「複数の時計」のあらすじとネタバレ、トリック考察、感想です。国家機密の書類が盗まれ、その書類が隠されていると思しき住宅地で、謎の男性の死体がみつかります。
項目 | 内容 |
---|---|
シーズン | 12 |
エピソード | 4 |
長さ | 1時間29分 |
放送日(英国) | 2011年12月26日(月) |
放送日(日本) | 2012年2月7日(火) |
出演者 | キャスト一覧(imdb) キャスト一覧(allcinema) |
原作者 | アガサ・クリスティー |
あらすじ
英国諜報員のフィオナ・ハンブリーは、スパイを発見し追跡するが、車にはねられ、スパイと共に死亡してしまう。スパイは機雷の配置図を盗み出していたのだが、フィオナの残したメモによって、配置図がクレセント通りに隠されていることが判明する。
フィオナの同僚であり、恋人でもあったコリン・レース大尉は配置図をみつけるため、ウィルブラハム・クレセント通りを調査していたのだが、その最中に、死体発見騒動に巻き込まれることになる。翌日コリンは、ポワロにスパイの一件とクレセント通りの一件を詳しく話し、調査を依頼する。
相関図
国家機密である配置図の盗難に、クレセント通りの殺人がからみ、関係者が多めになっています。しかしながら、主な登場人物はクレセント通りの住民であり、人数は多いですが、関係が複雑ということはありません。なお、冒頭で死亡してしまうフィオナ・ハンブリーとスパイのアナベル・ラーキンは、その後、ほとんど登場せず、ほんとうにただの自動車事故で亡くなっています。
ポワロはコリン大尉とともに、まず、猫好きのヘミングス夫人に聞き取り調査を行います。その後、ウォーターハウス、ブランド夫妻、クリストファー・マバットの順に話を聴き、最後に、死体がみつかった家の住民であるミリセント・ペブマーシュと面会します。
ペブマーシュの家で死体をみつけたシーラ・ウェブは派遣会社のタイピストで、会社には、キャシー・マーティンデールという所長と、同僚たちがいます。同僚の中で重要なのが、ヒールが壊れたと騒いでいたノラ・ブレントです。
この他に、コリンの上司やハードカッスル警部なども登場します。また、物語の中盤以降に、被害者の妻を名乗るマリーナ・ライバルという女性も登場します。
事件概要
諜報員のフィオナはアナベル・ラーキンを追って、ウィルブラハム・クレセント通りへと向かい、アナベルが入った家の住所をメモしました。それが、☾M61という4文字だったわけですが、残念なことに、暗号になってしまいます。
そして、国家機密の配置図を盗み出したスパイの一味が隠れているかもしれないクレセント通りで、死体がみつかります。死体が発見されたのは19番地の家で、亡くなった人物の身元は判明しません。配置図盗難およびスパイと関係があるのかどうかもはっきりせず、謎だらけになります。
死体を発見したのは、シーラ・ウェブという派遣会社のタイピストで、派遣会社の所長が電話で引き受けた仕事のために、19番地にあるミリセント・ペブマーシュの家と向かいました。死体発見について、いくつか疑問点があり、その一つが、居間に置かれた複数の時計です。シーラがペブマーシュの家に到着したのは約束の午後3時ちょうどでしたが、居間には4時13分を指した時計が4つ置かれていました。さらに、不可解なことに、4つのうちの1つが、死体発見後に紛失します。
所長が引き受けた仕事についてもおかしな点があり、そもそも、仕事を依頼したペブマーシュではないようでした。すなわち、謎の電話でシーラは死体の第一発見者になったということになります。
その後、殺人事件の審問間際にシーラが「4:13を忘れるな」と書かれた脅迫状を受け取ります。そして、シーラの同僚であるノラ・ブレントが殺されてしまいます。ノラは審問で証言した人物の中に嘘つきがいることに気付きましたが、具体的に誰なのかを伝える前に、死んでしまいます。なお、審問で証言したのは、マーティンデール所長、死体がみつかった家に住んでいたペブマーシュ、シーラ、そして、警部です。
警察はジョー・ブラントの証言を信じ、シーラを疑います。ジョーの証言は、シーラがホテルで死んだ男性と会っていたという内容でした。さらに、凶器のナイフがシーラのカバンがみつかり、現場から時計を1つ持ち出したのも、シーラであることが判明。警察はシーラを逮捕することになります。
ネタバレ
19番地にあるミリセント・ペブマーシュの家で見つかった男性を殺したのはジョー・ブランドで、妻のバレリー・ブランドとマーティンデール所長も共犯です。身元がわからなった死体は、カナダ人の男性で、ジョーの前妻の親戚でした。ジョーは前妻の遺産を黙って受け取っていましたが、親戚という正当な相続人が現れたため、男性を殺害。洗濯屋に変装して、留守であることが確定しているペブマーシュの家に死体を置きました。
犯行を計画したのは、マーティンデール所長で、実は所長はバレリーの姉でした。所長は仕事で推理小説のタイプを長年担当していたため、トリックに詳しくなっており、仕事で知ったトリックを流用して、今回の犯行に及びました。
