海外ドラマ

杉の柩|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ51】

この記事は約8分で読めます。
記事内に広告が表示されます

【殺人容疑で裁判にかけられた女性は婚約者の浮気相手を殺害したのか?】『杉の柩』は怪しい警告文を受けとった女性が、婚約者の浮気相手を殺人したという容疑で裁判にかけられるエピソードです。この記事では、あらすじ、登場人物、ネタバレ、感想、原作小説とドラマの違いなどをまとめています。

Five Little Pigs
項目 内容
No. 51
シーズン 9
エピソード 2
長さ 1時間33分
放送日(英国) 2003年12月16日(火)
放送日(日本) 2005年8月24日(水)
出演者 キャスト一覧
スポンサーリンク

あらすじ

 エリノア・カーライルは婚約者と幸せな一時を過ごしていた。しかし、その数ヶ月後に、エリノアはメアリ・ジェラード殺害の容疑で逮捕され、裁判にかけられてしまう。

 事件の発端はある手紙だった。その内容は、雪のように真っ白なと形容される人物がエリノアの叔母でお金持ちのウェルマン夫人にゴマをするというものだった。ごますりの結果、エリノア達はウェルマン夫人の遺言書から外され、夫人も発作で死亡するという内容も手紙には書かれていた。変な手紙を受け取ったエリノアと婚約者のロディはウェルマン夫人の屋敷へと向かい、ウェルマン夫人の主治医ピーター・ロードに相談する。そして、主治医が名探偵ポワロに事件を相談するが……。

事件概要

あらすじは意味深な雰囲気で終わらせてしまいましたが、冒頭のシーンから明らかな通り、エリノアはメアリという女性の殺害容疑で逮捕されます。被害者のメアリは、ウェルマン夫人が面倒をみていた若い女性で、その生い立ちや経歴などは濁されています。

メアリの死亡事件が発生する前に、ウェルマン夫人も突然死亡します。もともと体が弱っていたということもあり、主治医によって病死と判断され、検死はされず、そのまま土葬となります。そして、エリノアが受け取った手紙には夫人が遺言書を残しているというような内容が書かれていましたが、実は遺言は存在しないということが明らかになります。そのため、一番近い親族であるエリノアだけが、全財産を受け取ることになります。

ウェルマン夫人が死に、メアリも死亡し、そして、エリノアが逮捕されるという流れですが、まず、エリノアにはメアリ殺害に関して浮気という明確な動機がありました。死んだメアリはエリノアの婚約者であるロディ・ウィンターと浮気をしていました。このことに気付いたエリノアはロディと別れます。悪いことにエリノアは、メアリに対する殺意をポワロに伝えています。

続いて手口に関してですが、メアリが死んだとき、メアリはエリノアと看護師のホプキンスと一緒でした。三人は一緒にお茶して、エリノアとホプキンスが席を外し、戻るとメアリが死んでいました。ティータイムで振舞われたのはサンドイッチと紅茶で、サンドイッチを用意したのは容疑者のエリノアでした。紅茶を用意したのはホプキンスですが、この紅茶はホプキンス自身も口にしています。しかしながらサンドイッチは、毒を仕込んだサンドイッチをエリノアに渡すことができる状況でした。

以上のように、動機も手口も揃っているエリノアが逮捕され裁判にかけられます。そして病死とされていたウェルマン夫人も、解剖の結果、モルヒネによる他殺であることが判明します。夫人の死によって莫大な財産を独り占めすることになったエリノアが疑われることになります。

スポンサーリンク

主な登場人物

  • エルキュール・ポアロ
    私立探偵
  • ローラ・ウェルマン
    大富豪の未亡人。二度の発作の後、モルヒネ中毒で死亡する
  • エリノア・カーライル
    ローラ・ウェルマンの姪。ロディの婚約者で、メアリ殺害容疑で逮捕される
  • ロディー・ウェルマン
    ローラの亡き夫の甥。エリノアの婚約者だが、メアリに心惹かれる(ドラマ版ではウェルマンではなくウィンター)
  • メアリ・ジェラード
    ウェルマン家の門番の娘で、ローラの隠し子。毒殺される
  • ピーター・ロード
    医師。ローラ・ウェルマンの主治医で、エリノアを救うためポワロに調査を依頼する
  • ジェシー・ホプキンズ
    ローラ・ウェルマンの看護師。事件の真犯人
  • アイリーン・オブライエン
    ローラ・ウェルマンの看護師
  • テッド・ビグランド
    メアリに想いを寄せる青年、または 庭師(ドラマ版ではテッド・ホーリック)
スポンサーリンク

ネタバレ

犯人はエリノア・カーライルではなく、看護師のホプキンスです。ホプキンスの名前はメアリ・ホプキンスで、彼女は金を手に入れるために、ウェルマン夫人とメアリを殺害しました。冒頭の警告文もホプキンスの仕業です。

ホプキンスは実はメアリのおばでした。そのため、親族であるメアリが死亡すれば、メアリの財産を手に入れることができる立場にいました。ホプキンスは、捜査の途中でポワロに、メアリがウェルマン夫人の実の娘であることを明かしていますが、このとき、手紙を渡しています。この手紙についてホプキンスは、メアリの義理の母親(実の父である庭師には妻子があり、さらに、ウェルマン夫人が育てるわけにもいかなかったため、メアリは養子に出された)がメアリに宛てた手紙だと話していましたが、実際は、義理の母親が自身の妹に宛てた手紙でした。その妹というのがホプキンスで、メアリにとってはおばということになります。

