Youtube ミステリーチャンネル【りさま屋】
国内ドラマ

TRICK シーズン1【あらすじ・ネタバレ・考察・感想】

この記事は約22分で読めます。
記事内に広告が表示されます

 2000年に放送されたドラマ「TRICK(トリック)・シーズン1」全エピソードのあらすじ、ネタバレ、感想などをまとめています。

キャスト
役名 キャスト 役どころ
山田奈緒子 仲間由紀恵 マジシャン
上田次郎 阿部寛 科技大の助教授
矢部謙三 生瀬勝久 公安の警部補
石原達也 前原一輝 矢部の部下
山田里見 野際陽子 奈緒子の母親
スポンサーリンク

母之泉

 『母之泉』はトリックシリーズの最初のエピソードで、1話2話3話の三部構成となっています。1話は主人公である山田と上田の出会いが描かれ、上田の依頼というかたちで、山田は母之泉の教祖・霧島澄子(きりしま・すみこ)と対決することになります。

第1話:透視

 見世物小屋の仕事をトカゲに奪われ、もれなくクビになった山田奈緒子は日本科学技術大学の助教授・上田次郎を訪ねる。超能力者のいんちきトリックを見破ることができなかったら賞金を出すと豪語していた上田だったが、自称天才マジシャン山田の手品にまんまと引っ掛かってみせる。

 山田の能力を見込んだ上田は、大学事務長の娘が傾倒している新興宗教「母之泉」に、山田を半ば強引に連れていく。母之泉の教祖はビッグマザー・おっかぁーさまっ!と呼ばれ、宙に浮く姿が目撃されていた。そして、母之泉から逃げ出した信者は謎の死を遂げているのだった…。

ネタバレ

まず、冒頭のナレーションで語られるX線がみえる男のトリックについてです。この男は箱に仕舞われたメッセージを透視して読むことができると話し、実際にそれをやってみせました。ところが、実はその箱には隙間があり、透視などしなくても、そこから除けば中身を見ることができました。これは、騙された人物達が難しく考え過ぎたため、隙間というひどく単純なトリックには気付かなったと解釈できます。

山田は上田の研究室で封筒を使ったコイン消失の手品を披露しています。
このトリックは封筒にあり、実は封筒には予め穴が開いていました。山田は封筒にコインを入れ、それを予め開けられた穴から巧みに取り出していました。封筒を切ることで、穴が開いていたという痕跡を消し、トリックを隠蔽しています。封筒はデスクの上にたまたま置いてあったと思われていましたが、実は、山田が事前に用意したもので、山田は上田がデスクの上を漁っている最中にそっと封筒を置き、トリックを仕掛けていました。

ビッグマザーによる封筒の透視は、一見すると、封筒を開けずに信者の書いた手紙を読んでいたようにみえます。しかし、山田はコールド・リーディングとワンアヘッド・システムを用いたトリックだと主張します。ビッグマザーはまず、最初の信者の服装(夏の暑い日なのに長袖を着ている)から、その信者の悩みを推測し、言い当てました。このとき、ビッグマザーは封筒を開けて中身を確認していますが、その封筒の中には次の信者が書いた手紙が入っていました。つまり、ビッグマザーは事前に手紙の内容を読み、その読んだ内容を信者に話しているだけでした。
なお、最初の信者にみせた推理がコールド・リーディングで、それ以降の、封筒の開封をずらした手法はワンアヘッド・システムと呼ばれているようです。ワンアヘッドを仕掛ける場合、必ずしも最初の相手にコールド・リーディングを使う必要はありません。コールド・リーディングは失敗する可能性もあるので、さくらなどを利用した方が確実です。

第2話:壁抜け

 ビッグマザーの透視を見抜いたはずの山田奈緒子だが、翌日、ワンアヘッドとは思えないビッグマザーの透視を目の当たりにする。しかし、その透視がアルコールを使ったインチキであることに気付き、これを根拠に大学事務長の娘・大森美和子を母之泉から連れ出そうとする。

