2022年4月から放送されたドラマ「金田一少年の事件簿2022」の各エピソードのあらすじ(事件概要)、感想、登場したトリックなどをまとめています。
学園七不思議殺人事件
不動高校は、旧校舎の取り壊しに関して、脅迫めいた手紙を受け取る。ちょうどその頃、ミステリー研一同は学校の七不思議を調べていた。ミス研の部長は、明らかになっていない七番目の不思議に気付き、部員を学校に呼び出すが、金田一らによって、首を吊っている姿が目撃される。部長のそばには放課後の魔術師と呼ばれる怪人が立っていた。部長の下に急ぐ金田一達だが、部長が首を吊っていたはずの部屋は、開かずの部屋で、鍵がかけられていた。扉を壊してみると、そこに、死体はなく、放課後の魔術師も姿を消していた。
その後、もう一人の部員が殺害され、さらに美雪も襲われてしまう。なぜ、次々にミス研の部員が襲われるのか…、その動機は定かではなく、さらに、死体が消えた理由も不明だった。
生徒が襲われる理由
最初の犠牲者は七不思議の秘密に気付いたようで、暗号めいた文章を残しています。次に襲われた部員は、ポスターに八つ当たりしているところを襲われました。高校生推理作家の部員が容疑者となりますが、その後も、犯行は続き、美雪が何者かに襲われてしまいます。美雪は部長が残した暗号をみたようですが、それは、ただの数字の羅列でした。
七不思議、特に、明らかになっていない七番目の不思議に、殺人や傷害の動機がありそうですが、詳細は不明です。
ネタバレ
まず、部長が残した暗号は経度と緯度でした。それぞれの地点にある国名の、頭文字をとると、カベノナカニホネ;壁の中に骨という文章ができあがります。部長は、ミス研の部室の壁の中に骨があることに気付き、犯人に殺されました。二番目の犠牲者は、ポスターを破って、骨を直接みたため殺害されており、美雪は暗号に気付いたため襲われました。
壁の骨の正体は、10年前に行方不明になった青山ちひろという生徒です。この生徒を殺害したのが、物理教師の的場勇一郎でした。そして、部長や部員を殺害し美雪を襲ったのも物理教師の的場です。的場は、青山の死体が見つかるのを防ぐため、部員を襲いました。
青山が殺された理由は、旧校舎の下に死体が埋まっていることに気付いたためです。その死体は、建設会社の作業員で、会社は作業員の事故死を隠蔽するため、旧校舎の下に死体を隠していました。的場はこの建設会社の社員で、死体が見つからないようにするため、物理教師となって死体を見張っていました。
部長殺害時、的場は、死体消失のトリックに、鏡を使っていました。首つり死体を目撃したとき、金田一達の視線の先には、実は大きな鏡が置かれており、金田一達は鏡に映った部屋をみていました。これによって、金田一達は生物室に死体があると勘違いしていましたが、実際は、物理室に首吊り死体がありました。なお、犯人が、このトリックを仕込んだアリバイを作るためです。生物室の中に犯人がいるようにみせた状態で姿を表せば、完璧なアリバイができあがります。
結末
実は青山ちひろは用務員の立花良造(杉本哲太)の娘で、立花は復讐のために、的場を刺し殺そうとします。しかし、的場は一命をとりとめ、的場も軽い刑で済むという話になります。
聖恋島殺人事件
セイレーンが潜むという聖恋島で、島に遊びに来ていた医師たちが殺害される。最初に殺されたのは女医で、女医は聖恋島にいた人物全員の前で、外から飛来した水中銃で撃たれ死亡した。女医殺害に関して、全員にアリバイが成立するため、一同はセイレーンが犯人(外部犯)だと考える。
二人目は男性医師で、釣りの最中に、海に引きずり込まれて溺死する。魚に引きずり込まれたと考えられるが、死んだ男性医師の手袋が紛失しているなどの状況から、手袋に接着剤が仕込まれたため、握った釣り竿を離すことができず、海に落ちた推理される。水中に潜んでいた犯人が、海に落ちた医師を溺れさせたとも考えられるが、真犯人は不明のままである。
