『レーン最後の事件』は、そのタイトルの通り、エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で発表した〈レーン四部作〉シリーズの最後の一冊です。この記事では、あらすじ、登場人物、小説の特徴、感想、評価ポイント、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
ニューヨーク市警を引退し、私立探偵として活動するサム警視の事務所に、奇妙な依頼人が現れる。虹色に染められた髭を蓄えたその依頼人はサムに、ある封筒を預かってほしいと依頼する。その封筒には、何百万ドルもの価値がある秘密が隠されているという。
一方、ブリタニック博物館では、シェイクスピアの稀覯本が盗まれる事件が発生。さらに、貸切バスに乗っていた乗客が忽然と姿を消すという不可解な出来事も重なる。これらの事件は、一見すると無関係に見えたが、やがて、ドルリー・レーンを巻き込み、複雑に絡み合っていく。
レーンの捜査が進むにつれて、盗まれた稀覯本の背後に隠された、シェイクスピアの死に関する驚くべき秘密が明らかになっていく。そして、物語は、爆発、殺人、そして、誰も予想しなかった結末を迎える――。
特徴
- 四部作の完結編:ドルリー・レーンシリーズの最終作であり、過去の作品からの伏線が回収される
- 衝撃的な結末:予想を裏切る犯人と結末!
- シェイクスピアの世界観:シェイクスピアへの深い知識と愛情による重厚感と深み
- 魅力的なキャラクター:ドルリー・レーン、サム、ペイシェンスなど、それぞれのキャラクターが抱える葛藤と成長!
- 倫理的な葛藤:正義とは何か、法とは何か、そして、人間は何のために生きるのか…名探偵ドルリー・レーンの言動を通して、自らの価値観を問い直す!
こんな人にオススメ
- 衝撃的な結末を読みたい!
- 伏線が張り巡らされたミステリーを読みたい!
- シェイクスピアの世界に浸りたい!
- 正義とは何か?倫理とは何か?を考えたい!
登場人物
- ドルリー・レーン:元シェイクスピア俳優にして、天才的な推理力を持つ名探偵。聴覚を失ったことで、より研ぎ澄まされた観察眼と洞察力で、事件の真相に迫る
- サム警視:ニューヨーク市警を引退後、私立探偵として活躍。正義感が強く、実直な人柄で、周囲からの信頼も厚い
- ペイシェンス・サム:サムの娘で探偵助手。聡明で行動力があり、事件解決に大きく貢献
- 虹色のひげの男:シェイクスピアの稀覯本を探し求める謎の人物。その奇妙な風貌と行動はいかにも不穏…
- ハムネット・セドラー:ブリタニック博物館の新館長。シェイクスピア研究の権威
- ゴードン・ロウ:博物館の研究員。ペイシェンスと恋に落ちる
感想
ラストシーンは衝撃的です。しばらく呆然としてしまいました。レーン四部作は、このラストを書くための前振りだったのかもしれないと思ったりまします。ドルリー・レーンの選択は、正しかったのか、間違っていたのか。今でも、自問自答を繰り返しています。
高評価のポイント
- 衝撃的なラストに心を奪われる:
- ラストシーンの衝撃的な展開に言葉を失う
- 「まさか、あの人が犯人だったとは…」という驚きと、その後の強烈すぎる印象
- 伏線の回収が見事:
- シリーズ全体を通して張り巡らされた伏線が最後の事件で一気に回収される!
- 伏線の回収によって物語全体のテーマがより鮮明に!作品全体の完成度が高まります
- シリーズを通して読むことで、より深く感動できる:
- 『レーン最後の事件』はシリーズを通して読むことでより深く感動できる!
- ドルリー・レーンのキャラクターの変化や成長、そして、彼が抱える心の闇を理解することで、ラストシーンの衝撃がさらに増します
- シェイクスピアの世界観が素晴らしい:
- シェイクスピアが物語に重厚感と深みを与えている!
- シェイクスピアの四大悲劇をモチーフにした構成が物語に格調高い雰囲気を与え、知的好奇心を刺激
低評価のポイント
- 殺人が起きるのが遅く、盛り上がりに欠ける:
- 物語の前半は、稀覯本の盗難事件や、関係者の証言などが中心で、殺人がなかなか起きません
- ただ、これは、後半の衝撃的な展開を際立たせるための、作者の意図的な演出ともいえそうです
- 結末が悲劇的で、後味が悪い:
- 受け入れがたい結末かもしれません…
- 途中で犯人が予想できてしまう:
- ミステリーを読み慣れている読者の中には、早い段階で犯人を予想できてしまうかもしれません
- 犯人が分かっていても、物語の展開や、レーンの心理描写を楽しむことができそうです
- 登場人物が苦手:
- ペイシェンス・サムに感情移入できない…
- ペイシェンスは物語の語り部として、レーンの行動を批判的に見つめる役割を担っているようだが…ペイシェンスの性格や行動が物語の展開を阻害/雰囲気を壊しているようにみえる
ネタバレ
真犯人はドルリー・レーンです。彼は、シェイクスピアの死の真相が記された貴重な手紙を守るため、ハムネット・セドラーを殺害しています。手紙には、シェイクスピアがハムネット・セドラーという人物によって毒殺されたという内容が書かれていました。
セドラーの子孫であるハムネット・セドラー(シェイクスピア殺害犯の子孫で、ややこしいことに名前が同じ)はシェイクスピア殺害という汚名を公表しないため、手紙を隠蔽しようとしていました。その蛮行を阻止するため、レーンはハムネットを殺害し、そして、事件解決後、自らの罪を償うため、服毒自殺します。
トリック
レーンの聴覚障害は、物語の中で自然に描かれており、それがトリックの一部であるとは、なかなか疑えません。目覚まし時計は、事件現場に不自然に置かれていて、何か意味がありそうだなとは思いますが、実は爆弾の起爆装置でした。
レーンは、捜査の中で、聴覚障害を理由に、いくつかの情報を聞き逃しているようにみえます。レーンが事件の真相に気づいていないと思い込みやすい行動です。
結末
罪を犯したドルリー・レーンが亡くなった後、ペイシェンスは遺志を継ぎ、探偵として生きていくことを決意します。ただ、彼女の心には、レーンの犯した罪の影が深く刻まれることになります。ペイシェンスは、レーンのような天才的な推理力が備わっているとはいいがたいですが、人々の心に寄り添い、真実を追求する、誠実な探偵になりそうです。
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