『四つの署名(四人の署名)』は、毎年贈られていくる謎の真珠が事件の発端となるエピソードです。原作は1890年に発表されました。原作は「四つのサイン」や「四人の署名」と訳されることもあるようです。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1890年2月発表 (ストランド) |
発表順 | 2作品目 (60作中) |
発生時期 | 1888年9月18日~ 9月21日 |
発生順 | 19件目 (60作中) |
あらすじ
久ぶりに221Bのベルが鳴った。現れたのはメアリー・モースタン嬢という若い女性だった。どうやら彼女は、6年前から毎年大粒の真珠を送られていたらしく、今回、ついに、送り主から手紙で、面会を要求されたという。
ホームズ、ワトスン、メアリーはロンドン郊外の邸宅へと向かい、そこで、サディアス・ショルトーという小柄な男と知り合う。サディアスが語るところによると、彼の父であるショルトー少佐と、メアリーの10年前に失踪した父親、すなわち、モースタン大尉はインド大反乱で、莫大な財宝を手に入れたらしかった。ところが、ショルトー少佐が裏切り、モースタン大尉に財産を分け与えず、ひとり英国に逃亡してしまう。モースタン大尉は帰国後、逃げた少佐を見つけだすのだが、少佐との口論の最中に死んでしまう。その後、ショルトー少佐は大尉の死体と、独り占めした財宝をどこかに隠したのだった。
財宝を奪って逃げたショルトー少佐だったが、彼も病で他界する。息子であるサディアスと、兄のバーソロミュー・ショルトーは遺言で財宝の存在を知り、毎年メアリーに真珠を送りながら、財宝を探していた。そしてついに、バーソロミューが屋根裏で財宝を発見する。事情を知っていたショルトー兄弟は、メアリー・モースタンにも財宝を分けるべきであると考えており、今回、メアリーに手紙を送ったのだった。
ホームズ、ワトスン、メアリー、サディアスは、バーソロミューの屋敷を訪れる。そこで、バーソロミューの死体をみつける。財宝は消えていた。現場には、義足の足跡やクレオソートの臭い、さらには、“四つの署名”も残されており、署名の一つはジョナサン・スモールと読めた。
ホームズ達はトビーという優秀な犬を使って捜査を進める。トビーが臭い追って辿り着いたのはテムズ河の船付き場で、どうやら犯人は船で逃げたらしかった。ホームズとワトスン、そして、警官達は犯人達を追い、ついに、逃走する船に追いつく。逃げた船に乗っていたのはトンガとジョナサン・スモールで、追跡劇の結果、トンガは射殺され、スモールは逮捕されることとなる。
登場人物とキャスト
登場人物とキャストをまとめます。ホームズ、ワトスン博士、ハドスン夫人は省いています。サディアスとバーソロミューは同じ俳優さんが演じています。
名前 | キャスト |
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メアリー・モースタン Miss Mary Morstan |
ジェニー・シーグローヴ Jenny Seagrove |
サディアス・ショルトー Thaddeus Sholto |
ロナルド・レイシー Ronald Lacey |
バーソロミュー・ショルトー Bartholomew Sholto |
ロナルド・レイシー Ronald Lacey |
ジョナサン・スモール Jonathan Small |
ジョン・ソウ John Thaw |
トンガ Tonga |
キラン・シャー Kiran Shah |
ショルトー少佐 Major Sholto |
ロビン・ハンター Robin Hunter |
ネタバレ
捕まったスモールが真相を語り始める。スモールも実は、モースタン大尉やショルトー少佐とともに、インド大反乱に関わった軍人だった。そしてスモールこそが、財宝を盗み出したのだった。彼は部下とともに現地の大富豪の宝を強奪したのだが、このとき、殺人を犯したために逮捕され、一度は終身刑となり投獄されてしまう。
その後、スモールは、借金があったショルトー少佐とモースタン大尉に財宝のことを伝え、脱走の手引きを要求するのだが、ショルトーが裏切り、ひとりで英国に帰国してしまう。このことを知ったスモールの精神は復讐心に燃え、トンガの助けを借りることで、脱獄に成功する。
そして、英国に帰ってきたスモールだったが、ショルトーは既に死んでいた。財宝だけでもと思い、バーソロミューの屋敷に侵入したのだが、血気盛んなトンガがバーソロミューを毒矢で殺害してしまう。逮捕は時間の問題であると悟ったスモールは逃走中、テムズ河に盗んだ財宝を全てバラまいたと話すのだった。
真相解説
スモールが事件について語った直後、ワトスンが「よかった!」と叫びます。実はワトスンはメアリー・モースタンに恋心を抱いていたのですが、財宝目当てだと思われることを気にして、本心を伝えることができていませんでした。そんなこんなで、ワトスンはメアリーにプロポーズし、結婚することになります。
名言
Give me problems, give me work, give me the most abstruse cryptogram, or the most intricate analysis, and I am in my own proper atmosphere. I can dispense then with artificial stimulants.
