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二重の手がかり|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ26】

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 二重の手がかり』はポワロの宿敵(?)である伯爵夫人が登場します。「二重の罪」というポワロの作品と間違いやすいエピソードでもあります。この記事では、あらすじと登場人物、ネタバレ、トリック解説、感想・考察などをまとめています。

The Double Clue
項目 内容
シーズン 3
エピソード 7
長さ 50分
放送日(英国) 1991年2月10日(日)
放送日(日本) 1992年4月1日(水)
出演者 キャスト一覧
原作者 アガサ・クリスティー
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あらすじ

 巷で貴族を狙った盗難事件が発生し、捜査を担当するジャップ警部はポワロに捜査協力を依頼する。盗難は既に、三件も発生しており、四件目の宝石盗難がハードマン氏の屋敷で発生する。盗難発生時、屋敷の庭ではコンサートが開かれており、多くの客が屋敷にいただけではなく、怪しい浮浪者も目撃されていた。捜査の最中、ポワロは没落貴族である伯爵夫人と親しげにしていた…。

事件概要

四件目の宝石盗難に関しては、浮浪者以外にも容疑者が4名います。ジョンストン、ビアトリス・ランコーン、バーナード・パーカー、そして、伯爵夫人のヴェラ・ロサコフです。この4名はコンサートの最中に、屋敷の中に入っています。ジョンストンはお金持ちのため盗難の動機が不明確であるのに対して、ランコーンは貴族の一人ですが金に困っています。のちに、パーカーは宝石の買い取りを行っている人物であることが判明します。

四件目の盗難の現場には二つの手がかりが残っていました。一つが金庫の中に残された手袋、そして、付近に落ちていたシガレット・ケースです。ケースにはB.P.というイニシャルがほってありました。手袋はパーカーのものであり、B.P.(バーナード・パーカー)というイニシャルから、ケースもパーカーのものであるように見えますが、本人は否定します。実は、ビアトリス・ランコーンの旧姓のイニシャルがB.P.であることが判明します。つまり、現場には、パーカーとランコーンの犯行を示唆する物証が残されていたということになります。

ポワロと伯爵夫人のことを気に掛けながら、大尉とミス・レモンは捜査を進めます。一方、ポワロは探偵に何かを依頼しているようですが、その詳細は不明です。大尉とミス・レモンは、ポワロの指示に従って再び犯行現場を訪れます。そして、怪しい浮浪者と遭遇します。大尉めがけて発砲したその浮浪者は、なぜか、スポーツカーに乗って逃走します。

登場人物

  • エルキュール・ポアロ
    灰色の脳細胞を持つベルギーの私立探偵
  • アーサー・ヘイスティングス
    ポアロの友人であり、事件の記録者
  • ジャップ主任警部
    スコットランド・ヤードの警部
  • ミス・レモン
    ポアロの有能な秘書
  • マーカス・ハードマン
    宝石コレクターの資産家
  • ヴェラ・ロサコフ伯爵夫人
    ロシアからの亡命貴族で、ポアロが魅了される女性
  • バーナード・パーカー
    ハードマンの仕事のパートナー
  • ランコーン卿夫人
    ハードマンのパーティーの招待客
  • ジョンストン
    南アフリカの億万長者
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ネタバレ

真犯人は伯爵夫人ですが、ポワロが夫人を逃がします。代わりに、浮浪者が犯人ということになります。屋敷の植木から見つかった宝石はポワロが仕込んだものです。そして、大尉を銃撃した浮浪者はポワロが依頼した探偵でした。彼は探偵だったのでスポーツカーに乗っていました。

容疑者の中で、ランコーンも疑わしい人物の一人でしたが、彼女は金に困っていたため、宝石をパーカーに買い取らせようとしていました。取引のため、二人は人目を避けてコンサートの最中に屋敷で会っていました。金持ちのジョンストンは本当に用を足しに行っただけです。

トリック

 犯人は手袋やシガレットケースを現場に残し、持ち主に罪を着せようとしました。二人の人物が盗難に関わっているようにみせるトリックだったといえます。

 真相を見抜いた探偵が真犯人の共犯者となりました。探偵は、別の探偵という共犯者をさらに雇い、浮浪者に変装させます。この浮浪者が犯人であるようにみせるため、探偵は、浮浪者が屋敷から逃亡する時に盗んだ宝石を落としたというストーリーを捏造しました。このストーリーをもっともらしくするため、真犯人から回収した宝石を逃走経路(窓のすぐそばにある樹木)に仕込みます。