 脱走を拒むかたくなな美和子を山田と上田が強引に連れ去るが、側近に追われ、猟師の家に逃げ込む。その猟師が三人を匿ってくれていたのだが、その猟師の家で美和子が宙に浮くビッグマザーを目撃し、翌朝、死体となって発見される。

ネタバレ

美和子の死は自殺と断定されます。美和子は布団で眠っており、布団の下から薬が、そして美和子のポケットからは遺書がみつかります。美和子と同じ部屋に山田がいましたが、山田は眠っていました。ふすまを隔てた隣の部屋に上田がおり、上田はずっと起きていました。しかし、不審人物は目撃していないようです。猟師の青木正吾は家の外で見張りをしており、外から誰かが侵入するのは難しいと考えられます。なお、美和子の死の真相は第2話では明らかにされません。

第2話で登場したビッグマザーの透視はアルコールで封筒を湿らせ、中身を透けさせるというトリックが使われています。アルコールは揮発性が高いため、すぐに乾き、痕跡が残りません。ビッグマザーはマジシャンのテクニックを駆使することで手に持ったアルコールの袋を隠し、密かに封筒を湿らせていました。

第3話:母の死

 猟師の家にビッグマザーの写真が飾られていたことから、山田は猟師の青木が母之泉の関係者であることを疑う。そして、美和子は自殺ではなく、母之泉の信者に殺されたと主張する。

 殺人を疑われた信者たちは、話をつけるため、山田と上田を母之泉に誘う。応じた二人は、再び、ビッグマザーと対決することになり、ビッグマザーは山田が思い浮かべた2ケタの数字を当てるという霊能力をみせつける。トリックを見破ることができなかった山田&上田は施設からの脱走を図るが、捕まってしまう。その後、山田の縄抜けで逃走に成功した二人は、ビッグマザーのトリックを見破るため、またしても施設へと戻る。が、上田だけ捕まってしまう。ほぼ囚われの身となった山田は宙に浮く上田を銃で撃つよう命じられる。

ネタバレ

美和子は他殺でした。事件のあった夜、上田は不審人物こそ目撃していませんでしたが、部屋から出てくる美和子は目撃していました。美和子は水を飲むために一度部屋を出ており、この水に実は毒物が仕込まれていました。布団からみつかった毒の容器や遺書は死体発見の混乱に乗じて猟師の青木が仕込んでいました。山田も美和子もぐっすり眠っていたのは、キジ汁に睡眠薬がいれていたためです。なお、毒を水道に混入したのは側近の津村で、呪いとして人が殺されるのであれば、死ぬのは上田でも山田でも問題ありませんでした。

ビッグマザーの思い浮かべた数字を当てる霊能力は、周囲にさりげなく数字を散りばめておくことで成立していました。ビッグマザーは監視カメラなどがないことを確認させるため、山田に周囲の確認を促しています。このとき、山田にはその場にない数字を選ぶという心理が働き、この結果、無意識に数字を絞り込んでいました。
山田はトリックの確実性が低いこと指摘しています。ビッグマザーは本当に山田の心を読んでいたのかもしれません。

山田の縄抜けは、手の甲を上にして縛られるというトリックでした。手をひねって、手の甲を外向きにすれば、手首の部分に隙間ができます。

上田の空中浮遊はクレーンのような装置で支えられていました。猟師の家などで目撃されたビッグマザーの浮遊も同じ手口だと考えられます。実際、山田がみていた上田の姿はガラスに映った姿であり、銃で撃ってもガラスが割れるだけでした。
上田は自分が嘘をつくと鼻が動くと思い、懸命に鼻を動かして山田に「撃て」と伝えていましたが、山田は上田の腕時計が反対であることに気付き発砲しています。結局、上田の嘘をつくときの癖は明らかにされません。

