『消えた廃坑』は銀鉱山の地図を持った中国人が死体となって発見されるエピソードです。この記事では、あらすじとネタバレ、登場人物(キャスト)、トリック解説、感想・考察などをまとめています。
項目 | 内容 |
---|---|
シーズン | 2 |
エピソード | 3 |
長さ | 50分 |
放送日(英国) | 1990年1月21日(日) |
放送日(日本) | 1990年7月25日(水) |
原作者 | アガサ・クリスティー |
あらすじ
ある銀行の頭取の依頼は銀鉱山の地図を所持する中国人の捜索だった。しかし、その中国人ウー・リンは死体となって発見され、地図は行方不明になる。
ウー・リンはイギリスのホテルに宿泊していたホテルには、メモが残されており、そこにはレスターという名前が記されていた。このレスターという人物は株式仲買人で、彼はウー・リンとの関係を否定するが、レスターの嘘が明らかとなり、彼の上着のポケットから、被害者ウー・リンのパスポートが発見される。
事件解説
依頼人は銀行の頭取であるピアソンという人物です。被害者のハン・ウー・リンはピアソンらと取り引きるために船で英国にやってきて、その後、ホテルへと向かいました。このとき、ウー・リンは受付でマッチを求めているようです。翌朝、受付に姿を現しましたが、ピアソンらが待つ会議には姿を現しませんでした。
レスター以外にも、レジナルド・ダイアーという容疑者がおり、この人物をジャップ警部が追っています。しかし、パスポートを上着のポケットに入れていたことなどから、レスターが犯人であるという見立てが強くなります。このレスターは、中国人の死体のそばで寝ていた男でもあり、彼が犯行に関与しているのは間違いないようです。
登場人物とキャスト
事件関係者は以下の通りです。ポワロ、ヘイスティングス大尉、ジャップ警部、ミス・レモンは省いております。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ピアソン Lord Pearson |
アンソニー・ベイト Anthony Bate |
依頼人 銀行の頭取 |
チャールズ・レスター Charles Lester |
コリン・スティントン Colin Stinton |
株式仲買人 容疑者の一人 |
レスター夫人 Charles Lester |
バーバラ・バーンズ Barbara Barnes |
チャールズの妻 |
レジー・ダイアー Reggie Dyer |
ジェームズ・サクソン James Saxon |
ジャップ警部が追う人物 容疑者の一人 |
ネタバレ
ウー・リンを殺した犯人はピアソンです。ホテルに現れたウー・リンは偽物で、このとき本物は既に殺されていました。レスターはアヘン窟に入り浸っていることを犯人に利用され、罪をなすりつけられようとしていました。レスターが本当のことを話さなかったのは、アヘンで朦朧としているときに、人を殺してしまったかもしれないと考えていたためです。上着の被害者のパスポートなどは犯人が用意した証拠です。
- ピアソン(Lord Pearson)
ポワロにウー・リンの捜索を依頼したが、実はウー・リンを殺害した犯人 - チャールズ・レスター(Charles Lester)
アヘン窟に通っており、殺人を犯したかもしれないと思っていた。ピアソンの罠にはまり罪をなすりつけられる
トリック考察
ピアソンは共犯者をウー・リンに変装させ、ホテルへ向かわせました。本物ではなかったため、変装であることを示す証拠がいくつか残っていました。それが、マッチとたばこに付着した色です。ウー・リンのカバンの中にはマッチが入っていました。このことを知らなかった変装者は、受付でマッチを求めています。また、歯を黒く塗っていたため、煙草のフィルターに色がついてしまいました。
共犯者を使って被害者に変装させ、さらに、罪をなすりつける人物を用意していました。被害者が生きているようにみせることで、犯行時刻が実際よりも遅くなります。この作品の場合は、被害者到着の翌朝、ホテルに姿を現してから、銀行に向かうまでに殺されたようにみせることになります。このとき、頭取には完璧なアリバイがあったはずなので、容疑者からは完全に外れます。
