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プライオリ・スクール|あらすじ・ネタバレ解説【シャーロック・ホームズ】

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プライオリ・スクール(プライオリ学校)』は、プライオリ学校に通う公爵の息子が行方不明になり、同時にドイツ人教師も姿が見えなくなるというエピソードです。短編集「シャーロック・ホームズの帰還」に収録された作品で、原作小説は1903年に発表されました。短編集として発行されたのは1905年です。この記事では、原作のあらすじ、感想、ネタバレ、ジェレミー・ブレット版ドラマとの違いなどをまとめています

The Adventure of The Priory School
項目 内容
発表 1904年2月発表
(ストランド)
発表順 32作品目
(60作中)
発生時期 1901年5月16日~
同年5月18日
発生順 49件目
(60作中)
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あらすじ

 超一流校として有名なプライオリー学校の創設者兼校長であるソーニークロフト・ハックスタブルがシャーロック・ホームズに助けを求める。生徒であるサルタイア卿が行方不明になったというのだ。サルタイア卿は、大金持ちで権力者のホルダネス公爵の息子だった。

 失踪したサルタイア卿は父親と二人で暮らしており、家を出て行ってしまった母親を恋しがっていた。失踪の前日、サルタイア卿は父親からの手紙を受け取ったというが内容まではわからない。サルタイア卿の部屋は窓が開いていたようだが、隣の部屋で過ごしていた少年達は一切の物音を聞いていないという。誘拐犯として、同じ日に自転車と共に姿を消したドイツ人教師・ハイデガーの名前が挙がるが、ハイデガーの居場所は定かではなかった。

 ホームズとワトスンは学校の付近を調べ、タイヤの跡を発見する。その痕跡の先には、自転車が転がっており、近くからハイデガーの死体も見つかる。ハイデガーは頭を殴られており、靴下を履いていないことから、慌てて飛び出してきたという状況が推理される。また、周辺には牛のひづめ跡が残っていたが、辺りに牛の姿はなかった。

 その後、ホームズ達はとある宿屋の主人であるルーベン・ヘイズから馬を借りる。その馬の蹄鉄は古かったが、最近取り付けられたらしかった。蹄鉄を確認して馬を断ったホームズは、ルーベン・ヘイズの宿屋付近で張り込みを始める。すると、ホルダネス公爵の秘書ワイルダーが自転車で宿屋へとやってきて、その後に馬車が続いた。馬車に乗っていた人物は宿屋の二階へと向かったらしいかった…。翌日、真相に辿り着いたホームズ達は失踪したサルタイア卿の父であるホルダネス公爵の城へと向かう。

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ネタバレ

ホームズはホルダネス公爵を訪ね、ソルタイア卿がルービン・ヘイズの宿屋の2階に監禁されていると伝える。さらに、ホルダネス公爵自身が共犯者であることを告発する。実際、公爵こそが馬車の人物で、既にサルタイア卿と会っていた。公爵は、ドイツ人教師の死体が見つかった頃、真犯人に犯行を打ち明けられ、偽装工作に手を貸した。真犯人は公爵の秘書であるジェームズ・ワイルダーであり、知り合いのルーベン・ヘイズが共犯者だった。

ワイルダーは、実は公爵の隠し子だった。そんなワイルダーは父親の人生を台無しにし、財産を残すよう迫るため、犯行に及んだ。彼にとってサルタイア卿は忌々しい異母弟だったのだ。サルタイア卿が受け取った手紙は、公爵が差し出した手紙の中身をワイルダーがすり替えたもので、サルタイア卿は偽の手紙を信じ、自ら学校を抜け出し誘拐されてしまった。ドイツ人教師のハイデガーは、サルタイア卿が出て行くのを目撃し、急いで後ろを追ったのだが、馬でやって来たルーベン・ヘイズに殺されてしまったのだった。蹄が二つある牛の足跡は残っていたのは、蹄が一つしかない馬に牛の蹄鉄を取り付けていたためだった。

登場人物

 登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。主人公であるシャーロック・ホームズとワトスン博士は除いています。

名前 説明
ホルダネス公爵
The Duke of Holdernesse
誘拐された子供の父親
お金持ちであり権力者
サルタイア卿
Lord Arthur Saltire
プライオリ学校に通う10歳の生徒
公爵の息子で異母兄に誘拐されてしまう
ジェームズ・ワイルダー
James Wilder
誘拐犯
公爵の隠し子で実子のサルタイア卿に嫉妬していた
ルーベン・ヘイズ
Reuben Hayes
宿屋の主人
ワイルダーの共犯者でドイツ人教師を殺害した犯人
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ドラマ

