『殺しの双曲線』は、西村京太郎先生の初期の頃の作品です。完成度が高い本格ミステリー小説で、名作傑作といった評価を受けています!
あらすじ
雪に閉ざされた山荘を舞台に、連続殺人事件が発生。一方、東京では双子による連続強盗事件が進行。一見無関係に見える二つの事件が、やがて意外な形で交錯していく――。
読者は冒頭で「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです」と宣言され、フェアな挑戦を受けながらも、巧妙なトリックと複雑に絡み合う人間関係に翻弄されます!
小説の特徴
単なるクローズドサークルミステリーに留まらず、社会派の要素や、読者への挑戦といった魅力もあります。トリックの巧妙さ、
登場人物の心理描写や、ラストの余韻も特長だと思います。「そして誰もいなくなった」へのオマージュとして、クリスティの名作への挑戦しているのは、間違いないです。
- クローズドサークルミステリー
雪に閉ざされた山荘という舞台設定。外部との接触が断たれた状況下で連続殺人が発生!?というミステリー好きならたまらないシチュエーションです - 双子トリックの開示
物語冒頭で「双子トリック」が使用されることが明示されます。どこか倒叙っぽさがあります - アガサ・クリスティへのオマージュ
作中で『そして誰もいなくなった』に言及される場面もある
感想
鉄道や時刻表トリックのイメージが強い西村京太郎さんですので、異色の本格ミステリーといえそうです。ミステリーとして面白いのはもちろんトリックの巧妙さだけでなく、人間の心の闇や、社会の不条理を描いた作品としても高く評価できます。ミステリー好きはもちろん、本格的な小説を読みたい方にもおすすめの一冊です。
高評価なポイント
- 構成とトリックの巧妙さ
冒頭で双子トリックを明示しているにも関わらず、予想を裏切る展開に驚かされます!2つの事件が並行して進むのも、飽きさせない工夫に感じられますね - 読みやすさ
文章が平易で読みやすい!つっかかることなく読み進められるので物語に没入しやすいです - 社会派ミステリーとしての魅力
単なる殺人事件ではなく。社会的な背景が絡んでいます!読み応えありです - 昭和の雰囲気が良い
レトロな言い回しや描写が、作品の雰囲気を高めているとも思えます
低評価なポイント
- 動機の弱さ
犯行動機がやや弱い…または共感しにくい…掘り下げが不足していると感じるかもしれません - 既視感
ミステリーを読み慣れている読者からすると、トリックや展開に目新しさを感じないかもしれないです - 後味の悪さ
後味は悪いです - ご都合主義な展開
都合の良い偶然が重なりすぎている…
ネタバレ
物語は、雪に閉ざされた山荘で起こる連続殺人事件と、東京で発生する双子による連続強盗事件が並行して描かれます。一見無関係に見えるこれらの事件は、やがて「双子」というキーワードで結びつき、驚愕の真相が明らかになります。
事件の実行犯は早川謙です。彼は、雪山の山荘で招待客たちを次々と殺害、兄の西崎純が事件を裏で操り、警察の捜査を撹乱する役割を担っていました。犯人は一卵性双生児の特性を巧みに利用して犯罪を計画していたわけで、養子のため姓が異なっていました。なお、犯行後は、西崎純が記者として現れ、謙と入れ替わることで、謙は安全に東京に戻る計画でした。
- 双子トリック
早川謙と西崎純は一卵性双生児であり、その容姿が瓜二つであることを利用して、アリバイを作ったり、警察の捜査を混乱させたりしていた - クローズドサークル
雪で閉ざされた山荘という状況を作り出し、外部からの介入を遮断することで、犯行を容易に - ミスリード
物語冒頭で「双子トリック」が使用されることが明示されることで、読者は山荘にいる人物の中に双子がいると思い込み、真犯人の正体を見抜きにくくなる
動機
犯人の母親は駅の事故で亡くなっています。犯人は原因が周囲の無関心やタクシーの乗車拒否にあると考え、関係者への復讐を計画しました。これが一部では弱いといわれている動機です。母親が亡くなったという事実は間違いないので、その喪失感を埋めるために、怒りを他人にぶつけているのかもしれませんね。
結末
西崎純は雪山からの脱出に失敗して凍死。早川謙警察はに追い詰められるものの、決定的な証拠がなく、自白を迫られることになります。謙が自白するかどうかは、読者に委ねる形で終わります(リドル・ストーリーというやつです)。
まとめ
本作は西村京太郎の魅力を発見できそうな傑作ミステリーでした。クローズドサークル、双子トリックなどがうまく組み合わさっていると思います!
コメント