どんでん返しの帝王・中山七里さんが描く、予測不能な連続猟奇殺人事件『連続殺人鬼カエル男』。コミカルなタイトルと裏腹に、恐い!キモい!!グロい!!!の三拍子そろったサイコサスペンスで、人の心の闇、不条理、正義などを深く問いかける、重厚な社会派ミステリーでもあります。この記事ではあらすじ、感想、ネタバレなどをまとめて紹介します。
あらすじ
埼玉県飯能市。閑静な住宅街にあるマンションの一室で、凄惨な殺人事件が発生する。被害者は口にフックをかけられ、全裸で天井から吊るされた女性。現場には、カエルをモチーフにした稚拙な犯行声明文が残されていた。
ほどなくして、第二、第三の殺人事件が発生。被害者はそれぞれ異なる年齢、性別、職業であり、一見何の繋がりもないように見えた。しかし、犯行声明文に共通する「カエル」というモチーフと、被害者の名前が五十音順になっているという奇妙な法則が発見される。
埼玉県警の刑事・古手川和也は、ベテラン刑事・渡瀬と共に捜査を開始し、犯罪心理学者の御前崎宗孝や、保護司の有働さゆりらの協力を得ながら、事件の真相に迫っていく。しかし、捜査が進むにつれて、古手川は自身の過去と向き合うことになり、事件は予想もつかない方向へと展開していく。
特徴
- 予測不能な展開: 読者の予想を裏切る、二転三転するストーリー展開。
「まさかこの人が犯人?」「いや、まだ何かあるはず」と飽きない - 衝撃的な結末: ラスト一行まで目が離せない、驚愕の事実。読後、呆然自失となること間違いなし!
- グロテスクな描写: 猟奇的な殺人現場の描写が生々しい…生々しすぎ!?
- 社会派ミステリー:刑法39条の問題点や、精神疾患を抱える人々の苦悩を描く。単なるエンターテイメント作品に留まらない、深いテーマ性
- 魅力的なキャラクター:熱血刑事・古手川和也と、冷静沈着な上司・渡瀬のコンビ。二人の掛け合いや、それぞれの成長も見どころ!
感想
かなりの猟奇殺人事件でした。眉間にシワをよせて、痛い、こわい、えぐい、えげつないよ!と思いながらも、39条について興味深く読んだりしていました。
そして、最後の最後まで意表を突く展開にまさに驚きの連続で、まさにサスペンスという感想を抱きながら読了しました。物語を通して、社会派的なテーマを読み取ったりもできたので、いろいろと深く考えさせられる作品でした。おもしろかったけど…読後に重苦しい感情が残るかもしれませんが、それこそが作者さんの狙いだと思ったりもします。
高評価のポイント
- 予想を裏切る展開:どんでん返しが連続し、最後まで飽きない!
「まさかそうきたか!」という驚きがエキサイティング! - スリリングな展開:息もつかせぬ展開で、読者を物語に引き込む!
ページをめくる手が止まらない、中毒性の高いストーリー
低評価のポイント
- グロテスクな描写:猟奇的な殺人描写が苦手な読者には不向き
目を覆いたくなるような表現が多いため、注意が必要 - 暴力的な描写:暴力的なシーンも多く、読んでいて辛くなる
特に主人公が痛めつけられる場面は、読んでいて苦痛かも… - 後味の悪さ:救いのない結末に読後感が重くなる…
ハッピーエンドを求める読者には、不向きかもしれないですね
ネタバレ
犯人は当初疑われていた当真勝雄ではなく有働さゆり、かと思いきや、さゆりもまた、御前崎宗孝に操られていました。つまり、真犯人は犯罪心理学者の御前崎宗孝です。動機は、過去の裁判で自身の家族を奪った犯人が心神喪失を理由に無罪となったことへの復讐で、判決を下した裁判官や、その犯人を弁護した弁護士、そして事件に関わった人々をターゲットにしていました。御前崎は勝雄の保護司である有働さゆりを利用して、間接的に当真勝雄を操り、連続殺人を実行させていました。マトリョーシカみたいな構造ですね。
- 真犯人は有働さゆり?
当初、容疑者として浮上した当真勝雄は実は操られていただけで、真犯人は保護司の有働さゆり…? - 御前崎宗孝の暗躍
さゆりもまた、精神科医の御前崎宗孝に操られていた。御前崎は、過去に娘を殺害された事件の犯人が心神喪失で無罪になったことを恨んでいた - ナツオの正体
物語の合間に挿入されるナツオの回想は実はさゆりの過去を描いたもの。彼女は幼少期に父親から虐待を受け、多重人格者に… - 五十音順殺人の真相
殺害された被害者は御前崎が選んだターゲットであり、さゆりは彼の指示に従い、五十音順に殺害を実行していた - 最後のターゲット
御前崎の真の目的は娘を無罪にした弁護士への復讐であり、そのためにさゆりを利用していた
結末
御前崎の計画は、古手川刑事によって阻止され、御前崎は逮捕される寸前まで追い詰められますが…、逮捕には至らず、事件は未解決のまま幕を閉じます。そして、ラストシーンでは、勝雄が御前崎を殺害する計画を立てていることが示唆されます……。
この本を読んだ方にオススメ
『カエル男』を読んだあなたには、同じく中山七里氏の作品である『贖罪の奏鳴曲』や、社会派ミステリーの傑作として知られる薬丸岳氏の『虚無』もおすすめです。また、人間の心の闇を描いた作品がお好きな方には、貴志祐介氏の『悪の教典』もおすすめ!
人間の心の奥底に潜む狂気や、社会の不条理が描かれた作品といえます。
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