 グラナダ版ドラマは1986年7月16日に放送されました。シーズン3の第2話(52分)です。

The Priory School
項目 内容
シーズン 3
話数 2
放送順 15
放送日(英) 1986年7月16日(水)
出演者 キャスト一覧

ストーリー

 プライオリ・スクールの校長であるハクスタブル博士がホームズのもとへとやってくる。博士いわく、三日前に、ホルダネス公爵の息子であるサルタイア卿が失踪し、ドイツ語教師であるハイデガーと、彼の自転車も行方不明になっているという。依頼を引き受けたホームズはワトスンと共に、早々に、汽車でプライオリ・スクールへと向かうのだった。

 翌日、学校でホームズがサルタイア卿が使っていた部屋などを調べていると、公爵が学校に姿を現す。ホームズは公爵の不信感を払拭するのだが、秘書であるワイルダーはホームズをロンドンへ送り返そうとしている様子だった。その後、ワトスンがホルダネス公爵の祖先が牛泥棒であることを仄めかす中、ホームズがハイデガーは誘拐犯ではなく、学校から抜け出したサルタイア卿をみつけ、自転車で追跡したのではないかという推理を披露する。

 あくる日、ホームズは学校の北に広がる荒地で二種類の自転車のタイヤの跡をみつけ、さらに、牛の足跡も発見します。立ち寄った宿屋では、主人のルーベン・ヘイズが怪しいことに気付き、借りた馬には古い蹄鉄に新しい釘が打ちつけられているという証拠も掴みます。その後、ホームズは公爵からこの時季に牛の放牧はありえないという言葉を耳にし、馬の蹄に牛の蹄鉄が使われたことに気付きます。その直後、ホームズはハイデガーの死体を発見する。

ネタバレ

ホームズとワトソンが宿屋へと急ぐのだが、ハイデガー殺害の犯人であるヘイズは逃げてしまう。そして、真犯人である秘書のワイルダーはサルタイア卿を連れて逃亡する。ワトスンが二人の後を追っている間に、ホームズが公爵のもとへと向かい、そしてついに、公爵がある事実を話すのだった。ワイルダーは公爵と愛人の間に生まれた隠し子で、彼は実子として扱われるサルタイア卿に嫉妬し、父や異母弟を憎んでいた。そんなワイルダーは弟を連れ洞窟に逃げ込んだのだが、追っ手に追い詰められ、最後には、転落して死んでしまう。一方、サルタイア卿は無事に救出され、ホームズは謝礼として、公爵から小切手を受け取るのだった。

原作とドラマの違い

 原作とドラマはほぼ同じ内容ですが、誘拐事件における公爵の立場、犯人達の結末など、細かな違いはあります。まず、ドラマで公爵は誘拐事件に一切加担しません。そして、原作において誘拐犯であるワイルダーは父の意志によってオーストラリアへ送られます。一方、ルーベン・ヘイズは逮捕されますが、ドラマでは、ヘイズの行方は明確に描かれておらず、逃亡したような終わり方になります。ワイルダーはというと、ドラマで彼は転落死するという悲劇的な終わり方を迎えます。

感想と考察

ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では自転車に乗るホームズが初登場です(この後のエピソードでもお目にかけます)。自転車、あと馬も出てきますが、車は出てきません。のちのエピソードで車も登場しますが、この頃はまだ普及していなかったようです。

ホームズが真相に気付いたのは、犯人が証拠を残した(ミスを犯した)からといえます。一つは、放牧季節でないので牛の足跡が残っていたこと。もう一つは、馬の蹄鉄に新しい釘を使ったことです。蹄鉄は湿っており、使われた痕跡も残っていました。第三者からみると、なんとか隠せそうな証拠ですが、当事者になると気付かないのかもしれません。

誘拐事件だけではなく殺人事件も起きてしまいます。生徒が行方不明になったその日に、同じ学校の教師も姿を消したら、教師が限りなく怪しいわけですが、実は、生徒の身を案じていたという真相でした。ミスリードというやつだと思います。ものすごく怪しいドイツ人教師は犯人ではなく、誘拐された男の子を追っていたわけですが、この“怪しい人物は犯人ではない”というのは、ミステリーのひとつのセオリーに思えます。

まとめ

 シャーロック・ホームズの「プライオリ・スクール」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。今回の事件は誘拐でした。

ハイライト
  • 発端
    プライオリ学校の校長がやってくる
    生徒であり公爵の息子でもあるサルタイア卿が行方不明になってしまった
  • 展開
    ホームズとワトスンが学校へ向かう
    自転車のタイヤの跡、牛の足跡、そして…
  • 結末
    真相に気付いたホームズ達が犯人を追う
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