そして、どこかの誰かが殺したという漠然とした筋書きではなく、犯人は罪をなすりつける人物も用意していました。これがレスターです。アヘンという悪癖を利用され、レスターはやってもいない罪を被るところでした。本人も本当のことを憶えていない様子で、無実を主張するのではなく、嘘をついて誤魔化そうとしています。この言動は犯人の思うつぼといえます。
失言
ピアソンはウー・リンと手紙でやり取りしただけなので、顔までは知らないと発言しています。しかし、ポワロが預金残高を確認した時、頭取は連れてこられた中国人がウー・リンではないと断定しています。つまり、このときはウー・リンの顔を知っていたことになります。
ロケ地
ハン・ウー・リンが宿泊したホテルは、ドイツ歴史研究所の建物で、実際はホテルではないようです。
その他、ロンドン上海銀行の建物がダグナム市民センター(現CUロンドン)、セント・ジェームス・ホテルやレスターのオフィス周辺がブルームズベリ・スクエアやグレート・ラッセル・ストリート、チャイナタウンの撮影がベスナル・グリーンのコロンビア・ロードとエズラ・ストリートなどで行われました。スコットランドヤードの屋内はチジック・タウン・ホール、クラブ〈レッドドラゴン〉内部はトゥイッケナム・スタジオのセットです。
原作
原作は短編「消えた廃坑」で、短編集「ポアロ登場」に収録されています。原作は短編小説です。原作はポワロが、ヘイスティングス大尉に思い出話をするという形式になっています。
ドラマとの違い
ドラマ化にあたって、様々な話が加えられています。
例えば、ポワロとヘイスティングスがモノポリーに興じる場面が度々挿入され、これが事件解決のヒントにも繋がります。また、ジャップ警部率いるスコットランドヤードの最新式の捜査(追跡や包囲網など)が詳細に描かれ、犯罪・警察ドラマとしての側面が強められています。ミス・レモンも株式投資に関心を示すなど、原作よりもキャラクターが掘り下げられています。
- 原作はポワロが過去の事件として語る形式です。ドラマでは現在進行形の事件として描かれています
- 原作は短編ということもあり、ドラマは調査過程などが大幅に膨らまされています
- ピアソンの役職がビルマ鉱業の役員からロンドン上海銀行の頭取に変更されている
- ドラマではジャップ警部やミス・レモンが登場し、捜査に関わる
- ウー・リンの鞄の中のマッチや日付の書き方などが捜査の糸口となる描写が追加されている
- ダイアーの逮捕劇など、警察の捜査描写が詳細に描かれている
- レスター夫人がポワロにチャールズの捜索を依頼しに来る場面がある
- モノポリーの説明書をパスポートに見せかけるトリックが使われる
- ポワロの預金残高へのこだわり(444ポンド4シリング4ペンス)が強調される
感想
原作は短編ながら、ポワロが過去の事件を語る形式や、ヘイスティングスがミスリードされる展開が面白い作品です。消えたのは廃坑ではなく、廃坑を示した地図ではないか、と細かいところが気になったりもします。原題は「The Lost Mine」らしく、グーグル翻訳大先生にたずねてみると日本語訳は「失われた鉱山」らしいです。失われた……なれば、確かに、そんな感じの内容だったと思います。
残高の謎
ポワロの預金残高は、結局、どうしてポワロの認識とずれていたのでしょうか。最後のミス・レモンとポワロの会話からして、誰かが入金していなかった、ということなのだろうと思いますが、会話の中で登場したのは小切手のようでした。私、一応昭和生まれですが、小切手ってドラマや映画では見かけても、実際に使ったことはないです。お金持ちとか、銀行関係の仕事とかだと、目にする機会もあるのかもしれません。
お薬
罪をなすりつけられそうになったレレレのレスターは中毒者だったようです。身体や精神を壊すだけではなく、殺人の罪まで着せられるリスクもあると考えると、お薬は非常に危険だな、と思います。
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