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森博嗣

赤目姫の潮解【あらすじ・ネタバレ解説・感想・考察】

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 森博嗣著「赤目姫の潮解」は2013年7月に刊行された作品で、百年シリーズの三作目(最終作)です。この記事では、あらすじやみんなの感想などをまとめ、作品について考察しています。

項目 説明
タイトル 赤目姫の潮解
著者 森博嗣
出版社 講談社
シリーズ 百年シリーズ
順番 3(最終)
発行日 2013年7月25日
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あらすじ

赤い瞳、白い肌、漆黒の髪をした赤目姫とよばれる超越した美女。その瞳に映るのは我々が見るのと同じ景色なのだろうか――。彼女の行く先々で垣間見える異界……。思考の枷、常識の枠をやぶることが出来るものだけが、受容できる世界。そしてその世界に存在する自由と真理。魅惑的な登場人物で構築された哲学的幻想小説。
講談社BOOK倶楽部

解説

 百年シリーズ1作目と2作目の主人公はミチルでしたが、3作目には全く登場しません。そもそも主人公を特定しにくい作品となっています。森博嗣氏の作品は冒頭に登場人物がまとめられていますが、この作品にはそれがなく、登場人物が何者なのかというのも、確認しにくくなっております。

 赤目姫だけを読むと、どういった事情なのか(どういった背景が隠れているのか)がわかりにくいですが、おそらく、Wシリーズ4作目「デボラ、眠っているのか?」を読めば、全体像が把握できるようになると思います(Wシリーズは、1~3作を読んでから4作目を読むことをオススメします)。

 隠れている事情や背景というのは他作品のネタバレになるため、このページの“ネタバレ”の項目に記載しております。このネタバレというのは、繰り返しになりますが、Wシリーズ4作目に書かれている内容となります。

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タイムライン

 作中の出来事・ハイライトをタイムラインで簡単にまとめます。

ネタバレ注意
ハイライト
  • 第1章
    廉潔の館へ
    紫柴、鮭川、赤目姫が摩多井のもとへ
  • 第2章
    翠霞の宮殿へ
    紫柴の回想
    紫柴と赤目姫がチベットの宮殿へ
    緑目王子や曼荼羅が登場
  • 第3章
    紫の朱を奪う
    紫柴と鮭川の会話
    鮭川がナイアガラの滝で赤目姫に会った話をする
    仮面の男が赤目姫を連れて行った
  • 第4章
    形而下の浸透とその法則性
    紫柴の視点混信
    天文台登場
  • 第5章
    疑念の振動とその不規則性
    パティ登場
    パティが姉のシンディを殺害
    パティと鮭川がナイアガラの滝へ
    パティの混信
  • 第6章
    虚数のように軽やかに
    ミス・クーパとロビンス卿登場
    『一旦、他の人間の思考が混入すると、もともとの人間が時空から乖離してしまう。一種のパラレルワールドというか、人格が時間を遡って上書きされるから、どうしても単身ではいられなくなる。ようするに、これはゴーストだよ』
  • 第7章
    天知る地知る
    ドクタ・マタイがロビンス卿を訪ねる
    誰かが意図的に地表面をずらしているようである
    洪水
    ドクタ・マタイはミキの人形
  • 第8章
    麗しき天倪
    三木繁幸とタリア登場
    固液混合体の解析(地表面の移動をコンピューターで計算することだと考えられる)
  • 第9章
    熟せずして青枯らび
    私と鮭川の会話
    『そう、私も君も、人形かもしれない。(中略)不思議な混信があったときも、私は第一にそれを思いついた』
  • 第10章
    紅塵を逃れるに迅
    さまざま色の瞳が集まる
    『そこに居合わせた人物の内部への侵入あるいは投影が確認されている』
    襲撃
    赤目姫、緑目王子、タリアが行動を共にする
  • 第11章
    座して星原を見る
    青い瞳登場
  • 第12章
    シルーノベラスコイヤ
    ミス・クーパとドクタ・マタイが再び登場
    三木は人形使いではない
    紫王は政治家になった
    シンディとタリアが再び登場
  • 第13章
    フォーハンドレッドシーズンズ
    人形と人間は区別できるのか?
    『人形劇は、まだ続いている。』
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ネタバレ

 「赤目姫の潮解」は犀川や西之園が登場したS&Mや海月たちが登場したGシリーズの未来を描いた作品の一つであると考えられます。作中で特に明記されていませんが、おそらく22世紀を舞台にした物語のはずです。この時代、人々は体内にチップと呼ばれるものを仕込んでおり、これによって電子の世界と人の脳がつながっています。いわゆる電脳化(肉体を電子化した)という状況ですが、このネットワークを利用すれば、人の体内に入り込み、その人物を操ることができるようになります。

 作中で人形使いや人形という言葉が登場していましたが、これは、操る側と操られる側を意味しています。人形使いは、ネットワークを使って様々な人間になりすまして、その視点を乗っ取ることができます。それは、ただ単に視覚を奪うだけではなく、記憶なども共有します。そのため、視点だけではなく、時系列もいろいろと変わってるように(読者には)みえていると考えられます。

感想と考察

 作中では、人形使いと人形が存在する状況を混信と呼び、アクシデントと解釈していたようです。これは、事件の渦中にいる人々が憶測を語っている様子が描かれているように思えます。まるで、殺人事件に巻き込まれた登場人物があれこれ推理している様子と似ています。

 真相(人形使いは誰なのか)は赤目姫で語られませんが、全くなんだかわからない状態、というのをリアルに体験できたような気がします。メタ的な立場ではなく、事件の当事者になると、こんな感じかもしれません。私は、それはもう意味がわからなくて、途中で投げ出しそうになりました。推理小説で、クローズド・サークルにいる人物がだんだん苛立ってきたりしますが、この本を読んでその理由を体験できた気がします。

みんなの感想

 口コミを調べてみると『難しい』という言葉がよく書き込まれていました。

難しい

 他の作品を読んで背景などを把握していない場合は、かなり難解な作品になると思います。しかし、Wシリーズ読むと意味がわかる、という口コミが寄せられているようでした。

今まで読んだ森博嗣さんの作品の中でも飛び抜けて抽象的で難しい。

難しいかった。途中、何度も挫折しかけた。存在とは何か、みたいな感じだけど、もう理解不能。

どうやら他のシリーズに補間してもらう必要がありそうだ。今の情報量では難し過ぎるね。

百年シリーズのくくりにはなっているものの、ミチルとロイディは出てきません。そして難しい…!人間と人形の違いは。

物理的謎?精神的謎?森博嗣初心者には難し過ぎます。

コメント

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