『ポケットにライ麦を』のあらすじと真相、原作小説との違い、考察、感想などをまとめています。ドラマ版ミス・マープルシリーズの第13話(S4E1)です。マープルのもとで働いていたメイドが事件に巻き込まれます。
あらすじ
会社社長のレックス・フォーテスキューが社長室の机で紅茶を飲み死亡する。奇妙なことに、レックスのポケットにはライ麦が入れられていた。解剖の結果、被害者はタキシンという毒物を盛られていたことが判明。タキシンは遅延性のため、紅茶ではなく自宅でとった朝食に毒が入れられた可能性もあった。
被害者のレックスには幾人かの親族がおり、数名の使用人も含め、いずれも容疑者となる。警察は関係者から話を聴き、捜査を進めていくが、レックスの若き妻であるアデルが殺されてしまう。さらに、メイドのグラディスも殺害されてしまい、その死体は鼻を洗濯ばさみでつままれていた。少し前までグラディスを雇っていたマープルは、悲惨な死に方を新聞で知り、フォーテスキュー家の屋敷へと向かう。
登場人物とキャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ミス・マープル Miss Marple |
ジュリア・マッケンジー Julia McKenzie |
老婦人の名探偵 |
レックス・フォーテスキュー Rex Fortescue |
ケネス・クラナム Kenneth Cranham |
実業家。被害者 毒殺される |
アデル・フォーテスキュー Adele Fortescue |
アンナ・マデリー Anna Madeley |
レックスの妻 後妻で年の差は30歳 |
パーシバル・フォーテスキュー Percival Fortescue |
ベン・マイルズ Ben Miles |
レックスの息子。長男 共同経営者 |
ジェニファー・フォーテスキュー Jennifer Fortescue |
ロニ・アンコーナ Ronni Ancona |
パーシバルの妻 元看護師 |
ランス・フォーテスキュー Lance Fortescue |
ルパート・グレイヴス Rupert Graves |
レックスの息子。次男 帰国したばかり |
パット・フォーテスキュー Pat Fortescue |
ルーシー・コウ Lucy Cohu |
ランスの妻 |
エレイン・フォーテスキュー Elaine Fortescue |
ハティ・モラハン Hattie Morahan |
レックスの娘 父に結婚を反対されていた |
ジェラルド・ライト Gerald Wright |
クリス・ラーキン Chris Larkin |
エレインの相手 |
メアリー・ダブ Mary Dove |
ヘレン・バクセンデイル Helen Baxendale |
フォーテスキュー家のメイド 全体を仕切っている |
クランプ夫人 Mrs Crump |
ウェンディ・リチャード Wendy Richard |
フォーテスキュー家の料理人 |
クランプ Crump |
ケン・キャンベル Ken Campbell |
フォーテスキュー家の執事 |
グラディス Gladys |
ローズ・ハイニー Rose Heiney |
フォーテスキュー家のメイド マープルのもとで働いていた |
ヴィヴィアン・デュボア Vivian Dubois |
ジョセフ・ビーティー Joseph Beattie |
アデルの男友達 不倫相手 |
グローブナー Miss Grosvenor |
ローラ・ハドック Laura Haddock |
レックスの秘書 |
マッケンジー夫人 Mrs Mackenzie |
プルネラ・スケールズ Prunella Scales |
クロツグミ鉱山の関係者 |
ニール警部 Inspector Neele |
マシュー・マクファディン Matthew MacFadyen |
担当刑事 |
ピックフォード巡査部長 Sergeant Pickford |
ラルフ・リトル Ralf Little |
ニールの部下 |
事件概要
この事件は、童謡マザー・グースの一編『6ペンスの唄』が重要なポイントとなります。日本語訳は以下の通りです。
6ペンスの唄を歌おう
ポケットにはライ麦がいっぱい
24羽の黒ツグミ
パイの中で焼き込められたパイを開けたらそのときに
歌い始めた小鳥たち
なんて見事なこの料理
王様いかがなものでしょう?王様お倉で
金勘定
女王は広間で
パンにはちみつメイドは庭で
洗濯もの干し
黒ツグミが飛んできて
メイドの鼻をついばんだ
wikipedia
