『さよならドビッシュー』は中山七里先生のミステリー小説で、岬洋介シリーズの1作目です。第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、この作品がデビュー作になります。
項目 | 説明 |
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タイトル | さよならドビッシュー |
著者 | 中山七里 |
シリーズ | 岬洋介シリーズ 1作目 |
発行日 | 2010年1月 |
Audible版 | なし (2025年1月時点) |
出版社 | 宝島社 |
評価 |
あらすじ
16歳のピアニスト志望の少女・香月遥が、祖父と従姉妹の片桐ルシアとともに自宅で火事に遭います。火事は事故のようでしたが、祖父が焼死し、ルシアも亡くなったと判断されます。全身に大火傷を負った遥でしたが、ピアニストになる夢を諦めず、コンクール優勝を目指して、岬洋介の指導のもと、懸命にリハビリとレッスンに励みます。
祖父が亡くなったことで、遥は莫大な遺産を相続することになります。すると、遥の周囲で、不審な事件が次々と起こり、ついに、殺人事件まで起きてしまいます…。
登場人物
- 香月遥(こうづき・はるか)
ピアニスト志望の少女。祖父と従姉妹のルシアとともに自宅で火事に遭う - 片桐ルシア(かたぎり・ルシア)
遥の従姉妹。両親をスマトラ沖地震の津波で亡くし、香月家で暮らしている - 香月玄太郎(こうづき げんたろう)
遥の祖父。お金持ち。遥に音楽教育および音楽活動の費用として遺産の半分を残す - 香月徹也(こうづき・てつや)
遥の父親 - 香月悦子(こうげつ・えつこ)
遥の母親 - 香月 研三(こうづき・けんぞう)
遥の叔父。徹也の弟。無職 - 綴喜みち子(つづき・みちこ)
介護士。香月家の食事なども用意するお手伝いさん
- 岬洋介(みさき・ようすけ)
探偵役。ピアノ教師として遥を指導し支える - 鬼塚(おにづか)
遥やルシアが通うピアノ教室の教師 - 新条(しんじょう)
形成外科医。遥の担当医 - 加納(かのう)
香月家の顧問弁護士。玄太郎の遺言を公表 - 榊間(さかきま)
刑事 - 下諏訪美鈴(しもすわ・みすず)
大学生。アサヒナ・ピアノコンクールの出場者のひとり
感想
トリックが素晴らしいです。ミステリーだと思って読み始めたら、一人の少女の成長を描いた青春小説で、気を抜いていたら大どんでん返しに遭うという、そんな感じのミステリーです。
- どんでん返し!
中山七里先生の代名詞ともいえる『どんでん返し』。この作品にももちろんあります!最後、盛大に騙されます - 音楽描写がすごい!
演奏の描写が豊かです。音楽が文章でどんな風に表現されるのか?というのが、一つの見どころになります - 主人公の成長!
全身に大火傷を負いながらも、ピアニストを目指して懸命に努力する主人公の姿に感動してしまいます。ミステリーと音楽だけではなく、青春小説も融合しているといえます
ネタバレ注意
火事でルシアは死んだと考えられていましたが、死んだのは遥でした。つまり、遥としてリハビリとレッスンを受け、コンクールに出場したのは、片桐ルシアです。ルシアは大やけどを負ったことを利用し、香月遥になりますして、生活していました。
遥の母親である悦子は、偽の遥の正体に気付いてしまい、遥になりすましていたルシアに殺害されました。階段を下りなかったという謎が登場しますが、その理由は、怪我のために、階段を容易に下りることができなかったからです。
なお、遥(ルシア)に嫌がらせをしていたのは、介護士の綴喜みち子です。綴喜は遥の正体に気付いており、ルシアが遺産目当てで火を放ち、祖父と遥を殺害したと考えていました。これは綴喜の早合点で、火事は偶然起きた事故です。
結末
遥に成りすましたルシアはコンクールで優勝を果たします。発表のとき、既に岬洋介に告発されていましたが、岬洋介が「未成年の犯罪に日本の法律は寛大だ」といって励まします。最後、ルシアは罪を認め、罰を受ける覚悟をし、心の中で「さよなら、ドビッシュー」と呟きます。それは、罰を受けるのでしばらくピアノとは関わることができないということを意味しています。
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