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推理ゲーム

弟切草|ネタバレ徹底解説【あらすじとストーリーなど】

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弟切草』は、1992年3月7日にチュンソフト(現:スパイク・チュンソフト)からスーパーファミコン用ソフトとして発売されたサウンドノベル・アドベンチャーゲームです。同社の自社ブランドにおける処女作であり、サウンドノベルシリーズの第1作として位置づけられています。実在する植物〈オトギリソウ〉をモチーフにしており、その花言葉である復讐が物語のテーマの一つとなっています。ゲームは、画面いっぱいのドット絵の背景に文字が表示され、プレイヤーが選択肢を選ぶことでストーリーが進行する形式です。

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ストーリー

夏の夕暮れ時、主人公の公平と恋人の奈美は山道を車で走っていた。奈美が窓の外に咲く弟切草に目を留め、公平がその花にまつわる恐ろしい伝承(鷹匠の兄弟の復讐の物語)を語っているうちに、二人は道に迷い、車のブレーキが効かなくなり事故を起こしてしまう…。

雨が降りしきる中、二人は助けを求めて森を進む。すると、辺り一面に弟切草が生い茂る中に佇む一軒の洋館がみつかり、雨宿りのために足を踏み入れる。

洋館に入ると、室内は静まり返っており、誰かの気配を感じて2階へ上がると、車椅子に座ったミイラを発見する。その後、館内は停電し、ミイラや玄関ホールの鎧が消えるなど、次々と怪奇現象が起こり始める。館からの脱出を試みるも、外には大量の蛇が蠢いており、二人は館に閉じ込められてしまう。館の探索を進める中で、奈美は自分がかつてこの館に住んでいたこと、そして双子の姉ナオミがいたことを思い出す。

主な登場人物

  • 主人公(公平)
    プレイヤーの分身。SFC版には決まった名前はありません。奈美の恋人として、洋館での怪奇現象に巻き込まれます(PS版ではデフォルト名が「公平」)
  • 奈美
    主人公の恋人。天真爛漫な性格。物語の鍵を握る存在です。洋館で自身の出生の秘密や、双子の姉ナオミの存在を知ることになります。シナリオによってその人物像や役割が大きく変化します
  • ナオミ
    奈美の双子の姉。幼い頃に奈美と離れ離れになり、物語の多くのシナリオで悲劇的な運命を辿ります。火傷を負っていたり、病気で心を病んでいたり、あるいはモンスターであったりと、シナリオによってその設定は様々です
  • 直樹
    奈美とナオミの弟。シナリオによっては病弱な少年であったり、怪魚の姿に変貌したり、あるいは存在自体がナオミの妄想であったりと、その正体は多岐にわたります
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シナリオ

火傷編

館で発生した火事により主人公の父が死亡し、母は病気がちになり、奈美は養子に出されたという過去が明かされます。ナオミは火事による火傷の跡が原因で心が荒み、学校でいじめられ、やがて自分に双子の妹がいたことを思い出し、母を問い詰めます。母が嘘をつき続けたため、ナオミは母を拷問し部屋に閉じ込め、母はミイラとなります。ナオミは火事の原因が奈美にあると知り、奈美への復讐を決意します。彼女は主人公の自動車に細工をして事故を起こさせ、館へ誘い込み、様々な仕掛けで主人公と奈美を孤立させ、奈美に自分と同じ火傷を負わせようとします。最終的に主人公の活躍で奈美は火傷を免れますが、ボイラーの爆発による大火事で主人公と奈美ははぐれ、合流した奈美は実はナオミであり、ナオミの復讐が果たされたという悲劇的な結末を迎えます。

ぼくの海編

火事の後、ナオミは寂しさからペットの犬を「直樹」と名付けて弟と思い込み、妄想の世界に没頭します。犬が死んだ後も、母の日記から火事の原因が奈美にあると知り、奈美への復讐を誓います。主人公の車に細工をして館へ誘い込み、館の仕掛けで二人を怖がらせ、孤立させます。館の中で過去を思い出した奈美に対し、ナオミは自分の日記を読み聞かせ、復讐のために犬の白骨死体が入った水槽に奈美を放り込んで溺死させようとします。さらに、ボイラーの爆発で自分も含めて全員を道連れにしようとします。主人公が奈美を蘇生させようとしますが、奈美はぐったりとしたまま。しかし、奈美の体は館の外で発見され、主人公の再度の蘇生措置で助かります。ナオミは炎上する館の中に戻り、妄想の弟の名前を叫びながら館と運命を共にします。

