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イニシエーション・ラブ|あらすじ・感想・ネタバレ【乾くるみ】

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 乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』は恋愛小説の側面をもつ驚愕必至のミステリー小説です。80年代の静岡を舞台に、大学生の主人公とヒロインの恋愛模様を描きつつ、その結末に仰天するミステリーらしい一冊です!

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あらすじ

 合コンで出会ったマユに恋をした大学生のたっくん。初めての恋に戸惑いながらも、マユとの甘く切ない日々を過ごす。たっくんは就職を機に東京へ、マユは静岡に残ることになり、遠距離恋愛が始まるが…東京での生活に慣れてきたたっくんは、次第にマユとの心の距離を感じ始め、同僚の女性に惹かれていく。
 Side-AとSide-Bで構成という構成で描かれる恋愛模様――読者は衝撃の結末を迎えることになる。

小説の特徴

  • 時代
    80年代後半の懐かしい雰囲気や流行も特徴といえます
  • 恋愛
    初めての恋愛の甘さや苦さ、遠距離恋愛の難しさなど、恋愛小説という側面もあります
  • ミステリーとしての間違いない魅力!
    恋愛小説のように思えいますがミステリーとしての仕掛けが巧みです!巧みすぎます!
  • 予想を覆す展開
    あらすじにもある「最後の2行」が最大の特徴です
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感想

 甘く切ない恋愛小説な感じなので、ミステリー小説であることを忘れそうになります。ミステリーが読みたいのにあまり興味のない恋愛小説を読まないといけないわけなんですが、読み進めるうちに違和感が増し、最後の2行で全てが覆されるという衝撃を味わえます。

高評価のポイント

 「どんでん返し」は間違いないです。伏線の巧妙さや時代背景の描写も高評価のポイントですね。

  • 驚愕のラスト&叙述トリックの面白さ
    「最後から二行目」の衝撃はすさまじいです
  • 伏線の回収
    伏線が緻密に張り巡らされており、読み返すことで新たな発見があります!二回読みたくなります

低評価のポイント

 トリックが理解できなかったり、登場人物に感情移入できなかったりするかもしれません。性描写が苦手な人にとっては、作品の評価が下がる要因になりそうです。

  • ネタバレ気味な事前情報
    「どんでん返し」があることを知っていると、トリックが予想できてしまい驚きが半減してしまうかもしれません
  • 時代背景
    80年代の時代背景を知らないと、ついていけない部分がありそうです
  • 登場人物に感情移入しづらい
    登場人物に共感できない、あるいは嫌悪感を抱くかもしれません
  • 性描写が多い…!?
    恋愛小説な感じなので仕方ないかもしれませんが性描写が多い気もします
  • 後味の悪さ
    物語の内容が胸糞悪く、後味が悪いと感じる読者がいます。
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ネタバレ

 大学生の鈴木夕樹が合コンで知り合った繭子と恋に落ちるSide-Aと、社会人になった鈴木が東京で同僚の女性と親密になるSide-Bで構成されている…ようにみえますが、最後の2行で、Side-Bの「鈴木」は実は「鈴木辰也」という別人だったことがわかります。繭子は2人の鈴木を同じ愛称「たっくん」で呼び、二股をかけていたのです。
 Side-Aでは、鈴木夕樹は純粋で内気な大学生として描かれています。一方、Side-Bでは、鈴木辰也は東京で働く社会人として、粗暴で自己中心的な性格を見せます。この性格の変化が、読者をミスリードする要因です。
 物語には多くの伏線が散りばめられています。簡単にまとめてみます。

  • 「たっくん」という愛称:夕樹を「たっくん」と呼ぶのは不自然であり、名前を間違えないようにするためだった。
  • Side-AとSide-Bの出来事の矛盾:Side-AとSide-Bで、同じ時期に異なる出来事が起こっている。
  • クリスマスイブのホテルの予約:Side-AとSide-Bで、同じホテルを予約している。
  • 指輪の有無:Side-Aでは指輪をつけているが、Side-Bでは指輪をつけていない。
  • 「タック」と言いかけたこと:Side-Aで繭子が夕樹の名前を言い間違えそうになる。
  • 便秘による通院:Side-Aで繭子が便秘で通院していたのは、Side-Bでの妊娠を隠すためだった。
  • デートの曜日:Side-Aでは金曜日にデートをしていたが、Side-Bでは木曜日に変更している。
  • 就職先:Side-Aでは大手企業を断って地元企業に就職すると言っていたが、Side-Bでは東京の企業に就職している。
  • 趣味や嗜好の違い:Side-AとSide-Bで、鈴木の趣味や嗜好が異なっている。
  • 「男女7人秋物語」の放送時期:Side-AとSide-Bで、「男女7人秋物語」の話題が出るが、放送時期が異なっている。

作者の名前

 乾くるみさんは男性なんですが、最初は女性だと思っていました(笑)。作者さんの名前も結構叙述トリックだと思います。

まとめ

 恋愛小説のような雰囲気でありなが、実はミステリーというある意味、トリックな魅力を持つ作品だと個人的には思います。最後の2行で物語がひっくり返るという衝撃的な展開は、忘れがたい読書体験になるはずです。ぜひ、先入観なしに読んで(それでいてうまく思い込みを形成して)、物語の仕掛けを楽しんでください!

この本を読んだ方へのおすすめ

  • 十角館の殺人(綾辻行人):叙述トリックの代表作として知られるミステリー小説
  • セカンドラブ(乾くるみ):イニシエーションラブと同じ作者による恋愛ミステリ―

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