エラリー・クイーンのドルリー・レーン四部作第一作『Xの悲劇』についてあらすじ、感想、ネタバレなどのまとめです。本格ミステリーという言葉を耳にすると思い浮かびそうな作品の一つで、トリック、読者の予想を裏切る意外な犯人、論理的な推理など、様々な魅力があります。
あらすじ
1930年代のニューヨーク――豪雨の夜。株式仲買人のハーリー・ロングストリートが婚約者の女優チェリー ・ブラウンを披露するため、パーティーをホテルで開催した。しかし、その夜、ロングストリートは満員電車の中で、奇妙な凶器によって殺されてしまう。それは、無数の針が仕込まれたコルク球…針には致死量のニコチンが塗られていた。
事件を担当することになったサム警視とブルーノ地方検事は、ロングストリートに恨みを持つ人物が多数いることを知る。共同経営者のジョン・デウィット、株取引で損をしたコリンズ、元恋人の秘書アンナ・プラットなど、容疑者は次々と浮上するのだが、決定的な証拠はなかった。
捜査に行き詰ったサム警視は、元舞台俳優で卓越した推理力を持つドルリー・レーンに協力を依頼。レーンは事件のあらましを聞いただけで、犯人の目星がついていることを示唆するが、その正体を明かそうとはしなかった。
そんな中、第二の殺人が発生。今度は、ロングストリートが殺された市電の車掌が殺害されてしまう…。
小説の特徴
- ダイイングメッセージ
被害者が残したメッセージに隠された意味とは - 緻密なロジック
ドルリー・レーンによる論理的な推理!伏線の回収も見事で無駄のない構成! - 意外な犯人:
読者の予想を裏切る犯人の正体と、その背後にある複雑な動機 - 魅力的なキャラクター
個性的なドルリー・レーンはもちろん、サム警視やブルーノ地方検事など、脇を固めるキャ ラクターも魅力的 - 舞台のような構成
各章が幕で区切られ、演劇のような雰囲気
こんな読者にオススメ!
- 本格ミステリーで論理的な思考を楽しみたい!
- 古典ミステリーを読んでみたい!
感想
古典ミステリーの面白さを再認識しました。ドルリー・レーンの鮮やかな推理と、最後に明かされる「X」の意味には、ほんとに鳥肌が立ちました。論理的な推理が素晴らしく、読み応えがあったと思います。ただ、現代の感覚からすると、少し時代がかった部分があるのも確かかもしれません…。あと、登場人物の多さと、事件に関わる人々の関係性の複雑さは、読み進める上でちょっと苦労するかもしれません。ただ、このあたりを気にしなければ、本格ミステリーならではの醍醐味が待っていると思います!
高評価のポイント
- 緻密なプロットと論理的な謎解き
無駄がなく、論理的に構成されたストーリー展開! - 意外な犯人と動機
読者の予想を裏切る犯人の正体! - ドルリー・レーンの魅力的なキャラクター
癖のある人物ながらも、その推理力と行動力に魅了される - タイトルの意味の見事な回収
最後に明かされる「X」の意味に感動!!
低評価のポイント
- 文章が読みにくい
古典的な文体や翻訳の影響で、現代人からすると読みにくく感じるかも… - 登場人物が多くて混乱する
登場人物が多くて関係性が複雑で、その上、海外の人なので誰が誰だかわからなくなる - ドルリー・レーンに共感できない
高評価のポイントでもあるけど…勿体ぶった態度や事件を解決するまでの回りくどさに、イライラを感じることもあるかもしれません… - トリックに無理がある
現代の科学捜査の視点で考えるとトリックに無理があるかも
ネタバレ
犯人はマーティン・ストープスでした。彼には、かつてロングストリート、ジョン・デウィット、そしてウィリアム・クロケットに陥れられ、妻殺しの罪を着せられた過去があり、5年もの歳月をかけて復讐を遂げようとしていました。ドルリー・レーンは被害者の指がXの形だったことから、犯人が車掌であることを見抜いています。
ロングストリートを殺害したチャールズ・ウッドは、実はマーティン・ストープスが変装した姿でした。チャールズ・ウッドが二番目の被害者のようにみえましたが、実際に死んだのはウィリアム・クロケットです。そして最後に殺されたのが、ジョン・デウィットです。
- 複数の人物への成りすまし
ストープスは市電の車掌チャールズ・ウッド、乗客ヘンリー・ニクソン、そして新たな車掌エドワード・トムソンという3つの人物を演じ分けていた - 死の偽装
ウィリアム・クロケットを殺害し、その死体をウッドとして偽装することで、自身の存在を消していた - ダイイングメッセージ
デウィットにダイイングメッセージを残させ、捜査を混乱させることを目論んでいた - 綿密な計画ストープスは、5年前から計画を練り、綿密な準備を行っていた。3人の行動パターンを把握し、犯行に使用する凶器やアリバイ工作などを周到に準備していた
Xの意味
タイトルにもあるXですが、3つの意味があります。ひとつめが未知数で、物語の中で犯人を指す記号として使われる「X」です。もうひとつがダイイングメッセージで被害者が残した指で作られた「X」の形。そして、車掌のパンチです。切符に押される、車掌ごとの独特な「X」型の刻印が、つまりダイイングメッセージの意味でした。
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