『空き家の冒険(空き家の怪事件)』は、ホームズとモリアーティ教授がライヘンバッハの滝に落ちた後のエピソードです。原作は1903年に発表されました。短編集「シャーロック・ホームズの帰還」として発行されたのは1905年です。
項目 | 内容 |
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発表 | 1903年10月発表 (ストランド) |
発表順 | 28作品目 (60作中) |
発生時期 | 1894年4月5日 |
発生順 | 32件目 (60作中) |
あらすじ
ロナルド・アデアがパークレーンの自宅で死んでいるのが発見される。発見現場はアデアの部屋で、窓は開いていたが密室だった。狙撃の可能性もあったが、不審な音を耳にした者は誰もいなかった。死んだアデアは、物静かな青年で、唯一トランプという趣味があった。新しいパートナーであるセバスチャン・モラン大佐と240ポンドを勝ち取ったばかりだった。事件は非常に不可解で、ワトスンは、今はなきシャーロック・ホームズのやり方で真相を探ろうとするが、うまくいかなった。
そんなある日、アデアの自宅周辺を調べていると、一人の老人とばったり出会う。その不審な老人はワトスンの自宅までついてくるのだった。そしてその老人が変装をとき、ホームズであることを明かす。ワトスンはライヘンバッハの滝で死んだと思っていたホームズが生きているのを見て、大きなショックを受ける。そしてホームズは、自分はライヘンバッハで倒れたのではなく、死んだという認識を利用して世界中にいるモリアーティの共犯者を追跡していたと説明する。死んだアデアのパートナーであるモラン大佐は、実は、モリアーティの部下であり、これまで警察から逃れるほど狡猾であったため、ホームズはアデア事件を耳にしロンドンへと戻ってきたのである。ホームズは、モランが自分が戻ってきたことに気づいており、さらに、ホームズを殺害するつもりであると語るのだった。
ネタバレ
ホームズはワトスンを空き家(カムデン・ハウス)へ連れて行き、そこからベーカー街221Bの窓を確認した。ワトスンはなぜ窓にホームズの横顔が見えるのかと不思議がるが、それは蝋人形を使って囮にしているためだった。ホームズとワトスンが待ち伏せている間、モラン大佐は暗闇に隠れていた2人に気づかず部屋に入り、囮を撃ち抜く。ホームズが笛で警察を呼びつけ、ワトスンはモラン大佐を取り押さえた。現れたのはレストレード警部だった。ホームズはレストレードに、アデアはモラン大佐によって殺害されたと伝える。アデアは、モラン大佐のカード賭博での不正をみつけ、彼を告発しようとしたために、殺害されたのだった。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1986年7月9日に放送されました。シーズン3の第1話(51分)です。このエピソードからドラマのタイトルが「The Return of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの帰還)」となりますが、日本ではシーズン1と2のタイトルだった「シャーロック・ホームズの冒険」のままとなります。
項目 | 内容 |
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シーズン | 3 |
話数 | 1 |
放送順 | 14 |
放送日(英) | 1986年7月9日(水) |
出演者 | キャスト一覧 |
ストーリー
レストレードの求めに応じワトスンはロナルド・アデアの射殺体を調査することになる。死体が発見される前の日の晩、若き貴族のアデアは、セバスチャン・モラン大佐とカードで遊び、大金を失っていた。そんな彼が帰宅し、自室で金を数えていたところ、射殺された。手がかりは皆無で、レストレードは裁判で検視官にアデアは何者かに殺されたのだということ以外、何も言えなかった。