母之泉から逃げた信者が部屋で照明の下敷きになって死亡した事件も登場しますが、真相は語られません。
矢部が「みんなで足踏みして揺らした」という推理を披露しておりますが、上田に素人以下の考えだと酷評されています。もしかすると、本当に、信者全員で揺らしたというのが正解かもしれません。

スポンサーリンク

まるごと消えた村

 宝女子(ほうめご)村の村人が全員失踪します。村人を消したのは、テレビでインチキを暴かれ失脚したミラクル三井でした。公安の依頼を受けた上田は山田を連れて村へと向かい、ミラクル三井と対決します。

第4話:村人が全員消えた

 宝女子村に駐在することになった警察官・前田が村人の失踪を報告する。警察が調査隊を派遣し確認したところ、ほんとうに全村人が消え去っていた。

 公安課長は奇妙な事件の捜査を上田に依頼する。上田は居酒屋でバイト中だった山田、矢部、そして、第一発見者ともいえる警官・前田を連れ、宝女子村へと向かう。確かに、謎の少女を除いて村人は消えており、食べかけのカップ麺などはそのまま放置されていた。

 村を調べていると山田達の目の前にミラクル三井が現れる。ミラクル三井は前田の過去ごと消すといい、本当に前田の姿を消してみせる。さらに、上田の頭も消し去ってみせるのだった。その後、山田がみつけた上田らしき人物には、なんと首がなかった。

ネタバレ

最初、矢部が山田に披露したテレパシーの手品は電話を使ったもので、予め通話状態にしておいた携帯電話でサクラと会話させるというトリックでした。ところが、手品を仕掛けられた山田が携帯の通話を一度切ったので、矢部の手品はうまくいきませんでした。なお、矢部は引いたカード当てる手品も披露していますが、これは、トランプのカードを一つに揃えていました。

ミラクル三井がテレビで披露したトラック消失は、もちろん本当に消したのではなく、トラックがある撮影場所とトラックがない撮影場所を二つ用意しているだけでした。ミラクル三井やカメラが移動したようにはみえませんでしたが、実は、台車のようなものに乗っていました。この台車が静かに動けば、撮影場所を変えることができます。

上田の首が消えたのもマジックで、上田が被せられた箱には鏡が仕込まれています。見ている人にとって斜めになるように(箱の対角線になるように)鏡は設置されていたため、鏡には箱の内部が写っていました。箱の鏡をみてしまうと、上田の首が消えたように見えます。実際は、鏡の後ろに上田の顔があります。

村人や警官消失の真相は第4話では明らかにされません。

第5話:村が消えた…解決編

 首なし死体に驚いた山田と矢部は宝女子村から逃げ出そうとする。しかし、宝女子村へと通ずる橋が消失しており、脱出は不可能だった…。

 二人は村に引き返して、本当に上田の死体なのかを調べるが、よくわからない。上田が何をしていたのかを調べようとすると、再びミラクル三井が姿を現す。ミラクル三井にマジックで対抗する山田!!…だったが、これといった効果はなく、逆に、ミラクルに石像を消される。山田がミラクルに布をかけられて視界を奪われたと思ったら、目の前にいたはずのミラクルも、そして、矢部も姿を消していた。

 一人取り残された山田は首なし死体が見つかった民家へと戻り、上田と再会(なんだ、生きてたのか)。上田は納屋らしきところに閉じ込められていたという。上田を納屋から解放したのは女性で、その女性は二人に何かを伝えようとするが、突然驚きの表情を浮かべ、どこかへ逃げてしまったらしい。

ネタバレ

山田が披露したトランプのマジックは、ミラクル三井の選んだカードが消えるというものでした。これは、カードが消えたのではなく、別のカードに貼りついていたため、消えたように見えていました。
なお、ミラクルのポケットからカードがでてきたトリックは明かされていません。おそらく、山田が予め仕込んでいたのだと思います。ミラクルがトランプを選んだ時、山田はすべてのトランプを持っていたので、ミラクルの選んだカードを操ることができたはずです。

