no murder, yes life
国内推理小説

捜査線上の夕映え【あらすじ・ネタバレ】

この記事は約7分で読めます。
記事内に広告が表示されます

 「捜査線上の夕映え」は2022年に刊行された<火村英生シリーズ・作家アリスシリーズ>の長編で、コロナ禍を舞台にしています。この記事では、作品のあらすじ、真相、登場人物、トリック考察、みんなの感想などをまとめています。

項目 説明
タイトル 捜査線上の夕映え
評価 4.5
著者 有栖川有栖
シリーズ 火村シリーズ
シリーズ順番 27
出版社 文藝春秋
発行日 2022年1月10日
スポンサーリンク

あらすじ

一見ありふれた殺人事件のはずだった。大阪の場末のマンションの一室で、男が鈍器で殴り殺され、金銭の貸し借りや異性関係のトラブルから容疑者が浮上する。「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」火村を追い詰めた、不気味なジョーカーの存在とは。コロナ禍を生きる火村と推理作家アリスが、ある場所で直面した夕景は、佳き日の終わりか、明日への希望か。
文藝春秋BOOKS

 マンションの一室で男性の死体が発見されます。死体はスーツケースに詰められており、夏場だったために腐敗が進んでおりました。そのため解剖によって正確な死亡推定時間が絞り込まれなくなります。幅の広い死亡推定時刻の中で、四名の怪しい人物が浮かび上がりますが、マンションの防犯カメラや容疑者達のアリバイ証言によって、いずれの人物にも犯行は不可能であるという状況になります。

登場人物

 簡単に登場人物をまとめます。有栖川有栖や火村英生などはお馴染みのキャラクターなので省いております。

警察関係者

警察関係者もお馴染みのメンバーといえますが、主人公ではないため、ここでまとめておきたいと思います。

名前 説明
船曳
ふなびき
大阪府警警部
高柳真知子
たかやなぎ・まちこ
巡査部長
愛称コマチ
森下恵一
もりした・けいいち
若手刑事
繁岡
しげおか
巡査部長
“ふぉい”の人
中貝家
なかがいけ
警視
署長

被害者と容疑者

主な容疑者は4名ですが、うち一人はその正体が明かされません。中盤以降に何者であるかがわかります。

名前 読み 説明
奥本栄仁
おくもと・えいじん
被害者
元ホスト
歌島冴香
うたじま・さえか
容疑者
投資家。奥本の恋人
黛美浪
まゆずみ・みなみ
容疑者
元ホステス。奥本と歌島の友人
久馬大輝
きゅうま・だいき
容疑者
会社員。奥本に借金していた
孔雀
くじゃく
マンションで目撃された男の通称
スポンサーリンク

ネタバレ

 奥本栄仁殺害の犯人は黛美浪です。孔雀の正体は吉水蒼汰(よしみず・そうた)で、吉水は共犯者でした。黛の犯行は衝動的なもので、動機は明確には語られていませんが、三角関係や奥本の飄々とした態度が原因と考えられます。吉水が黛に協力したのは、幼い頃、二人が瀬戸内海に浮かぶ仲島(なかじま)という島でともに過ごした幼馴染だったためです。特に吉水は黛に恋愛感情を抱いており、それが共犯へと繋がっています。

 黛が奥本の自宅リビングで犯行に及んだのは25日の午後で、犯行後、黛は奥本のスマホを持ち出しアリバイ工作に利用しました。奥本が25日の夕方に送ったと考えられていたLINE(“悪いけど、瞑想に入るので…”および“ありがとう”)は黛が送ったものであり、このとき奥本は既に死亡していました。黛がマンションに出入りする姿は映っていなかったわけですが、黛はスマホを持ち出して、マンション付近から奥本のふりをしてLINEのメッセージを送信しました。黛は26日の朝にも奥本のふりをして歌島にメッセージを送っていますが、このとき、自分とよく似た人物をアリバイ工作に使いました。このよく似た人物というのが、地下鉄の防犯カメラに映っていた人物で実はこの人物は木戸江里菜(きど・えりな)という女性でした。黛が髪を切ったり、ラナバスに身を包んでいたのは、木戸に似せるためでした。

