『踊る人形』は短編集「シャーロック・ホームズの帰還」に収録された作品です。原作は1903年に発表され、短編集として発行されたのは1905年になります。人が踊っているような絵で書かれた謎の文章をみて夫人が怯え始めます…。
項目 | 内容 |
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発表 | 1893年8月発表 (ストランド) |
発表順 | 44作品目 (60作中) |
発生時期 | 1898年7月27日~ 同年8月13日 |
発生順 | 30件目 (60作中) |
あらすじ
ヒルトン・キュービット氏は若いアメリカ人のエルシーと結婚したが、ある日、エルシーが恐怖に襲われて気を失う。エルシーは、どうやら、小さな踊っている人の絵を見たらしかった。エルシー自身は自分に暗い過去があると話していたのだが、その過去を問い出さないと約束していたため、夫のキュービットは警察に相談することができなかった。そこで、キュービットは諮問探偵シャーロック・ホームズに連絡を取るのだった。
依頼を受けたホームズは踊る人形の暗号を解読。しかし、ワトスンと共にキュービット氏の屋敷に到着した時、エルシーは襲われており、キュービットは射殺されていた…。
ネタバレ
キュービット殺害とエルシーの傷害事件について警察は、妻が夫を、もしくは、夫が妻を撃ったあとに自殺を図ったと考える。一方、ホームズは殺人が起きた時、別の人物がいたと推理する。そして、ホームズは踊る人形で書いた手紙をシカゴの犯罪者であるエイブ・スレイニーなる人物に届けるのだった。
偽の手紙を受け取ったスレイニーは、まんまとおびき出され、捕まった。そして、エルシーがアメリカの犯罪組織のリーダーの娘で、さらに元婚約者であることを告白する。逃亡してキュービットと結婚したエルシーだったが、エイブ・スレイニーが書いた踊る人形に脅されていた。彼女はついにスレイニーを自宅に呼びつけ話をつけようとしたが、キュービットが彼らを見つけ発砲した。弾は外れ、撃ち返したスレイニーがキュービットを殺した。一部始終をみていたエルシーは自殺を図るが、失敗に終わる。
暗号解読
踊る人形の暗号解読については別のページにまとめています。
ドラマ
グラナダ版ドラマは、1984年4月24日に放送されました。シーズン1の第2話(52分)です。
項目 | 内容 |
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シーズン | 1 |
話数 | 2 |
放送順 | 2 |
放送日(英) | 1984年5月1日(火) |
出演者 | キャスト一覧 |
ストーリー
エルシーとヒルトン・キュービットは幸せに暮らしていた。が、ベンチに描かれた人の絵が妻エルシーの恐怖に陥れる。取り乱したヒルトンはホームズに助言を求める。依頼を受けたホームズは踊る人形の解読を試み、すぐに、エイブ・スレイニーなる人物の身元を明らかにする。その後、ホームズがキュービットの邸宅に駆けつけると、ヒルトンは射殺され、妻のエルシーは自殺を図っていた。ホームズは犯人がスレイニーであると確信し、踊る人形によるメッセージで彼を誘い出す。罠にはまったスレイニーは姿を現し、ホームズらに捕まる。スレイニーは踊る人形での言葉を使って、エルシーに迫ったいたのだった。エルシーがスレイニーを呼びつけ断ろうとしたとき、ヒルトンが現れ、スレイニーを撃った。しかし、反撃されヒルトンは死んでしまった。
原作とドラマの違い
ドラマでは暗号解読の部分がほとんどカットされています。原作でホームズは、換字式暗号(かえじしきあんごう)であることを見抜き、もとの英文を明らかにします。換字式暗号は、あ→か、い→き、のように文字を置き換える暗号です。ホームズのエピソードでは、人形の文字に書きかえられました。ホームズは、英語において、アルファベットEが頻出することを利用し、Eの人形がどれかをまず明らかにしています。
感想
夫妻に迫る正体不明の脅威を解明するため、一刻も早く、暗号を解読しなければならかったわけです。完全に暗号を解読したホームズでしたが、あと一歩遅く、悲劇が起きてしまいました。
英文を踊る人形に変換できるサイトがあって、なかなか面白いです。英語だけですが、使うとちょっと楽しい気分になれます。とはいえ、たしかにデザインとしてはいいのですが、誰も読めない気がしてなりません。読める人がいたらむしろ怖いです。筋金入りのシャーロキアンかもしれません。
暗号は比較的単純な方法で生成されていました。しかし、解読するとなると至難の業のように思います。さすがのホームズも、たくさんの暗号が集まらないと、すべてを解読することはできなかったようです。もしもこれが、何の説明もなく急に解けていたら、超人的過ぎて人間味がなくなってしまいそうです。
考察
踊る人形による暗号の謎のあとに殺人事件が発生します。ホームズは解読した暗号を使って犯人をおびき出すため、暗号解読が作品の中で重要な役割を果たしております。ただ単に暗号による謎を登場させただけではないところが、面白いところです。なお、「ボヘミアの醜聞」もそうでしたが、このエピソードもエドガー・アラン・ポーの作品に似ております。ポーの作品は「黄金虫」という作品で、暗号が登場します。
まとめ
シャーロック・ホームズの「踊る人形」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。
- 発端ヒルトン・キュービット221Bを訪れる
“踊る人形”について語る
- 展開ホームズが暗号を解読する
ある事件が発生してしまう
- 結末ホームズが真犯人をおびき出す
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。原作およびドラマに共通する内容で一覧にしています。なお、主人公であるシャーロック・ホームズとワトスン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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ヒルトン・キュービット Hilton Cubitt |
依頼人 エイブ・スレイニーと撃ち合いになり死亡 |
エルシー・キュービット Elsie Cubitt |
ヒルトンの妻 ギャングの娘で自殺を図る |
エイブ・スレイニー Abe Slaney |
踊る人形を書いていた人物 ギャングの一員でエルシーの元婚約者 |
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