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君のクイズ【あらすじ・ネタバレ・感想・考察】

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 「君のクイズ」は小川哲(おがわ・さとし)氏の推理小説で、クイズのやらせを謎にしたミステリー作品です。2023年本屋大賞6位にランクインしており、2023年の日本推理作家協会賞も受賞しています。この記事では、物語のあらすじと真相、みんなの感想などをまとめています。

項目 説明
タイトル 君のクイズ
評価
著者 小川哲
出版社 朝日新聞出版
シリーズ 単発
発売日 2022年10月
Audible版 なし
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あらすじ

生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」の最終ラウンドで、三島玲央は本庄絆と戦っていた。両者譲らず、互角の戦いを繰り広げ、とうとう勝敗が決する最終問題を迎える。正解すれば、賞金1000万円。緊張感漂う中、アナウンサーが「問題――」と発した瞬間に、本庄絆がボタンを押した。まだ、問題は一文字も読み上げられていない。それにも関わらず、本庄は「ママ.クリーニング小野寺よ」と答える。それは確かに、問題の正答だった……。

Q.『ビューティフル、ビューティフル、ビューティフルライフ』の歌でお馴染み、天気予報番組『ぷちウェザー』の提供やユニークなローカルCMでも知られる、山形県を中心に四県に店舗を構えるクリーニングチェーンは何でしょう?
A.『ママ.クリーニング小野寺よ』
小川哲,君のクイズ P22

本庄絆の優勝が決まった。三島は本庄のゼロ文字押しに優勝決定後の記憶をなくすほどに驚く。生放送の終了後、ソーシャルメディアに様々なコメントが投稿され、その中には本庄を称賛する声もあった。一方、三島を含む番組出演者達や一部の視聴者はやらせを疑っていた。クイズに真剣に取り組んでいた三島達は番組に説明を求めるが、その回答は、全く納得できないものだった。

番組の制作者は“演出に問題があった”とし、謝罪した。本庄絆は優勝を辞退し、優勝賞金とトロフィーを返却した。この対応に微塵も頷けなかった三島はやらせの真相を自分の手で探ろうとする。

登場人物

主な登場人物をまとめます。主人公の三島と本庄絆以外は、それほど登場しません。以下の人物以外に、Q-1グランプリの出場者である片桐さんや富塚さん、三島の後輩である山田などなどが登場します。

名前 説明 解説
三島玲央
みしま・れお
主人公
出版社勤務
Q-1グランプリの決勝戦で敗退する
対戦相手のゼロ文字押しに違和感をもつ
本庄絆
ほんじょう・きずな
対戦相手
大学生
Q-1グランプリの決勝で勝利する
優勝後、やらせを疑われ賞金などを返却。音信不通となる
坂田泰彦
さかた・やすひこ
番組責任者 Q-1グランプリのプロデューサー
本庄裕翔
ほんじょう・ゆうと
絆の弟 三島に兄である絆の過去を教える
桐崎
きりさき
三島の彼女 ゲーム好き
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ネタバレ

三島はとりあえず本庄にメッセージを送ったが、案の定、返信はなかった。どうやら、Q-1グランプリのあと、本庄は誰とも連絡を取っていないようだった。番組プロデューサーの坂田にも問い合わせたが、たいした返答は得られない。その後、三島は本庄が出演していたクイズ番組の映像を手に入れたり、本庄の弟から事情を聴いたりして、情報を集めた。そして、やらせかどうかを徹底的に調べるため、Q-1グランプリの決勝戦映像を見直すことになる。

一問ずつ問題を振り返り、三島はクイズにまつわる出来事を思い出していく。幼い頃に交わした兄との会話、同棲相手の桐崎さん、クイズプレイヤーになったきかっけなどなど。そして、競技クイズならではのテクニックも確認していく。それはきっと、一般人には魔法のようにみえるだろう。見方によっては、それこそがやらせだと思われるかもしれない。そんなことを考えていくうちに、ゼロ文字押しがやらせではなかったという可能性も浮かび上がってくる。

三島は本庄絆の弟である本庄裕翔とも会っていた。裕翔によれば、本庄絆は中学時代、いじめにあっていたという。その頃暮らしていたのが山形県で、ローカル情報である「ママ.クリーニング小野寺よ」を知っていてもおかしくはなかった。

決勝の分析し続け、三島はあることに気付く。決勝で出題された問題は、回答者が過去に出題されたクイズや縁のある地域に基づいて作られていた。それは、本庄だけに偏った傾向ではなく、三島にも有利になるようなっていた。その理由は生放送のクイズ番組を成立させるために、製作者側が盛り上がる問題を仕込んだためだった。そんな考えを三島はメッセージで本庄に伝えた。そしてついに本庄から連絡が届き、レストランで真相を聞くことになる。

