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愛国殺人|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ33】

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 愛国殺人』はポワロが通う歯医者の歯科医が、何者かによって殺害される事件です。この記事ではあらすじと登場人物、ネタバレ、感想・考察などをまとめています。ドラマは原作よりも登場人物が少なくなっておりますが、メインのトリックなどは同じです。

One, Two, Buckle My Shoe
項目 内容
シーズン 4
エピソード 3
長さ 1時間43分
放送日(英国) 1992年2月19日(水)
放送日(日本) 1992年10月3日(土)
出演者 キャスト一覧
原作者 アガサ・クリスティー
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あらすじ

ポワロが歯科医師ヘンリー・モーリーの治療を受け、その数時間後、歯科医師の死体がみつかる。死体は銃を握っており、自殺と推察される。その後、アンベリオティスというギリシャ人の死体が発見される。死因は麻酔薬の過剰投与で、歯科医ヘンリー・モーリーの患者だった。警察は、ギリシャ人の死を知ったヘンリーが、医療ミスという重責に耐え切れず自殺したと考えるが、証人のセインズベリー・シールが、突如失踪してしまう。その女性らしき人物の死体が見つかるが、死体の顔はつぶさ、身元ははっきりしない。歯科医院のカルテから、その死体が、シルビア・チャップマンであると判明するが、結局、セインズベリー・シールは失踪したままとなる。

事件概要

 ヘンリーの死体の第一発見者はアルフレッド・ビッグスというボーイです。彼は13時30分頃い死体を発見しました。ヘンリーは、ポワロが治療を受けた11時から11時30分頃までは、生きていました。その後、治療を受けたのは、ブラント、セインズベリー、アンベリオティス、ピナーの四名です。ヘンリーの秘書フランク・カーターが歯医者を訪ねており、カーターも容疑者の一人です。

タイムライン
  • 11:00
    ポワロ
  • 11:30
    ブラント
  • 11:45
    セインズベリー
  • 12:00
    アンベリオティス
  • 12:30
    ピナー
  • 13:30
    死体発見

 ブラントは銀行家です。セインズベリーは行方不明の女性で、アンベリオティスは死んだギリシャ人です。ピナーはボーイに怒鳴っていた女性で、彼女は、待たされた挙句、治療を受けていません(そして激怒している)。セインズベリーはポワロが歯医者の前で偶然会っています。バックルを落とした女性が、治療を受けに来たセインズベリーです。

 秘書の恋人であるカーターに容疑がかかります。彼が秘匿していた仕事はブラントの屋敷の庭師です。諜報機関に雇われて、庭師になったようですが、庭で拳銃を発砲したとして捕まります。逮捕後、12時半に歯科医の死体をみたと証言します。つまり、歯科医は11時半から12時半までの間に殺害されたことになります。

登場人物

  • エルキュール・ポアロ
    名探偵
  • ジェームス・ジャップ
    スコットランド・ヤード主任警部
  • ヘンリイ・モーリイ
    歯科医、最初の被害者
  • ジョージイナ・モーリイ
    ヘンリイの妹
  • グラディス・ネヴィル
    ヘンリイの秘書
  • フランク・カーター
    グラディスの恋人、庭師
  • アムバライオティス
    ギリシャ人、二人目の被害者
  • メイベル・セインズバリイ・シール
    元女優、行方不明
  • アリステア・ブラント
    銀行頭取
  • ヘレン・モントレザー(ガーダ・ブラント)
    アリステアの秘書
  • ジェイン・オリヴェイラ
    アリステアの姪
  • ハワード・レイクス
    ジェインの恋人
  • シルヴィア・チャップマン
    被害者のひとり
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ネタバレ

犯人はマーチン・アリステア・ブラントです。ブラントは自身の治療時に歯科医を殺害しました。ブラントのねらいはアンベリオティスの殺害であり、ブラントは歯科医になりすましてアンベリオティスに睡眠薬を過剰に投与しました。動機は恐喝で、ブラントは二重結婚をネタにアンベリオティスから強請られていました。歯科医を殺したのは、変装の邪魔になるからです。なお、ブラントが結婚していたのは、オリベラ家の女性(既に他界している)と秘書のヘレン・モントレソーでした。

