔を知らなかった。メイドのフルネームはグラディス・エヴァンズだったので、つまり、あのダイイングメッセージは、「遺言書の署名を“なぜエヴァンズに頼まなかったのか?”」ということに違いなかった。
グラディス・エヴァンズの行方を追ってみると、意外なところで見つかる。実は、グラディス・エヴァンズは結婚して姓が変わり、ボビー・ジョーンズが暮らす牧師館の家政婦・ロバーツ夫人として働いていた。実はアラン・カーステアーズはグラディスに接触するため、近くを訪れていたのだった。アランはジョン・サヴィッジの死と遺産相続について探っていたのだが、口封じのために殺されてしまった。
結末
その後、ボビーとフランキーをモイラが訪ねてくる。モイラはロジャー達に尾行されていると話し、助けを求めていた。しかしフランキーは、モイラがフランキーのコーヒーに毒を盛ろうとしているのに気付き、モイラこそがローズ・テンプルトンであることを見抜く。
ロジャー、ミスター・エンジェル、ケイマン夫妻はモイラの共犯者だった。アランと医師の殺害やボビーの毒殺未遂はミスター・エンジェルの犯行で、自殺したようにみえたヘンリーも他殺で、実行犯はロジャーだった。モイラは夫である博士の犯行にみせるため、命を狙われているなどの嘘を話していたのだった。
事件は解決し、エンジェルを殺してしまったノッカーは正当防衛が認められ不起訴となった。そして、いろいろあったボビーとフランキーは結ばれることになる。
原作とドラマの違い
2022年版ドラマのストーリーや結末は概ね原作小説と同じになっています。ただし、登場人物の設定変更、追加および省略に加え、展開にも違いがあります。
2022年版ドラマの大きな違いは、1話から登場するとても怪しい男の存在です。のちにエンジェルと名乗るこの男性はモイラの手下という設定ですが、原作には全く登場せず、ドラマオリジナルのキャラクターといえます。
また、ドラマではトーマス医師が死んでしまいますが、原作では死亡しません。そのため、葬儀のシーンなど、トーマス医師の死に関する内容は原作にはありません。ボビーが毒を盛られるシーンもドラマは脚色されており、原作には移動式遊園地や面白い双子などは登場しません。原作でボビーはピクニックの最中に毒を盛られています。
みんなの感想(原作)
AIで口コミを1枚の画像にまとめました。楽しめる、テンポが良い、楽しい感じ、やっぱり面白い、タイトルが秀逸などなど、ポジティブな感想がとても多くなっています。口コミには、エヴァンスという単語も使われているようですが、エヴァンズが正しいです。
ボビーとフランキーが魅力的で、題名も秀逸で、とっても面白い冒険譚で、しかも最後のオチがまた最高にいい感じです!
若い男女の掛け合い(会話文)が楽しいですし、自然な感じなのもいいです。全体的にユーモアが炸裂していました。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」という言葉の意味が明らかになる部分は、アガサ・クリスティーらしいサプライズだと思いました。この言葉がはっきりと意味を持つ瞬間は、なかなか痛快で、それがタイトルになっているのがまた秀逸です。
本格ミステリというよりは冒険活劇といった印象で、推理するところはあまりない。予期せぬ展開がスピーディーに続き、最期まで飽きずに読めるし、面白い。
ノンシリーズなので主人公の二人は単発キャラなのだけれども、クリスティお得意の好奇心旺盛な活発女性と、ちょっとお人好しなフォロー役の男性というキャラなので、お馴染み感がすごい。
感想
原作小説は「そして誰もいなくなった」などと同じノン・シリーズです。ポワロなど、お馴染みの名探偵は原作には登場しません。ということなので、本作の主人公であるボビーとフランキーが、他の作品で探偵役として活躍するなんてこともなかったりします。
なぜ、江波に頼まなかったのか?
米澤穂信氏の推理小説にこの作品のオマージュがあります。登場するのは「愚者のエンドロール」という作品で、英語のタイトルは「Why didn’t she ask EBA?」となっています。タイトルに仕掛けがあるのは確かですが、ストーリーや結末は全然違いますので、ネタバレではありません。なお、エッセイ「米澤屋書店」で、米澤氏が初めて読んだクリスティ作品は「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」だったことが語られています。
動画
ネタバレなどを動画にまとめ、Youtubeで公開しています。
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