朝食に毒を盛られて死んだレックスの上着のポケットには、ライ麦が入っていました。“ポケットにはライ麦がいっぱい”です。次は“女王は広間”で、これはアデルが広間で毒を盛られて死亡したことを意味しています。そして最後の一節である“メイドは庭で…メイドの鼻をついばんだ”は、グラディスの死を示唆しています。
一連の殺人は“6ペンスの唄”に見立てて起きています。レックスは殺される数ヶ月前にクロツグミの死体を机に入れられており、これも見立て通りと言えます。死体はレックス、アデル、グラディスの順番で見つかっており、童謡に沿っているのは間違いないですが、見立て殺人の理由は不明です。
殺人に関係がありそうな事件として、クロツグミ鉱山の話も登場します。その鉱山はレックスがマッケンジーという男性を殺して権利を奪ったと考えられており、実際、マッケンジー夫人は相当な恨みを抱いています。マッケンジー夫人は療養所に入っており、夫妻の息子は既に戦死しています。しかし、娘のルビー・マッケンジーだけはどこかで暮らしているようです。
ルビーがフォーテスキュー家に入り込み、レックスとその夫人を殺害し、目撃者となったメイドも殺したと考えれば、筋は通りそうです。しかし、ルビーが誰なのかはわかりません。
ネタバレ
レックスに毒を盛り、ポケットにライ麦を入れたのはメイドのグラディスです。グラディスは恋人のアルバートに騙されており、毒も自白剤だと思い込んでいました。共犯者だったグラディスは口封じのために、真犯人に殺されています。
真犯人はアルバートで、アルバートとランス・フォーテスキューは同一人物でした。つまり、ランスがグラディスをそそのかしてレックスを殺害させ、さらに、アデルとグラディスも殺していました。動機は結婚相手のパットと理想の生活を送るためであり、そのためには金が必要でした。
見立て殺人にした理由はマッケンジー家の人間が犯人であるようにみせるためでした。また、メイドのグラディスが最後に殺されたようにみせることでアリバイも作っていました。“6ペンスの唄”によって、レックス、アデル、グラディスの順に殺されたようにみえましたが、実は、アデルよりも前にグラディスは殺されていました。
ルビー・マッケンジーはジェニファーで、ルビーは確かにフォーテスキュー家に入り込んでいましたが、殺人には全く関与していません。ただし、クロツグミのいたずらはルビー=ジェニファーによるものです。なお、真犯人のランスは、このいたずらを見立て殺人に利用しています。
その他の人物の隠し事は次の通りです。
- メアリー・ダブ
実は泥棒。以前働いてた屋敷が三件とも盗難にあっている - ヴィヴィアン・デュボア
アデルと不倫し、レックスの遺産を狙っていた(この件は中盤で明らかになり、以降、デュボアは登場しない)
結末
マープルはランスが犯人であると確信し、ニール警部に伝えますが、決定的な証拠はありません。そのままマープルはフォーテスキュー家を後にし、セント・メアリー・ミードの自宅へと戻ります。そこで、グラディスからの手紙が届いていることに気付きます。手紙には罪の告白が書かれており、同封された写真にはグラディスとアルバートことランス・フォーテスキューが写っていました。
原作とドラマの違い
ドラマは原作小説を忠実に再現しています。細かな違いは以下の通りです。
- 原作にはラムズボトムというレックスの義妹が登場するが、ドラマでは省略されている。ラムズボトムの役割はクロツグミ鉱山について語ることであるが、ドラマではクランプやランスによって語られている
- 原作にはエレン・カーティスというメイドが登場するが、ドラマでは省略されている。原作でエレンはグラディスの死体を発見するが、ドラマではクランプ夫人が発見している
- 原作でマッケンジー夫人に話を聞くのはニール警部だが、ドラマはマープルに変更されていた
感想
死体のポケットにライ麦が入っているというのが、かなり謎めいていて面白いです。見立て殺人の小道具だったわけですが、なぜライ麦なのか?どうしてポケットなのか?などなどを考えるのが楽しかったりもします。
考察
見立て殺人(童謡殺人)が登場します。見立ての理由は、相当な恨みを持つ人物に罪をなすりつけるためであり、殺人の順番を誤魔化すためでもありました。
まとめ
ミス・マープル「ポケットにライ麦を」について、あらすじ、真相、ドラマと原作の違い、感想などをご紹介しました。
犯人
- ランス・フォーテスキュー
Lance Fortescue
パットとの結婚生活を豊かにするため、金目当てで父親を殺害し、相続人である父親の妻もついでに殺す。自身は外国にいたのだが、騙されやすい女性を共犯者に選び、犯行を成し遂げている。のちに共犯者も殺害し、口を封じている。
コメント