ブラントの次の患者・セインズベリーはブラントの共犯者です。そして、セインズベリーではなく、ブラントの秘書・ヘレンの変装でした。ポワロが歯医者の前で会ったのは、ヘレンが変装したセインズベリーだったということになります。本物のセインズベリーは歯科医の事件が発生する前に、殺されていました。顔をめちゃめちゃにされた女性は、カルテとの照合によりシルビア・チャップマンだと断定されましたが、カルテはブラントやヘレンが用意した偽造カルテでした。

カーターが捕まったのは、ヘレンが発砲し、銃をカーターのそばに投げつけたためです。驚いたカーターは咄嗟に銃を手にしてしまいました。

事件関係者についてネタバレありでまとめると以下のようになります。

名前 説明 解説
アリステア・ブラント
Blunt
銀行の頭取
犯人
ギリシャ人に二重結婚を知られ強請られる
歯医者に変装するため歯科医と殺害しギリシャ人も殺した
ヘレン・モントレソー
Helen
ブラントの秘書
共犯者
セインズベリーに変装し歯医者へ
セインズベリーの死体をシルビアに見せるため偽造カルテを仕込んだ
ヘンリー・モーリー
Henry Morley
歯科医
被害者
ポワロが通っていた歯科医院の歯科医
歯科医に変装するというトリックを成立させるため殺された
アンベリオス
Amberiotis
ギリシャ人
被害者
アリステア・ブラントを強請っていた人物
歯科医に変装したブラントに麻酔を過剰投与され死亡する
メイベル・セインズベリー・シール
Mabelle
患者の一人
被害者
ヘレンが殺害し変装した人物
歯の治療カルテ偽装により別人だと思われていた
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原作について

原作は第19作目の長編小説「愛国殺人」です。原作とドラマで、おおまかな展開や結末、事件のトリックや真相などは同じです。ただ、登場人物が若干削られています。英語のタイトルは“One, Two, Buckle My Shoe”で、同じタイトルの数え歌があります。原作では、その歌詞が章タイトルになっております。ドラマでは冒頭などで、歌を口ずさむ子供が登場していました。

ストーリー

原作のおおまかな流れは下記の通りです。ドラマと重なる内容でまとめています。

タイムライン
  • 1
    事件発覚
    歯科医の死体が見つかる
    ピストル自殺したようだが自殺の動機は不明で他殺の可能性は低い
  • 2
    患者の死
    歯科医の患者が死んでいることがわかる
    歯科医は治療ミスに気付き自殺したかもしれない
  • 3
    疑惑
    患者は誤って殺されたかもしれない
    犯人の狙いは要人のアリステア・ブラントだったのではないか
    (ブラントも歯医者で治療を受けていた)
  • 4
    謎の死体
    チャップマン夫人の部屋で死体がみつかる
    歯の治療カルテによって死体はチャップマンであることが判明する
  • 5
    容疑者
    捜査を進めるポワロや警察に圧力がかかる
    首相とブラントの銃撃事件が発生する
    フランク・カーターが捕まる

みんなの感想

 原作小説のレビューをご紹介します。

クリスティーの作品の中でスパイが登場するものは大抵出来がよろしくない、そんな偏見を持ってしまっていたがこれは面白かった。

序盤や結末などは面白い。ただ、中盤は陰謀説などが入り込み、無駄に複雑にしている感があったかな。

章のタイトルがマザーグースの童謡だったので、関係してくるかなーと思っていたら、そこまででもなかった。でもこの見立て(?)のおかげで、テンポが良くなっている気がする。