捏造

 事件発覚後に証拠を捏造し、犯人を仕立て上げるというのを第三者が行いました。通常は犯人本人が仕掛けるもので、多くは、事件を起こす前から計画されています。例外は、突発的に殺してしまった場合(殺すつもりはなかったが、カッとなって突き飛ばしたら死んでしまった、など)や、この事件のように、想定外の共犯者が仕掛ける場合があります。

 探偵が真犯人をかばったということになると、探偵も共犯者であり、犯人といえます。探偵、刑事、監察医などなど、犯人になってはいけないような人物が犯人というのは、最近はよくあると思います。1900年代前半はアンフェアだったかもしれません。

二つの証拠

 犯人は現場に、二つの証拠を残しました。どちらも持ち主が異なり、捜査を混乱させています。一つ目の証拠を残した(落とした)人物が宝石を盗み、もう一人が宝石を盗もうとして金庫にやって来たが既に盗まれていた、このとき、二つ目の証拠を落としてしまった、というような状況も考えられます。二つの証拠が別の人物を示しているので、むしろ、第三者が用意したということも想像できます。

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原作とドラマの違い

アガサ・クリスティの短編小説『二重の手がかり』は、短編集『教会で死んだ男』に収録されています。ドラマでは原作の核となる謎解きは踏襲しつつも、ポアロの人間的な側面や登場人物間の関係性をより深く掘り下げ、メロドラマ的な要素が強調されています。原作小説とドラマの主な違いは下記の通りです。

ストーリー

発端

  • 原作
    宝石コレクターのマーカス・ハードマンが直接ポアロに依頼し、警察には連絡できない事情があるため、秘密裏の捜査を求めます
  • ドラマ版
    ジャップ主任警部がポアロに相談を持ちかけます。ジャップ警部は、立て続けに起こる上流階級を狙った宝石盗難事件の解決に窮しており、解決できなければ自身の職が危ないという切迫した状況にあります

展開

  • 原作
    ポアロが事件の真相を見抜き、ロサコフ伯爵夫人と直接対峙して宝石を取り戻します
  • ドラマ版
    ポアロがロサコフ伯爵夫人に強く魅了され、彼女との交流に時間を費やすため、ヘイスティングスとミス・レモンがポアロに代わって独自に捜査を進める場面が追加されています
  • 原作
    金庫に残された「BとPのイニシャルがあるシガレットケース」が、ロシア語のアルファベットの読み方からヴェラ・ロサコフ伯爵夫人のものであることが判明します
  • ドラマ版
    ランコーン卿夫人の旧姓も「B.P.」であるという設定が加えられ、一時的に彼女へのミスリードが強化されています。

物語の結末

  • 原作
    ポアロはロサコフ伯爵夫人の度胸と知性に感服し、宝石を取り戻すものの、彼女を逮捕することなく見逃します
  • ドラマ版
    ポアロは、ジャップ警部の窮地を救うため、そしてロサコフ伯爵夫人を逃がすために、浮浪者の仕業であるという嘘の推理を披露します。これはポアロの個人的な感情が事件解決に大きく影響した、原作にはないドラマオリジナルの展開です

登場人物

  • 原作
    ポアロは伯爵夫人の非凡さに感服するものの、恋愛感情めいた描写は控えめです。二人の関係は「傑物同士の応酬」として描かれます
  • ドラマ版
    ポアロが伯爵夫人に「デレデレ」になるほど強く惹かれ、彼女への恋心ともとれる感情が強調されています。また、二人が故国を追われた亡命者であるという共通の境遇が強調され、ロマンチックで哀愁を帯びた雰囲気が醸し出されています
  • ドラマ版
    ハードマンの屋敷の周囲を浮浪者がうろつく描写や、ポアロがヘイスティングスの運転で夏の訪れを感じるなど、情景描写やキャラクターの人間性を深めるための細かなシーンが追加されています

感想

ポワロが真相を握りつぶすというアンフェアなエピソードかもしれませんが、とても印象に残るお話です。ポワロさんが共犯というとかなりの衝撃ですが、その動機はきっと伯爵夫人に好意を抱いていたからだと思います。事件をもみ消すには、かなりの労力が必要になるのでしょうが、それでも夫人を逃がしたかったということだと思います。そうだとすると、ほとんど見返りがないのに、ポワロは事件の後始末を引き受けたということになります。つまりこれは愛ですね。

伯爵夫人を演じていた俳優さんはキカ・マーカムさんとおっしゃるそうです。現在もテレビなどに出演されているようです。名探偵エルキュール・ポワロを虜にした女性です。[参考:キカ・マーカムさん(Kika Markham)のグーグル検索の結果

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