最後の被害者も男性医師で、銛を刺されて死亡していた。死体は最初、船着き場の小屋で発見された。小屋には鍵がかけられ、発見者達は、小屋の窓から死体を目撃していた。しかし、その死体は小屋から消える。その直後、死体はコテージの入口付近で再びみつかる。死体は小屋からコテージ入口に移動したが、このとき、関係者は全員一緒に行動していたため、全員にアリバイが成立していた。
セイレーンの謎
二人目の犯行以外は、全員にアリバイが成立しています。最初と最後の犯行は関係者には不可能のため、外部犯の犯行が疑われます。聖恋島には、セイレーンという人魚の言い伝えがあり、島には不気味な鳴き声が響いています。もしかすると、セイレーンが犯人かもしれません。
ネタバレ
犯人はツアー客の一人で、医療機器メーカーの小柄な男性(伊豆丸険:いずまるけん)でした。犯人の動機は復讐で、犯人は死んだ医師らが治験を進めていた新薬によって娘を亡くしていました。
女医殺害のアリバイトリックは、潮の満ち引きとボートを使って、水中銃の引き金を引くというものでした。犯人は手紙で関係者を集め、アリバイを作りました。二番目の殺人については、釣りの後にコテージから抜け出し犯行に及んでいます。最後の殺人に関して、犯人は全員が小屋の反対側に周ろうとしたときにこっそり離れていました。このときに、別の場所に隠していた死体をコテージの前に置き、さらに、小屋で死体のふりをしていました。つまり、小屋で目撃されたのは、犯人が死体のふりをしている姿でした。なお、犯人は、小屋を停電させた後、小屋の外に出て一行と合流しています。
セイレーンの鳴き声は、島にある魚雷の残骸が原因でした。魚雷は日本海軍の人間魚雷に使われたもので、島はかつて海軍の基地だったようです。この魚雷が島の洞窟にあり、それが海に突き刺さるようにして残っているため、笛のようになって音が生じていました。空気を押し出しているのは波で、満潮や干潮によって水面の高さが変わるため、音が変化していました。
白蛇蔵殺人事件
白蛇村の酒屋『白蛇酒造』で死体が発見される。酒蔵の樽の中から発見された死体は、酒造一族の次男・蓮月(れんげつ)だった。蓮月は顔にひどい火傷を負っており、黒いマスクを被っていたが、DNA鑑定の結果、酒造の社長である父親との血縁関係は間違いないようだった。
死体発見後、長男の左紺(さこん)が行方不明となり、警察は防犯カメラの映像などを根拠に、左紺を蓮月殺害の重要人物と考える。しかし。この左紺も、蓮月の死体が発見された蔵で発見される。左紺の死体が発見されたのは、蓮月がみつかった樽の、隣の樽で、彼は樽の中で首を吊っていた。地元警察は、左紺が蓮月殺害の犯人で、左紺は自殺したと断定する。
ところが、検死の結果、蓮月だと思われていた死体は、逃亡中の強盗殺人犯であることが判明する。
黒マスクの男
蓮月は5年前の火事で死亡したと思われていました。左紺によれば、火事の原因は三男・黄介(こうすけ)による放火で、黄介自身は行方不明となっています。蓮月は黄介に殺されたと思われていたわけですが、事件の2ヶ月前、蓮月が黒マスクを被って酒造に戻ってきました。顔に火傷を負っているため、逃亡中の殺人犯であることも疑われましたが、DNA鑑定によって、一族の人物であることが確認されます。このDNA鑑定の結果があるにも関わらず、事件発生後、黒マスクの男は、なぜか逃亡中の殺人犯になっていました。
防犯カメラの映像
死体がみつかった蔵の出入口は一つしかありません。さらに、防犯カメラに映らずに出入りすることもできません。カメラの映像を確認すると、蔵へ向かう左紺の姿が記録されており、その次に、同じく蔵へ向かう黒マスクの男が映っていました。出て行ったのは左紺の姿をした人物だけで、その後、死体が発見されます。この部分だけをみると、左紺が黒マスクの男を殺して出て行ったようにみえます。
ネタバレ
犯人は見習いの鷺森(さぎもり)でした。鷺森は行方不明になっていた黄介で、酒造を滅茶苦茶にした兄・左紺と、強請り屋の殺人犯・鬼門(きもん)を殺しました。
