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絹の家|シャーロック・ホームズ【あらすじ・ネタバレ】

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 「絹の家」はアンソニー・ホロヴィッツ氏の推理小説で、シャーロック・ホームズシリーズの続編です。第61作目となるこのエピソードは、1890年12月のロンドンが舞台となっています。この記事では、あらすじ、真相、感想などをまとめています。

項目 説明
著者 アンソニー・ホロヴィッツ
翻訳 駒月雅子
出版社 KADOKAWA
発売日 HC:2013年4月27日
文庫:2015年10月24日
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あらすじ

 諮問探偵シャーロック・ホームズのもとを訪ねたのは、エドマンド・カーステアーズという美術商だった。彼はギャングに命を狙われているという。カーステアーズは経緯を語り、キーラン・オドナヒューなる人物が目の前に現れ怯えていた。キーランはギャングの生き残りだった。翌日、カーステアーズの屋敷に強盗が入り、金庫から金とジュエリーを盗んでいった。ホームズは犯人がジュエリーを売りさばくために質屋へ向かう推理し、ベイカー街別動隊(イレギュラーズ)の子供達を使って、捜査を進める。そして、ロスという少年が首尾よく不審人物をみつける。

 ロスが見つけた不審人物はホテルで息絶えていた。ホームズ達が駆け付けたとき、ロスはひどく慄いていた。このことに違和感を覚えたホームズはロスが何かを知っていると考える。ロスは孤児で、チョーリー・グレイジング男子学校に身を置いていたが、脱走したようであった。そんな彼の居場所はわからない。ロスの姉・サリーはひどく警戒しており、ワトソンに怪我を負わせ逃げてしまう。そんな折、ホームズにレストレイド警部から伝言が届く。ロスの死体が見つかった。彼は川沿いで惨殺され、その手首にはシルクのリボンが巻き付けられていた。

 ロスを殺害した人物を追うため、ホームズはハウス・オブ・シルクについて調べるが、何もわからない。兄のマイクロフトを頼っても、かえって、手は出すなと警告されるほどであった。シャーロックは兄を無視して新聞に個人広告を掲載する「ハウス・オブ・シルクに関する情報求む」。すると、ヘンダースンなる男がベイカー街221Bに現れ、ホームズをアヘン窟へと誘う。アヘン窟の店主が何かを知っているということのようであった。

 アヘン窟へはホームズ一人で向かった。ワトソンは外で待機していた。時がたち、銃声が響いた。ワトソンが駆け付けると、そこにはサリーの死体があった。そばにはシャーロック・ホームズが倒れていた。拳銃を握ったままのホームズは生きていたが、サリー殺害の容疑で逮捕される。身分のしっかりした人物達が証人となり、ホームズの犯行を決めつけた。無実に違いないホームズであったが、ワトソンもレストレイドも、そして、マイクロフトもなすすべなく、ホロウェイ監獄へと送られてしまう。

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ネタバレ

ホームズは監獄の医師・トレヴェリアンと協力し、脱獄します。ウッドなる人物の棺に入って脱走したようにみえたホームズですが、死体はウッドであることがすぐに判明します。ホームズはウッドの死体ではなく、リヴァーズというダメそうな雑用係に変装していました。

ハウス・オブ・シルク

ハウス・オブ・シルクは性倒錯者が通う風俗でした。場所はチョーリー・グレイジング男子学校の音楽堂で、男達は少年を相手に行為に及んでいました。校長のチャールズ・フィッツシモンズ、妻のジョアンナは経営者で、教師のロバート・ウィークスは客の一人だったようです。ブラックウォーター卿、アックランド医師、ハリマン警部らがホームズを貶めようとしたのは、ハウス・オブ・シルクが明るみに出るのを防ぐためでした。彼らは行為を写真にとられ、フィッツシモンズに脅されるような立場にあったようです。ホームズ突入時、音楽堂にいたハリマンは馬車で逃亡しますが、ホームズとワトソンに追いかけられ、逃走劇の末、事故を起こして死亡します。そして、フィッツシモンズは獄中で転落死し、妻は精神病を患います。

ロス殺害

ロス・ディクスンを殺したのはヘンダースンとブラットビーという男で、彼らはフィッツシモンズの手下でした。男子学校の元生徒だったロスが脱走した理由は行為から逃げ出すためでした。ロスがレイヴンショー卿の懐中時計を持っていたのは、レイヴンショーが客だったためです。ロスは行為時に懐中時計を盗んでいました。なお、レイヴンショーは拳銃自殺を図ったと記されています。

サリー殺害

サリー・ディクスンを殺したのもヘンダースンです。アヘン窟の店主やヘンダースン達は、ホームズに薬を飲ませて意識を奪ったあと、殺したサリーの近くに、ホームズの体を横たえたようです。なお、サリーはロスがどのような目にあっていた知っていました。ロスとサリーを殺めたヘンダースンとブラットビーは、ホームズの策にかかって自白し、その直後、レストレイド警部率いる警官隊によって銃殺されます。