ミラクル三井の石像消失は上田の首と同様に、鏡を使っていました。山田と矢部がみていたのは鏡に映った石像であり、ミラクルがマントで視界を遮っている時に、その鏡が取り除かれました。鏡を移動したのは宝女子村の村人達です。

消えたと思われていた村人達は誰も消失しておらず、実は、山田達から身を隠し、密かに監視していました。謎の少女と上田を助け出した女性も村人です。

村人達が消失を演じていた理由は生贄の風習を隠すためでした。宝女子村では25年に一度、災いを避けるために、少女の生贄を捧げる習わしがありました。この生贄が謎の少女で、上田を助けた女性は生贄の女の子の母親でした。少女は儀式で毒ガスが充満する洞窟に閉じ込められましたが、洞窟には抜け穴があり、そこから逃げ出していました。

少女が洞窟に閉じ込められた時、宝女子村に赴任した前田がその儀式を目撃しました。恐ろしい光景を目の当たりにした前田は、すぐに他の警官に知らせますが、通話の最中に殺されてしまいます。上田だと思われていた首なし死体は実は警官の前田で、前田はつまり、儀式を見てしまったために殺されました。警察署に現れ、山田達と共に行動していた前田は偽者で、村人の一人でした。偽者の前田は怯えた演技をしながら警察署に入り込み、前田に関する情報を消し去りました。ミラクル三井が前田を消し去ったようにみえたのも、前田がミラクルの仲間だったというトリックでした。

ミラクル三井は宝女子村の出身でした。本名は三井作造(さくぞー)で、最後に高所から飛び降りて死亡します。村人達はミラクルを利用し、超能力で消えたようにみせようとしていました。本当に消えたということを証明するという点において、村人達とっては、偉い先生である上田の登場は都合のよいことでした。

スポンサーリンク

パントマイムで人を殺す女

 山田と上田は霊能力で人を殺してみせるという女性を監視することになります。女性はいわば監禁状態にあり、彼女には完璧なアリバイが成立していましたが、ひとり、ふたりと次々に人を殺していきます。

第6話:瞬間移動殺人の秘密

 矢部の依頼で黒坂美幸を上田の秘密の研究室で監視することになった上田と山田。黒坂は霊能力で人を殺してみせるという。山田と上田は、黒坂の人を絞め殺すパントマイムをみせられるが、彼女の「梅木隆一を殺した」という言葉には半信半疑、というよりはむしろ失笑気味であった。しかし、黒坂の指示通り、坂の下を探してみると、そこには梅木の死体があった。さらに黒坂はパントマイムで竹下文雄という男を刺し殺してみせる。

ネタバレ

黒坂は、単に梅木の死体がそこにあることを予言したのではなく、犯人でなければ知り得ないことを証言していました。死体の場所はもちろんですが、被害者の名前、凶器の特徴などがこれに該当します。さらに死体は黒坂の毛髪を握っていたため、物証もあるといえます。しかしながら黒坂には、山田・上田と一緒にいたという完璧なアリバイが成立しています。これに対し山田はゴミ処理場へ向かうトラックを利用したアリバイトリックだと指摘します。山田の推理は、黒坂が偶然監禁された研究室(大学)に被害者を呼び出し、偶然にも研究室を外した二人の隙をついて屋外へ出て梅木の首を絞め、偶然停車していたトラックの屋根に死体を落として坂まで運ばせ、さらに、そのトラックがゴミ処理場へ向かう坂のカーブで速度を出したため、偶然、トラックの屋根から死体が滑り落ちたというものでした。この偶然が幾重にも重なったという都合のよい推理は、真相ではありませんでした。

