『書斎の死体』のあらすじ、真相、原作小説との違い、感想などをまとめています。ジェラルディン・マクイーワンさん主演のドラマ版ミス・マープルシリーズの第一話です。タイトルの通りですが、書斎で死体がみつかるエピソードです。
あらすじ
第二次世界大戦の最中、大富豪のコンウェイ・ジェファースンは空襲によって、足を失い、子供達を亡くしてしまう…。
月日は流れ、ある朝、バントリー大佐が暮らすゴシントン・ホールの書斎、若い女性の死体がみつかる。大佐の妻であるドリー・バントリーはすぐさま友人のジェーン・マープルを呼び出し、一足遅れて、メルチェット警視も現場に到着。メルチェットは地元に住む芸術家のバジル・ブレイクを疑うが、ブレイクは関与を否定する。
その後、ハーパー刑事によってマジェスティック・ホテルでダンサーをしていたルビー・キーンが行方不明になっていることが知らされ、ルビーのいとこであるジョシー・ターナーによって、身元が確認される。死んだルビーには空襲で足や家族を失ったコンウェイ・ジェファーソンの養子になるという話が持ち上がっており、既に遺言は書き換えられていた。
コンウェイの義理の子供であるマーク・ガスケルとアデレード・ジェファースンには遺産相続という明確な動機があるのだが、彼らにはアリバイがあった。この二人以外にも容疑者には事欠かず、ホテルのダンスプロであるハンサムなレイモンド・スターや、ルビーと最後に踊ったジョージ・バートレットも登場することになる。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジェラルディン・マクイーワン Geraldine McEwan |
老婦人の名探偵 |
ドリー・バントリー Dolly Bantry |
ジョアンナ・ラムレイ Joanna Lumley |
マープルの友人 死体がみつかった屋敷の主 |
アデレード・ジェファースン Adelaide Jefferson |
タラ・フィッツジェラルド Tara Fitzgerald |
富豪の義理の娘 |
マーク・ガスケル Mark Gaskell |
ジェイミー・シークストン Jamie Theakston |
富豪の義理の息子 |
ジョシー・ターナー Josie Turner |
メアリー・ストックリー Mary Stockley |
被害者のいとこ |
事件概要
大富豪のコンウェイ・ジェファースンは5万ポンド(円換算で億単位の金額)もの遺産をルビー・キーンに相続させようとしていました。もともと相続人だったマーク・ガスケルとアデレード・ジェファースンの心境は、それはそれは穏やかではなかったでしょう。というわけで、マークとアデレードが最有力容疑者となりますが、彼らにはアリバイがあります。
アリバイについて紹介する前に、ルビー・キーンの行動について簡単にまとめます。ルビーはホテルのダンサーですので、男性を相手に踊るのが仕事です。その夜、ルビーはイケメンダンサーのレイモンドと踊るはずでしたが、ダンスホールに姿をみせず、行方不明となります。いとこのジョシーらが探しますが、部屋から応答はありません。結局、同じくダンサーであるジョシーがレイモンドとの踊りを披露することになります。このとき、マークとアデレードは他のメンツと一緒にブリッヂをしていたため、アリバイがあることになります。ブリッヂが始まる前、アデレードは手紙を書くために一人になっていますが、このとき、ルビーはまだ生きており、ダンスを踊っていました。
他にも容疑者はいますが、事件の概要は上記の通りです。アリバイが強調されているのが逆に怪しいですが、仮に、なにかトリックが使われていたとしても、なぜ、ほぼ他人の家で死体がみつかったのか?という大きな謎が残ることになります。
以下では、事件の真相を示すヒントをまとめたいと思います。なお、犯人が仕込んだ偽の証拠および嘘には※印をつけています。
- マーク・ガスケルの自宅から絨毯がなくなっている
- ルビー・キーンはとても眠そうだった
- 検視により、死亡推定時刻は間違いなく午後10時から午後11時30分の間
- ルビー・キーンが爪を切っている
- ルビー・キーンはバジル・ブレイクの写真を持っていた※
- アデレード・ジェファーソンはマーク・ガスケルに好意をもっている※
- 盗難車から女性の焼死体がみつかり、死体は行方不明になっていたパメラ・リーヴズという少女であると認識される※
- パメラ・リーヴスは映画のモデルに誘われて殺された
ネタバレ
ルビーとパメラを殺した犯人はジョシー・ターナーとアデレード・ジェファーソンです。二人は共犯関係にあり、恋人同士でした。
ルビーがホテルから姿を消した時、ジョシーは踊っていましたし、アデレードはブリッヂをしていました。完璧なアリバイのある二人ですが、このとき、ルビーはまだ生きており、睡眠薬を盛られたために部屋で眠っていました。ジョシーがルビーを探すために部屋を訪れた時、誰もいないようにみえましたが、実は奥の部屋で眠っていたというわけです。
実は生きていたとなると、死亡推定時刻が大嘘だったということになってしまいますが、検死は間違っていません。間違えているのは、死体がルビーではなかったという点です。つまり、書斎でみつかった死体はダンサーのルビーではなく、モデル詐欺にあったパメラ・リーヴスでした。間違いの原因は、死体の身元を確認したのはジョシーの偽証であり、彼女の嘘に全員が騙されたことになります。
