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雲をつかむ死|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ32】

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 雲をつかむ死』はフランスでの休暇から帰国するポワロが搭乗した旅客機の中で殺人事件に遭遇するエピソードです。この記事ではあらすじと登場人物、ネタバレ、トリック解説、感想・考察などをまとめています。

Death in the Clouds
項目 内容
シーズン 4
エピソード 2
長さ 1時間43分
放送日(英国) 1992年2月12日(水)
放送日(日本) 1992年10月4日(日)
出演者 キャスト一覧
原作者 アガサ・クリスティー
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あらすじ

 ポワロは帰りの旅客機内で殺人事件に巻き込まれる。死んだのは、ポワロの後方に座っていた金貸しの老婦人マダム・ジゼルで、ポワロ達と一緒に搭乗していたホーバリー夫人に付き纏っている様子だった。凶器は吹き矢もしくは機内を飛んでいた蜂らしく、ポワロの座席からは吹き矢の筒が発見される。

 乗客の誰にも見られずに吹き矢を吹くのは不可能であることから、ポワロは心理的盲点を利用したトリックが使われたと推理する。被害者の遺産は、突如現れた娘に全て相続されるようで、その娘は最近結婚したばかりだった。捜査を進め真相に近づくポワロだが、相続人の娘が何者かに殺されるという第二の殺人が発生してしまう。

事件概要

被害者が座っていたのは一番後ろの座席です。座席は二列シートと一列シートがあり、二つのシートの間に通路があります。被害者は二列シートの窓側でした。ポワロは一列シートに座っており、被害者の前の列でした。殺人が機内の中で起こったのは間違いなく、つまり、ポワロのすぐそばで人が殺されたということになります。

被害者は食後のコーヒーを運んだ時点では、まだ生きていました。凶器は吹き矢で、矢の先端には毒が付着していました。吹き矢の筒がポワロの座席から発見され、これを根拠に、ジャップ警部はポワロを少し疑っているようです。機内には蜂が飛んでおり、蜂が凶器であるということも示唆されています。凶器が吹き矢である場合、誰にも気づかれずに犯行に及ぶのは不可能なようです。被害者に近づいた人物は乗務員と推理作家のクランシーで、クランシーは本をとるため、被害者の横を通っています。歯科医師のゲイルは一度立ち上がっているようですが、向かったのはトイレなので、被害者には近づいていません(トイレは被害者から離れる方向になります)。

事件の謎を解く鍵となるのが、被害者のカップに残っていたスプーンです。スプーンは二つありました。通常、乗務員は一つしかスプーンを出さず、被害者からの要望があったわけでも、乗務員がミスしたわけでもないようです。

登場人物

  • エルキュール・ポワロ
    私立探偵。事件の目撃者であり、捜査の中心となる
  • ジェームス・ジャップ
    スコットランド・ヤード主任警部。ポワロの友人であり、捜査に協力する
  • マリー・ジゼル
    被害者。パリで金貸しを営む老婦人
  • ノーマン・ゲイル
    歯科医。事件の容疑者の一人
  • ミッチェル
    スチュワード
  • ジェーン・グレイ
    ドラマではスチュワーデス。原作では美容師。ポワロの捜査に協力する
  • セシリー・ホーバリ
    ホーバリ卿夫人。マダム・ジゼルから借金をしていた
  • アン・リチャーズ(アン・ジゼル)
    マダム・ジゼルの娘。ホーバリ卿夫人のメイドでもある
  • ダニエル・クランシー
    探偵作家。事件の容疑者の一人
  • ジャン・デュポン
    考古学者。事件の容疑者の一人
  • フルニエ警部
    パリ警視庁警部。フランスでの捜査を担当する
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ネタバレ

犯人は歯科医のノーマン・ゲイルです。ノーマンは被害者の娘と結婚した人物でした。この娘は、実は、ホーバリー夫人のメイド(機内で爪やすりを持ってきた女性)でした。被害者の娘アン・リチャーズを殺したのもノーマンです。マダム・ジゼル殺しの動機は遺産です。相続人である娘と結婚することで、金を手に入れることができます(娘も殺せば、配偶者であるノーマンが全ての遺産を相続することになります)。娘を殺した理由は、ポワロにメイドとアンが同一人物であると気付かれないようにするためでした。