 黛は被害者のスマホを持ち出すことにより、被害者が生きているようにみせたわけですが、死体発見時、被害者のスマホは室内に置いてありました。これは吉水が防犯カメラに映らないようにしてマンションに侵入し、スマホを被害者の部屋に戻したためでした。その侵入方法は、隣接するマンションから被害者の部屋があるマンションへと飛び移るというものです。吉水にはパルクールの素養があり、常人には不可能な距離であっても跳躍し移動することができました。

 死体をスーツケースに入れたのも吉水で、吉水はスーツケース内にあえて自分の指紋を残していました。その理由は、警察を挑発するような意図に加え、たとえ指紋が残っていたとしても、指紋の主に辿り着くことはないと考えていたためでした。しかしながら、嫉妬にかられた吉水が黛を追跡したため、マンションの住民に目撃され、そして“孔雀”というあだ名の不審人物になりました。

 警察が孔雀=吉水蒼汰であると認識したのは、刑事の高柳真知子が気付いたためでした。実は高柳も仲島の出身で、黛や吉水とは中学の同窓生でした。しかし高柳はこのことを隠します。理由は自分の手柄にしたかったや、黛にマウントをとられていたから、と語りますが、これに対して、自分でもよくわからないと付け加えています。黛は中学時代、高柳のことが好きだったようであり、高柳との特殊な接点を持つために、関係性の秘匿を高柳に持ち掛けたようです。

スポンサーリンク

トリック考察

 スマホで他人になりすましてメッセージ送信するトリック、防犯カメラに映らない透明人間トリック、体型などの雰囲気が似ている人を勝手にアリバイ工作に利用する変装トリックなどが登場しています。警察関係者が“ジョーカー”だったという叙述的なトリックも登場しております。

なりすまし

 スマホを操作した人物が誰かまではわからないということを利用して、被害者が生きているようにみせるというトリック。基地局の関係で、どの地域から送信されたかはわかるようですが、犯人はこれを利用して、被害者が送ったようにみせていました。同様のトリックを使おうとした犯人が基地局の仕組みを知らなかったために、トリックが見破られるというパターンもあるように思います。

透明人間

 屋上から屋上へと飛び移ることで、防犯カメラを回避するというトリック。誰でも飛び移れるような距離ではなかったため、盲点となっていました。いわゆる、移動不可能なところに道を作る/生み出すというトリックになると考えられます。

アリバイ

 変装してアリバイを作るというトリック。推理小説によく登場するトリックですが、犯人が被害者に変装してアリバイを作るというようなケースが多いように思います。しかし、この事件では、犯人が第三者(ほぼ面識のない人物)に変装し、アリバイを捏造していました。このような変装の場合、犯人が第三者の行動をコントロールできるわけではないため、ある程度習慣を把握していたとしても、うまくいかない可能性が高くなります。この点については作中でも指摘されていました。

みんなの感想

 本を読んだ方々の感想をご紹介します。このエピソードはコロナ禍の日本を舞台にしています。感想・レビューでもコロナ禍という言葉がよく登場しているようです。

久しぶりに火村先生とアリスに会えた。二人ともコロナ禍を過ごしているんだね。元気で変わらず活躍する様子が知れて良かった!って、もうまるで実在の人になってる感覚だ。

コロナ禍における犯罪捜査をここまでリアルに書いてる作品は初めてでした。

コロナ禍って警察の捜査にも影響あるよな……としみじみと感じる一冊。まさにコロナ禍の本格推理。

個人の感想

 犯罪捜査がリアルでした。もちろん私がこれまでに読んだ中でということなのですが、捜査過程が詳しく書かれていたので、知識が増えたように思います(捜査関係事項照会書という書類の存在などなど)。長編ということもあり、トリックが満載で、“トリック考察”の項目で書いた以外にも、マスクを外すと全然似てない、コロナ禍で激太りなどなどが登場していました。

私の中では正直微妙だったのですが、人気シリーズでファンの方も多いはずなので、下手なことは書けないです。かくいう私も、火村が登場する国名シリーズやドラマが好きということで手に取ったのわけで、面白かったとは思いますが、誰かにおすすめするという観点では、あまりおすすめではないです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました