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ポワロのクリスマス|徹底解説・あらすじ・ネタバレ・登場人物など【ポワロ42】

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ポワロのクリスマス』はクリスマスに子供達を呼び出した富豪が何者かに殺害されるエピソードです。この記事ではあらすじと登場人物、ネタバレ、感想・考察などをまとめています。

Hercule Poirot’s Christmas
項目 内容
シーズン 6
エピソード 1
長さ 1時間40分
放送日(英国) 1994年12月25日(日)
放送日(日本) 1997年12月29日(月)
出演者 キャスト一覧
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あらすじ

 1896年の南アフリカ。ある男が原石を独り占めしようとして負傷する。その男をある女性が助けたようだったが、男はどこかへ姿を消してしまう。

 40年後。クリスマスを静かに過ごすつもりだったポワロは暖房器具が故障するという災難に見舞われる。そこに、シメオン・リーという人物から電話がかかってきて、横柄なシメオン・リーはとりあえずポワロを自宅へと呼び寄せる。12月22日、ポワロは汽車でシメオン・リーの屋敷へと向かう。その夜、大富豪のシメオン・リーは一族を集め、遺言を書きかえると全員に伝える。そしてその数時間後に、シメオン・リーは何者かによって殺害される。結局、遺言は書きかえられず、遺産は三人の息子が相続することになるのだった。

事件概要

リー一族が7名ほどおり、やや登場人物が多いです。まとめると、まず、当主といえるのが、殺されたシメオン・リーです。アルフレッド、ジョージ、ハリーはシメオンの息子で、アルフレッドとジョージには妻がいます。アルフレッドの妻がリディアで、彼女はミニチュア庭園を製作しています。ジョージの妻はマグダレーナで、美人と評判です。ポワロと同じ汽車に乗り、タクシーも一緒だったのはハリーとピラーです。ピラーはシメオンの孫娘で、ピラーの母親がシメオンの娘だったようですが、ピラーの母は既に他界しています。

被害者が遺言を書き換えると宣言した直後に殺人が起きたため、動機は遺産であると考えられます。被害者は相続人を増やそうとしており、これによって取り分が減ってしまうのは、もともと相続人だったアルフレッドとジョージということになります。しなしながら、結局、遺言書を書きかえる前に被害者が死亡したため、アルフレッドが1/2、ジョージが1/4、ハリーが1/4を受け取ることになります。なお、孫娘のピラーは遺産を受け取ることができませんでした。

この事件は死体発見時の状況に特徴があります。それは、死体が見つかる前にシメオンの部屋から大きな物音と、豚を絞め殺したような声が聞こえたという点です。さらに、部屋は密室でした。密室はどうやら、あらじめ室内側に鍵をさしておき、その鍵を廊下側から工具で回したようです。つまり、屋敷内に犯人は逃げたということになりますが、屋敷から出て行った不審な人物はいないようです。のちに、音が屋敷に響き渡ったとき、部屋の前にリディアがいたことが判明します。リディアが犯人でないとすれば、誰もいないはずの部屋で、異音がしたということになります。

最後に被害者と会ったのはサグデン警視です。警視は被害者に再訪するよう言われ、屋敷の近くで時間を潰していました。警視が再び訪れたちょうどその時、死体がみつかりました。部屋はひどく散らかっており、シメオンのダイヤも紛失していました。現場でピラーがピンクの輪っかと栓のようなものをみつけています。その後、ピラーも何者かに襲われます。

登場人物

名前 説明
エルキュール・ポアロ 主人公
私立探偵
シメオン・リー ゴーストン館の当主
被害者
アルフレッド・リー シメオンの長男
気弱で優柔不断な性格
リディア・リー アルフレッドの妻
賢明で落ち着いた女性
ジョージ・リー アルフレッドの弟
下院議員
マグダリーン・リー ジョージの妻
派手好きで浪費家な性格
デヴィッド・リー アルフレッドの弟。画家
(原作のみ)
ヒルダ・リー デヴィッドの妻
(原作のみ)
ハリー・リー アルフレッドの弟
放蕩息子。家を出ていた
ピラール・エストラバドス シメオンの孫娘
(自称孫娘)
スティーブン・ファー シメオンの旧友の息子
(原作のみ)
エドワード・トレッシリアン ゴーストン館の執事
長年リー家に仕えている
シドニー・ホーベリー シメオンの従僕
容疑者の一人
サグデン 地元警察の警視
事件の捜査を担当
ジョンスン 大佐。ミドルシャー州の警察部長でポアロの知人
(原作のみ)
ジャップ 警部
(ドラマのみ)
ステラ・ド・ザイフデル アフリカの女性
(ドラマのみ)
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ネタバレ

犯人はサグデン警視です。40年前、原石を盗んだのはシメオン・リーで、彼は南アフリカの女性と関係をもち、その後姿を消しましたが、女性は身ごもっていました。その子供がサグデンです。サグデンは母親を捨てたシメオンに復讐するため、犯行に及びました。

