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ホームズ

未婚の貴族|ホームズ【あらすじ・感想・ネタバレ解説】

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 未婚の貴族(独身の貴族)は、花嫁が失踪するエピソードです。この記事では、原作小説およびグラナダ版ドラマのストーリーとネタバレ、原作とドラマの違い、作品の感想などをまとめています。

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あらすじ

 「未婚の貴族」のあらすじをタイムラインで簡単にまとめます。ホームズが依頼を受け調査するという流れです。

ハイライト
  • 発端
    サイモン卿が花嫁失踪の調査を依頼する
    花嫁のウェディングドレスとメモがみつかる
  • 展開
    [小説]ホームズがメモに使われたホテルの伝票に注目
    [ドラマ]フローラが失踪事件の容疑者となる
    [ドラマ]ベールの女性がホームズにサイモン卿について語る
  • 結末
    [小説]ホームズがサイモン卿や花嫁を招待する
    [ドラマ]花嫁とホームズ達が城へと向かう

Still, jealousy is a strange transformer of characters.
それでも、嫉妬は性格を奇妙に変貌させるものだ。
Arthur Conan Doyle , The Adventure of the Noble Bachelor

登場人物とキャスト

 登場人物とキャストをまとめます。ホームズ、ワトスン博士、ハドスン夫人は省いています。ヘレナとアグネスはドラマオリジナルのキャラで、どちらも同じ俳優が演じています。

名前 キャスト
セント・サイモン卿
Lord Robert St. Simon
サイモン・ウィリアムズ
Simon Williams
ヘンリエッタ・ドーラン
Henrietta Doran
パリス・ジェファーソン
Paris Jefferson
フローラ・ミラー
Flora Miller
ジョアンナ・マッカラム
Joanna McCallum
ヘレナ / アグネス・ノースコート
Lady Helena / Agnes Northcote
アンナ・コールダー=マーシャル
Anna Calder-Marshall
フローレンス夫人
Lady Florence
メアリー・エリス
Mary Ellis
モンゴメリー警部
Inspector Montgomery
ジオフレイ・ビーバース
Geoffrey Beevers
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原作小説

 原作は1892年に発表されました。「未婚の貴族」以外に「独身の貴族」「独身貴族」と訳されることもあります。また「花嫁失踪事件」という訳もあります。なお、事件の発生時期が1887年であるとする説もあります。

The Adventure of the Noble Bachelor
項目 内容
作者 コナン・ドイル
発表 1892年4月発表(ストランド)
発表順 12作品目(60作中)
発生時期 1886年10月8日
発生順 6件目(60作中)

ストーリー

グラナダ版ドラマとは異なったストーリーになっています。

 結婚式の最中に花嫁のハティ・ドーランが突然行方不明になってしまい、花婿のサイモン卿はシャーロック・ホームズに調査を依頼することになる。

 結婚式には見知らぬ男が参列していたという。式が終わり、新郎新婦が退場したとき、花嫁のハティが花束を落としてしまい、それを拾って手渡したのが、その見知らぬ男だった。その後、披露宴が始まったのだが、花嫁がどこかへ姿を消し、そのまま、長い間、披露宴の席に戻らず、失踪が発覚する。

 近くの公園では、花嫁が着ていたドレスと一枚のメモがみつかった。警察はメモが犯人の手掛かりになるとと考えていたのだが、ホームズはメモの裏面に注目し、それがホテルの伝票であることに注目する。そして、ホームズは伝票からホテルを特定し、あっさり事件の解決してしまう。

 真相を見破ったホームズは自宅で5人分の宴席を準備し、客人として、サイモン卿が訪ねてくる。残りの二人は、失踪した花嫁のハティ・ドーランと、花束を拾ったフランシス・モールトンという男だった。そして、二人の口から事件の真相が語られる。

ネタバレ

数年前の1881年。ハティ・ドーランとフランシス・モールトンは、アメリカのロッキー山脈の鉱山町で出会い、結婚した。しかし、鉱脈を見つけ出して大金持ちになったハティの父親が、貧乏人であるモールトンとの結婚に反対し、ドーランをサンフランシスコへと連れていってしまう。

ハティを諦めきれなかったモールトンは、密かにサンフランシスコへ向かい、ハティと再会する。このときモールトンは、金持ちになってハティと結婚式を挙げると約束した。その後、モールトンは、モンタナ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州を転々とするのだが、ある日、モールトンのいた鉱山がインディアンの襲撃を受けてしまう。

襲撃事件の犠牲者を報せる新聞の記事に、モールトンの名前があった。記事を読んだハティはモールトンの死を知ることになる。そして、1年以上、モールトンからの連絡はなかった。ハティが完全にモールトンのことを諦めようとしたちょうどその頃、サイモン卿がサンフランシスコへとやって来て、ハティとサイモン卿は、運命の出会いを果たす。

真相解説

夫が亡くなったと思い、別の男性と結婚したところ、結婚式に死んだと思っていた夫が現れたというストーリーです。インディアンに襲われた死んだと報道されていたフランシス・モールトンですが、実は捕虜になっていました。1年以上の月日が流れ、ようやく解放されたモールトンは、ハティを探して、アメリカからイギリスへとやってきて、新聞で結婚式を知ることになります。

モールトンは拾った花束を返すときに、ハティにメモを渡しており、このメモに従ってハティは行動していました。なお、ふたりが身を潜めていたのは、ホームズが突き止めたホテルでした。

