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死人の鏡|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ40】

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死人の鏡』はポワロがオークション会場で知り合った大富豪に詐欺事件の調査を依頼されるエピソードです。この記事では、あらすじと登場人物、ネタバレ、感想考察などをまとめています。

Dead Man’s Mirror
項目 内容
シーズン 5
エピソード 7
長さ 50分
放送日(英国) 1993年2月28日(日)
放送日(日本) 1994年5月28日(土)
出演者 キャスト一覧
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あらすじ

 オークションで鏡を落札しようとしていたポワロだったが、大富豪のジャベイス・シェブニックスに落札されてしまう。オークションの終了後、シェブニックスはポワロに詐欺事件の調査を依頼する。横柄な態度に戸惑うポワロだったが、依頼を引き受け、シェブニックスの屋敷を訪れる。その夜、晩餐の前に銃声が響き渡る。シェブニックスの部屋を調べると、そこには彼の死体があった。

 ジャップ警部は死んだシェブニックスが左手に拳銃を握っていたこと、密室だったこと、遺書が残されていることなどから、自殺と断定する。しかしポワロは窓の鍵が外からでも施錠できることなどを根拠に、他殺を疑う。その後の捜査により被害者は右利きだったことが判明し、自殺と見立てていたジャップ警部も他殺だと考え始めます。

事件概要

死んだジャベイス・シェブニックスは大金持ちでした。その遺産は、妻のバンダ、養女のルース、甥のヒューゴー・トレントに遺贈させるはずでしたが、遺言は書きかえられようとしていました。その内容は養女ルースと甥ヒューゴーが結婚しない場合、遺産は全て妻バンダのものになるというものでした。しかしながら、遺言が書きかえられる前にジャベイスは死亡しています。もしも遺言が書きかえられていたら、養女と甥は、結婚しない限り遺産を受け取れなくなってしまいます。

現場の外には養女ルースの足跡が残っており、養女が犯行時刻に現場の外にいたのは間違いないようです。さらに、ルースは建築家のジョン・レイクと既に結婚していたことが発覚します。これらの証拠からポワロは、遺言が書きかえられ、結婚の事実が公になると、養父の遺産を相続できなくなるため、ルースが犯行に及んだ考え、ルースを逮捕します。

登場人物

  • エルキュール・ポワロ
    ベルギー出身の私立探偵
  • アーサー・ヘイスティングス
    ポワロの友人であり、探偵事務所のパートナー。陸軍大尉(ドラマのみ登場)
  • ジェームス・ジャップ警部
    スコットランド・ヤードの主任警部(ドラマのみ登場)
  • ジャベイス・シェブニックス
    事件の被害者。美術品コレクターで、家柄を重んじる傲慢な人物
  • バンダ・シェブニックス
    ジャベイスの妻。聖霊サフラを魂の案内人と仰ぐ、神秘的な女性
  • ルース・シェブニックス
    シェブニックス夫妻の養女
  • ヒューゴー・トレント
    ジャベイスの甥。スーザン・カードウェルの婚約者
  • スーザン・カードウェル
    ヒューゴー・トレントの婚約者
  • ジョン・レイク
    建築家。ジャベイスから詐欺の疑いをかけられている(ドラマではルースと結婚している設定)
  • リンガード
    ジャベイスの秘書
  • スネル
    シェブニックス家の執事
  • その他(原作のみ登場)
    ベリー大佐、バローズ(秘書)、フォーブス(弁護士)、リドル(ポワロと調査する人物)
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ネタバレ

ルース・シェブニックスは犯人ではありません。ジャベイス・シェブニックス殺害の真犯人はリンガードです。リンガードは被害者の研究助手を務めている人物でしたが、その正体はルースの母親でした。ルースの母親はタイプライターということになっていましたが、本当はリンガードでした。なお、父親は被害者の弟で名前はアンソニー・シェブニックスです。リンガードの動機は実の娘であるルースに遺産を相続させるためであり、遺言が書き換えられる前に、リンガードは犯行に及びました。

