『蒼ざめた馬』のあらすじと真相、原作小説との違い、考察、感想などをまとめています。ドラマ版ミス・マープルシリーズの第17話(S5E1)です。神父が友人のマープルにリストを送った後、何者かに殺されてしまいます。
あらすじ
下宿でデービス夫人を看取ったゴーマン神父が帰宅途中に何者かに襲われ亡くなってしまう。神父は友人のミス・マープルに手紙を送っており、マープルがその手紙を受け取ったその日に新聞で神父殺害を知ることになる。神父の手紙には姓がリストアップされており、このことをマープルは警部に伝える。しかし警察は強盗殺人と断定しているようだった。
神父殺害に憤りを覚えたマープルは、独自に調査を始め、デービス夫人が息を引き取った下宿へと向かう。そこには、ゴーマン神父のリストと同じ内容のメモが残されており、そのメモ用紙は『蒼ざめた馬』という宿のものだった。さらに真相を探るため、マープルは“蒼ざめた馬”に宿泊する。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジュリア・マッケンジー Julia McKenzie |
老婦人の名探偵 神父の友人 |
ゴーマン神父 Father Gorman |
ニコラス・パーソンズ Nicholas Parsons |
被害者 マープルの友人 |
デービス夫人 Mrs. Davis |
エリザベス・ライダー Elizabeth Rider |
神父が看取った女性。下宿の住民 消費者調査会社の社員 |
ポール・オズボーン Paul Osbourne |
JJ・フィールド JJ Feild |
デービス夫人と同じ下宿に暮らす男性 マープルの捜査に協力 |
コピンズ夫人 Mrs. Coppins |
リンダ・バロン Lynda Baron |
下宿のオーナー |
サーザ・グレイ Thyrza Grey |
ポーリーン・コリンズ Pauline Collins |
“蒼ざめた馬”のオーナー |
シビル・スタンフォーディス Sybil Stamfordis |
スーザン・リンチ Susan Lynch |
“蒼ざめた馬”の従業員 |
ベラ Bella |
ジェニー・ギャロウェイ Jenny Galloway |
“蒼ざめた馬”の料理人 無愛想な女性 |
コッタム大尉 Captain Cottam |
トム・ウォード Tom Ward |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 自宅が火事になったため宿泊している |
カンガ・コッタム Kanga Cottam |
ホリー・ヴァランス Holly Valance |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 コッタム大尉の妻 |
リディア・ハースネット Lydia Harsnet |
サラ・アレクサンダー Sarah Alexander |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 コッタム夫妻の使用人 |
マーク・イースターブルック Mark Easterbrook |
ジョナサン・ケイク Jonathan Cake |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 ルジューン警部の旧友。民俗学者 |
ベナブレズ Mr. Venables |
ナイジェル・プレイナー Nigel Planer |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 車椅子の男性 |
ジンジャー・コリガン Ginger Corrigan |
リック・メイヨール Amy Manson |
“蒼ざめた馬”の宿泊客 赤毛の女性 |
ブラッドリー C. R. Bradley |
ビル・パターソン Bill Paterson |
元弁護士 |
ルジューン Inspector Lejeune |
ニール・ピアソン Neil Pearson |
警部 |
事件概要
デービス夫人が亡くなり、神父が殺害されます。夫人の死は自然死、神父に関しては物取りの犯行と断定されます。特に疑わしい点はないはずでしたが、二人は姓が書かれた同じリストを持っていました。そして、リストに書かれた人物のうち、特定された人物は亡くなっていることが判明します。
デービス夫人のメモは“蒼ざめた馬”という宿のメモ帳に書かれており、実際、夫人が宿泊していたことも明らかになります。
宿には、デービス夫人が亡くなった時に同じ下宿で暮らすポール・オズボーンによって目撃されたベナブレズという男性が宿泊しており、この男性が神父殺害の容疑者となります。しかし、ベナブレズは車椅子がなければ移動できず、足が不自由というのは確かなようでした。
目撃証言との食い違いはありますが、ベナブレズにはコッタム大尉という不仲な男性がおり、このコッタム大尉が宿で死んでしまいます。大尉も自然死と考えられますが、他殺であるならば、ベナブレズには動機があるといえます。