その後、裁判所を出たワトスンは攻撃的な態度の老人と衝突してしまう。ワトスンは詫びたのだが、自宅へ戻るとその老人が再びワトスンの目の前に姿を現す。その老人はワトスンに謝り、本棚を埋めるために何冊かの本を勧める。ワトスンが書棚へ向かい、少し老人から目を離すと、部屋にはあの老人ではなく、長身でハンサムな紳士が微笑んでいた。シャーロック・ホームズだった。驚いたワトスンはショックで気を失うが、すぐに意識を取り戻し、ホームズがどうやって死から逃れたのかを知るのだった。ホームズはバリツのおかげでモリアーティ教授を奈落の底に突き落とすことに成功したが、自分も死んだと思わせるのが得策であると話す。ワトスンにその秘密を打ち明けなかったのは兄のマイクロフト・ホームズよりも繊細なワトスンが、ホームズの死をうまくごまかせないと思ったからだった。感動的な再会の夜、であったが、ホームズとワトスンには難題が待ち受けていた。
ネタバレ
ベーカー街221Bの向かいの空き家に隠れて、ホームズとワトスンはある人物を待った。やがて空き家に、モリアーティ教授の部下であるモラン大佐が空き家に忍び込み、特殊な銃で221Bのホームズ(人形)を撃った。そして、ホームズとワトスンはモラン大佐捕らえ、その場に呼び寄せられたレストレード警部に事情を伝えるのだった。モラン大佐がアデアを殺したのは、自分がトランプでイカサマをしたことがばれたからで、モラン大佐は銃でモランを狙撃したのだった。そして、モリアーティ教授の仇を討つため、ホームズにも同じ目に遭わせようとしていた。犯人であるモラン大佐はレストレードに引き渡され、221Bへ戻ったホームズとワトスンは、ハドソン夫人と再会を祝いのだった。
原作とドラマの違い
原作とドラマは同じ内容です。ワトスンとホームズが変装した老人が出くわす場所が異なるなど、細かな違いはあります。
感想
ホームズが滝つぼに落ちて死んじゃった、と思い悲しい気分になり、目を潤ませた「最後の事件」のラストを忘れません。生きていて本当によかったですね。ホームズはボクシングも強いはずですが、今回は柔術でモリアーティをやっつけたようです。ちなみにですが、ドラマ「美しき自転車乗り」にホームズのボクシングシーンが登場します。紳士はストレートだ!の回です。
考察
シャーロック・ホームズが帰還し、大変感動するので、アデアの死がなんだかうす~くなったりします。しかしながらアデアの死には、窓は開いていたけれども密室、さらに、これといった動機も見当たらないという謎があり、ミステリーの事件として面白い状況になっています。スナイパーライフルみたいな銃で狙撃するというのが密室トリックなわけですが、意外と盲点なトリックだと思います。
モリアーティ教授ですが、彼は死んだようです。蘇りそうな予感もありますが、以降、モリアーティ教授は登場しません。ほんとうに死んでしまったようです。しかしながら、死体に関する直接的な描写はありません。さらに、モリアーティの死について、登場人物が語るという間接的なシーンもありません。描かれていないから死んだとは限らない、というのは横暴かもしれませんが、想像(妄想)の余地は残されているような気がします。むしろ、モリアーティ教授が生きているという話を書いたパスティーシュなどがあると思います。
まとめ
シャーロック・ホームズの「最後の事件」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。『最後の事件』の続きで、あの事件から3年経過していることになっています。
- 発端アデアの死体が発見される
ワトスンが調査する - 展開あやしい老人登場
老人がワトスンの自宅へやってくる
老人はホームズだった
アデア殺害の犯人を捕まえるため空き家へ - 結末空き家で待ち伏せし……
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。
名前 | 説明 |
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シャーロック・ホームズ Sherlock Holmes |
死んだはずの名探偵 老人に変装してワトスン博士の前に姿を現す |
ジョン・ワトスン Dr. John Watson |
医師 ホームズと再会し大変おどろく |
セバスチャン・モラン大佐 Colonel Sebastian Moran |
犯人 モリアーティ教授の部下でもある |
ロナルド・アデア Ronald Adair |
被害者 モランのインチキを告発しようとして殺害される |
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