被害者が死亡したのは、夜八時十分頃だったと考えられていましたが、実際はこの時刻よりも前に、被害者は殺されています。シェブニックスの屋敷には夕食前の八時八分と八時十五分に銅鑼を鳴らすという決まりがあり、事件が発生した夜も、八時八分に銅鑼が鳴りました。しかしながら、この日は八時頃にも銅鑼が鳴っており、ヘイスティングス大尉などがその音を耳にしています。ポワロは銅鑼の音を聞いていないようですが、実はこのとき、被害者は犯人よって殺されました。銅鑼が鳴ったのは、被害者を貫いた弾が鏡を割って銅鑼に命中したためです。命中した弾はカフスとしてリンガードによって回収されており、犯行には消音器付きの拳銃が使われました。八時十分頃の銃声は犯人のリンガードがあけたシャンパンの音です。コルクが抜かれたシャンパンが置かれていたのはそのためです。

なお、被害者が話していた詐欺事件というのは、ロンドンの開発のために、ノースゲート開発に出資したが全く進捗がないという話でした。建築家のジョン・レイクはノースゲート開発の資金調達に手を貸していましたが、金を持ち逃げされてしまったため、事務所を燃やしています。また、サフラなる謎の存在を信じる被害者の妻・バンダが、サフラに導かれて自殺しようとしますが、これは犯人がバンダに罪を着せて殺害しようとしていました。

トリック

 自殺にみせかけるために拳銃を手に握らせるというトリックでした。このトリックはポワロシリーズの他の作品にも登場します。利き手が違っていたということが、トリックを見破るヒントになっています。

 現場には割れた鏡があり、弾が被害者の頭を貫通し、鏡に命中したと考えられます。弾丸は見つかっていないわけですが、鏡に命中した弾がさらに銅鑼にも当たったというのは思い付かないかもしれません。割れた鏡、しかも、オークションで因縁付きの鏡ということもあり、どうしても鏡に注目してしまいます。

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原作小説とドラマの違い

アガサ・クリスティの短編小説『死人の鏡』(原題:Dead Man’s Mirror)は、クリスティ自身の短編「二度目のゴング」を発展させたものとされています。ドラマとの違いは下記の通りです。

  • 派手なアクションと怪奇風味の追加
    原作では淡々と謎解きが進みます。ドラマでは火事や爆発といった派手なアクション、そして怪奇小説のような雰囲気が大幅に加えられています
  • 人物像の省略と改変
    原作では詳細に描かれる人物像やエピソードが、ドラマでは大幅に削られています。例えば、ジャーヴァスの極端な変人ぶりがマイルドに描かれたり、ルースが結婚していることが冒頭で明かされたり、原作に登場する秘書や友人が登場しなかったりします
  • ポワロの扱い
    ドラマでは、ポワロが競売で鏡を巡ってジャベイスに意地悪されたり、報酬として支払われるはずだった鏡が割れたりするなど、原作にはない不遇な扱いを受ける場面が追加されています
  • 結末の変更
    原作ではポワロがルースを詰問することでリンガードが自白しますが、ドラマではリンガードが降霊術を利用してヴァンダを手にかけようとするなど、より劇的な展開が描かれます
  • 登場人物の増減
    原作に登場するベリー、フォーブズ、バローズ、リドルといった人物はドラマ では省略され、代わりにレギュラーキャラクターであるヘイスティングスとジャップ警部が活躍します

感想と考察

どうみても肉体派ではないポワロに、火災と大爆発が襲い掛かります。これまで、こういった派手なシーンはなかったので、だいぶ驚きました。クラシックの演奏にエレキギターが入ってきたみたいな感じでしたが、叙述トリックのような仕掛けであったようにも思います(ポワロという作品のイメージの中で派手なシーンを登場させるという、固定観念的なものを使ったトリックという意味です)。

 “割れた鏡”はミスディレクショントリックといえそうです。弾丸が見つからないというのは、捜査上の不備になるような気もしますが、警部はあまり気にしていない様子でした。弾が鏡に当たって軌道が変化するというのは、跳弾と呼ばれるようですが、個人的にはビリヤードをイメージしています。

 犯人にとって、逸れた弾丸が銅鑼に当たって音が鳴ってしまったのは思い掛けないミスだったと思います。わざわざ消音器を用意したのに、結局、予期せぬ音を立ててしまい、その結果、シャンパンで犯行時刻をずらすというトリックは失敗に終わりました。

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