双子編

このエンディングでは、館が1800年頃のブルゴーニュの森に建てられたものであり、初代所有者の呪いがかけられていることが明かされます。この呪いは、初代所有者が双子の姉妹に裏切られ殺されたため、「この館の所有者の女は必ず双子の姉妹を産み、自らの手で双子を殺してしまう」というものでした。母は呪いを知り、夫の急死でその真実を確信し、奈美とナオミを幼い頃に養子に出します。ナオミは母に会うために館に戻りますが、母が呪いの力でナオミを殺そうとしたため、ナオミは逃走中に階段から落ちて死亡し、幽霊となります。幽霊となったナオミは呪いの影響を受け、奈美を館に呼び寄せ、母に謝罪して共に殺されようと企てます。しかし、最終的には母の愛の力によって主人公と奈美は助け出され、館は崩壊します。

ライラック編

物語の元凶は主人公の父にあります。主人公の父は放浪癖のある浮気性の男性でした。奈美とナオミの母(双子の母)は 、交通事故で夫と長男の直樹を失い、そのショックで病気がちになり、双子を育てるのが困難と判断し、妹の奈美を養子に出しました。その後、双子の母は主人公の父と不倫関係に陥りますが、父は彼女を捨てて主人公の母の元へ戻り、そこで亡くなります。さらに、ナオミも病気で命を落とします。捨てられた悲しみとナオミの死のショックから、双子の母は主人公の父を呪いながらミイラと化しました。主人公と奈美が館にやってきたのは、双子の母の呪いによって引き寄せられたためでした。双子の母は主人公を「自分を捨てた男」と思い込み、様々な方法で命を脅かそうとします。しかし、死んだナオミの霊が、恋を知らずに死んだ心残りを抱え、ほんの一晩だけ主人公に恋をしたことから、双子の母の呪いから主人公を守ろうとします。最終的に、主人公の気持ちが奈美一筋であったため、ナオミは二人を母の呪いから救うために脱出を手助けします。崩壊する館を後にした主人公たちは、弟切草が全て紫色のライラックの花に変わっていることに気づきます。奈美はライラックの花言葉が「初恋の痛み」であることを主人公に教えるのでした。

シャドウ編

シャドウ編では、「シャドウ」が深層意識に潜むもう一人の自分であり、恨みや憎しみ、妬みといった暗い情念が蓄積することで 表面化するという設定が明かされます。母親はナオミのシャドウが怪奇現象を引き起こしていると考えていましたが、実際には養子に出された奈美のシャドウが原因でした。奈美は幼い頃に「自分が捨てられた」という思いから母とナオミを激しく憎悪し、その情念がシャドウを生み出し、館でポルターガイスト現象を起こし、ナオミと母を死に追いやっていたのです。鏡に映る奈美の顔が鬼女の形相であったことから、主人公はシャドウが奈美のものであることを確信します。家にされた母とミイラになったナオミは、それぞれ家を揺らしたり車椅子で体当たりしたりしてシャドウに対抗します。奈美は自分がシャドウであることを自覚し死を決意しますが、主人公たちに止められます。最終的に、奈美がシャドウと化して館に火を放ち、シャドウが奈美本体から抜け出た瞬間、母とナオミの力によってシャドウのみが押さえつけられます。主人公は奈美を抱えて館を脱出し、館の爆発とともにシャドウは消え去ります。母とナオミの愛が主人公と奈美を救い、爆発で館が四散した時、二人の周囲の弟切草は白く美しい野花に変わっていました。

怪魚編

怪魚の正体は、主人公の弟である直樹でした。 彼は幼い頃の交通事故で重傷を負い、体が不自由になっていました。病弱な母は直樹の世話をナオミに任せきりになり、そのことに後悔し、食事を絶ってミイラと化します。体が不自由な直樹は、自由に海を泳ぎ たいという願いから、書斎にあった悪魔の書を独学で解読し、黒魔術によって怪魚へと変貌しました。屋敷の外に散らばっていた骨 は、黒魔術の儀式に使われた動物たちのものです。怪魚は水がなくても呼吸でき、尾びれで二足歩行が可能で、念力や精神操作、水 を硫酸に変えるといった悪魔的な力を持っていました。凶暴化する怪魚を元に戻すため、ナオミは悪魔の書を解読しますが、双子の 姉妹の血が足りませんでした。奈美を館におびき寄せるため、ナオミは主人公の車に細工を施します。 奈美を殺すことはできなかったナオミは、自分の血だけを使って怪魚を元に戻そうとしますが、これは逆効果で怪魚をさらに凶暴化させてしまいます。怪魚は二人の姉を生贄にしようとしますが、主人公の介入で中断されます。一時的に直樹の心を取り戻した怪魚も、すぐに悪魔の心に支配され、主人公たちを硫酸の水槽に落とそうとします。その時、母のミイラが車椅子ごと水槽に体当たりし、水槽は破壊され、硫酸は流れ出ます。 母のミイラは溶けて消滅し、硫酸を浴びた怪魚は苦しみながら体が崩れ、中から美しい直樹の死体が出てきます。ナオミは直樹の死体にすがって泣きますが、ボイラーの爆発で館が炎に包まれます。主人公と奈美は脱出し、直樹の死体を抱えたナオミも後から出てきますが、力尽きて倒れ、死の間際に交通事故の真実を告白します。 事故の原因はナオミがハンドルを無理やり切ったためであり、母は一度もナオミを責めなかったと語ります。ナオミは息を引き取り、主人公たちは館の消滅を見届けます。 天空には美しい星が輝いていました。

