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海外推理小説

ママは何でも知っている|あらすじ・ネタバレ解説

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 「ママは何でも知っている」はジェイムズ・ヤッフェ(James Yaffe)の短編小説で、ブロンクスのママと呼ばれる安楽椅子探偵が登場する本格ミステリーです。この記事では各話のあらすじと真相、感想などをご紹介します。

項目 説明
タイトル ママは何でも知っている
評価 4.0
著者 ジェイムズ・ヤッフェ
出版社 早川書房
シリーズ 1作目
発表 1952-68年
Audible版 なし
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ママは何でも知っている

 下の上という感じの下町のホテルで若い女性ダンサーが殺害される。被害者がみつかったのは客室で、ホテルの事務員およびエレベーターガールの証言によって三人に絞り込まれる。警察はいずれかが犯人であると断定しているようだった。

犯人の正体

犯人はエレベーターガールでした。エレベーターガールは容疑者の一人に恋をしていましたが、そこに被害者が登場したため、三角関係に陥っていました。つまり動機は痴情のもつれです。

エレベーターガールと事務員(作中ではクラークという語が使われている)は互いにアリバイを証言していました。そのため、容疑者から外れていたわけですが、実は事務員は、こっそり抜け出してお酒を飲んでいました。このとき一人きりになったエレベーターガールが被害者の部屋へ行き、犯行に及んでいます。

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ママは賭ける

 あるレストランで食事をしていた二人のうち一人だけが毒を盛られた。殺された被害者はレストランの給仕をひどくいじめており、その給仕が復讐のために毒を盛ったと考えられた。しかし、被害者は大変な好人物で毒殺を企てるような印象はなかった。

毒殺の真相

容疑者の給仕運んだスープを口にして、被害者は亡くなりました。厨房をでたとき、支配人が味見をしていたため、毒を仕込むことができたのは給仕だけでした。しかし、毒を仕込んだのは給仕ではなく、実は被害者自身でした。

被害者は遺産を手に入れるために、レストランのコックと共謀して、義理の父親を毒殺しようとしていました。スープに毒を仕込んだのはレストランのコックで、コックは共犯者ということになります。

被害者は毒入りスープを誤って飲まないようにするため、自分のスープを塩抜きで注文していました。塩をとると胸焼けがするからという理由は単なる口実だったわけですが、その言葉を信じた給仕がちょっとした復讐心でスープを交換してやりました。給仕は客が胸焼けを起こせばいいと思っていたわけですが、スープは毒入りでした。

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ママの春

 ある中年夫妻が伯母を心配して警察を訪ねる。その伯母さんは会ったこともない男性と文通をしているらしかった。夫妻がやめさせようとしても伯母さん文通を止めず、ついに殺されてしまう。

謎の男の正体

伯母さんを殺害したのは文通相手だと考えられていましたが、真犯人は中年夫妻、つまり伯母さんにとっての甥夫妻でした。犯行を計画したのは妻で、実行したのが夫です。動機は金でした。

夫妻は詐欺師の昔の写真を残して捜査をかく乱し、さらに、伯母殺害の罪を文通相手になすりつけようとしていました。しかし、そもそも文通相手は存在しておらず、実は伯母さんは寂しさを紛らわせるために、自分で自分に手紙を送ってしました。

ママが泣いた

 ある資産家の自宅で、屋上から男が転落して死亡してしまう。犯人は、事件当時一緒にいた五歳の男の子と考えられる。死んだのは男の子の叔父で、マラリアに罹患したため空軍を除隊となり静養していた。男の子の父親は他界しており、美人の母親が男の子の叔父を世話していた。警察は男の子が突然現れた叔父という存在に複雑な感情を抱き、犯行に至ったと結論付ける。

転落死の真相

男の子は犯人ではなく、事故死です。死んだ叔父は男の子の殺害を計画していましたが、マラリアに罹っていたため、めまいを起こして転落します。

叔父は男の子の母親とその財産を手に入れようとしていました。そんな叔父にとって男の子は邪魔な存在だったため、マントでパパのように空を飛べるという大嘘を吹き込んで男の子を屋上から飛び降りさせようとしていました。叔父の計画はうまくいっていましたが、最後の最後でめまいを起こし、自分自身が転落してしまいます。

ママは祈る

 ろくでなしの元教授が大学の学部長を殺害した容疑で逮捕される。捕まった元教授は自分を解雇した学部長をひどく恨んでおり、確かな動機があった。さらに、バーの店主の証言により、元教授の有罪は間違いないように思えた。しかし元教授本人は自白せず、罪を認めようとはしなかった。

ろくでなしの正体

元教授は娘に養われながらも、酒を飲んでへべれけになって夜中に帰宅するというろくでなしでした。しかし、本当は酒など一滴も飲んでおらず、娘が出て行かないようにするために、酒浸りを演じているだけでした。

学部長を殺害したのは、偽証したバーの店主です。学部長は学生の飲酒を禁じようとしていました。バーの店主にとって学生は貴重な客でした。事件があった日、バーの店主は学部長に禁酒について相談しましたが、カッとなって殺してしまいます。そんな折に、警察がやってきて元教授の話をしたので、罪をなすりつけるため、バーに元教授が来たという嘘を話しました。

ママ、アリアを唱う

 オペラハウスの立見席で老人が突然死した。死因は毒殺で、開演前に口にしたカフェオレに毒が混入されていたと考えられる。老人には犬猿の仲ともいえるオペラファンの老人がいた。殺された老人は立見席で倒れた時、「ひどいやつだ!こんなことをするやつは、くたばるがいい!」と叫んでおり、それは、諍いの絶えないもう一人の老人に放たれた言葉のようだった。カフェオレに毒が入れる機会などからも、その老人が犯人であると考えられる。

