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緋色の研究|ネタバレ徹底解説・あらすじ・感想【シャーロック・ホームズ】

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緋色の研究(A Study in Scarlet)』は1886年に執筆され、翌1887年に発表されたアーサー・コナン・ドイルの長編小説で、シャーロック・ホームズシリーズの記念すべき最初の作品です。ホームズとワトスンの運命的な出会いや最初の殺人事件が描かれています。この記事では、あらすじ、登場人物、小説の特徴、感想、ネタバレなどをまとめています。

項目 評価
【読みやすさ】
スラスラ読める!?
【万人受け】
誰が読んでも面白い!?
【キャラの魅力】
登場人物にひかれる!?
【テーマ】
社会問題などのテーマは?
【飽きさせない工夫】
一気読みできる!?
【ミステリーの面白さ】
トリックとか意外性は!?
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あらすじ

アフガニスタンでの戦争で負傷し、ロンドンで静養していた元軍医のジョン・ワトスンは、経済的な理由から同居人を探していた。そんなワトスンが紹介されたのは、科学的な研究に没頭し、特異な観察力を持つシャーロック・ホームズだった。初対面でワトスンの過去を見破るホームズに驚きつつ、ワトスンはホームズとベイカー街221Bで共同生活を始めることになる。

間もなく、スコットランド・ヤードのグレグスン刑事から殺人事件の連絡が入る。イーノック・ドレバーという裕福なアメリカ人男性の死体が空き家で発見されたという内容だった。遺体に外傷はなく、壁には血で「RACHE(ドイツ語で復讐の意)」の文字が書かれ、そして女性の結婚指輪が残されていた。

ホームズは緻密な現場検証と推理によって、被害者が毒殺されたこと、犯人の特徴、そして指輪が事件の鍵であることを突き止める。指輪の拾得記事を新聞に掲載し犯人をおびき寄せようとするが、現れた老婆に尾行をまかれてしまう。その後、被害者の秘書スタンガスンも刺殺される事件が発生。ホームズは鮮やかな手際で真犯人を逮捕する。

登場人物

  • シャーロック・ホームズ
    卓越した観察眼と分析力を持つ名探偵。自らを「探偵コンサルタント 」と称する。文学、哲学、天文学には全く無知であるが、犯罪学や化学、地質学など、推理に必要な知識は天才的なレベルで習得しており、知識に極端な偏りを持つ。自信家で皮肉屋な一面を持つ一方で、ワトスンに褒められると顔を赤らめるなど、人間味あふれる表情を見せることも。事件がないと退屈し、時には薬物を使用するなど、その奇抜な行動も魅力のひとつ
  • ジョン・ワトスン
    物語の語り手であり、ホームズの相棒。アフガニスタン帰りの元軍医
  • グレグスン
    スコットランド・ヤードの刑事。レストレイドとはライバル関係
  • レストレイド
    スコットランド・ヤードの刑事。グレグスン同様、ホームズには及ばない
  • イーノック・J・ドレバー
    一人目の被害者。空き家で死体が発見される
  • ジョゼフ・スタンガスン
    二人目の被害者。ドレバーの秘書
  • ジェファスン・ホープ
    辻馬車の馭者
  • ルーシー・フェリア
    ジェファスンが愛した女性。モルモン教徒の因習により悲劇に見舞われる
  • ジョン・フェリア
    ルーシーの養父。モルモン教徒の開拓団に命を救われた過去がある

小説の特徴

本作は2部構成になっています。第1部では事件の発生からホームズによる捜査と解決、第2部では事件に至るまでの犯人の壮大な過去が語られます。第1部と第2部で物語の視点や舞台が大きく転換しますが、最終的に全てが繋がる内容です。

ホームズの推理は、時に読者を置いてきぼりにするほどの超人的な観察眼と論理的飛躍を含みますが、その鮮やかさには爽快感があります。ホームズとワトスン、そして警察官たちの会話にはユーモアや皮肉が散りばめられ、軽妙なテンポで物語が展開します。第1部はスピーディーに進展し、第2部は犯人の動機を重厚に描き出すという緩急のついた作風です。

舞台は19世紀末の霧深いロンドンで、馬車が行き交う当時のイギリスの雰囲気が色濃く描かれています。ワトソンのアフガン帰りのエピソードなど、当時のイギリスが植民地支配を通じて世界と繋がっていたことが随所で感じられます。第2部は、広大なアメリカ西部の砂漠地帯が舞台となり、モルモン教徒の開拓団の生活や因習が描かれています。