所長はシーラに罪をなすりつけるため、まず、電話がかかってきたふりをして、シーラを19番地に派遣しました。4時13分の時計を置いたのは、シーラに413号室での密会を連想させるためで、シーラを追い込むねらいがありました。なお、シーラは確かに派遣先であるホテルの413号室でパーティ教授と会っていましたが、ふしだらな関係ではなく、純粋な恋愛でした。
タイピストのノラ・ブレントを殺害したのも彼らで、理由は、ノラがマーティンデール所長の嘘に気付いたためです。死体がみつかった日、ノラはヒールが壊れたため、昼休み中にも関わらず、早々に事務所へと戻りました。そのため、ノラは依頼の電話がなかったことを知っていました。
盗難
配置図の盗難に関わったスパイはミリセント・ペブマーシュとクリストファー・マバットです。アナベル・ラーキンが手に入れた配置図は、マバットが海外へ持ち運ぼうとしますが、ポワロがスパイに気付き、コリン大尉が阻止します。
フィオナが残した☾M61ですが、これは逆さまでした。メモ(文字列)を180度回転すると、19W☽となり、これは、19番地ウィルブラハム・クレセントを意味します。つまり、配置図を盗んだアナベルは19番地のペブマーシュの家に入ったということになります。
ペブマーシュの家でみつかった死体ですが、この事件にペブマーシュとマバットとは全く関与していません。しかし、自宅で死体がみつかってしまたため、関係者になってしまいます。
トリック考察
殺人に関しては、罪をなすりつけるために、派遣会社の性質および会社の所長という立場を利用して、死体がある場所に社員を派遣するというトリックが使われていました。第一発見者にするだけで、罪を被るはずはないため、時計の時刻と派遣した社員の秘密を使って、第一発見者を精神的に追い込みました。ただし、推理小説のトリックを流用しただけのため、事件の状況には適さず、このトリックだけでは、うまくいきませんでした。
その他、凶器をこっそり罪をなすりつけたい人物のカバンに忍ばせる、被害者と一緒だったと嘘をつくなどなどのトリックを仕込んで、最終的に、無実の人物が逮捕されています。
原作
原作は第54作目の長編小説「複数の時計」で、原作小説とドラマのストーリーは概ね同じです。ただし、登場人物の設定など、細かな部分が多く変更されています。
みんなの感想
原作小説のレビューをご紹介します。
ポアロシリーズなのにポアロの登場シーンはごくわずか。まるでゲスト扱いなのがちょっと寂しいです。それでも、途中に挟まれるポアロのミステリー論がとても楽しく興味深かったです(作中で、ポアロがルパンものを誉めたり、『黄色い部屋の謎』を傑作だと言ったり、コナン・ドイルに敬意を表したりします)。
謎解き、ロマンス、スパイもの、そして、ミステリ評論を一度に楽しめる作品……と言えば聞こえはよいが、結局はどれも中途半端になってる気がする。
分厚いのにまったく面白くない。退屈な時に読んでも、もっと退屈するだけ。お勧めできない。
クリスティ作品の中でも残念な評価をされることが多いですね。いまいち他の方の評価は高くないようですが、私は面白かった。
犯人とその動機についても納得はできるが、名だたる名作と比べると……。
感想
スパイの事件が前面に押し出され、殺人との関係がわからないモヤモヤ状態のまま、物語は進んでいきました。いつもの作品なら、コリンの正体が隠されて、ラストで、実は諜報員だった、実は盗難事件を追っていたというのがわかるパターン(登場人物がなんか隠しているパターン)になるのかと思います。そんなわけで、いつもと違った感じで楽しめたと思います。
まとめ
名探偵ポワロ「複数の時計」について、あらすじ、真相、トリック考察および解説、感想・雑談をご紹介しました。最後に、登場人物とロケ地についてご紹介します。
登場人物
事件関係者は以下の通りです。
名前 | 説明 | 解説 |
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キャシー・マーティンデール Miss Martindale |
派遣会社の所長 犯人 |
男性殺害の罪をシーラになすりつけようとした 動機は妹夫婦が相続した遺産 |
ジョー・ブラント Joe Bland |
61番地の住人 共犯者 |
先妻の遺産を手にしたため働いていない 相続人となる男性が現れたため、殺害しペブマーシュの家に遺棄した |
バレリー・ブランド Val Bland |
61番地の住人 共犯者 |
ジョーの妻で派遣会社所長の妹 相続人が現れたことを姉のキャシーに相談する |
ロケ地
ドラマに登場した秘書派遣の事務所はDuke’s Road(デュークス・ロード)、ペブマーシュが勤めていた写真館はWoburn Walk(ウォバーン・ウォーク)という通りにある建物が撮影に使われています。
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