『チムニーズ館の秘密』のあらすじと真相、原作小説との違い、考察、感想などをまとめています。ドラマ版ミス・マープルシリーズの第18話(S5E2)です。23年前にメイドが失踪、同時にダイヤも消えたチムニーズ館へ、とある伯爵が訪れます。
あらすじ
チムニーズ館のパーティーで悲劇が起きてから23年後――ケイタラム卿は代議士のロマックスから手紙を渡される。差出人はオーストリアのルートヴィヒ・フォン・シュタイナッハ伯爵で、手紙の内容は鉄鉱石に貿易に関する申し出だった。同じ頃、ケイタラム卿の娘であるヴァージニアが暴漢に襲われてしまう。ケイドという男性に助けられたヴァージニアは、男と恋に落ちることになる。
その後、ヴァージニアは亡き母のいとこであるミス・マープルと共にチムニーズ館へと向かう。館には署名のため、ルートヴィッヒ伯爵も訪れていた。もてなしを受けた伯爵だったが、その夜、館の秘密の通路で銃殺されてしまう。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジュリア・マッケンジー Julia McKenzie |
老婦人の名探偵 ケイタラム卿の妻のいとこ |
ケイタラム Caterham |
エドワード・フォックス Edward Fox |
チムニーズ館の主人 |
マデリン Madeleine |
ニッキ・ブライトン Nicci Brighten |
ケイタラム卿の妻 故人 |
ヴァージニア Virginia |
シャーロット・ソルト Charlotte Salt |
ケイタラム卿の娘 暴漢に襲われる |
バンドル Bundle |
デヴラ・カーワン Dervla Kirwan |
ケイタラム卿の娘 ヴァージニアの姉 |
トレッドウェル Treadwell |
ミシェル・コリンズ Michelle Collins |
チムニーズ館のメイド |
ジョージ・ロマックス George Lomax |
アダム・ゴドリー Adam Godley |
代議士 外務省勤務 |
エバースレー Eversleigh |
マシュー・ホーン Mathew Horne |
ロマックスの秘書 |
アントニー・ケイド Anthony Cade |
ジョナス・アームストロング Jonas Armstrong |
ヴァージニアを助けた男性 |
ルードヴィッヒ Ludwig |
ホリー・ヴァランス Holly Valance |
オーストリアの伯爵 チムニーズ館を訪れる |
ブレンキンソップ Blenkinsopp |
ルース・ジョーンズ Ruth Jones |
職員 チムニーズ館の観光資源化を提案中 |
アグネス Agnes |
ローラ・オトゥール Laura O’Toole |
チムニーズ館で働いていたメイド 行方不明になっている |
フィンチ Finch |
スティーヴン・ディレイン Stephen Dillane |
警部 |
事件概要
チムニーズ館のパーティーで男女が愛し合っている最中、メイドが何者かに突き飛ばされてしまいます。このメイドがダイヤを盗んで行方不明となり、23年後、チムニーズ館にオーストリアのルートヴィッヒ伯爵が訪れ、殺されてしまいます。
容疑者となるのがアントニー・ケイドで、彼はヴァージニアというケイタラム卿の娘を暴漢から救った男でした。
伯爵の死体は夜遅くにチムニーズ館の隠し通路で見つかりました。ことの発端は、手紙で何者かに呼び出されたケイドが伯爵の護衛を襲い、隠し通路を通って館へと侵入しようとしたことに始まります。
ケイドに襲われた護衛が警鐘を鳴らして眠っていた館の住人やゲストを起こしますが、このとき、伯爵の姿がみえませんでした。全員で伯爵を探していると銃声が響きます。一同が唯一捜索していない隠し通路へと向かうと、そこに撃たれた様子の伯爵とケイドの姿がありました。まだ息のあった伯爵ですが、「ヴァント」と繰り返しながら息絶えてしまいます。
ケイドのそばには拳銃が落ちており、それが凶器でした。状況からみて、ケイドが怪しいのは間違いないといえます。しかし、ケイドは犯行を否定し、護衛を殴ったのは間違いないが、隠し通路に入ったとき伯爵は既に撃たれていたと証言します。
ケイドが犯人なのかどうか定かではないまま、食事のスープに“狐の手袋”という毒が盛られ、全員が体調を崩します。この騒動の直後、メイドのトレッドウェルが殺されてしまいます。トレッドウェルは何かを隠しているようでしたが、それをマープル達に伝える前に死んでしまいます。
真相解明の前に明らかになる事実は次の通りです。
- 23年前に行方不明になったメイドは既に死んでおり、チムニーズ館の敷地内にある棺に死体が隠されている
- メイドの遺体はみつかったが、盗まれたと思しきダイヤはみつかっていない
- 23年前、伯爵は楽団員としてチムニーズ館を訪れていた
- 伯爵が持っていた楽譜にキャプテンという名前が登場し、楽譜の暗号は宝の地図になっていた
- 宝の地図に示された位置にダイヤがあると考えられるが、どこを指し示しているのかは明らかにならない
- メイドのトレッドウェルがキャプテンからコンスタンスへの手紙を持っていた。トレッドウェルの名前がコンスタンスだったことから伯爵とトレッドウェルが男女の関係にあったと推測される