食欲の権化編

このシナリオでは、主人公と奈美が閉じ込められた館の秘密が明かされます。奈美とナオミ、そして直樹の両親は戦災孤児で あり、孤児院の院長に養子として迎えられ、館を与えられました。しかし、父は食欲に取り憑かれ、直樹は5歳で餓死してしまいます 。館に宿る妖力によって直樹は怪魚として復活し、さらに父は鎧、母はミイラ、ナオミは生前の姿のゴーストとして復活し、怪魚の家来となります。奈美は養子に出されていたため難を逃れていましたが、怪魚はナオミを利用して奈美を館におびき寄せます。主人公と奈美は怪魚に食べられそうになりますが、主人公の愛の告白によってナオミの心が動き、彼女は光の魂となって鎧、ミイラ、そして怪魚と次々と合体し、激しく光り輝きます。その隙に主人公と奈美は館を脱出し、館はボイラーの爆発と共に崩壊。ナオミ、父、母、直樹の魂は天に昇り、美しい星空の一部となるという結末を迎えます。

モンスター一家編

奈美の家族が実は人間ではなく、恐ろしい化け物一家であることが明かされます。父は鎧をまとった希 薄な幽霊、母はエジプトの血を引くミイラ、弟は怪魚、そして奈美とナオミは双子の吸血鬼でした。この一家の趣味は「ミニ生首集め」であり、これまでに多くの犠牲者をミニ生首にしてきました。父は既に99個のミニ生首を所有しており、100個目が揃うとミニ生首 たちが歌を歌うとされており、その100個目の生首は主人公の首で作るつもりでした。奈美は、館に来たことで自分が吸血鬼であるこ とを思い出し、覚醒します。しかし、主人公の愛の力が奈美の心を動かし、彼女はミニ生首を作る薬品の素材に弟切草が必要であることを主人公の口から語らせ、家族に確認させます。秘密を他人に漏らした形となった家族は、鎧の剣によって次々と首をはねられ、薬品の壺に入れられてミニ生首になってしまいます。その後、剣は発光して過熱し、屋敷全体を炎に包みます。主人公と奈美は命からがら館を脱出し、館は大爆発して崩壊。奈美の家族の魂は夜空に飛び散り、無数の星となって輝くという結末を迎えます。

追加エンディング

自動車事故で館に辿り着いてからの全ての出来事が、実は主人公が奈美の婿としてふさわ しいかどうかを試すための「テスト」ででした。館の住人たちは、初登場の爺さんを含め、全員が生きた人間であり、異常なまでの悪戯好きでした。彼らは大金を投じて館に大掛かりな仕掛けを施し、主人公を試していたのです。主人公は見事にこのテストに合格し、家族全員から拍手で迎えられます。主人公はただ乾いた笑いを浮かべることしかできません…。

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余談

『弟切草』は、ほぼ同じシークエンスで構成される複数のシナリオから成り立ち、プレイヤーの選択によって展開や登場人物の人物像が大きく変化するマルチシナリオ・マルチエンディングシステムが特徴です。ゲームオーバーの概念がなく、必ず何らかの結末にたどり着きます。また、落雷やブレーキ音、水の音など、実際の生活音をサンプリングして使用することで、独特の臨場感と恐怖感を演出しています。

スーパーファミコン版の発売後、1999年3月25日にはPlayStation向けに『弟切草 蘇生篇』としてリメイクされました。このリメイク版では、グラフィックの向上、シナリオの加筆修正に加え、『街 〜運命の交差点〜』で採用されたザッピングシステムが導入され、主人公の公平だけでなく恋人の奈美の視点からも物語を体験できるようになっています。

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