5年前、次男の蓮月が死んだ火災の犯人は、実は長男の左紺でした。左紺は、酒造の跡取りになれないことに腹を立て蓮月を殺害しました。そして、その罪を三男の黄介になすりつけました。火災に巻き込まれた黄介は、左紺の謀略によって殺人犯になってしまったため、正体を隠して生活していました。しかし、酒の味がまずくなっていることを知り、酒造を取り返すため、別人の鷺森となって酒造に潜入します。
鷺森として酒造で働く黄介でしたが、そこに鬼門が現れます。鬼門と黄介は知り合いで、鬼門は黄介が鷺森として酒造に潜んでいることを知っていました。これをネタに鬼門は、鷺森を強請り、酒造の乗っ取りを企みます。2ヶ月前、蓮月として黒マスクを被って現れたのは、鬼門で、鬼門は裏社会で懲罰を与えられ、顔を焼かれていました。DNA鑑定は、鷺森がサンプルを提出したため、一族の人物であると断定されていました。
防犯カメラに鷺森らしき人物は映っていませんでしたが、黒いマスクの人物、そして、左紺だと思われていた人物が鷺森でした。鷺森は黒いマスクを被って蔵へ行き、そこで、左紺を眠らせました。左紺の体は、上げ底にした樽に一旦隠し、その後、首つりのようにして殺害しました。
樽の中からみつかった鬼門の死体は、左紺を襲う前から上げ底の樽に隠されていました。見学者が入ったときも、樽に死体はありましたが、上げ底の下に隠されていたため、目視することはできませんでした。
トイレの花子さん殺人事件
閉鎖された病院で肝試しをしていた美大生が、肝試しの最中に行方不明となる。翌朝、病院から離れた雑木林の道端で、いなくなった美大生の死体が見つかる。地元警察は、肝試しが終わった後、美大生が通り魔に襲われたと推定。しかし、検死の結果、美大生は毒針に刺されて死亡していたことが判明する。
死んだ美大生は、肝試しで、最後に病院へ入った人物だった。その順番はくじ引きで決まっており、被害者が最後になったのは偶然であると考えられていた。被害者の姿がみえなくなったとき、肝試しの参加者は被害者を探したが、肝試しのゴールであるトイレで血痕のようなものをみつけ、その血痕に導かれるようにして、一行は病院の外へ出ている。その後、血痕は赤いインクだったことが判明する。美大生の友人らは被害者の悪戯だと思い、被害者の捜索を打ち切ったが、翌朝、死体が見つかる。
犯行現場
美大生の死体は雑木林で見つかりました。地元警察は通り魔殺人、つまり、犯行場所は雑木林であると考えているようです。凶器が毒針だったことなど、通り魔の犯行という見立てには、やや違和感があります。
被害者が最後に目撃されたのは、被害者が病院内へ向かうときで、このとき、肝試しのメンバーは全員一緒でした。つまり、被害者が病院内で肝試しをしていたとき、関係者にはアリバイがあったことになります。その後、メンバー全員で病院内を簡単に捜索していますが、死体は発見されませんでした。
被害者は毒針で殺されていたため、たとえアリバイがあったとしても、被害者が触れそうなところに毒針を仕込めば、誰でも犯行は可能です。しかし、この場合、確実に被害者だけを殺害する方法や絶対に見つからない死体の隠し場所が必要になります。なお、肝試しの順番はティッシュ箱に入れたくじで決まりました。そのため、順番は偶然だったといえます。ただし、被害者の美大生はくじ引きの最中に電話がかかってきたため、くじを最後に引いており、肝試しの順番も最後になりました。
ネタバレ
犯人は鳴沢(なるさわ)でした。鳴沢の妹は被害者の伊能(いのう)が原因で自殺していました。自殺の原因は、伊能が鳴沢の妹のヌード写真で美術作品を作成したためでした。このことについて伊能は、ちょっと遊んだだけと鳴沢に話したため、鳴沢は激昂し、犯行に及びました。
犯人の鳴沢は、くじ引きでインチキをして、被害者が最後で、その前が鳴沢自身になるように仕込みました。その方法は、あらかじめ、最後と最後から二番目の番号が書かれたくじを抜いておくというものでした。鳴沢は、まず、被害者の伊能に電話をかけ、伊能が最後にくじをひくように仕向け、さらに、自分も最後から二番目にクジを引くようにします。そして、自分がくじを引くとき、抜いておいた二つのくじを握ったままボックスに手を入れ、最後の番号が書かれたくじはボックスの中へ、最後から二番目のくじは、手元に残しました。こうすることで犯人は、最後は被害者、その前が犯人という順番を意図的に作り出していました。