- “狐の手袋”がみつかったゴミ置き場でコードがみつかる
- ヴァージニア襲撃はケイドとエバースレーの狂言。覆面を被っていたのは実はエバースレー
- ケイドは人質にとられた仲間を救うためにチムニーズ館で紛失したダイヤを手に入れようとしていた。ヴァージニアをエバースレーに襲わせたのはダイヤに近づくという目的があった
- エバースレーはギャンブルで負けて金に困っていたため、ケイドの共犯者となった
- ケイドの手紙を書いたのはエバースレーで、ケイドがチムニーズ館へ入る口実を作るために用意された
- エバースレーは手紙で時刻を指定していなかった。何者かが時刻のみを記入した可能性がある
ネタバレ
犯人はケイタラム卿です。23年前、ケイタラム卿は妻の不倫を目撃しました。このとき、メイドを突き飛ばして殺してしまったケイタラム卿はダイヤを盗んでメイドの死体と一緒に棺に隠し、メイドがダイヤを盗んで失踪したようにみせました。
妻の不倫を知ったケイタラム卿ですが、相手は知りませんでした。手掛かりといえるのは特徴ある筆跡で書かれた恋文だけでした。そして23年後、ケイタラム卿はロマックスからルードヴィッヒ伯爵の手紙をみて、妻の不倫相手が伯爵だったことに気付きます。
ケイタラム卿はエバースレーが書いた手紙を利用して、ケイドに罪をなすりつけようとします。ケイタラム卿は手紙に時刻を書き、その時刻に音が鳴り響くようにしました。実は、館に鳴り響いた声は本物ではなく、コードを導火線のようにした時限式の花火でした。なお、ケイドが目撃した煙のは花火の痕跡です。
実際の犯行時刻は花火が鳴り響く前です。本当の犯行時には消音器が使われており、さらに隠し通路の中だったので銃声はほとんど生じていません。
スープに毒を盛り、メイドのトレッドウェルを殺したのもケイタラム卿です。トレッドウェルは23年前に死んだメイドの行方だけではなく、ケイタラム卿の妻の浮気も知っていました。ケイタラム卿は口封じのためにトレッドウェルを殺害しましたが、トレッドウェルが隠し持っていた不倫の恋文については何も知りませんでした。結果的に、不倫の証拠をマープルや警部に渡すことになってしまいます。
伯爵がチムニーズ館にやってきたのは、ダイヤでもなく、館そのものでもありませんでした。伯爵が自分のものにしようとしていたのはヴァージニアで、ヴァージニアは伯爵とケイタラム卿の妻であるマデリンの間に生まれた子供でした。
宝の地図はリッチモンド卿の絵画が起点ではなく、庭のバラが起点になっていました。指示通りに進むと、バージニア・クリーパー(アメリカヅタ)が植えられており、宝というのは“ヴァージニア”のことでした。
その他、隠されていた真実をまとめます。
- ダイヤはメイドの死体と一緒に棺に入れられていたが、死体発見時にケイタラム卿が回収し庭の池に捨てた(これをマープルが発見する)
- 伯爵が死に際に残したヴァントは“壁”という意味だった
- ブレンキンソップは23年前に死んだアグネスの友人だった
- 取引に関する書類を盗んだのはバンドルだった
結末
ケイドがダイヤ目当てだったことを知ったヴァージニアは、ロマックスのプロポーズを受け入れます。しかし、ケイドの“愛してる”という言葉を信じて、最後は、ケイドと結ばれることになります。
原作とドラマの違い
原作はバトル警視が登場する作品で、主人公はアンソニー・ケイドです。原作にミス・マープルは登場しません。登場人物の名前やチムニーズ館が登場する点など、原作とドラマで共通する部分もありますが、物語はだいぶ違った内容となっています。
感想
隠し通路、暗号とお宝、ダイイングメッセージ、不倫などなど、盛り沢山でした。いろいろと詰め込まれている感じでしたが、強引な部分や不明瞭な点はなく、うまくまとめられていたと思います。
考察
個人的には、暴漢に襲われた女性を助けて恋に落ちるという恋のトリックが気になります。トリックというほどのことではないかもしれないですが…、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にも似たような策略が登場していたと思います。
まとめ
ミス・マープル「チムニーズ館の秘密」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- ケイタラム卿
Lord Caterham
23年前のパーティーで妻の浮気現場を目撃する。このとき、メイドを誤って殺してしまったため、遺体を隠し、宝石を盗むことでメイドが宝石を盗んで逃亡したようにみせていた。浮気現場を目撃した犯人だったが、相手の男性が誰かまでは把握できず、手掛かりは浮気相手から妻へと送られた手紙だけだった。23年の月日がたち、犯人は伯爵からの手紙を目にすることになる。その手紙の筆跡は特徴的で、間違いなく、妻の浮気相手の書いた文字だった。浮気相手を知った犯人は伯爵を殺害し、その罪を娘に言い寄っている男になすりつけた。
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