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感想

第1部はサクサクと進み、犯人逮捕まであっという間に辿り着きます。すると、第2部で全く異なる舞台と時系列の物語が始まります。読み進めるうちにそれが犯人の壮大な復讐劇の背景であると分かる次第です。謎解きだけではなく、動機形成を人間ドラマとして深く書いているといえます。

シャーロック・ホームズという人物に対するイメージは、クールで完璧な英国紳士というものかもしれません。しかし、原作では意外にも人間味にあふれた描写があります。自分の推理を褒められて顔を赤らめたり、気分が乗らないと調査を渋ったりする姿は、親しみやすく、むしろ魅力的に映りそうです。それでいて、限られた捜査手法の中で、ホームズがわずかな手がかりから真実を導き出す観察眼と論理的思考には、探偵としての魅力を感じます。
ワトスンはホームズの奇行に呆れつつも、その才能を素直に認め、愛情を持って見守る姿が印象的です。ホームズとワトスンのキャラクターがシリーズのファンになるひとつの要因です。

古典作品ゆえに、当時の社会情勢や宗教観(特にモルモン教に関する描写)には、現代の視点から見ると偏見や誤解が含まれてい る部分もあります。しかし、色褪せない物語の面白さや、登場人物たちの生き生きとした描写は、100年以上も読み継がれる名作である所以だと思えます。

私が感じとったテーマは「復讐」です。犯人の過去に焦点を当てることで、取っ手つけたような動機ではなくなっています。また、「真実を追求する」という探偵小説の根源的なテーマも感じとれます。

高評価なポイント

  • 魅力的なキャラクター
    ホームズの偏屈ながらも人間味あふれる性格や、ワトスンとの絶妙なコンビネーションが魅力
  • 引き込まれるストーリー展開
    テンポの良い事件解決パートと、壮大な背景を持つ犯人の復讐劇が組み合わさった構成
  • 古典としての価値
    100年以上前の作品でありながら、現代の読者にも色褪せない面白さを提供しており、普遍性が高い
  • ホームズの推理力
    些細な手がかりから驚異的な論理的推理を展開するホームズの観察眼と分析力に爽快感を感じる

低評価なポイント

  • 物語構成への戸惑い
    第1部と第2部の間の唐突な場面転換や、第2部の長さが、混乱や退屈を生じさせがち
  • 推理小説としての不満
    ホームズの推理が超人的すぎて、読者には情報が十分に提供されていない。読者が犯人を推理する余地は少ない
  • 宗教的描写への批判
    当時のモルモン教に関する描写に偏見や誤解が含まれており、現代の視点から見ると不快感や理解しにくさを感じる
  • 古い表現や用語
    古い翻訳や当時の言い回しが読みにくく思える
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ネタバレ

真犯人は辻馬車の馭者であるジェファスン・ホープです。ジェファスンはアメリカ西部の砂漠でジョン・フェリアの養女ルーシーと愛し合っていました。しかし、モルモン教の指導者ブリガム・ヤングがルーシーに他の男との結婚を命じ、ジョンたちは脱走を試みることになります。その結果、ジョンは追っ手に殺され、ルーシーは奪い去られ、やがて病死してしまいます。ジェファスンは、ルーシーの指から結婚指輪を抜き取って復讐を誓い、20年後、ロンドンでイーノック・ドレバーとジョゼフ・スタンガスンを見つけ出して殺害し、復讐を果たしました。

ホームズは、現場に残された現場に残された足跡、葉巻の灰、鼻血の痕跡、壁の血文字、指輪などのわずかな手がかりから、犯人の特徴、犯行方法、そして最終的にホープの正体を突き止めています。なお、ホープはドレバーを毒薬の決闘でドレバーを毒殺しています。一方は毒入り、もう一方は無毒の丸薬を用意し、同時に飲むという決闘です。なお、スタンガスンに対しても同様に決闘を挑んでいますが、スタンガスンが襲いかかってきたためナイフで刺殺しています。

結末

ジェファスン・ホープは逮捕後、ホームズ、ワトスン、刑事たちに事件の全てを語ります。逮捕後、ホープは復讐を遂げたことで満足したかのように、その夜、持病である大動脈瘤が破裂して亡くなります。
事件解決後、新聞では警察の手柄として報じられます。これを見たワトスンは、ホームズの真の活躍を世に知らしめるため、彼の事件記録を執筆することを決意します。

次にオススメの推理小説

  • 『四つの署名』(長編)
  • 『バスカヴィル家の犬』(長編)
  • 『恐怖の谷』(長編)
  • 『シャーロック・ホームズの冒険』(短編集)
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