なお、梅木そして坂下殺害の真相はこのエピソードでは明らかになりません。冒頭の交通事故らしき映像も謎のままです。

第7話:遠隔殺人意外なトリック

 共犯という単純なトリックに気付いた山田は、最初の絞殺事件も二番目の刺殺事件も黒坂の共犯者が犯行に及んだと推理する。しかし、二つ目の事件に関しては犯行に及ぶ黒坂が目撃されていた。これに対して上田は黒坂が双子である、つまり双子トリックであると予想し、黒坂に問い質す。事実、黒坂は双子で彼女には瓜二つの妹がいた。その黒坂姉妹が、今度は、二人とも監視された状態で殺人を犯すという。その相手は松井一彦という男性で、この男もまた、黒坂のパントマイムで殺害される。

ネタバレ

最初の梅木殺害は共犯者の洋子が実行犯でした。洋子は黒坂美幸の双子の妹で、洋子が梅木を坂に誘いそこで首を絞めました。凶器のベルトは示し合わせることができ、毛髪も監禁されている姉・美幸のものを事前に準備できます。

二つ目の竹下殺害も洋子が実行犯です。この事件には、老婆の目撃者がいましたが、双子だったため、黒坂美幸が犯行に及んだようにみえていました。美幸のパフォーマンスで噴き出した被害者の血は予め準備されたもので、美幸は手に血液が入った袋を隠しもっていました。被害者の血は病院から盗み出しており、それは人間ドックで採血された血だったようです。

最後の松井殺害は、共犯者である洋子も監視されていました。これまでと同じように美幸がパントマイムを披露すると、被害者から矢部に電話がかかってきます。美幸は山田に挑発され、一度、松井殺害のパントマイムを披露していました。これによって被害者の名前を知った警察は松井と連絡を取り、松井はもしものことがあったら矢部に電話するよう指示を受けていました。このような経緯でかかってきた電話からは、被害者の助けを乞うような声と銃声が響き、パントマイムの最中に松井が殺害されたようにみえていました。しかし、これは録音された音声であり、松井は美幸のパントマイムよりも前に殺されていました。なお、電話はパソコンを使って自動でかけられています。黒坂美幸は、姉妹が再び研究室で監視されることになったのは、偶然、上田が黒坂に連絡をとったからだと話し、上田の行動が予想できない限り、予め松井を殺しておくことはできないと主張します。これに対して上田は、上田がテレビ番組の双子特集をみることを知っていれば行動を予測できたと反論します。黒坂は、電話での会話を盗み聞きし、上田が双子特集を視聴することを知っていました。

黒坂姉妹の正体は6話の冒頭で死亡した人物の娘でした。二人の父親は事故にみせかけて殺されました。その犯人が今回の事件の被害者達でした。つまり、黒坂姉妹の動機は父の死に対する復讐でした。最後、妹の洋子がすべて自分一人でやったというような内容を証言し、姉は霊能力で人を殺せると信じていただけだと主張します。美幸は妹のそんな証言を全面的に肯定し、妹に全ての罪を着せます。その直後、妹は吐血して死亡します。

実際、最初と二つ目の殺人は妹の洋子が犯人で、最後の殺人はおそらく姉の美幸が実行犯だと思われます。しかし、洋子が警察官の前ですべての犯行を認めるような内容を話し死亡したため、三人を殺害したのは洋子ということになりそうです。美幸が「霊能力では人を殺せないことを証言して下さい」と話したのは、自分は実行犯である洋子とは同じ罪に問われないということを遠まわしに言っていたようです。一緒に殺したのなら共犯(共同正犯)ですが、美幸はパントマイムをしていただけです。実行はしていなくても、計画を立案していたりすれば共犯(従犯や共謀共同正犯)となりますが、霊能力を信じていただけで妹が勝手にやったという主張が通るのであれば、美幸は罪に問われそうにありません。