サグデンは犯行後、家具などを積み上げ、さらに、膨らませたジェット風船を仕込み、それらに糸を結びつけることで屋外から操れるようにしました。工具で廊下側から鍵をかけたサグデンは何食わぬ顔で屋敷を出て、窓からたれた糸を引っ張って積み上げた家具を倒し、ジェット風船の栓も抜きました。これによって、凄まじい音が屋敷に響きました。ピラーが現場でみつけたピンクの輪っかは風船の破片で、栓は風船の口をふさぐために使われていました。

ピラーが襲われたのは、破片などの証拠を見つけただけではなく、サグデンがシメオンに似ているという発言をしたためです。遺産を受け取れず、そして犯人に襲われて負傷したピラーですが、実は本物のピラーではありませんでした。彼女はピラーの友人で、遺産を手に入れるために、ピラーのふりをしていました。

名前 説明 解説
シメオン・リー
Simeon Lee
大富豪
被害者
40年前に原石を盗んだ男
サグデン
Sugden
警視
犯人
シメオンと40年前の女性の間に生まれた子供
アルフレッド
Alfred
シメオンの息子 遺産の1/2を相続する
リディア
Lydia
アルフレッドの妻 ミニチュア庭園を作製している女性
ジョージ
George
シメオンの息子 遺産の1/4を相続する
マグダレーナ
Magdalene
ジョージの妻 浮気相手と電話をしようとしていた
ハリー
Harry
シメオンの息子 遺産の1/4を相続する
ピラー
Pilar
シメオンの孫娘 本当はピラーの友人で偽者

トリック考察

 犯人は遺言書き換えに乗じて犯行に及び、遺産を巡る争いにみせかけて、被害者を殺害しています。風船等を使って犯行時刻を遅らせ、密室やダイヤで一族の人間に罪をなすりつけようともしています。犯人のミスは、音がした時、被害者が死んだ部屋の目の前に人がいたこと、そして、数名が被害者と似ていることに気付いたことなどです。

 ジェット風船などを糸で操って物音を立てるというトリックが登場します。これは、死体発見現場となる部屋で音を立て、その瞬間に犯行が行われたようにみせるという意図があったと思います。実際、これによって犯行時刻が誤認識されました。そして、部屋の鍵をかけるためには屋敷の内部を通らなければならないが、屋敷に不審人物はいなかった、という状況と組み合わさり、殺人は屋敷内部の人間になすりつけられることになります。盗まれたダイヤ類が、屋敷にいたリー一族の身近なところから見つかっていますが、これも、屋敷内部の人間に罪をなすりつけるための偽装工作だったといえます。

 犯人は警察関係者でした。意外な犯人といえます。わりとよく登場する結末だと思いますので、それほど強い意外性ではないかもしれませんが、やはりインパクトがあります。

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原作小説とドラマの違い

原作は1938年12月19日にイギリスで発表された『ポアロのクリスマス(原題:Hercule Poirot’s Christmas、アメリカでのタイトルはMurder for Christmas)』です。デヴィッド・スーシェさん主演のドラマは原作の基本的なプロットを踏襲しつつも、いくつか変更点があります。

  • 登場人物の変更
    原作に登場するデヴィッドとヒルダの夫婦、そしてスティーヴン・ファーはドラマではカットされています。彼らの役割や要素は、アルフレッド夫妻やハリーに統合されています。また、ジョンスン大佐の代わりにジャップ警部がポワロの助手を務めます
  • ステラ・ド・ザイフデルの登場
    ドラマオリジナルキャラクターとして、シメオンが南アフリカで出会った女性ステラ・ド・ザイフデルが登場します。彼女はサグデン警視の母親であり、シメオンへの復讐の動機を補強する役割を担います
  • ジャップ警部の役割
    原作には登場しないジャップ警部が、ポワロの相棒として全編にわたって活躍します。彼の妻の手編みの手袋をポワロがプレゼントされる微笑ましいシーンも追加されています
  • クリスマスソングの多用
    ドラマでは、クリスマスをテーマにした讃美歌やキャロルが多数使用され、クリスマスの雰囲気を盛り上げています
  • 日時と場所の変更
    事件発生の日時が原作の12月24日から22日に、騒ぎがあった時刻も1時間早い8時15分に変更されています。解決した日も27日から25日になっています。また、原作の舞台は架空のミドルシャー州ですが、ドラマではウェールズに近いシュロップシャーが舞台とされ、ロケ地はケント州チルハムが使用されました

感想

クリスマスのエピソードということで、イギリスでは1994年のクリスマスに放送されたようです。クリスマスに殺人となると、いろいろ台無しな気もします。クリスマスに関するエピソードは「盗まれたロイヤル・ルビー」などもありました。こちらも、クリスマスにポワロが呼び出されるというストーリーでした。

幽霊話

執事の幽霊話が、話を盛り上げているように思います。音がしたとき、扉の目の前に女性が立っていましたが、部屋を開けてみるとそこには誰もおらず、しかも窓から逃げることができないとなれば、これはもう幽霊の仕業しか考えられません。ポワロは本格ミステリーなので、オカルト系のオチはない(はず)で、事実、執事の話は犯人と被害者が親子であるということを示す状況証拠になっていました。

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