『青いゼラニウム』のあらすじと真相、原作小説との違い、考察、感想などをまとめています。ドラマ版ミス・マープルシリーズの第19話(S5E3)です。ある連続殺人の真相に気付いたマープルが、判決の迫った事件の経緯と真相を語り始めます。
あらすじ
リトル・アンブローズという小さな村にある屋敷でメアリー・プリチャードの死体が発見される。ミス・マープルは村で起きた一連の事件について思い違いをしていたことに気付き、サー・ヘンリーに事情を話し始める。
マープルはリトル・アンブローズで暮らす友人の牧師に会うため、村を訪れていた。途中、バスの中でエディ・スワードという若者と知り合ったが、その若者が数日後、死体となって発見され、警察が殺人事件として捜査を進め始める。
村にはメアリー・プリチャードという嫌われ者の女性がおり、メアリーはザリダという占い師を信じていた。そのザリダがエディの死を言い当て、さらに、メアリーの死を予言する。メアリーはひどく怯え、ついにショック死してしまう。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジュリア・マッケンジー Julia McKenzie |
老婦人の名探偵 牧師の友人 |
ダーモット Dermot |
デビッド・カルダー David Calder |
年老いた牧師 マープルの友人 |
ヘスター Hester |
ジョアンナ・ペイジ Joanna Page |
牧師の姪 プリチャード家の料理人 |
ジョージ・プリチャード George Pritchard |
トビー・スティーブンス Toby Stephens |
お金持ち 被害者の夫 |
メアリー・プリチャード Mary Pritchard |
シャロン・スモール Sharon Small |
被害者。嫌われ者 常に何かを食べている |
キャロライン・コプリング Caroline Copling |
クレア・ラッシュブルック Claire Rushbrook |
メアリーの看護師 数年前に村にやってきた |
ルイス・プリチャード Lewis Pritchard |
ポール・リス Paul Rhys |
ジョージの兄 売れない作家 |
フィリッパ・プリチャード Philippa Pritchard |
クローディー・ブレイクリー Claudie Blakley |
メアリーの妹 ルイスの妻 |
ジョナサン・フレイン Jonathan Frayn |
パトリック・バラディ Jonas Armstrong |
医師 ヘスターの恋人 |
ヘイゼル・インストウ Hazel Instow |
キャロライン・キャッツ Caroline Catz |
絵描きの女性 数年前に村にやってきた |
エディ・スワード Eddie Seward |
ジェイソン・デュール Jason Durr |
謎めいた男性 マープルがバスで知り合う |
スーザン・カーステアーズ Susan Carstairs |
ジェイソン・デュール Rebekah Manning |
メアリーの看護師 既に辞めている |
サマセット Somerset |
ケヴィン・マクナリー Kevin McNally |
刑事 マープルとは対立的な立場 |
ヘンリー・クリザリング卿 Sir Henry Clithering |
ドナルド・シンデン Donald Sinden |
マープルの友人 元警視総監 |
事件概要
村にやってきたエディ・スワードという青年が死体となって発見され、その後、メアリー・プリチャードというお金持ちの妻も死亡します。さらに、メアリーの看護師だったスーザン・カーステアーズという女性が何者かによって殺されます。
最初に死体が発見されたエディは妻帯者でしたが、アルコール依存症による暴力で妻には逃げられていました。その妻がリトル・アンブローズに身を隠していますが、その正体は不明です。
最終的に、三つの死体と一人の行方不明者が存在することになります。このうち、エディは自殺なのか他殺なのか判然とせず、メアリーもショック死と考えられています。唯一他殺が確定しているのはカーステアーズだけで、現場に残された指紋や不倫という動機などから、メアリーの夫であるジョージ・プリチャードが容疑者となります。
嫌疑をかけられたジョージは罪を認め、三人を殺害したと証言します。ジョージは看護師だったカーステアーズと不倫しており、カーステアーズは妊娠していました。妻のメアリーとはひどく不仲で、実は、エディの妻とも不倫関係に陥っていました。
エディの妻は絵描きのヘイゼル・インストウで、ジョージはヘイゼルを愛していました。そこによりを戻そうとしたエディが現れたので殺害したというのが動機です。ヘイゼルと結ばれるために、邪魔者であるメアリーとカーステアーズを殺したということであれば、特に不審な点はありません。