千里眼の男

 一話完結のエピソードです。千里眼を持つという男と山田&上田が対決します。

第8話:千里眼を持つ男…

 温泉旅行獲得のため、山田はびっくり人間コンテストに参加する。コンテストの審査員は上田で、程度の低い参加者と観客をみた山田は勝利を確信するが、そこに千里眼を持つ男・桂木弘章が現れる。桂木は観客が画用紙に書いた数字を千里眼で当ててみせ、コンテストを賑わせるのだった。その後、山田と上田は千里眼の男が高額な商品を市民に売りつけている姿を目撃する。桂木に騙されたと訴える老爺に調査を依頼された二人は桂木の千里眼トリックを見破ろうとする。ところが、山田は桂木に部屋の間取りを正確に言い当てられ、さらに、万全の態勢で臨んだはずの上田の部屋の間取りまで千里眼で見通されてしまう。

ネタバレ

コンテストでの千里眼トリックは司会者・大木凡人がぐるでした。司会者は観客の書いた数字を確認したあと、隠語を使って千里眼の男・桂木に数字を伝えていました。隠語は「どうぞ」が3を意味するなどのようにして、予め決められていたようです。

依頼人のお爺さんは桂木に部屋の間取りを言い当てられたと話しており、これが原因で高い商品を購入してしまいました。山田は、部屋の間取りを当てたのはただのコールド・リーディングだと推測します。これは誰にでも当てはまるような抽象的な質問をして相手に事実を話させるという方法といえます。事実、桂木は「あなたのお母さんは死んでいませんね」というわかりにくい質問をしています(死んでいない、つまり生きているとも考えられるし、死んでしまっていなくなったとも考えられます)。

山田の部屋の間取りを言い当てたのは、宅配便の男が事前に部屋の様子を覗いていたからです。最初、山田は幽霊に変装した桂木、もしくは桂木の手下が部屋を調べたと思っていましたが、火の玉や幽霊騒動を起こしたのは大家でした。

山田は間取りの透視が単なるホット・リーディング(事前に調査しておく方法)であり、宅配便の男が桂木の仲間であると予想します。そして山田は桂木のインチキを暴くため、上田の部屋を透視するように仕向けます。すると上田の部屋に宅配便が訪れ、二人はその男を拘束し桂木との勝負に臨みます。ところが、宅配便を捕まえたにも関わらず、桂木は上田の部屋の間取りを言い当ててみせます。実は、上田の部屋にやってきた宅配便の男性は本物で、桂木とは全く関係がありませんでした。

桂木のインチキを明るみに出すことができなかった山田と上田ですが、上田が桂木の犯した一つのミスに気付きます。それは、上田の部屋の机に箸が置いてあるという部分でした。机の上にあったのは箸ではなく橋だったので、これは千里眼で部屋を見たわけではないことを示唆していました。

山田と上田は感服したふりをして再び桂木に千里眼を披露するよう願い出ます。桂木がみせたのは、山田もしくは上田が描いた絵を当てるというもので、パフォーマンスの最後に山田は橋の絵を描きました。これに対して桂木は箸を描いてみせ、千里眼は大失敗に終わります。上田の部屋の間取りは桂木の女性秘書が、向かいマンションから窓越しに覗いて調べていました。橋と箸を間違えたパフォーマンスも秘書がマイクで桂木に絵柄を伝えていました。

桂木が箸と橋を聞き間違えたのは、秘書のイントネーションにありました。秘書は関西の発音でしたが、桂木はそうではなかったようです。

黒門島

 第1シーズン最後のエピソードです。以前から度々登場していた山田奈緒子の父親・山田剛三はマジシャンで、霊能力者や超能力者と称する輩のインチキを見破っていました。そんな剛三が脱出マジックに失敗し死亡します。死に際、剛三は駆け付けた妻・山田里見に「霊能力者はいる」と言って絶命。幼い奈緒子もこの様子を見ていました。死んだはずの父ですが、何の前触れもなく、突然、奈緒子の前に姿を現します。