一方、蒼ざめた馬の宿泊客であるジンジャー・コリガンはリストに載っていた女性の友人で、コリガンは友人の死に不信感を抱いていました。友人の自宅に置いてあった名刺にはブラッドリーという人物の名前が記されており、この人物は悪い評判のある元弁護士でした。
ブラッドリーは賭けと称して報酬殺人を斡旋しているらしく、コリガンの友人が遺産目当てで殺害されたのは間違いないようでした。ただし、ブラッドリーは斡旋しているだけであって、殺人そのものには関与していません。
“蒼ざめた馬”にも怪しい点があり、宿のオーナーや従業員は何やら怪しい儀式をしているようでした。オーナーは媚薬と死について語っており、どこか胡散臭いです。
神父の殺人、大尉の死、遺産目当てで殺されたと思しき人物達のリスト、報酬殺人の影、宿で行われている儀式などなど、さまざまな出来事が起き混沌としますが、これらは一つの真相につながっています。
ネタバレ
ゴーマン神父やコッタム大尉を殺害した犯人はポール・オズボーンでした。マープルの捜査に協力的だったポールですが、実は報酬殺人の黒幕です。
報酬殺人は元弁護士のブラッドリー、架空の消費者調査会社、“蒼ざめた馬”を利用して行われていました。まず、ブラッドリーが依頼人と接触してターゲットを決め、調査会社の従業員が調査という口実でターゲットの暮らしぶりについて聞き出します。その後、依頼人は“蒼ざめた馬”の儀式に参加します。実際はポール・オズボーンによる殺人ですが、依頼人には黒魔術でターゲットが死んだようにみえます。
調査会社の従業員だったデービス夫人は、報酬殺人については何も知りませんでした。しかし、自分が調査した人物が次々に亡くなっていることに気付き、疑惑を抱くことになります。ところが、そのことを察知したオズボーンによって毒殺されてしまいます。
デービス夫人は神父に調査後に亡くなった人の姓を伝えていました。神父はリストをマープルに送りましたが、神父もまたオズボーンによって殺害されてしまいます。
オズボーンがベナブレズを目撃したというのは嘘で、犯人はオズボーン自身でした。オズボーンの狙いは、ベナブレズに罪をなすりつけることにありました。しかし、車椅子利用者であることに気付かなったため、妙な食い違いが生じます。なお、コッタム大尉殺害も、大尉と敵対関係にあったベナブレズに罪をなすりつけるために実行した殺人です。
オズボーンによる数々の毒殺が自然死と判断されたのは、タリウムを使ったためでした。白癬の治療に使われるタリウムは入手がしやすく、また、脱毛以外の目立った症状が生じない毒物でした。
その他、隠されていた真実をまとめます。
- コッタム大尉と家政婦のリディア・ハースネットは不倫関係にあった
- リディアは宿の従業員であるベラから媚薬を購入し、不倫相手のコッタム大尉に飲ませていた。この媚薬にオズボーンが毒を盛った
- 宿の従業員であるシビルは儀式に参加していたが、報酬殺人については何も知らなかった
結末
ベナブレズが実は歩ける、という芝居をうってポール・オズボーンを油断させ、マープルは真相を語り始めます。イースタブルックがおとりとなってコリガンの殺人を依頼したことで、オズボーンがコリガンの自宅に姿をみせており、これが決定的な証言となります。オズボーンはタリウムを化粧品に混入し、マープル殺害を試みたようですが、あっさり勘付かれ失敗。暴言を吐きながら連行されます。
原作とドラマの違い
原作小説はノン・シリーズに分類される作品ですので、ミス・マープルは登場しません。原作にはポアロシリーズなどに登場した推理作家のオリヴァ夫人が登場しますが、ドラマには一切登場しません。登場人物の省略や変更はありますが、内容に関しては原作もドラマも概ね同じです。
- 原作ではマーク・イースタブルックが主人公
- 原作はマークがカフェで目撃した喧嘩が発端となる。ドラマはこのシーンが省略され、デービス夫人の死が発端になっている
- コッタム夫妻や家政婦のリディアなどはドラマオリジナルのキャラクター。コッタム大尉の死や不倫などはドラマのみの内容
感想
魔女のお祭りがオカルトチックで面白かったです。“蒼ざめた馬”で降霊会が行われる理由になっていたようですが、あまり事件には関係がなかったです。
考察
タリウムを使うと殺人が発覚しないという前提で物語が進んでいました。お膳立ての部分でしたので、そこまで気にはならないと思いますが、実際のところ、タリウムは痕跡が残らない毒物ではないようです。2022年10月に女子大生の死亡事件が起きており、司法解剖の結果、タリウム中毒だったことが明らかになっています。また、現在、手に入りやすい毒物であるということもありません。
まとめ
ミス・マープル「蒼ざめた馬」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- ポール・オズボーン
Paul Osbourne
事件の黒幕。12歳のときに継父を毒殺したが、少年だったため、刑を免れた。その後、弁護士や宿のオーナーを利用し、報酬を受け取って殺人を繰り返していた。
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