最後から二番目になった犯人は、肝試しの最中、石こうの便器などを使って一番奥の物置を個室のようにみせました。そして、この物置だった個室に、毒針付きのピンポン玉を仕込みました。ピンポン玉を取ってくるというのが肝試しのルールだったため、被害者は、何も知らずに毒針に触れ死亡しました。つまり、肝試しのメンバーが被害者を探したとき、実は、奥の個室に被害者の死体があったということになります。
他の参加者を含め、被害者が奥の部屋をのぞいた理由は鳴沢の怪談話にありました。犯人は怪談話で被害者の行動を誘導し、死体が見つからないようにしていました。そして、トイレに赤インクをたらすことで、参加者たちをトイレから遠ざけ、死体が発見されるのを防ぎました。
金田一少年の殺人
著名なノンフィクション作家である橘五柳(たちばなごりゅう)は、新作の出版権をかけて謎解きゲームを開催。ゲームは暗号解読で、「裏川辺奇々なる藻を」という謎の文章が示す場所に、新作の原稿が隠されているという主旨だった。その新作には、ゲームに招待された人物の犯罪が実名で書かれているらしかった。
そんな橘が離れの書斎で何者かに殺害される。死体発見時、死体のそばに、凶器を持った金田一が立っていた。容疑者となった金田一は書斎へ入ったところを誰かに殴られたと話し、金田一が書斎に入ったとき、橘は既に殺されていたと主張する。しかし、離れに向かった足跡が一組しか残っていない事や、金田一が書斎へ向かったあと、被害者が電話をしていることなどから、金田一への容疑は晴れず、犯人と断定される。
足跡の謎
橘は離れの書斎で殺されており、書斎にあった水槽が転倒したため、床にはガラス片が散乱し、水浸しになっていました。その書斎に向かうためには、一度、屋外に出る必要があり、外に出て書斎へ向かうと、間違いなく地面に足跡が残ります。書斎への経路は一つしかなく、足跡を残さずに書斎へと行き来することはできないはずですが、金田一は、別の誰かが書斎にいたと主張します。
暗号の謎
「裏川辺奇々なる藻を」は、ローマ字に変換して逆から読みと「大村に聞けばわかる」となります。大村はゲームに参加していた男性で、その大村は死んだ橘から「時任に聞けばわかる」という謎のメッセージを受け取っていました。時任は「桂木に聞けばわかる」、桂木は「野中に聞けばわかる」、そして野中は、私で終わり、というような内容のメッセージを橘から聞いていました。この伝言ゲームが原稿の隠し場所を示しているようです。なお、関係者は伝言を金田一に伝えたあと、何者かによって次々に殺されていきます。
容疑者となった金田一は新作の中で犯罪を暴露されている人物こそが犯人であると考え、暗号の謎を追います。
ネタバレ
犯人はテレビディレクターの都築哲雄(つづきてつお)です。都築は婚約者のために、臓器売買に手を染めていました。このことを本で暴露されそうになった都築は橘に話し合いを持ち掛けましたが決裂、殺害に至りました。
都築が橘を殺した直後、そこへ金田一がやってきます。都築は書斎に入ってきた金田一を殴って気絶させ、さらに水槽も倒しました。水槽を破壊した理由は、かけてた眼鏡を室内で割ってしまったためで、犯人の都築は、その破片を隠すため、水槽のガラス片を散乱させていました。その後、被害者のふりをして使用人に電話をし、そして、書斎のドアから隣の部屋のドアへ飛び移ることで足跡を残さずに移動しました。なお、使用人に電話をしたのは移動に使うドアを開けさせるためです。
暗号は「大時計の中」が正解で、大時計の中に原稿を入れたメモリーカード隠されていました。「大時計の中」は、3つのメッセージの頭の文字、と野中をつなげることで現れる秘密の文です。最初のメッセージは「大村に…」、次は「時任に…」、そして「桂木に…」なので、最初の文字をつなげると「大時桂」となります。ここで、桂(かつら)はけいと読み、これに合わせて、漢字も変換すれば「大時計」となります。野中はひらがなにすると「のなか」となり、「大時計のなか」「大時計の中」となります。