第9話:父を殺した真犯人

 上田が用意した媚薬入りジュースを華麗に回避した山田は、帰宅後、死んだはずの父親から電話がかかってくるという奇妙な体験をする。翌日、山田は大家から手紙を受け取る。その手紙には、爆発事件を予言するような内容が書かれていた。予言のトリックを見破った山田は差出人である予知能力ブラザーズ(黒津次男、黒津三男)の下へ向かう。次男と三男は黒門島の出身である山田の母・里見に秘密があることや父・剛三の死の真相などを仄めかす。その場を立ち去る山田だったが、またしても父親から電話がかかてきて、今度は、電話越しに山田が引いたトランプを当ててみせるのだった。

ネタバレ

手紙の予言は消印によって手紙が書かれた日が前日であるかのようにみえていました。実際は、前日の消印が押された封筒が用意されていただけで、手紙の内容は当日(爆発事故の報道のあと)に書かれたものでした。予知能力ブラザーズは、まず、自分宛に封筒を出し、その封筒の宛名を消して山田宛に書きかえることで、前日の消印付の封筒を準備しています。なお、山田宛に変更した封筒は自分で山田のアパートに届けています。

山田が選んだトランプを電話越しに当てたことについて、山田は予知能力ブラザーズが仕込んだマジックだと考えます。予知能力ブラザーズは、予め、山田が持ち歩いているトランプに細工をしていました。それは三男が山田の背面に近づいたときで、三男はこっそり山田のカバンに手を入れトランプのカードに折り目をつけていました。1枚のカードに折り目が付けられたことで、そのカードが選ばれやすくなり、父の声に驚いていた山田は自然にそのカードを選択していました。

山田が目撃した父親も、父のお面をつけた予知能力ブラザーズの仕業であると考えられます。本物のようにみえたのは、街灯が消され、さらに蚊帳で視界が悪い中、ろうそくの火が揺れてお面に表情がついたようにみえただけのようです。

水中の脱出マジックで死亡した山田剛三は警察では事故として処理されています。しかし、奈緒子が実家の資料などを調べた結果、脱出用の鍵が誰かに盗まれたために、剛三は死亡したのではないかという疑問が浮かび上がります。その鍵を盗んだ犯人というのは、幼い頃の山田奈緒子だったようです。奈緒子の母である里見は黒門島の巫女で、超能力があると信じられていました。里見の娘である奈緒子も超能力者として認識され、つまり、剛三を殺した超能力者とは山田奈緒子のことであり、奈緒子こそが剛三のいう本物の超能力者…だったようです。

里見は黒門島で決められた男性と結婚する定めにありました。しかし、剛三に恋をした里見は駆け落ちし、島から逃げます。その後、島では、崖が崩れるなどの不吉なことが立て続けに起こり、さらには、島そのものが消えてなくなりそうな状況にまで陥ります。黒門島で暮らす予知能力ブラザーズが奈緒子の前に現れたのは、巫女としての力を見越して、奈緒子を黒門島に呼び寄せるためでした。自分が父親を殺したという結論に辿り着いた奈緒子は、ブラザーズの要請に応じ、黒門島へと向かいます。

第10話:真犯人はお前だ!!

 シニカミを恐れる黒津兄弟とともに黒門島を訪れた山田は、島一番の根を持つという黒津元男とまぐわうことになる。すべてを受け入れていた山田だったが、酒に入れられた媚薬に気付き、まぐわいから逃亡する。絶壁まで逃げた山田は、そこで、上田と遭遇する。YOUを助けに来たらしい上田は、山田を洞窟へと連れていき、ひとり島脱出のための舟を探しに向かう。ところが黒津兄弟にみつかり、そして向かった先には、里見の姿があった。里見の初歩的なトリックに騙された上田は山田のもとへと戻るのだった。一方、洞窟で待っていた山田は元男の計らいにより、苦労せずして舟を手に入れていた。元男の舟で島を脱出する二人だったが、引き返してみると、海岸には元男の死体が横たわっていた。