サイモン卿はホームズが用意した夕食の席で、花嫁が既婚であるという事実を突きつけられてしまいます。落胆したサイモン卿は、ホームズから夕食に誘われますが、丁重にお断り、その場を立ち去ります。

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原作とドラマの違い

 原作小説とドラマの内容はだいぶ異なっています。ドラマにも、原作の「未婚の貴族」と同様に、花嫁の失踪事件が登場しますが、登場人物の設定や結末はかなり違っています。同じ部分といえば、死んだと思われていた夫が結婚式に現れ、その後、ホテルに身を隠すという部分だけです。

 ドラマにはドラマオリジナルの事件やエピソードがいくつも加えられています。原作小説のサイモン卿は、悪いところのない貴族でしたが、ドラマのサイモン卿はかなりの悪人になっています。結婚歴があるなどの設定はドラマオリジナルで、昔の妻を監禁したり、殺人を依頼して殺したりというのも、原作にはありません。サイモン卿に関するエピソードは、ほぼドラマオリジナルといえます。

 ホームズが悪夢にうなされていたり、ベールの女性が登場したりするのも、ドラマだけです。フローラ・ミラーが容疑者となった発砲事件も登場しません。

ドラマ

 グラナダ版ドラマは1993年2月3日に放送されました。テレビ映画第5弾(104分)となります。

The Eligible Bachelor
項目 内容
シーズン
話数
放送順 35
長さ 1時間44分
放送日(英) 1993年2月3日(水)
キャスト キャスト一覧

ストーリー

原作小説とは異なったストーリーになっています。

 ホームズは取るに足らないつまらない依頼にうんざりしていた。ちょうど同じ頃、ホームズは悪夢をみるようになり、起きているときも幻影を見始めてしまう。

 一方世間では、独身貴族で知られるサイモン卿の結婚が話題になっていた。サイモン卿は大富豪の娘であるヘンリエッタ・ドーランと結婚式を挙げたのだが、式の当日に花嫁が失踪するという事件に巻き込まれてしまう。花嫁が消えてしまったサイモン卿はヘンリエッタの捜索をホームズに依頼するが、ホームズのやる気は皆無に等しかった。するとそこにハドソン夫人が現れ、ベールを被った謎のご婦人から、メモを受け取ったと伝える。そのメモには「モードとヘレナはいずこへ?」と書かれていた。

 その後、モンゴメリー警部がホームズ達に、フローラ・ミラーという女優の逮捕を報告する。フローラは式の日に、サイモン卿と口論になっていたし、花嫁と一緒にいた姿も目撃されているという。しかも、ミラーには、以前、サイモン卿を狙撃したかもしれないという疑いもかかっていた。フローラは、サイモン卿のかつての愛人だった。さらに、花嫁が失踪直前に持っていたと思しきメモにはF.Mというイニシャルが書かれていた。

 しばらくして、ベールの婦人が221Bへとやってくる。婦人の名前はアグネス・ノースコートで、姉のヘレナは、サイモン卿の妻だった。そのヘレナは今、サイモン卿に財産を奪われ、精神病患者としてグラーヴン城に幽閉されているという。このことを知ったホームズとワトソンは城へと向かう。同じ頃、フローラ・ミラーから全てを知らされたヘンリエッタ・ドーランも城へと向かっていた。

ネタバレ

まず、花嫁だったヘンリエッタ・ドーランの失踪ですが、これは死んだと思っていた夫が結婚式に現れたためです。つまり、誰かに連れ去られたわけではなく、自ら身を隠しています。疑われていたフローラ・ミラーですが、失踪事件はもちろん、発砲も彼女の仕業ではありません。しかしながらフローラは、愛人関係にあったサイモン卿に殺されてしまいます。なお、発砲の犯人はアグネス・ノースコート(ベールの女性)です。

サイモン卿は金目当てで結婚を繰り返していました。新しい妻であるヘンリエッタからも財産だけ奪って、殺そうとします。しかし、ヘンリエッタには夫がいたため、財産を手に入れることはできません。その後、サイモン卿は幽閉していたヘレナのもとへ向かいますが、ヘレナの罠によって瓦礫の下敷きとなり、死亡します。

サイモン卿が去ったあと、ヘンリエッタは城の男に襲われてしまいますが、ホームズ達によって救出されます。幽閉されていたヘレナもホームズによって無事に救出されます。

感想

原作とドラマでだいぶ違う話になっています。ホームズの悪夢が恐ろしい雰囲気を醸し出しており、ホラーテイストなエピソードでした。

考察

誰かが誘拐したようにも思えた花嫁失踪事件でしたが、実は、失踪者が自ら姿を暗ましていました。殺人などの凶悪な事件に巻き込まれたかと思いきや、単なる家出だったわけです。状況証拠がかなり揃った容疑者がいたため、殺人や誘拐の線が濃厚になっていたと思います。

まとめ

 シャーロック・ホームズの「未婚の貴族」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。

  • サイモン卿
    St. Simon
    結婚式の最中に花嫁が失踪してしまう。最終的に、花嫁の夫が現れ、結婚はできなくなってしまう。ドラマでは、金持ちの女性と結婚して金を奪い取る悪人になっている。
  • ハティ・ドーラン
    Henrietta Doran
    サイモン卿の花嫁となるが、式場に夫のフランシス・モールトンが現れたため、式場から逃亡する。ハティはモールトンのことを愛していたが、死んだと思っていた。

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