手口については詳しく語られませんが、様々な状況証拠が積み重なり、ジョージが犯人ということで事件は解決します。しかし、スズメバチの駆除を目撃したミス・マープルが真相に気付きます。
事件の中で大きな謎となるのが、変色する壁紙です。床に伏していたメアリーは医者だけではなく占い師にも相談していました。この占い師が青いヒヤシンスは注意、青いホリーホックス(立葵)は警告、青いゼラニウムは死を意味するとメアリーに伝えます。すると、奇妙なことにメアリーの寝室の壁紙に書かれた立葵が変色し、メアリーの死体発見時には壁紙のゼラニウムが青く変色していました。
その他にも、下記のような不審な出来事が起きています。
- メアリーの部屋から宝石や嗅ぎ煙草入れなどが盗まれている
- 医師のジョナサンはメアリーが精神的な病だと判断し水を与えている。これに対して、妹のフィリッパが激しく抗議する
- 牧師の体調が突然悪くなる
ネタバレ
真犯人は看護師のキャロライン・コプリングです。キャロラインはジョージ・プリチャードを死刑へと追い込み、ジョージの弟であるルイスへと相続される遺産を、ルイスの妻であるフィリッパを脅迫して手に入れようとしていました。
フィリッパはかつてジョージと恋仲でしたが、メアリーにジョージを奪われていました。このことをひどく憎んだフィリッパは、実はメアリーの食べ物に毒を盛っていました。このことをキャロラインが知り、これが脅迫のネタとなります。
キャロラインはフィリッパが“スズメバチ”とあだ名をつけた強欲な女性でした。ジョージと知り合いだったキャロラインはジョージがお金持ちになったことを知って近づき、占い師に変装するなどしてメアリーを殺害。さらに、ジョージと不倫関係にあった前任の看護師も殺害し、占い師であるかのようにみせました。
ジョージ・プリチャードは愛するヘイゼル・インストウが犯人だと思い、ヘイゼルをかばうために罪を認めていました。ジョージが数名の女性と不倫をしていたのは事実ですが、殺人には一切関与していません。
最初に死体となってみつかった青年エディは自殺で、キャロラインの犯行とは関係がありません。エディはアルコール依存症を克服し、元妻であるヘイゼルとの関係を修復しようとしましたが、ヘイゼルに拒絶されてしまいます。
変色する壁紙はリトマス試験紙を利用したトリックでした。メアリーは気付け薬(Smelling salts)を常用しており、薬から発生するガスがリトマス紙を変色させていました。なお、メアリーの死因は青酸カリによる毒殺で、気付け薬が青酸カリにすり替えられていました。
その他、隠されていた真実をまとめます。
- 嗅ぎ煙草入れなどを盗んだのは医師のジョナサン・フレイン。ジョナサンは父親の所有物(屋敷など)を買い叩かれたため、ジョージを恨んでいた。元々父のものだったと主張しているが、恋人のヘイゼルに諭されている
- 宝石を盗んだのはジョナサンではない。宝石は死んだカーステアーズが握っていたが、これは、真犯人のキャロラインが握らせたものだった。つまり、宝石を盗んだのはキャロラインであると考えられる
- フィリッパが姉のメアリーに毒を盛っていた。牧師の体調が悪くなったのはつまみ食いをしたから
結末
ジョージ・プリチャードは罪を認めるが、直後にミス・マープルが真相を語り、真犯人が連行される。
原作とドラマの違い
原作小説は短編で、ドラマ化にあたって原作には登場しない人物や内容が追加されています。メアリー・プリチャードの事件については、原作もドラマも概ね同じですが、メアリー殺害以外の事件は原作には登場しません。
原作にはバントリー夫妻という人物が登場します。この夫妻が事件の目撃者となり、聞き手はミス・マープルです。ドラマはマープルが目撃者で、聞き役がサー・ヘンリーになっています。
感想
壁紙の色が変わる仕掛けがかなり謎めいていました。トリックに使われたリトマス試験紙は日常的には使わないけれど常識的に知っているものという丁度よい塩梅の存在だったように思います。ただし、リトマス紙は水溶液に使用するのが一般的ですので、気体に用いる場合はリトマス紙を水で湿らせておく必要がありそうです。
考察
真犯人の犯行とは直接関係のない自殺が混じっていましたが、犯人の計画が崩れることはなく、意図通りに冤罪が決まりそうになっています。
まとめ
ミス・マープル「青いゼラニウム」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- キャロライン・コプリング
Caroline Copling
スズメバチというあだ名をつけられた女性。金にひどく執着する女で、ジョージ・プリチャードの財産をねらい、殺人を繰り返した。
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