ネタバレ

里見が上田にみせた棒が曲がる超能力は、もともと曲がっている棒をまっすぐになるようにみせた後、棒を回転させただけでした。スプーン曲げについて、上田の手にしたスプーンが曲がったのではなく、上田に選ばれなかったスプーンが曲がっていました。この曲がったスプーンは、上田がみていない隙に、こっそり入れ替えられていました。

黒津元男殺害の嫌疑が山田と上田にかかりますが、殺した犯人は黒津三男と他の村人達です。その証拠が元男の持っていた複数枚の板切れです。その板切れは、黒津本家に代々伝わるもので、元男はこれを持ち歩いていました。ところが、上田の根の大きさに敗北を喫した元男は板切れを山田に渡し、代わりに、偽物を持っていました。この偽物を門構えに火という文字になるように並べると、裏面に犯人が黒津らであることを告発する文章が現れます。

本物の板切れは、“門構えに火”となるように並べると宝の地図になります。黒津次男と三男が探していたのはお宝で、そのためには、元男の板切れと山田の“門構えに火”が必要でした。シニカミというのは死神ではなくゼニカメのことで、つまりシニカミは宝を意味していました。これは黒門島の方言がヒントとなっており、それは黒門島の言葉は母音のoがu、eがiに変わるという特徴でした。この規則に従うと、くるしー(ku ru si)はころせー(ko ro se)になります。なお、規則通りであれば、シニカミ(si ni ka mi)はセネカメ(se ne ka me)なのでゼニカメにはなりません。どうやら、ゼニカメは不規則変化しているようです。120年に一度というのは、潮の影響で120年に一度だけ現れる島を示していました。そこに宝があるはずですが、あったのは記念碑のようなもので、貧しくても清く正しく生きよ、というモットーが彫られていました。島の崩壊については、ただ単に島の開発が進んでいただけのようです。

山田剛三の死について、奈緒子が犯人であるような流れでしたが、真相は明らかにされません。上田は剛三を殺したのは黒門島の人間で、里見が復讐ために、奈緒子を黒門島に導いたと考えているようです。さらに上田は、里見が奈緒子のからくり箱に脱出用の鍵を仕込み、剛三の手紙も奈緒子が見つけやすいようにしていたとも考えています。

山田里見そして山田奈緒子が超能力者であるかどうかも不明のままです。里見は、最後の上田の問いかけに対して、超能力はあるが強力な力はない、ともとれる返答をしています。ただ、これは一種のコールド・リーディングにも思えます。

感想

2000年放送なのでもう20年以上前のドラマですが、繰り返しみても面白いドラマだと思います。どのエピソードも、マジシャンvs.霊能力者という対決関係が明確で、刑事ものや探偵もの、特に倒叙ものに似た雰囲気があります。殺人などの犯罪も登場しますが、完全犯罪に主眼をおいたミステリーというよりも、オカルトやホラーに近いです。オカルト系作品ではありますが、謎解きも笑いもあって、とても楽しめます。

面白いシーンランキング

 トリック1で面白かったシーンの個人的ランキングです。おっ母様!が一番印象に残っています。トリック2のゾーーーン、トリック3のスリスリスリットに並ぶ名言でした。その他、母之泉の信者が矢部と石原の車を囲んで犬のおまわりさんを歌うシーンも好きです。不気味だけどなんだか笑えるシーンだったと思います。ちなみに、奈緒子の笑い方も好きです。

順位 話数 シーン
1位 1話 おっかさま!
母之泉の名台詞
2位 5話 作造!
ミラクル三井が飛び降りるシーンで本名が発覚
3位 5話 死体のモザイク
あそこにモザイク
4位 10話 エンディング
鬼束ちひろさん登場
5位 2話 まずいこれ
山田がキジ汁を飲むシーン

コメント

タイトルとURLをコピーしました