キーラン・オドナヒュー

ギャングのボスだったキーラン・オドナヒューは女でした。生き残ったキーランは復讐のため、スティルマンを殺害し、カーステアーズ近づきました。キーランはイギリスへ向かう船でカーステアーズと知り合い、殺害計画を変更し、復讐のため妻になる決意をします。つまり、キーランは、カーステアーズの妻キャサリンのことでした。

カーステアーズ家の殺人

エドマンド・カーステアーズの母親を殺害したのはキャサリンでした。キャサリンは、夫の親族を皆殺しにし、最後に夫も殺すことで全財産を手に入れようとしていました。姉のイライザが体調不良を訴えていたのは、キャサリンに毒を盛られたためです。毒は食事ではなく、バスソルトの中に入っており、イライザは皮膚などから毒を体内に取り込んでいました。

ホテルの男の殺人

ホテルで死んでいたのは、アメリカでギャングを追っていたビル・マクパーランドという探偵です。彼は、キーランを見つけ出し、キーランを脅していました。ハンチング帽の男はビルで、ビルが会おうとしていたのはキャサリンに扮したキーランでした。エドマンドの依頼は、結局のところ、勘違いだったということになります。強盗犯はビルで、キャサリンはそれを手引きしました。ビルは、金などを受け取ったにも関わらず脅しを継続。ビルが邪魔になったキャサリンはホテルで探偵を殺害します。シガレットケースのW.Mは、ウィリアム・マクパーランドのイニシャルで、ビルはウィリアムの短縮形でした。

つながり

エドマンド・カーステアーズはハウス・オブ・シルクの客でした。そして、エドマンドの相手をしていたのはロスでした。ホームズ、ワトソン、カーステアーズ、ウィギンズ少年がビルの泊まっていたホテルに到着したとき、ロスが知ったのは、カーステアーズの正体でした。秘密を握ったロスはカーステアーズを恐喝しようとしますが、このことがフィッツシモンズの耳に届き、殺されてしまいました。

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感想

 このミスの常連になりつつあるアンソニー・ホロヴィッツ氏の作品です。かなり期待して読み、読んでよかったと思える作品でした。私は、推理小説ではない、と思ってこの本を手に取りました。途中の展開が、まさにアドベンチャーといった感じで、それはそれで私が求めていたものだったわけですが、最後にホームズによる謎解きがあるとは思っていませんでした。双子の兄弟が実は女だったという種明かしは倒叙トリックのようでしたし、入浴剤に毒というのは確かにみたことがないです。同性愛というのは最近、一般的になっていますが、貧困に苦しむ子供を食い物にするというのがおぞましい部分でした。しかしこれが、最後のオチにはなっていなかったように思います。

 ワトソン博士はもちろんですが、モリアーティもマイクロフトもレストレイドもイレギュラーズも登場しました。私は、ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」のイメージですが、ハドソン夫人が一番好きなキャラです。このエピソードでは、ちょろっと登場していました。

みんなの感想

 AIで口コミを画像にまとめました。
絹の家(みんなの感想)

違和感ない

 このエピソードはホームズシリーズの続編とされていますが、著者はコナン・ドイルではありません。しかし、違和感ないという感想が多いようです。

コナン・ドイルのホームズ譚として、違和感なく読めました。原作と変わらない世界観だったと思います。

これまでの正典と並んでもほとんど違和感はない。強いて言うなら、犯罪が現代風な気もする。

角川書店から出版されている駒月雅子さん訳のホームズシリーズを読んでいたこともあり、ほとんど違和感なく楽しめました。

後味

 後味が悪いという感想も多く寄せられています。事件に貧しい少年が巻き込まれており、しかも性的に搾取されていたため仕方がないことかもしれません。

シルク・オブ・ハウスの事件、解決したけど、後味悪いなぁ…、やり切れなさが残る。

それにしても…ハウス・オブ・シルクの正体には嫌悪感を抱いた。後味は悪かった!

考察

 ハウス・オブ・シルクの事件は組織的な犯罪でした。その影響力は警察や裁判所にも及んでおり、一般的な推理小説のように、犯人をみつけてどうのこうのという話ではなかったように思います。一方、オドナヒューの一件は推理小説らしい内容だったと思います。復讐者がターゲットの妻になって家族を殺し、そこに正体を知る恐喝者が現れ、殺人事件が発生するという展開でした。

経皮毒

 犯人はバスソルトに毒を仕込んで、義姉を殺害しようとしました。仕込んだ毒はアコニチンで、これはどうやらトリカブトに含まれる毒物のようです。アコニチンは、1831年には単離されていたようなので、このエピソードの舞台である1890年には既に、アコニチンとして存在していたようです。

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