『ショスコム荘』は、馬の調教主任が雇い主の異変を相談するエピソードです。原作はシャーロック・ホームズシリーズ最後のエピソードとなっており、1927年に発表されました。「ショスコム・オールド・プレイス(原題をカタカナに直したタイトル)」と訳される場合もあるようです。
項目 | 内容 |
---|---|
作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1927年4月発表 (ストランド) |
発表順 | 60作品目 (60作中) |
発生時期 | 1902年5月6日~ 5月7日 |
発生順 | 50件目 (60作中) |
あらすじ
ショスコム荘の調教主任であるジョン・メイソンが、雇い主のサー・ロバート・ノーバートンについて相談するため、シャーロック・ホームズを訪ねる。メイソンによれば、近頃、ロバート卿の様子がおかしいらしい。
ロバート卿は所有する馬が競馬で勝たなければ、屋敷や厩舎を差し押さえられるという苦境に陥っていた。そんな矢先に卿は、妹であるビアトリスといざこざを起こしたらしく、以降、ビアトリスは全く馬に興味を示さなくなり、馬車で外出することはあるものの、ほとんど部屋に籠ってしまった。ビアトリスが大事にしていた愛犬も他人に譲ってしまったようで、メイソンにはそれが、ロバート卿のビアトリスに対する嫌がらせに思えたという。
いざこざが起こる前まで、ロバート卿は、病気がちな妹と共に毎晩過ごしていたのだが、それも一切やめてしまい、ロバートがビアトリスを訪ねることはなくなってしまった。
不思議なことにロバート卿は夜な夜な納骨堂に出入りしていた。目撃者である執事によれば、ロバート卿は納骨堂で男と会っているらしい。しかも、1000年も前に埋葬された遺体を掘り返しているという。屋敷の炉からは、黒こげになった人骨が発見され、ますますロバート卿の行動に疑いがかかる。
メイソンの依頼を受けたホームズとワトスンは釣客という体で、ショスコムの「グリーン・ドラゴン」を訪れた。そこは、ビアトリスの愛犬が引き取られた場所だった。
登場人物とキャスト
登場人物とキャストをまとめます。ホームズ、ワトスン博士は省いています。なお、ジョー・バーンズはドラマオリジナルのキャラクターです。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
ロバート・ノーバートン卿 Sir Robert Norberton |
ロビン・エリス Robin Ellis |
馬主 |
ベアトリス・フォルダー Lady Beatrice Falder |
エリザベス・ウェイバー Elizabeth Weaver |
ロバートの妹 |
ジョン・メイスン John Mason |
フランク・グライムズ frank grimes |
調教師 |
サンディ・ベイン Sandy Bain |
マーティン・ストーン Martin Stone |
騎手 |
キャリー・エヴァンス Carrie Evans |
デニース・ブラック Denise Black |
ショスコム荘の使用人 |
スティーブンス Stephens |
マイケル・ビルトン Michael Bilton |
ショスコム荘の執事 |
ジョー・バーンズ Joe Barnes |
ジュード・ロウ Jude Law |
宿屋の息子 |
ジョシア・バーンズ Josiah Barnes |
マイケル・ウィン Michael Wynne |
宿屋の亭主 |
サミュエル・ブルーワー Samuel Brewer |
ジェームス・コイル James Coyle |
金貸しの男 |
ネタバレ
翌朝、ホームズは「グリーン・ドラゴン」でビアトリスの愛犬を借り、その愛犬をビアトリスが乗っている馬車へと放った。愛犬は馬車へ向かった走り、追いついたのだが、驚いたことに、飼い主であるはずのビアトリスに噛み付いてしまう。この様子をみていたホームズは、ビアトリスが本物ではないことに気付きます。
その夜、ホームズとワトスンはメイソンを連れて、納骨堂へと向かった。そこで棺を調べ、ついに女性の死体を発見した。そのとき、ロバート卿が納骨堂に姿を現し、ホームズ達を怒りを露わにするのだが、その後、真相を語り始めるのだった。
真相解説
ロバート卿の妹であるビアトリス・フォールダーは既に病死しており、ロバート卿は妹の死を隠そうとしていました。その理由は、妹が死んでしまうと荘園の権利を失ってしまうからです。
ロバート卿は妹の遺体を納骨堂に隠し、もともと棺に入っていた死体を屋敷で火葬しました。これが、屋敷でみつかった人骨の正体です。そして、使用人のキャリー・エヴァンスにビアトリスのふりをさせました。偽物を使うにあたって、愛犬はビアトリスが偽者であることに気付いてしまうため、屋敷から遠ざけています。
後日談ですが、ロバート卿は競馬で勝ち大金を得ます。警察に逮捕されることもありません。
名言
We can only guess at it from its effects. They seem to be of a curiously mixed character. But that should surely help us. It is only the colourless, uneventful case which is hopeless.
いまはただ結果から推察するしかない。妙にこんがらがった性質のもののように思われる。だが、そのためかえって我々は助かるのだ。無色平凡な事件になると、手がつけられない。
Arthur Conan Doyle , The Adventure of Shoscombe Old Place
ドラマ
グラナダ版ドラマは1991年3月7日に放送されました。シーズン5の第3話(48分)となります。
項目 | 内容 |
---|---|
シーズン | 5 |
話数 | 3 |
放送順 | 29 |
長さ | 52分 |
放送日(英) | 1991年3月7日(木) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作とドラマのストーリーは概ね同じです。ドラマではブルーワーという金貸しが失踪したり、グリーン・ドラゴンの亭主の息子が登場したりします。この息子はジョーという名前で、演じているのは当時19歳のジュード・ロウです。映画「シャーロック・ホームズ」でワトスンを演じていたりします。
なお、ハドソン夫人が10ギニー、ワトスン博士が20ギニー競馬で勝つというのは、ドラマオリジナルのシーンとなっています。
ロケ地
ショスコム荘園はPeover Hallという場所が撮影に使われています。
感想
妹の死を必死に隠そうとする雇い主、でしたが、その行動が怪しすぎて従業員に心配されるというお話でした。殺人や盗難など、わかりやすい犯罪は起きていませんでしたが、ことの大小に関係なく、何かやましいことがあると、それは様々な形で、異変を表すものだと思ったりもします。
考察
殺人が起きたようで、実際は、何も起きていないという結末です。姉のベアトリスは亡くなっていますが、病死です(姉の正体が明らかになる瞬間が面白いです)。ドラマで妹は顔が出てこないので、明らかに怪しい人物ですが、まさか、騎手志望の青年が、こんな仕事を与えられているとは、思いもよりません。これは、実は男性だった、実は女性だった、みたいなトリックも隠れている気がします。
まとめ
シャーロック・ホームズの「ショスコム荘」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。このエピソードは、依頼人が捜査を依頼して、ホームズが調査するという流れでした。
- 発端調教主任が主であるロバート卿について相談
ロバート卿や妹のビアトリスの様子がおかしい - 展開ホームズとワトスンがショスコムへと向かう
ビアトリスが飼っていたという犬をビアトリスの馬車へ放つ - 結末ホームズ達がロバート卿が出入りしていた納骨堂へ
- ロバート・ノーバート卿
Sir Robert Norberton
厩舎などの使用権利を失わないようにするため妹の死を隠蔽する。隠蔽工作の際、従業員に姿を目撃され不審に思われてしまう。 - ベアトリス・フォールダー
Lady Beatrice Falder
ロバート卿の妹。実は病死している。死後、使用人がなりすましていた。愛犬は正体に気付くといけないため、遠ざけられた。
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