毒殺の真相

犯人は被害者の甥でした。カフェオレに毒が入っていたと思われていましたが、毒は被害者が持っていた風邪薬に仕込まれていました。この風邪薬を用意したのは薬剤師である甥でした。

「ひどいやつだ…」という被害者の最後の言葉はダイイング・メッセージのようにも思えましたが、犯人について語ったわけではなく、上演されていたオペラの感想でした。つまり、毒殺事件とは全く関係がありませんでした。

ママと呪いのミンク・コート

 ある御婦人が夫からミンク・コートを贈られる。夫はそのミンク・コートを卸商の男から購入しており、割安だった。理由は破産した女性の中古だったからで、しかもその女はコートが競売にかけられて卸商の手に渡ったとき、喚き散らして、そのまま死んでいた。いわくつきのミンク・コートだったが、贈られた御婦人は喜び、自慢げに羽織っていた。ところが御婦人は、そのコートが呪いでも受けたかのように勝手に動くと言い始め、最後には死んでしまう。

呪いの真相

ミンク・コートに呪いがかかり、超自然的な力を発揮したように思えましたが、すべて御婦人の嘘でした。最初は喜んでいた御婦人ですが、割安とはいえそれなりの金を払った夫に申し訳なくなり、返品しようと考えるようになります。正直に話してしまうと夫に惨めな思いをさせてしまうため、呪いのせいという口実を作ろうとしていました。

御婦人が死んだのは、コートを売った男に殺されたためです。卸商の男が渡したコートは実は偽物でした。男は偽物を回収するため、急患という嘘の電話で夫を外出させ、御婦人と話し合おうとしました。しかし、交渉は決裂し、男は御婦人の近くにあったミンク・コートで絞殺することになります。

ママは憶えている

 タクシーの運転手が強盗に遭い、首を切られて殺害された。事件発生後、二時間ほど息のあった被害者は、駆け付けた警察に容疑者の写真をみせられ、そこに写った青年が犯人だと断言していた。しかも、刑事が犯行現場から立ち去る人物を目撃しており、特徴的な服装からして、犯人はその青年に間違いないようだった。

真犯人

青年は犯人ではなく、青年の姉が真犯人でした。青年は親に内緒でテレビ修理の技術学校に通っており、このことを隠すために、本当は完璧なアリバイがあることを話していませんでした。青年は父親に反抗して技術学校には通っていませでしたが、父親が正しかったことに気付き、技術学校に通い始めました。本当のことを話せば、父親を認めることになるので、青年はアリバイを隠すことになります。

真犯人の姉は弟が技術学校に通っていることを知っていました。むしろ、服を着替える場所として姉自身の下宿を使わせていました。姉は弟が着替えた服を身に着けて、強盗に及んだということになります。

ママの事件

このエピソードでは、ママの夫が容疑者になった事件も語られます。事件が起きたのは当時18歳だったママの結婚式の前日で、泥酔した夫(正確には婚約者)がある女性の殺害容疑で逮捕されてしまいます。夫は何も証言せず、かなり不利な立場に陥ってしまいます。

真犯人は女性で、その女性はママの夫が勤める会社の社長の妻でした。社長夫人は夫の不倫を知り、その相手を殺害したというのが真相です。ママの夫はその日、泥酔して厳格な父親と喧嘩をしました。そして、父親への報復のために、宗教的に禁じられている豚肉を口にしていました。禁忌を犯した夫は殺人よりも罪が重いと感じ、口をつぐんでいました。

ママの夫が疑われたのは、殺される直前に被害者が夫と電話していたと考えられていたからでした。これは被害者の「まだ、自由の身(ステイル・ア・フリーマン)でしょ?」という言葉から電話の相手が推測されたからでしたが、実はステイル・ア・フリーマンではなく、ステラ・フリードマンでした。このステラというのが犯人の名前で、電話を耳にした人物が聞き間違えていたために、ママの夫が電話相手のように思われていました。

感想

表題作の「ママは何でも知っている」が発表されたのは、昭和27年(1952年)ですので、だいぶ昔のように思えます。時代背景だけではなく、舞台がニューヨークであること、探偵が五十代の女性であること、会話文が多く場面が変わらないので単調なことなどなどの特徴が目立ちます。これらが気に入るかどうかで評価は分かれそうです。

事件のトリックや物語の結末はいずれも魅力的だと思います。真相につながる内容が物語の序盤にさらりと書かれていて、とてもフェアな感じがあります。ママの質問がこれまた謎めいていて、その意図が明らかになった時、同時に事件の真相も明らかになるので、結末の驚きはひとしおです。

ひどく個人的なことですが、昔の海外が舞台というのは好きです。ママも好きになれました。安楽椅子探偵の名作ということで手に取ったので、単調なのは気にならなかったです。そんなわけで、評価は高くなっています。

みんなの感想

「一つ一つのネタ自体は映えないモノだが、気がつけば感心させられ、登場人物の劇にすっかり引き込まれている」「安楽椅子探偵、安楽食事探偵」「嫁姑の微妙な空気があったり、とても楽しく飽きずに読める。」「ママに事件の概要を説明してから真相が解き明かされるまでの流れはもはや様式美」などの感想が書き込まれています。中には「ママにムカついて事件に集中できなかった」といった感想もありました。

まとめ

4.0
 「ママは何でも知っている」について、あらすじ、真相、感想などをご紹介しました。独自の魅力やテンポ、登場人物たちの家族関係などを通じて、読者に楽しさと興味深さを提供しているといえます。

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