『三破風館』は、三破風館を家具も含めて全て買い取りたいという人物が現れるエピソードです。原作は1926年に発表されました。「スリー・ゲイブス」というタイトルがつけられている場合もあります。破風とは、屋根の端にある傾斜した部分をいいます。三破風館なので、三つ破風があるという意味になります。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1926年10月発表 (ストランド) |
発表順 | 55作品目 (60作中) |
発生時期 | 1903年5月26日~ 5月27日 |
発生順 | 56件目 (60作中) |
あらすじ
ホームズとワトスン博士が寛いでいると、スティーブ・ディクシーがベーカー街221Bに押し掛けてくる。ディクシーはホームズが調査している事件から手を引かせるため、脅迫しに来たのだった。最初は威勢のよかったディクシーだが、ホームズがパーキンス少年の殺人事件について話し始めると、すぐに委縮し、221Bを立ち去るのだった。
ホームズが調べているのはメアリー・メーバリー夫人の依頼だった。夫人は1年ほど前に息子を亡くした未亡人で、三破風館に暮らしてた。特に高価なものがあるわけでもない三破風館だったのだが、ある日、家具も含めて言い値で買い取るという人物が現れる。これに喜んだメーバリー夫人は世界一周旅行を夢見るのだったが、顧問弁護士であるスートロ氏に売買を断るよう助言されてしまう。スートロ氏によれば、契約によって、退去時は家からいかなる所有物も持ち出せないようになっているという。奇妙な申し出に困った夫人は、ホームズに手紙で事情を説明したのだった。
ホームズとワトスン博士は三破風館を訪れ、盗み聞きをしていたメイドのスーザンが黒幕の手先であることに気付く。スーザンがホームズへの調査依頼を密告し、子分のディクシーが221Bに現れたというわけである。彼ら雇っているのは金持ちの女性らしいのだが、スーザンにすべてを打ち明けるつもりはなさそうだった。
ネタバレ
ホームズは最近屋敷に届いたものが怪しいと考え、病死した息子ダグラスの持ち物に注目する。ディクシーの姿をみかけたホームズは警戒を強めるのだが、三破風館を去った後、盗みに入られてしまう。強盗はダグラスの遺品だった原稿を盗んでいき、それがどうやら目的のものだったらしい。夫人は強盗から原稿を守ろうとしたのだが、手元に残ったのはほんの一部だけだった。
駆けつけたホームズは原稿の一部を読み、それが、奇妙な文章になっていることに気付く。そして、黒幕が大金持ちのイザドラ・クラインであることに気付き、彼女のもとを訪ねるのだった。
真相解説
三破風館を買い取ろうとしていた人物の正体はイザドラ・クラインでした。メアリー・メーバリーの息子であるダグラス・メーバリーはイザドラの男遊びの相手でしたが、ある日、捨てられてしまいます。このことに絶望したダグラスは復讐のために、イザドラの不埒を行いを告発する暴露本を執筆します。
本が出版される前にダグラスは病気で亡くなってしまいますが、原稿だけ残っていました。この原稿を処分するために、イザドラは三破風館を家具や備品等も含めて全て買い取ろうとしていました。しかし、主のメアリーに断られてしまったため、ディクシーなどを雇って非合法な手段に及びました。
なお、ホームズはイザドラの行いについて沈黙する代わりに、マーバリー夫人に世界一周旅行ができそうな金額を渡すよう伝えます。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1994年3月7日に放送されました。シーズン6の第1話(51分)となります。シリーズタイトルは“The Memoirs of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの思い出)”となりますが、日本語版は「シャーロック・ホームズの冒険」のままとなっています。
項目 | 内容 |
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シーズン | 6 |
話数 | 1 |
放送順 | 36 |
長さ | 51分 |
放送日(英) | 1994年3月7日(月) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作小説とドラマの展開や結末など、ストーリーは概ね同じです。ドラマではワトスン博士が護衛のために、三破風館に残っています。ワトスンとディクシーの戦闘はドラマオリジナルといえます。いずれにしても原稿は盗まれてしまうため、結末などに影響はありません。
ドラマでは、ワトスン博士が221Bに帰宅したとき、既にディクシーがいますが、原作はホームズとワトスン博士が談笑しているときにディクシーが乗り込んできます。なお、原作小説に、ディクシーがホームズを持ち上げるような描写はありません。その他、ドラマでは、ホームズのイザドラに対する要求に公爵との婚約破棄も追加されています。
感想
スティーブ、スーザンなどの小悪党が登場します。中でも、いきなり殴り込んでくるスティーブは過去の殺人をホームズにほのめかされて、態度が一変したりします。主人公の強さを示すために登場するザコキャラ、という感じが凄く微笑ましいです。このスティーブに対して、「生まれつきこうないのか?それとも段々こうなったのかね?」や「あんたの体臭はどうも好きになれない」などと言い放っています。若干、ホームズらしくない言葉に思えますが、小悪党に礼儀を示すというのも、おかしな話かもしれません。ただ、ホームズのこの発言はスティーブが黒人であることを理由にしているため、差別的発言となっています。
考察
非常にシンプルな事件だったと思います。屋敷をまるごと買い取りたいというのは、何かが隠されていることを示唆しており、ラストまでにすべてのヒントが比較的明確に提示されていました。なので、典型的な本格推理小説といえそうです。
まとめ
シャーロック・ホームズの「三破風館」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。ホームズが既に依頼を受けている状態で始まりました。
- 発端ホームズがディクシーに脅迫される
ホームズは三破風館の買い取りについて調べていた - 展開三破風館へ向かい黒幕の手先をみつける
三破風館が盗みに入られてしまう - 結末強盗が盗んでいったのは原稿だった
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。シャーロック・ホームズとワトソン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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イザドラ・クライン Isadora Klein/td> | 事件の黒幕。遊んで捨てたダグラスに小説で不埒な振舞いを告発されそうになる 小説の原稿を取り戻すため、三破風館の購入などを企てた |
メアリー・メーバリー Mary Maberley |
三破風館の主。奇妙な売買を持ち掛けられたため、ホームズに相談する 最終的に、世界一周旅行用の資金を手に入れる |
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