このミス大賞を受賞して2025年1月に発売された『謎の香りはパン屋から』は、本格的ミステリーというよりも、日常的な温かい物語に謎解き要素が加わったミステリーです!日常のほっこりとした物語を読みたい方に強くオススメできますし、パン好きにもピッタリな一冊です。
あらすじ
大阪府豊中市にあるパン屋『ノスティモ』でアルバイトをしている漫画家志望の大学生、市倉小春。彼女は鋭い観察眼と推理力で、職場や周囲で起こる些細な謎を次々と解き明かしていく。ドタキャンされたライブビューイングの真相、フランスパンに付けられた傷の謎、幼馴染のすれ違い、ひったくり犯の意外な正体、同僚の退職理由など、一見些細な出来事の裏に隠された真実を、小春は独自の視点で解き明かし、人々の心のわだかまりも同時に解消していく。
5つの連作短編で構成され、それぞれの物語には、クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパンといったパンが密接に関わってくる。小春の漫画家としての夢や、パン屋で働く人々との温かい人間関係も描かれ、全体を通して優しい雰囲気と幸せな読後感が特徴となっている。
感想
優しい雰囲気、温かい読後感、読みやすさなどが高評価ポイントです。パン屋という舞台設定と、美味しそうなパンの描写なども素晴らしいと思います。ほんとうに、パンが食べたくなります!
ただ「ミステリー要素が弱い」「謎解きが簡単すぎる」といった印象はあります。本格ミステリーを期待して読むと物足りないかもしれません。『このミス大賞』受賞作品であるため、その点への期待値が高まっている分、ギャップを感じる人もいそうです。
高評価ポイント
- 優しい世界観
登場人物たちが皆、温かく、良い人ばかりで、読後感が非常に良い。誰かが死ぬような暗い展開はなく、安心して読める - 読みやすさ
テンポが良く、サクサク読める!日常的な言葉遣いで親しみやすい - パンの描写
パンの種類や製法、歴史などが丁寧に描写されており、パン好きにはたまらない - キャラクターの魅力
個性的な登場人物たちが魅力的で、それぞれに共感できる部分がある - 伏線の回収
さりげなく散りばめられた伏線が、最終話で綺麗に回収される点が評価されている - ほっこりするストーリー
日常の小さな謎を解き明かすことで、人々の心が癒されていく様子が温かく描かれている - 漫画家視点
作者が漫画家であることから、主人公の描写や思考描写に説得力がある
低評価ポイント
ミステリー要素が物足りないというのが低評価の要因です。本格的なミステリーを期待すると物足りない、謎解きが簡単すぎる、もしくは無理があると感じられる部分もあるかもしれません。
- 『このミス大賞』のギャップ
受賞作品という期待値の高さが、裏目に出ている…かも - 小粒な謎
謎が小さすぎて物足りない…かも - 推理の飛躍
推理の過程に無理がある、もしくは説明不足だと感じる部分もある
ネタバレ注意
簡単にまとめると以下のようになります。そのほか、小春の漫画家としての才能や、彼女自身の抱える秘密などが物語の中で徐々に明かされていきます。最終話では、様々な出来事が複雑に絡み合い、小春の成長と周囲の人々との絆を深める重要な役割を果たします。
- ライブビューイングのドタキャン
小春の親友・由貴子がライブビューイングをドタキャンしたのは、推しである2.5次元俳優と偶 然出会い、その場で告白されたためだった - フランスパンの傷
パン屋に届いたフランスパンに傷がついていたのは、配達中の事故ではなく、配達員がパンを盗もうとした際につけた傷だった - コーヒーをこぼした理由
幼馴染の美桜が道長(野球部員)の大切なお守りにコーヒーをこぼしたのは、道長の進路の悩みを知り、無意識のうちに彼の負担を減らそうとしたためだった - ひったくり犯の首の傷
ひったくり犯の首の傷は、実は猫に引っかかれた傷で、犯人は猫好きの大学生だった - 同僚の退職理由
パン屋の同僚・レナ先輩が辞めようとした理由は、実は漫画家のアシスタントとして働くためだった
まとめ
ミステリーとしての評価は分かれる可能性があるものの、その優しい雰囲気や読みやすさ、そしてパンの魅力が多くの読者を惹きつけている点は確かです。本格ミステリーを求める読者には物足りないかもしれないですが…、デビュー作でありながら、高い完成度だと思います!
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