『プロ野球殺人事件』は1988年にカプコンからファミリーコンピュータ向けに発売された推理アドベンチャーゲームです。実在のプロ野球選手の名前をもじったキャラクターが多数登場します。その高い難易度と理不尽さから人を選ぶゲームであることは間違いないですが…、当時のプロ野球への愛が詰まった、唯一無二の魅力を持つカルト的な人気を誇る作品といえます。
あらすじ
主人公であり元ガンアンツのプロ野球選手で現在は野球解説者の「いがわ すぐる」は、自宅でテレビを見ていた。するとプリンスホテルの地下駐車場で「はらだ やすのぶ」という印刷会社勤務の会社員が殺害されたというニュースが流れる。その直後、ガンアンツの現役選手「ほら たつのり」が慌てた様子でいがわの家へやってくる。ほらは、知人の記者「おおた かずひこ」にアタッシュケースを押し付けられたらしく、そのケースの中にはなんと一億円の札束が入っていた。
そうこうしていると警察がほらを捕まえようといがわの自宅を訪ねてくる。殺害現場から逃げ去るほらと「かきふ まさゆき」が目撃されていたらしい。ほらは窓から逃走。いがわも共犯と疑われ、札束を置いて逃げ出すことになる。指名手配されたいがわは、身の潔白を証明するため、警察から逃れながら事件の真相を探ろうとする。
登場人物
- いがわ すぐる
主人公。元ガンアンツのエースピッチャーで、現在は野球解説者。プレイヤー自身であり、江川卓がモデルとされる - はらだ やすのぶ
最初の被害者。東京印刷勤務の男性 - ほら たつのり
ガンアンツの現役選手。事件に巻き込まれ、いがわと共に指名手配される。原辰徳がモデル - かきふ まさゆき
タイガーキャッツの選手。事件現場からほらと共に立ち去る姿が目撃され、後に記憶喪失となる。掛布雅之がモデル - おおた かずひこ
報日スポーツの記者。ほらにアタッシュケースを渡した張本人。後に、やまかわこうぞうの息子であることが判明する - おの ひろゆき
東西出版のカメラマン。有名人のスキャンダル写真で脅迫を働き、後に死体で発見される - はしもと りょうすけ
フジタテレビのプロデューサー。女装癖を暴露されおのに脅迫されていた - かわむら
大阪の新聞記者。ヘビースモーカー - やまかわ こうぞう
おおたの保証人である大阪の病院院長 - その他、実在のプロ野球選手をモデルとした「清原」「福本」「梨田」「宇野」「落合」「小林繁」「桑田」など、多数のキャラクターが登場する
ネタバレ
殺人事件はふたつ発生します。ひとつは「はらだ」の殺害、もう一つはカメラマン「おの」の殺害です。
はらだを殺害した犯人は新聞記者の「かわむら」でした。かわむらははらだと共に偽札作りをしていましたが、はらだが口が軽く偽札を安易に使っていたため、地下駐車場での口論の末、衝動的な殺害に至っています。
記者の「おおた」は、かわむらがはらだを殺害した現場を偶然目撃し、偽札の入ったアタッシュケースを盗んで逃走しています。かわむらは口封じのためおおたを追うことになります。
カメラマンの「おの」は偽札事件の現場をカメラで撮影していました。おのは偽札事件とは別に、プロデューサーの「はしもと りょうすけ」を脅迫しており、脅迫の最中に、はしもとに殴られて気絶。この時、はしもとは、おのが死んだと思って怖くなり現場を逃走しています。そこへ通りかかったかわむらが、おのをナイフで刺殺し、口を封じています。なお、はしもとは女装癖をネタに脅迫されていました。
「かきふ」をバットで殴り記憶喪失にさせたのは、「おおた かずひこ」でした。おおたは父やまかわの金銭問題を解決しようと偽札のアタッシュケースを盗み、追っ手から逃れるために偶然いたかきふに預けました。しかし、かわむらがはらだを殺したと知り、自分やかきふも殺されると思うようになります。靖国神社でかきふを気絶させようとバットで殴打しましたが、記憶喪失になるとは思っていませんでした。その後、かきふは自身が転んで記憶喪失になったと証言し、おおたは無罪で釈放されたと報じられることになります。
結末
事件の真相が明らかになり、かわむらとおおたは自首することになります。いがわは、記憶を取り戻したかきふにプロへの復帰を促され、プロテストを経てガンアンツに復帰。ペナントレース最終戦、ツーアウト一点リードの場面で、バッターかきふ対ピッチャーいがわの一打席勝負という形で物語は締めくくられます
感想
- 極めて高い難易度
「難易度が凶悪」「ほぼノーヒント」と評されるほど非常に難しく、多くのプレイヤーが序盤で挫折したことで有名です。事件に関係ない情報が多すぎたり、捜査に必要なアイテムや場所がノーヒントで隠されていたりするため、自力でのクリアはかなり難しいです(特に、キャッシュカードの場所やプロテスト会場などが理不尽なほど分かりにくい場所に隠されています。下水道の探索では風邪をひいてライフが減るなど、変なところにこだわりを感じられるリアリティ要素もあります) - ユニークなゲームシステム
野球をテーマにしたアドベンチャーでありながら、警察に職務質問されるとシューティングゲームになったり、地下迷路(下水道)を何度も探索させられたりと、バラエティに富んだ内容になっています。『さんまの名探偵』を彷彿とさせるようなゲームです - 野球選手のパロディ
ゲームの難易度とは裏腹に、当時の人気プロ野球選手をモデルにしたキャラクターが多数登場します。セリフや行動に野球ネタが散りばめられており、当時の野球ファンには大きな魅力になったようです。事件解決の達成感が薄くても、多くの選手を見つけ出すことを楽しんだプレイヤーもいたようです。