真相解説

やらせはあったのか?というのが最大の謎となるわけですが、本庄絆のゼロ文字押しは完全なやらせではありませんでした。本庄は番組が始まる前から製作側がどのような問題を出題するか推理していました。最終問題となった「ママ.クリーニング小野寺よ」は、本庄と番組プロデューサーの坂田にとって思い出のある一問となっており、本庄はこのクイズが出題されると予想していました。まったくヒントがないように考えられていた最終問題ですが、問題を読み上げるアナウンサーの口の形というヒントがあり、これが本庄の予想を確信へと近づけていました。

本庄にとって「ママ.クリーニング小野寺よ」クイズはクイズを勉強するきっかけをつくった一問でした。本庄はクイズができないイジられキャラでしたが、テレビ番組で出題されたクリーニング問題で初めて正解を勝ち取り、収録中に涙を流してしまいました。涙の理由は、山形県でいじめを受けていた頃の人生を肯定された感じたからです。このときの番組プロデューサーが坂田で、山形クリーニング問題は二人にとって思い出の一問となります。

いじめを受けていた本庄がクイズで人生を励まされ、その問題がQ-1の最終問題になって、ゼロ文字押しと正答を実現させた――、というのは実は作り話です。本庄は近々に開設したYoutubeチャンネルで、ゼロ文字押しの真相と銘打って作り話を披露し、視聴数などを稼ぐつもりでした。

山形クリーニング問題が過去に出題されたことや、本庄が問題を推理してゼロ文字押しをしたことなどは本当です。しかし、クリーニング問題が出されて本庄が正答したとき、彼は涙を流したりはしていません。実際、本庄はMCに正解したことをイジられ、不快な態度を露わにしてしまい、場の空気を悪くしていました。このことについて本庄はプロデューサーの坂田から番組降板をほのめかすような言葉を浴びせられます。このとき、本庄はイジられキャラで通すのは難しいと考えクイズの勉強を始めました。目標は知名度を稼いでYoutubeチャンネルやオンラインサロンを開設することにあり、その王手がゼロ文字押しでした。

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感想と考察

やらせ=不正行為≒犯罪ということで、主人公の三島は探偵になっていました。殺人ほど惹かれないかもしれませんが(そもそも人殺しに魅力を感じるというのが狂っていますが)、ゼロ文字押しという謎に対して、予想外の真相がラストに語られ、ミステリーになっていたと思います。

真相解説の項目で“ゼロ文字押しは完全なやらせでない”と書いていますが、“完全”を付け加えた理由は、問題と答えを予め知っていたわけではなかったからです。出題の傾向を読み解くというのは勝つために必要なことですが、正々堂々と戦っているかというと、そうではなさそうです。青臭いですね。しかしながら、どうしてそこまで勝ちにこだわったのか?ということを考えてみると、作中においてその答えはビジネス、つまりお金に着地していたと思います。動機は金ということなので、これはミステリーにもよく登場しますし、とてもわかりやすいです。対して主人公は「クイズは人生である」という答えを出しています。これは競争を強いられる主義や思想から解放するような一文だったと思っています(個人の思想がモリモリに出ています)。

ママクリーニング小野寺よ

「ママクリーニング小野寺よ」は実在するクリーニングチェーン店です。山形、秋田、新潟、宮城に店舗があり、その数は270に及ぶと企業HPに書かれています。問題文に登場したビューティフル♪ビューティフル♪が気になるところですが、公式には公開されていないようです。

みんなの感想

 口コミを調べてみると、読みやすい、今までに読んだことがない、クイズの奥深さなど、ポジティブな感想が多く投稿されていました。

奥深い

 奥深いクイズの世界など、奥深いというコメントが口コミで比較的多く使われています。やらせという不正行為の謎を解くミステリーですが、クイズについての深い話もたくさん登場します。

クイズ番組が好きなので、とても面白かったし、競技クイズの奥深さやクイズプレイヤーの思考回路を知ることができて勉強になった。

早押しの奥深さにびっくりする。知識だけでは解答できない。経験から正解が導き出される。「ピンポン」という音は肯定してくれる音……。こちらにまでクイズが出題された気がするラストだった。

クイズは知識と記憶力が全てと思っていたが、この本を読んで自身の浅はかさが恥ずかしくなった。クイズとは、何て奥深く知的なスポーツなんだろうと唸ってしまう。

コメント

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