首狩り武者殺人事件
ある村のお金持ちが死亡し、遺言によって、全財産が養子に相続される。その後、死んだお金持ちの妻宛に脅迫状が届く。送り主は呪い武者と名乗っていた。屋敷には、怪しい覆面の男が現れるが、この男が密室で斬首され、殺される。死体発見時、室内に人の姿はなく、窓の外は断崖絶壁のため、脱出は不可能と考えられた。そして、死体発見後に、遺産を相続した養子が行方不明となり、のちに、頭部だけが確認され、覆面の男を殺害した人物によって殺されたと断定される。
警察は、犯人がボウガンを使ってロープを渡し、ロープをつたい渡ることで絶壁を乗り越えたと推理。そして、元サーカス団員の使用人が犯人であると考えるが、容疑者となった使用人は銃の暴発で死亡してしまう。
密室
一人目の死体がみつかった現場は密室でした。被害者の覆面の男・赤沼は死ぬ前に、金田一と妻の巽紫乃(たつみしの)を部屋に呼び出しており、彼らは、呪い武者に襲われる!というような赤沼の叫び声を耳にしています。金田一が、急いでどんでん返しと呼ばれるからくり扉を抜け、鍵を開けて部屋に入ると、そこには首のない死体が座っていました。死体ともう一人、誰かが部屋にいた様子ですが、部屋には誰もおらず、窓の外は絶壁でした。
完全な密室と思われていた部屋ですが、ボウガンを使って崖の向こう側にある大木にロープを渡せば、密室から脱出することができます。この芸当ができそうなのは、元サーカス団員だった使用人・仙田猿彦(せんださるひこ)のみですが、実は彼は、サーカスでの転落事故が原因で、高所恐怖症になっていました。つまり、猿彦に崖を越えることはできないということになります。犯人と考えられていた猿彦ですが、銃に鉛が詰められていることを知らずに発砲したため、死亡します。
二つの死体
密室で死んでいたのは、覆面の男・赤沼のようでした。頭部はありませんでしたが、服装は覆面の男が来ていたものと同じです。死体発見後、金田一らは、武者の姿をした人物に襲われ、洞窟に連れて行かれます。そこで、相続人となった養子・巽征丸の生首を目撃します。その横には、赤沼の首があったようですが、布がかぶされており、素顔は明らかになりません。
ネタバレ
犯人は紫乃で、猿彦も共犯です。密室にあった死体は相続人の征丸で、殺害したのは紫乃でした。覆面の男・赤沼は架空の人物で、その正体は猿彦でした。紫乃が征丸を殺害した後、共犯者の猿彦が首を斬り落とし、赤沼として金田一に電話しました。その後、まず部屋に鍵をかけ、どんでん返しの前で待機し、金田一が到着した頃合いを見計らって、呪い武者に襲われているふりをします。そして、金田一がどんでん返しを抜けたと同時に、反対側から抜けることで、猿彦は姿をみせずに部屋から脱出しました。なお、どんでん返しを抜けたあと、鍵は所定の位置に戻しておきます。
紫乃が征丸を殺害した理由は、本当の子供ではなかったためです。紫乃の本当の子供は巽龍之介(たつみりゅうのすけ)で、彼は紫乃の連れ子でした。つまり、龍之介は巽家の血縁者ではないただの他人ということになります。一方、紫乃の連れ子で養子だった征丸は、実は、死んだ巽家当主・蔵之介と先妻・巽綾子(たつみあやこ)の長男でした。このような交換が起こったのは、綾子にいじめられていた紫乃が、復讐のため、病院で生まれたばかりの赤ん坊を交換したためです。
紫乃は、当主の遺産が、巽家の長男として扱われている龍之介に相続されると考えていました。しかし、遺言により、財産は全て征丸に引き継がれることが決まります。実子である龍之介に相続させたかった紫乃は、邪魔な征丸を殺害。征丸の死体が調べられることによって、血縁関係の真相が明るみに出ることを防ぐため、赤沼なる人物の死体にみせました。
猿彦を始末したのも紫乃で、紫乃は猿彦に殺してくれと頼み、猿彦に発砲させました。銃に鉛が詰められていることを知らない猿彦は、紫乃の罠にはまり、死亡します。この猿彦は龍之介の父で、つまり、龍之介は紫乃と猿彦の子供でした。
結末