何か問題はないか、おもしろい仕事はないか、不可解な難問か暗号でも持ってきて、本来の気分にしてくれないものか。そうすれば注射なんかしないよ。
Arthur Conan Doyle , The Sign of Four
‘The only unofficial consulting detective,’ he answered. ‘I am the last and highest court of appeal in detection.’
「世界唯一の諮問探偵です、」彼は答えた。「探偵事件の最高にして最後の受理者は私です」
Arthur Conan Doyle , The Sign of Four
ドラマ
グラナダ版ドラマは1987年12月29日に放送されました。テレビ映画第一弾として放送されたこのエピソードは、ほぼ2時間のスペシャルドラマとなっています。
項目 | 内容 |
---|---|
シーズン | – |
話数 | – |
放送順 | 21 |
長さ | 1時間43分 |
放送日(英) | 1987年12月29日(火) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作とドラマの展開や結末などは概ね同じです。ただし、ワトスンとメアリーの関係は大きく異なります。原作では、このエピソード(といっても刊行順は2作目)でワトスン博士とメアリーが結婚します。しかし、ドラマにそういったシーンはなく、ワトスン博士は独身のままのようです。
感想
ドラマのトンガが不気味です。とりあえず、賢くて可愛いトビーに癒されるしかありません。モースタン嬢に届いた謎の手紙と真珠というのは、わりと中盤で真相が明らかになります。最後に明かされる謎のなのかと思いきや、あっさり答えがわかってしまい、思わぬかたちで裏切られました。特にドラマは、90分ほどでまとめられているため、展開が早いように思います。
考察
重要な過去が隠されていて、断片だけを垣間見ることによって謎を呼ぶストーリーです。四人の署名、モースタン嬢に届く真珠や面会の手紙、財宝の盗難などなど、途中で答えがわかる謎もあり、飽きません。密室らしき殺人も登場していましたが、侵入経路があったようです。どこかの先住民がその体格と筋力を活かして犯行に及んだとは、思いもよりません。
まとめ
シャーロック・ホームズの「四つの署名」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。メアリー・モースタン嬢が依頼人となります。
- 発端メアリー・モースタンが221Bを訪れる
サディアス・ショルトーの屋敷へ
メアリーが受け取っていた真珠の秘密が明かされる - 展開サディアスの兄の死体がみつかる
ホームズがトビー(犬)と共に犯人を追う - 結末テムズ河の追跡劇
捕まった犯人が真相を語る…
- ジョナサン・スモール
Jonathan Small
犯人。財宝を強奪したがショルトー少佐に持ち逃げされる。トンガとともに財宝を盗み出し逃げるが、追い詰められて川に財宝を捨てる。 - トンガ
Tonga
共犯者。スモールの共犯者でバーソロミューを毒矢で殺害した人物。子供のように体が小さいため、狭い場所も通れる。体は小さくても力は大人。追跡劇の末、射殺される。 - メアリー・モースタン
Miss Mary Morstan
依頼人。ショルトー兄弟から真珠を受け取っていた。原作では事件後にワトスン博士の妻となる。 - ショルトー少佐
Major Sholto
故人。スモールが強奪した財宝をイギリスに持ち逃げする。病死し遺言で息子達に財宝について報せる。 - サディアス・ショルトー
Thaddeus Sholto
ショルトー少佐の息子。メアリーに真珠を贈っていた人物。みつかった財宝を分配するためメアリーに手紙を書いた。 - バーソロミュー・ショルトー
Bartholomew Sholto
被害者。ショルトー少佐の息子でサディアスの兄。財宝をみつけるがトンガに殺されてしまう。
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