ノーマンは乗務員に変装して被害者に近づき、吹き矢の矢を直接刺して殺害しました。ノーマンはトイレに立ったとき、トイレ内で着替え、スプーンをもって被害者の座席に向かいました。被害者のカップにスプーンが二つあったのは犯人が持ってきたためでした。筒や蜂を用意したのは、捜査をかく乱するためだったようです。ノーマンは蜂を空のマッチケースに入れて持ち運んでいました。

ポワロはノーマンに変装を依頼しています。これはポワロの罠で、ノーマンは変装が上手いということを悟られないようにするため、わざと下手な変装をしています。なお、被害者がいつもと違う飛行機に乗っていたのは、航空会社の社員が買収されたためです。

名前 説明 解説
ノーマン・ゲイル
Norman Gale
歯科医
犯人
乗務員に変装して被害者を殺害した
ホーバリー夫人のメイドと結婚していた
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原作とドラマの違い

原作は第17作目の長編小説「雲をつかむ死」です。原作とドラマは概ね同じですが、改変されている部分もいくつかあります。

  • プロットの変更
    ドラマ版では、物語の冒頭にポワロがパリで休暇を過ごし、テニス観戦をするシーンが追加されています。ここでレディー・ホーバリとマダム・ジゼルの間の軋轢が描かれ、レディー・ホーバリが主要な容疑者として強調されます
  • 登場人物の整理
    原作に登場する考古学者のデュポン父子は息子のジャン一人に統合され、次席スチュワードのデイビスもジェーンに統合されてジェーンがスチュワーデスに変更されました。 また、耳鼻科医のドクター・ブライアントや実業家のライダー氏など、一部の登場人物はカットされています
  • ジャップ警部の役割
    原作ではフルニエ警部が担当する役割の一部(例: 心理的瞬間の提唱)がジャップ警部に変更されており、ポワロとジャップ警部のコンビがより強調されています

ロケ地

ドラマに登場したロケ地はパリのサクレ・クール寺院、パレ・ド・トーキョー、シャンゼリゼ劇場など、多くのパリの象徴的な場所がロケ地として使用されています。なお、ロケ地については「Death in the Clouds (1992 film)」にまとめられています。

ドラマに登場した空港はブライトン・シティ空港で、この空港はロンドンの南、海岸沿いにあります。19話「西洋の星の盗難事件」、47話「エッジウェア卿の死」にも登場しているロケ地となっています。

感想と考察

 犯人は変装して別人になりすまし、犯行に及びました。変装トリックといえます。服装だけではなく、脱脂綿を使って顔の雰囲気も変えています。変装したのが乗務員だったため、自然と、乗務員に罪をなすりつけることになります。

 変装して近づいたという殺害方法から遠ざけるため、吹き矢や蜂という証拠をあえて残しています。吹き矢が見つかった座席に座っていた乗客、蜂を潰した乗客などに疑いがかかる結果となっています。

 乗務員と推理小説家が近づいたので、この人物達に疑いがかかるはずですが、蜂や吹き矢が登場し、全員が容疑者になっています。しかし結局、全員容疑者なので、真犯人も容疑者になっており、ややちぐはぐなトリックに思えます。しかし、乗務員の服に吹き矢を残したりすると、証拠が残り過ぎていると推理されるかもしれません。

ヘイスティングス大尉やミス・レモンが登場せず、添乗員のジェーン・グレイが助手になっています。アガサ・クリスティーの作品ということもあり、この女性、ものすごく怪しいのですが、犯人でも共犯者でもありませんでした。とはいえ、犯人に恋していた女性という悲劇的な役割ではありました。

余談

旅客機が登場します。ポワロは飛行機に対して全く信頼がないようです。たしかに、ちょっと古いタイプの飛行機なので、私も乗りたくはありません。イギリスとフランスなら船で行けばいいのではないかと思ったりもしますが、船も沈没したりします(この事件は1935年頃で、タイタニック号の沈没が1912年です。なお、劇中に登場するダグラスDC-3旅客機の就航は1936年とされています)。100年弱前なので、あくまで参考であり港によって異なりますが、現在はフェリーで2時間ほどのようです。飛行機は1時間強でした。私は知らなかったのですが、パリとロンドンを結ぶ鉄道もあるようです。海の下を走っているらしいです。北海道と青森を結ぶ青函トンネルみたいなもので、長さも同じくらい(全長約50km)でした。

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