自分の実の母親が紫乃であることを知らない龍之介は、紫乃を毒殺しようとします。毒殺に気付いていた様子の紫乃は、毒入りのお茶を飲み、死亡します。
オペラ座館ファントムの殺人
オペラ座館の舞台で劇団員の女性がリハーサル中に死亡する。女性は舞台に吊るされたシャンデリアの下敷きとなって死亡しており、シャンデリアを吊っていたワイヤーには、何者かによって切られたような痕跡が残っていた。しかし、オペラ座館に集まった関係者は全員、ワイヤーから離れた位置にいたため、犯行は不可能と考えられた。
事件が起きる少し前、関係者は離れの塔のろうそくが消えていく光景を目撃していた。関係者は全員本館にいた。そのため、誰もが、走って5分ほどの距離がある離れに姿を見せていない別の誰かがいると考えていた。シャンデリア落下事件発生後、関係者らは問題の塔へと向かったが、そこで、落下事件が起きた劇場の鍵を所持していた男性が襲われ行方不明となる。
翌日、塔で、行方不明になった男性を捜索中、劇団員の女性がファントムという怪人に襲われる。本館にいた女性は、襲われた時、塔に電話をかけ助けを求めていた。電話を受け、塔にいた一行は、急いで本館へと戻るが、その途中、塔のエントランスで、一人の男性劇団員が転び足をくじいてしまう。急いでいた他のメンバーは、男性をその場に一人で残し、本館へと向かう。そして約5分後、倒れている女性を発見。女性に目立った外傷はなかったが、窓ガラスが割られているようだった。その後、再び塔へ戻ると、そこに転んだ男性劇団員の姿はなく、切断された手首だけが残されていた。男性の死体は、本館と塔をつなぐ近道で発見されるが、本館で倒れている女性が見つかった時、その場に関係者全員が集まったため、たとえ近道を使ったとしても、塔で男性を殺害し、本館に姿を現すことは、正体不明のファントムをのぞき、不可能であるように思われた。
その後、行方不明になった男性が持っていたはずの舞台の鍵が、いつもの場所に戻されていることがわかり、さらに、舞台の下にあった秘密の部屋で行方不明だった男性が発見される。そして、容疑者となった男性劇団員が舞台に閉じ込められ、密室状態であったにも関わらず、何者かに殺されてしまう。舞台の鍵は、関係者が見張っており、スペアキーは存在しなかった。鍵は、鍵の入った袋に大きな蜘蛛が入れられていたため、一時期、暖炉で燃やされていたが、その暖炉を関係者が見張っており、暖炉から鍵を取り出したため、ずっと暖炉に鍵があったというのは、間違いなさそうであった。
ファントム
塔の火が消えた出来事も含め、舞台での殺人および手首を切断された死体の殺人は、関係者にアリバイがあったため、姿をみせていない人物の犯行にみえます。2年前、元劇団員の男性・霧生鋭治(きりゅうえいじ)が失踪しており、この人物こそがファントムのようですが、その姿をはっきりと目にした人物はいません。
ネタバレ
犯人は劇団員の湖月レオナ(こづきれおな)で、既に、霧生鋭治は死亡しています。レオナに殺された劇団員達は保身のため霧生を樹海に連れ込み失踪させていました。このことを知ったレオナは復讐のため、劇団員を全員殺害しました。霧生はレオナに付きまとっていると考えられていましたが、実はレオナが霧生を誘っていました。誘拐事件も、駆け落ちでした。
塔でろうそくの火が消えたのは、空気よりも重いドライアイス(二酸化炭素)がろうそく周辺の酸素を押しだしたためでした。犯人のレオナは風船にドライアイスを仕込み、画鋲などを使って自動で割れるように細工していました。遠隔操作で、階段の上に置いた風船を割り、塔の床部分にドライアイスを充満させたようです。
シャンデリアの落下は、犯人が座っていた座席の下までワイヤーを延長することで、犯行を可能にしていました。
