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瀕死の探偵|あらすじ・ネタバレ解説【シャーロック・ホームズ】

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 瀕死の探偵』は、タイトルの通りホームズが瀕死に陥るエピソードです。原作は1913年に発表されました。タイトルは「瀕死の探偵」で統一されているようです。原題は“The Dying Detective”ですので、日本語タイトルはほぼ直訳です。

The Adventure of the Dying Detective
項目 内容
作者 コナン・ドイル
発表 1913年12月発表
(ストランド)
発表順 46作品目
(60作中)
発生時期 1887年11月19日
発生順 14件目
(60作中)
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あらすじ

 ワトスン博士がシャーロック・ホームズとの同居生活をやめてから2年後のある日、ベーカー街221Bの家主であるハドスン夫人がワトスンのもとへとやってきて、ホームズが病に倒れたと伝える。ワトスンはすぐに221Bへと向かうのだが、そこに待っていたのは、衰えて瀕死のホームズだった。

 ワトスンが近づこうとすると、ホームズはそれを拒否し、クーリー病という感染性にかかったと話す。それでもワトスンは診察を試みるのだが、ホームズはワトスンの医師としての腕前を信じず、他の医師を呼ぶことも断るのだった。病の影響かもしれないが、ホームズの態度はいつものそれとはだいぶ異なっていた。ワトスンが象牙の小箱を手に取っただけで激怒し、自身の所有物に触れないようにと叫ぶほどだった。

 そんなホームズが、しきりにカルヴァートン・スミスを呼べとワトスンに伝える。スミスはクーリー病に関して詳しい唯一の人物らしい。ワトスンは必ずスミスを連れてくると約束しスミスの屋敷へと向かうのだが……、門前払いをくらってしまう。ホームズとスミスは、スミスの甥であるビクター・サベッジの死に関して対立関係にあり、良好な関係とはいえない間柄に違いなかった。

 断られたワトスンだったが、その場で諦めるようなことはせず、スミスの部屋へと押し入る。そして、ホームズの危険な状態を説明し、診察を依頼する。するとスミスが不敵な笑みを浮かべ、診察を受け入れるのだった。

 スミスよりも先に221Bへと戻ったワトスン博士は診察に立ち会う腹積もりだったが、これもまた、ホームズに拒否されてしまう。そして、結局、部屋の隅に隠れて見届けることになる。

登場人物とキャスト

登場人物とキャストをまとめます。ホームズ、ワトスン博士、ハドスン夫人は省いています。なお、アデレード・サベッジはドラマのみの登場人物となっています。

名前 キャスト
カルヴァートン・スミス
Culverton Smith
ジョナサン・ハイド
Jonathan Hyde
ヴィクター・サヴェッジ
Victor Savage
ヒュー・ボネビル
Hugh Bonneville
ステイプルズ
Staples
マルコム・ヘブデン
Malcolm Hebden
モートン警部
Inspector Morton
ジョン・ラバノフスキー
John Labanowski
アデレード・サベッジ
Adelaide Savage
スザンナ・ハーカー
Susannah Harker
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ネタバレ

スミスが現れた。病人のホームズを荒っぽく起こすと、笑った。この病気にかかれば助かることはない。そう吐き捨てるスミスに、ホームズはスミスが甥を殺したかどうかなんてことは忘れると言って命乞いをする。その言葉を聞いたスミスは気分がよくなったらしく、ホームズを嘲笑いながら、象牙の小箱に仕掛けがあったと語り始める。

ホームズが部屋に置いてた象牙の小箱には、箱を開けると怪我を負うような細工がされていた。さらに、小箱には病原菌が仕込まれており、傷から菌が入るようになっていた。この方法で、スミスは甥とホームズを感染させていた。

語り終わると、スミスは小箱を回収し、ホームズが死ぬのを見物しようとする。ホームズは力なく、ガス灯を明るくしてほしいと頼む。スミスが応じ、ガス灯によって部屋があかるくなると、突然、ホームズが普段の声で「次はマッチと煙草が欲しいな」と言うのだった。

真相解説

ホームズは病に冒されておらず、瀕死のふりをしていただけです。ホームズの迫真の演技に騙され罠にはまったカルヴァートン・スミスは、ホームズが死ぬと思い込み自白しています。ガス灯を明るくするのは、ホームズから警察への合図で、この直後に、部屋にモートン警部がやって来ます。そして、部屋に隠れて一部始終を目撃していたワトスン博士はスミスの自供の証人となります。