パメラは映画のカメラテストなどと言われ、ルビーのように化粧され、眠られました。そして、アデレードがブリッヂの前に席を外した時に、バジル・ブレイクの家へと運ばれ、アデレードによって絞殺されました。一方ルビーは、ジョシーがルビーの部屋へ探しに行った時に、殺されています。その後、車に乗せられて、焼かれました。
犯人達の計画では、バジル・ブレイクの家でルビーに変装させたパメラの死体が見つかるはずでした。しかし、バジルが死体を移動させたため、バントリー家の書斎で発見されることになります。以下、ヒントの意味についてまとめます。
- バジル・ブレイクの自宅から絨毯がなくなっている
バジルが死体をみつけ絨毯に包んでバントリー家に運んだ - ルビー・キーンはとても眠そうだった
睡眠薬を盛られて眠らされていた - 検視により、死亡推定時刻は間違いなく午後10時から午後11時30分の間
検視に誤りはないが、死体はパメラである - ルビー・キーンが爪を切っている
パメラの爪が短かったので切りそろえた - ルビー・キーンはバジル・ブレイクの写真を持っていた※
バジルに罪をきせるため、犯人が仕込んだもの - アデレード・ジェファーソンはマーク・ガスケルに好意をもっている※
マークではなくジョシー - 盗難車から女性の焼死体がみつかり、死体は行方不明になっていたパメラ・リーヴズという少女であると認識される※
パメラではなくルビー - パメラ・リーヴスは映画のモデルに誘われて殺された
ルビーの替え玉だった
原作とドラマの違い
ドラマではジョシーとアデレードが犯人でしたが、原作ではアデレードとマーク・ガスケルが犯人です。アデレードとマークは実は結婚していたというのが原作の最後に語られますが、ドラマにそのような内容は一切登場しません。逆に、ジョシーとアデレードの関係はドラマオリジナルの結末ですので、原作には登場しません。
原作とドラマでは犯人が違いますが、事件の概要や死体すり替えのトリックなどは同じです。その他の主な違いは次の通りです。
- 原作に空襲の話は登場しない。原作では飛行機事故になっている
- ドラマではミス・マープルが謎解きをした後に罠を仕掛けて犯人が現行犯逮捕される。原作は逮捕の後に謎解きという順序
- 原作には元警視総監のクリザリング卿やメルチェット大佐の部下であるスラック、アデレードの恋人であるヒューゴ・マクリーンなどが登場するが、ドラマでは省かれている
- 書斎の死体には爪を噛んだ跡があり、これが死体すり替えの証拠になっているが、ドラマでは短く切られた状態になっている
感想
原作を知っていても、ドラマは犯人がちょっと違うので楽しめるかもしれません。ただ、犯人達の関係がそれほど醸し出されていたわけではないですし、狐につままれたような気分になるかもしれないです。というか、男の人が好きみたいな大嘘をついていたので、むしろ騙されているわけですが、いきなりカミングアウトする方が逆におかしいかもしれません。
考察
死体を間違えるなんて、ちょっと起きそうもないですが、たとえDNA鑑定みたいな手段があったとしても、死体が誰かわからないと鑑定もできなさそうです。死んだ人のDNAは確実に手に入りますが、このDNAの人は〇〇さんです、と教えてくれる便利なデータベースは基本的にはないはずなので(警察にお世話になっているとデータをとられているかもしれませんが)、照合はできないはずです。やはり、まず身元を特定する必要があり、手っ取り早そうなのは、知っている人に聞くということになるでしょう。その上で、部屋から頭髪なんかを採取したり、歯を調べたりするわけですが、ここでわかるのも、なんか違う、ということなので、誰なのかはわかりません。…とはいえ、二人目の死体が登場すると、だいぶ雲行きは怪しくなるので、消し炭にするとか、海の藻屑にするとかしないと、すぐにばれそうです。
まとめ
ミス・マープル「書斎の死体」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- アデレード・ジェファースンとジョシー・ターナー
Adelaide Jefferson & Josie Turner
共犯かつ恋人同士。遺産目当てで、泥棒猫的ダンサーを殺害し、最後は被相続人である大富豪も殺そうとするが、ミス・マープルに全てを見破られ逮捕される。獄中で愛を叫んだりもしているが、たとえ牢獄といえども迷惑なのでよそでやりましょう。なるほど、これが、ミス・マープルが最後に話していた恋のパワーというやつなのですね。
死体をすり替えて死亡推定時刻を誤認させアリバイを作っているが、罪をなすりつけようとした男に死体を動かされ、容疑者がぼんやりしてしまう。替え玉として用意した少女も、誰にも話すなと釘を刺したのにも関わらず、親しい友人にカメラテストの話をしていたので、その最中に殺されたことがわかってしまう。他人の言動が犯行のミスにつながっているわけだが、死体を移動させた男が打たれ弱い人物だったり、口の堅い少女だったりしたら、うまくいっていたかもしれないので、人選ミスといえる。
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