そして、二人目の殺人は、被害者が犯人に協力していました。まず、レオナは被害者を誘惑し、塔で転んだふりをして、その後、近道を通って本館へ向かうように依頼しました。レオナ本人は、ファントムに襲われたふりをし、電話をかけ、その後、近道を使って塔へと向かいました。近道の途中で、被害者と合流した犯人は、そこで犯行に及び、手首を切断しました。近道の途中まで行き、そこから、本館に引き返せば、移動時間は約2.5分となります。そのため、犯行を手早く済ませれば、金田一達が、塔から本館へ移動する5分間の間に、レオナは犯行を済ませ、再び本館に戻る事ができることになります。なお、犯行現場が塔であるようにみせるため、男性を探すふりをして、手首を塔の下にこっそり置いています。
最後の密室事件は、犯人が鍵をすり替えていました。レオナは、偽の鍵を準備し、それを本物の鍵と入れ替え、さらに、蜘蛛を袋の中に入れました。そして、暖炉で燃やすよう誘導し、偽の鍵を燃やしました。手にした本物の鍵をつかって犯行に及び、その鍵を煙突から投げ入れることで、暖炉に戻しました。
悪魔組曲殺人事件(1996年放送)
山荘で男性の死体が発見される。死んでいたのは小沢竜二郎という男性で、手には鍵らしきものを握っていた。山荘には、山荘の持ち主である御堂周一郎(みどうしゅういちろう)の弟子達と孫が集まっており、弟子達は病死した御堂が残した悪魔組曲の楽譜を探していた。小沢も楽譜を手に入れようとする人物の一人だったが、山荘に遅れて到着したため、ヒントとなる悪魔組曲の詩のコピーを受け取りそびれていた。詩を入手できなかったのは小沢だけではなく、紅亜理沙(くれないありさ)も同様だった。その後、風倉百合恵(かぜくらゆりえ)も殺害され、その殺害現場にはコマが転がっていた。
見立て殺人の謎
最初の被害者である小沢、そして、二人目の被害者である風倉は悪魔組曲の詩に見立てて殺害されていました。しかしながら、小沢を見立て殺人で殺害するためには、雷や悪魔などを準備する必要がありました。死体が見つかったその夜、確かに落雷が起きており、さらに、ステンドガラスの絵柄が悪魔の役割を果たしたため、見立てが成立していたようですが、事前に計画されていたとは思えない状況といえます。
ネタバレ
犯人は紅亜理紗(くれないありさ)です。小沢と共に山荘に遅れて到着した紅は小沢に八つ当たりされ、その上、侮辱されたためにカッとなって小沢を突き飛ばしてしまいました。突き飛ばされた小沢は、咄嗟に、紅が首にぶら下げていたバイオリンケースの鍵を掴み、引き千切りました。つまり、小沢が握っていた鍵は紅のものであり、紅本人は、死体が発見されて騒動が起きるまで、鍵を失ったことに気付いていませんでした。
紅は小沢が握った鍵から目を逸らさせるために、悪魔組曲の詩に見立て風倉を殺害しました。理由は風倉に小沢殺害について脅されていたためです。紅は見立て殺人にするため、風倉の死体のそばに独楽を置きましたが、詩に書かれていたのは独楽ではなく駒でした。このミスによって、詩を文章で読んでいない人物が犯人であるというロジックを生み出すことになります。
*見立ての理由についてはドラマでは詳細に語られていない部分ですので、原作やアニメの“悪魔組曲殺人事件”を参考にしつつ、内容を補足しております。
感想
ドラマの金田一少年シリーズは五代目ということで、何度も放送されてきた印象があったりもします。同じエピソードがドラマ化されることもあり、多少の違いはあるのでしょうが、ストーリーやトリックなどは同じようです。そうなると、ドラマ化されていない作品をドラマにしてほしいと思ったりするのですが、それでも「学園七不思議」は名作だと思います。
トリック一覧
登場したトリックを簡単にまとめます。
話数 | トリック |
---|---|
1 | 鏡で部屋を勘違いさせ死体を消す |
2 3 |
潮の満ち引きとボートで引き金を引く 集団行動から外れ死体のふりをする |
4 | 酒樽を上げ底にして死体を隠す |
5 | 毒針による遠隔殺人のあと巧みに死体を隠す |
6 7 |
ドアからドアに乗り移ることで足跡を残さずに移動する |
8 | どんでん返しで誰にも見られずに密室から脱出する |
9 10 |
長いワイヤーを手元まで伸ばして切断しシャンデリアを落下させる 切断した手首で犯行現場を偽装する |
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