ホームズは送られてきた小箱の仕掛けに気付いていました。気付いた上で、病人のふりをして、ハドスン夫人を騙し、さらにワトスン博士にも気づかれないようにしていました。ホームズが診察を拒否したのは、ワトスンであれば嘘を見破ると考えていたからです。

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ドラマ

 グラナダ版ドラマは1994年3月14日に放送されました。シーズン6の第2話(51分)となります。

The Dying Detective
項目 内容
シーズン 6
話数 2
放送順 37
長さ 51分
放送日(英) 1994年3月14日(月)
キャスト キャスト一覧

ストーリー

 アデレード・サベッジが銀行の重役である夫について相談するため、221Bへとやってくる。夫のヴィクター・サベッジはここ最近詩作に夢中になり、アヘン窟に通うようになったという。アデレードは原因が、ヴィクターの従兄であるカルヴァートン・スミスにあると疑い、ホームズとワトスンを晩餐会へと招待する。しかし、晩餐会のその日、ヴィクター・サベッジが突然倒れ、その後亡くなってしまう。従兄のカルヴァートン・スミスによれば、死因はスマトラ病で、アヘン窟で感染した可能性があるという。

 ヴィクターの死後、遺言によって遺産は全て従兄のカルヴァートン・スミスに相続されることになる。その結果、未亡人となったアデレードは子供達と共に屋敷から追い出されてしまう。

 未亡人と子供の追放を知ったホームズはスミスが相続した屋敷の前で、カルヴァートン・スミスが医学界から追放されるだろうと言い放ち、その場を立ち去る。その後、ホームズのもとに小包が届く。

以降のストーリーは原作小説と同じです。

原作とドラマの違い

 ドラマは原作小説をふくらませたような内容になっています。カルヴァートン・スミスによって殺された甥のビクター・サベッジは、原作では既に死んでおり、詳細は語られていません。しかしドラマは、ビクターが死んでおらず、物語の途中で謎の死を遂げることになります。ビクターの妻であるアデレード・サベッジがアヘン窟に通う夫の素行調査をホームズに依頼するというのも、原作にはありません。

 アデレードが屋敷から追い出されるシーンや、ベイカー街遊撃隊の登場もドラマオリジナルとなっています。スミスとビクターの関係が小説では甥でしたが、ドラマではいとこになっているという細かな違いもあります。その他、ドラマでは蚊が凶器に使われていましたが、原作は小箱のみとなっています。

感想

ホームズが死ぬかもしれないというシリアスな物語です。死なないことが何となくわかってしまうので、そこまで深刻ではないですが、ホームズが生きているとわかってほっとします。

余談ですが、英語のタイトルは“The Dying Detective”です。ミステリーによく登場する“Dying Message”は、そのままダイイング・メッセージで通じますが、無理矢理訳すなら「瀕死の言伝」ということになりそうです。

考察

探偵が死にそうなふりをして犯人に自白させるというトリックは、他のミステリー作品にも登場します。探偵が仕掛けるトリックですので、やや珍しいです。主人公の探偵役が死にそうになるわけですが、シリーズものの場合、主人公が死ぬなんてことは考えにくいので、演技であることがなんとなくわかってしまいます。

このエピソードは、犯人当てのミステリーというよりは、手ごわい犯罪者をどのように捕まえるかといった内容でした。ホームズはスミスの罠を回避し、それを利用して罠を張りました。推理小説というよりはサスペンスのような印象かもしれません。ただ、倒叙形式で構成された推理もの作品のラストシーンだけを抜き取ったような物語になっています。ホームズシリーズの中の倒叙作品であるというと語弊があるかもしれませんが、もしもスミスの犯行が序盤に描かれたりしていたら、倒叙モノになっていたと思います。

まとめ

 シャーロック・ホームズの「瀕死の探偵」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。ドラマは小説に前日譚を加えたような内容となっています。

ハイライト
  • 発端
    [ドラマ]アヘン窟に通う夫のビクターを心配して、アデレードが相談にやってくる
  • 展開
    [ドラマ]ホームズがアデレードの屋敷に招待されるが、ビクターが急死してしまう。
  • 結末
    [ドラマ]事件を調査するホームズに小包が届く
    [ドラマ&小説]ハドスン夫人がワトスン博士にホームズの急病を報せる
  • カルヴァートン・スミス
    Culverton Smith
    犯人。感染症を使って親族(原作小説は甥、ドラマはいとこ)を殺害する。ホームズも殺そうとするが見破られ、逆に罠を仕掛けられる。瀕死のふりをしているホームズや部屋に隠れているワトスン博士に気付かず、自慢げに自分の犯行を話し始め、決定的な証拠を残すことになる。

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