表紙は紳士靴。車から降りる女性の足と靴のアップだと、わかりやすすぎますかね。マギンティ夫人のやつがそんな感じの表紙になっていますが…。

解説にもある通り、この愛国殺人というタイトルが非常に秀逸。最後のオチも好き。しっかし今回もまんまと騙されてしまった。

原作とドラマの違い

  • 原作に登場するモーリイの同僚ライリー、元内務省官吏のバーンズ、ジェインの恋人ハワード・レイクス、ブラントの秘書セルビーなど、一部の人物がドラマでは登場しません
  • ブラントの秘書の役割はヘレン・モントレザー(ガーダ)に集約され、ハワード・レイクスの過激な政治思想の要素はフランク・カーターにまとめられています
  • ドラマでは、保守派のアリステアを亡き者にしようとする陰謀めいた政治的要素が原作に比べて薄く描かれている印象です。原作で政治的背景の説明を担っていたバーンズが登場しないため、ドラマではジャップ警部の台詞による直接的な提示になっています
  • ドラマでは、モーリイ殺害の状況が、劇中の時系列を無視して冒頭でスロー再生でいきなり提示されるという珍しい構成が取られています。原作ではポアロの謎解きまでその詳細は明かされません
  • アムバライオティス殺害時の診療順について、原作ではメイベルに扮したガーダが割り込むことでトリックが成立しますが、ドラマでは本物のメイベルが事前に予約していたことになっており、偶然性が強調されています
  • 原作ではマザーグースの童謡「One, Two, Buckle My Shoe」の歌詞が各章のタイトルに引用されていますが、ドラマではその要素は薄く、あまり感じられません
  • ドラマでは、アリステアの「国を想う気持ち」と人の命を奪うことの間で起こるポアロの葛藤が、原作に比べてやや弱く描かれているという印象があります
  • ドラマでは、最後にポアロが関係者全員を集めて真相を語る形式が取られています
  • 地名や住所が変更されています(例:モーリイの歯科医院の所在地、ホテルの名前、チャップマン夫人のマンション名など)
  • ドラマではジャップ警部の自宅が初登場し、彼の週末の過ごし方が描かれています
  • 冒頭のインドのシーンでのブラントの雰囲気が原作よりも大きく異なり、同一人物と気づきにくい演出がされています。また、メイベル・セインズベリー・シールとヘレン(ガーダ)が同一人物であることにも気づきにくい演出がされています

感想と考察

映像トリックがありました。歯医者に現れたセインズベリーの顔に、かなりの違和感があったのですが、その正体は、入れ替わりでした。おや、雰囲気変わりましたね、外国の方なので、これくらいはありかな、と思って見過ごしました。とはいえ、倒叙的なトリックなので、犯罪のトリックとは違う気もします。

2023年に放送された福山雅治さん主演のドラマ「ラストマン」にも、歯のカルテをすり替えるというトリックが登場します。なお、このドラマでは、美人の女性が男性歯科医にカルテのすり替えを依頼するという手口になっていました。

“愛国”というキーワードは被害者の動機にあったようです。真犯人が国の貢献者、つまり英雄だから何をしても許される、みたいなことを口走ったラストシーンに、その意味が凝縮しているようでした。

マザーグースの歌詞が原題のタイトルとなっていますが、事件そのものには、ほとんど関係なかったように思います。原作の方も、あまり関係ないと感じている読者が多いようでした。

トリック

 犯人が医者に、そして、共犯者が患者になりすますという二重の変装トリックでした。標的以外に二人殺害してますが、それぞれ、偽装工作があります。歯科医は自殺、そして、患者の方は行方不明にしています。自殺偽装は、こめかみを撃って、拳銃を握らせるというトリックです。麻酔の過剰投与という医療ミスも用意し、自殺の動機も明確にしています。

 身元確認の方法は、面確(顔をみて確認する)、所持品(身分証明書、着衣)、身体的特徴、指紋、歯科所見(歯や口の中の状態)、骨、DNAなどがあるようです。DNA鑑定が登場したのは1987年頃*1とあるので、ポワロの時代には、存在しないです。

*1米フロリダの裁判でDNA鑑定が使われ有罪が確定したのが1987年とのことです

改ざん

 ある人物が行方不明になっているようにみせるため、鑑定に使われるカルテを改ざんしました。この事件では、死体が別人だと認識され、結果、容疑者が失踪したということになりました。なお、歯で人物が特定されるようにするため、顔を潰すなどの工夫もしています。

 カルテを改ざんするというトリックでした。法医学者を買収するとか、指紋のデータベースをハッキングして改ざんするとか、警察官がデータを改ざんするとか、そういった類のトリックだと思います。アガサ・クリスティーの作品を読んだり、見たりしていると人間不信になっていく気がします。死体にさせられたシルビア・チャップマンはどうなったのかなど、気になる部分もありますが、トリックは衝撃的だったと思います。

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