メアリ殺害の手口は、紅茶に毒を盛って自分が飲んだ後、嘔吐剤で毒入り紅茶を吐き出すというものです。つまり、毒はサンドイッチではなく、紅茶に入っていました。キッチンでモルヒネと書かれたラベルが見つかっていますが、これはアポモルヒネという薬品を示していました。ラベルの最初の単語が小文字で書かれていたのは、アポの部分が切り取られていたためです。

 事件関係者をネタバレありでまとめると次の表のようになります。

名前 説明 解説
エリノア・カーライル
Elinor Carlisle
容疑者 ウェルマン夫人およびメアリ殺害の容疑で裁判へ
動機があり犯行も可能であったが犯人ではなかった
メアリ・ジェラード
Mary Gerrard
被害者 ウェルマン夫人と庭師の間に生まれた子供
おばのホプキンスによって殺害される
ウェルマン夫人
Mrs. Welman
被害者 メアリの母親
病死とされていたが実はモルヒネによる他殺
ホプキンス
Hopkins
看護師
真犯人
ウェルマン夫人の財産を手に入れるため犯行に及ぶ
アポモルヒネを使って毒入り紅茶を吐き出す
オブライエン
O’Brien
看護師 もう一人の看護師
ピーター・ロード
Peter Lord
主治医 ウェルマン夫人の主治医

トリック

 自らを傷つけることで容疑者から外れるというトリックです。例えば、自分の足をナイフで刺して何者かに襲われたようにみせるなどです。この事件で登場したトリックは、自分で傷を治したような状況になっているため、そこまであからさまではありませんが、結果的に、容疑者から外れています。

 提供されたサンドイッチと紅茶のうち、紅茶は別の人物も飲んでいるため、毒入りではありえないというロジックが展開されています。吐き出さずそのままでも問題ないように一瞬思えますが、致死量のはずなので、そのままだと死ぬ可能性が高くなるはずです。また、ポットではなくカップに毒を入れれば被害者だけを狙えそうですが、カップは誰がどれを取るかわからない状況だったといえそうです。なお、毒入りのポットなどは犯人が綺麗に洗っています。

原作小説とドラマの違い

原作小説は3部構成で、第一部は事件発生までが描かれていおり、エリノアの心理描写が中心です。第二部ではピーター・ロード医師の依頼を受けたポワロが捜査に乗り出し、第三部で法廷での裁判が描かれます。解決は主に法廷での証言を通じてなされます。ドラマとの違いは下記の通りです。

  • ポワロの登場時期
    原作では第二部から登場するポワロが、ドラマ版では第一部から登場し、事件発生前から村に滞在しています
  • 匿名の手紙
    原作ではロディがすぐに燃やしてしまう匿名の手紙を、ドラマではロード医師がポワロに見せることで、ポワロが事件に関わるきっかけとなります
  • エリノアの心理描写
    エリノアがメアリへの憎しみを口にする描写が原作よりも明確にされています
  • エリノアの目撃
    ロディとメアリがキスしているのをエリノアが目撃する場面が追加され、エリノアの動機がより強調されています
  • 法廷での判決
    ドラマではエリノアに一度死刑判決が出てしまい、その後にポワロが真犯人を突き止めます。原作では判決前に真相が明らかになります
  • 解決編の場所
    原作では解決編が主に法廷で行われるのに対し、ドラマではすでに判決が出ているため、ハンタベリー・ハウスの図書室でポワロが関係者を集めて真相を語る形になっています

感想

現場に3人いて、そのうちの1人が毒殺され、もう1人が捕まったけれども、無実を主張していたら、残る1人がもの凄く怪しいわけですが、全く疑いの目を向けなかったりするものです(私はそうでした)。毒を飲んで吐き出したなんて、思い付かないです。そのほか、みどころをまとめてみました↓

  • 女性心理の巧みな描写
    エリノアが長年抱いてきたロディへの愛情、それが報われずメアリに奪われる苦悩、そしてメアリへの複雑な感情が繊細に描かれています。また、ローラ・ウェルマンの悲しい恋の過去など、登場する女性たちの内面が深く掘り下げられています
  • 毒薬のマニアックさ
    元薬剤師であるアガサ・クリスティの知識が光る作品です。致死性のモルヒネと、催吐剤であるアポモルヒネという似た名前の薬を使い分けるトリックが見事です
  • タイトルの深い意味
    原題「Sad Cypress」(悲しいイトスギ)は、シェイクスピアの『十二夜』からの引用であり、届かない片想いへの嘆きや死を暗示しています。物語全体を覆う、エリノアの悲しみや運命を表す象徴的なタイトルです
  • 意外な犯人像
    おしゃべりな看護師という印象のホプキンズには、計算高く冷酷な犯人であるというギャップがあります
  • ロード医師のひたむきな愛
    絶望の淵に立たされたエリノアに対し、ひたむきに彼女を信じ支え 続けるロード医師の存在に救いを感じます。苦難を乗り越えたエリノアが、最終的に真実の愛に気づく結末は感動的です
  • 伏線の巧妙さ
    「メリーさんの羊」の歌詞が事件の伏線として使われるなど、細部でもクリスティのアイデアが光っています
タイトルとURLをコピーしました