『セカスキ2(世界でいちばん透きとおった物語2)』は、前作の斬新な仕掛けとはひと味ちがう、正統派ミステリーな作品です。作中作という入れ子構造、心温まる人間ドラマ、そしてミステリー愛を感じられる内容で、前作のファンはもちろん、ミステリー初心者にもおすすめできる一冊です!
あらすじ
新人作家・藤阪燈真は、デビュー作『世界でいちばん透きとおった物語』の成功後、次作の執筆に苦悩していた。そんな折、燈真は編集者の深町霧子と共に、奇妙な依頼を受ける。それは、コンビ作家・翠川双輔(翠川はペンネームで、実際には菊谷博和と宇津木静夫の二人組)の片割れである菊谷が急逝したために未完となった連載ミステリー小説『殺導線の少女』の解決編を探ってほしいというものだった。
燈真と霧子は、残された原稿と関係者への聞き込みから、事件の真相を追い始める――そこには複雑な人間関係と、故人が作品に込めた切実な想いが隠されていた。作中作である『殺導線の少女』の謎、そして翠川双輔という作家の秘密に迫るにつれ、燈真は作家としての自分自身と向き合うことになる…。
注目ポイント
- 作中作ミステリー
物語の中に登場する未完の小説『殺導線の少女』。その世界観と、残された謎に引き込まれます!本編と作中作がどのように絡み合い、真相へと繋がっていくのか注目です - 作家としての成長
前作から1年――壁にぶつかりながらもがき苦しむ燈真が、今回の事件を通して何を得て、どのように成長していくのか… - ミステリー論
作中で語られるちょっとしたミステリー論はミステリー好きにはたまらない内容!初心者でも楽しめるように分かりやすく解説されています - 燈真と霧子の関係性
探偵役の霧子と彼女をサポートする燈真という絶妙なコンビネーション!今後の関係性の変化に期待したいですね
感想
前作のような仕掛けはなく違うテイストですが、物語として楽しめ、これはこれでアリという感じです。前作のようなギミックには頼っていない、完成度の高いミステリーだと思います。
ポジティブな感想
- 心温まる展開
優しい嘘に胸を打たれ、読後感が良いです!登場人物たちの想いや行動に感動できます - 作中作の面白さ
作中作が面白くて引き込まれます。『殺導線の少女』という物語自体に魅力がありますね - シリーズへの期待
主人公たちの推理をもっとみたい!3巻も読みたい!と思えます
ネガティブな感想
- 前作との比較
前作ほどの衝撃はない、期待していたほど透きとおってはいない(笑)と思えるかもしれません。前作のような仕掛けを期待すると物足りなさを感じます - 作中作の描写
作中作には惨虐的な描写があるので、バイオレンスな表現が苦手な読者さんにはつらいかも…
ネタバレ注意
『殺導線の少女』はある少女が連続殺人事件の犯人である可能性を示唆しつつ、謎が深まっていくという展開です。作中、被害者が殺害される直前の行動を記した「殺導線」と呼ばれるリストが重要な手がかりとして登場しますが、物語は第三話で突然中断され、真相は闇の中…という感じです。
藤阪と霧子は、菊谷の遺族や関係者に話を聞き、未完の物語の真相を探ります。その過程で、『殺導線の少女』の登場人物や設定は、菊谷の姪である琴莉という少女をモデルにしていたことがわかります。
琴莉は過去に食中毒で入院したことがあり、そのとき、菊谷が献身的に看病していました。ところが、琴莉の食中毒の原因は、菊谷の料理でした。このことを知った菊谷は、琴莉を苦しめた罪悪感から逃れることができず、自らの死をもって償おうとした…のではないかと考えられます。
真相
藤阪と霧子は、翠川双輔の相方である宇津木静夫と面会。宇津木は、菊谷の死の真相を隠し、琴莉を守るために、連載を打ち切ったことを告白します。彼は琴莉が真実を知って傷つくことを恐れていました。
藤阪は宇津木の想いを受け止め、琴莉を傷つけない形で『殺導線の少女』を完結させることを決意します。物語のラストで、藤阪は琴莉に完成した『殺導線の少女』を贈り、琴莉は菊谷の優しさに感謝することになります。
タイトルの意味(考察)
本作のタイトルである『世界でいちばん透きとおった物語2』は、登場人物たちの純粋な想いや行動を象徴しているのかもしれません。前作のようなトリックがないので、透きとおった感じがあんまりないですが、隠れた意味があるのかもしれません。菊谷達は琴莉を守るために嘘をつき、真実を隠蔽していますが、彼らの行動は決して悪意によるものではなく、深い愛情にもとづいたものでした。
まとめ
本作は、ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、人間ドラマや創作の苦しみなど、様々なテーマが織り込まれた作品となっています。特に、他者を思いやる気持ちの大切さや、嘘と真実の狭間で揺れ動く人間の葛藤が、深く掘り下げられている点が印象的です。
前作について
『セカスキ1』については下記の記事でまとめております。
コメント