『サセックスの吸血鬼』は、ホームズとワトスンが吸血鬼について調べるエピソードです。原作は1924年に発表されました。「サセックスの吸血鬼」と訳されることがほとんどです。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1924年1月発表 (ストランド) |
発表順 | 52作品目 (60作中) |
発生時期 | 1896年11月19日~ 11月21日 |
発生順 | 40件目 (60作中) |
あらすじ
ワトスン博士の旧友であるロバート・ファーガスンがホームズに“吸血鬼”に関する悩みを相談する。ロバートは、再婚した南米出身の妻が幼い実子の首に噛みついて血を吸っている姿を2度も目撃していた。妻と良好な関係を築いていたロバートだが、吸血姿を目撃された妻は何も言わずに部屋に閉じこもってしまう。
ファーガスン夫人は、ロバートと前妻との間に生まれたジャックに暴力も振るっていた。ロバートは幼い頃に体が不自由になったジャックを溺愛していたのだが、後妻であるファーガスンとジャックは仲が悪かった。吸血鬼という相談内容にうんざりしていたホームズだったが、ロバートから事情を聞き、事件に興味をもつ。そして、調査のため、ワトソンと共にサッセクスにあるファーガスンの屋敷へと向かう。
南米の調度品や武器が飾られた屋敷に到着したホームズは、後ろ足が不自由な犬が飼われていることに気付く。その犬は、ある日突然、麻痺の症状が現れたという。原因はわかっていない。
ファーガスン夫人に話を聞こうとするのだが、受け入れられたのは医師であるワトスンだけだった。しかも、ワトスンが話を聞いても、結局、夫人は幼子の血を吸った理由やジャックに体罰を与えた理由は語らなかった。ただ、夫人がロバートを愛しているということだけは確かなようだった。
ホームズは吸血された赤ん坊の傷口も確認した。そこに息子のジャックも姿をみせるのだが、客人であるホームズとワトスン博士には、敵意をむき出しにしていた。そして、ジャックが去った後、ホームズはある一つの結論に達したと伝えるのだった。
ネタバレ
ホームズはファーガスン夫人にメモを届けた。そのメモをみた夫人は、ホームズにも会うと伝える。
ホームズはファーガスン夫婦の前で推理を披露する。吸血鬼など存在しない。そう前提すれば、ファーガスン夫人の行為は血を吸うことだけが目的だったとは考えられない。そして、他に目的があったとすればそれは、毒を吸い出すことに違いない。つまり、夫人は赤ん坊を助け出すために、血を吸っていたということになる。
真相解説
ファーガスン夫人はもちろん吸血鬼ではありません。クラーレという毒を仕込まれた赤ん坊を助け出すために、血を吸い出していました。
そして、赤ん坊に毒を仕込んだ犯人はジャックです。ジャックは屋敷に飾られた武器を使って赤ん坊を殺害しようとしていました。ファーガスン夫人がジャックに暴力をふるったのは、ジャックの犯行に気付いていたからです。気付いていながらも、夫やワトスンに黙っていたのは、ジャックを溺愛していた夫が傷つくのを避けるためでした。
なお、犬の足が不自由になっていたのは、ジャックが毒を試したからです。ジャックは、父親が赤ん坊に愛情を注いでいたため、赤ん坊に嫉妬していました。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1993年1月27日に放送されました。テレビ映画第4弾(106分)となります。タイトルは“The Last Vampyre”で最後の吸血鬼という意味ですが、日本語のドラマタイトルは原作のタイトルにならい「サセックスの吸血鬼」となっています。
項目 | 内容 |
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シーズン | – |
話数 | – |
放送順 | 34 |
長さ | 1時間46分 |
放送日(英) | 1993年1月27日(水) |
キャスト | キャスト一覧 |
ストーリー
ファーガソン氏が新しい妻と赤ん坊を連れて屋敷へと戻ってくる。ファーガスンと亡くなった先妻の子供であるジャックは、父親達の姿をみて、嫉妬に苛まれていた。
同じ頃、村人達は吸血鬼の末裔と噂されるストックトンを恐れていた。ある鍛冶屋はストックトンとの口論の直後に死亡した。そして、ストックトンがファーガソン家を訪れた翌日、ファーガソンの赤ん坊が亡くなった。不可解な事件が相次いで発生し、村人達はストックトンが吸血鬼であると信じ始めた。困ったメリデュー牧師は、シャーロック・ホームズに調査を依頼することになる。
ホームズとワトスンが到着したとき、村では疫病が流行っているようだった。村で起きた不審死は疫病か、もしくは自然死に違いなかった。ファーガソン夫人やメイドはストックトンに魅了されていた。特にジャックは多大な影響を受けているようだが、それはストックトンが吸血鬼だからではなく、単に魅力的な男性ということに違いなかった。
ネタバレ
そんなストックトンも馬車の事故で死んでしまう。埋葬されたストックトンだったが、ストックトンが吸血鬼であると信じる村人達が墓を掘り起こし、棺を焼けた屋敷の地下室へと投げ込む。ファーガソン氏はストックトンの死体に杭を打ち込もうとするのだが、息子であるジャックに頭を殴られて倒れてしまう。父親を襲撃したジャックも自分は吸血鬼であると信じて高所から飛び降り、命を落としてしまう。
原作とドラマの違い
ドラマは原作の内容を含んでいますが、展開や結末など、だいぶ違った作品になっています。原作にはないドラマオリジナルの登場人物や設定が多く追加されているといえます。
ドラマで中心的な人物となるジョン・ストックトンは、原作には一切登場しません。そのため、ストックトンに関連する出来事、例えば、過去の放火事件や吸血鬼の末裔、不可解な事件などは、すべてドラマオリジナルです。
ドラマにもジャックの犯行は登場しますが、被害者や動機など、様々な点が原作とは異なります。ドラマのラストでジャックは亡くなりますが、原作にこのような描写はありません。
感想
ドラマに登場する村人に屋敷ごと焼かれた一族、その一族の末裔、そして吸血鬼伝説などなど、名探偵との対決に胸が躍る物語です。
ちなみにですが、毒を口で吸い出すというのは、危険なのでやめたほうがいいと思います。毒なので、口に入っただけでも危険なはずです。ポイズン・リムーバーみたいのを使うことが推奨されます。
考察
ドラマは、実は殺人ではなかったという結末です。犯人だと疑われていた人物は、完全に無実でした。殺人未遂も起きますが、これは、犯人と疑われていた人物に少年が傾倒したことが原因でした。いずれにしても、殺人は起きていません。ただの偶然、すなわち、突然死や病死なのに、それを邪推してしまう人を描いた作品だったと思います。
原作は子供が犯人というエピソードになっていました。子供といっても15歳ですので、中高生ぐらいの青少年といえます。動機は嫉妬で、いわゆるカイン・コンプレックスというやつでした。
まとめ
シャーロック・ホームズの「サセックスの吸血鬼」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。ホームズが依頼を受け調査するという流れでした。
- 発端[小説]ファーガスンが吸血鬼の相談にやってくる
[ドラマ]牧師が村で噂になっている吸血鬼の相談にやってくる - 展開ホームズとワトスンが調査のため村へ向かう
[小説]ホームズ達がファーガスン家で調査を進める
[ドラマ]ホームズが吸血鬼と噂される男性と会う - 結末[小説]ホームズが吸血鬼の真相を語る
[ドラマ]吸血鬼と噂されていた男性は…
登場人物(原作)
原作の登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。シャーロック・ホームズとワトソン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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ジャック Jack Ferguson |
ファーガスン氏と先妻の息子 赤ん坊に嫉妬し殺害しようとする |
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