Youtube ミステリーチャンネル【りさま屋】
国内小説

99%の誘拐|あらすじ・ネタバレ解説・感想【岡嶋二人】

この記事は約6分で読めます。
記事内に広告が表示されます

岡島二人さんの『99%の誘拐』はスピード感あふれる展開と、緻密に練られたハイテク犯罪が大きな魅力です。第10回吉川英治文学新人賞を受賞し、岡嶋二人さんの代表作の一つとしても知られています。1988年頃に執筆された作品ですが、その先見性と想像力は一読の価値ありだと思います!

項目 評価
【読みやすさ】
スラスラ読める!?
【万人受け】
誰が読んでも面白い!?
【キャラの魅力】
登場人物にひかれる!?
【テーマ】
社会問題などのテーマは?
【飽きさせない工夫】
一気読みできる!?
【ミステリーの面白さ】
トリックとか意外性は!?
スポンサーリンク

あらすじ

末期ガンに侵された生駒洋一郎が病床で綴った手記…。手記には8年前、彼の息子・慎吾が誘拐された事件の詳細が記されていた。5歳だった慎吾は誘拐され、5000万円の身代金を要求されたが、無事解放された。しかし、その身代金は回収されず、事件は未解決のまま時効を迎える――。
12年後、新たな誘拐事件が発生。今度は、かつてイコマ電子工業を吸収合併したリカード社の社長の孫が誘拐され、10億円相当のダイヤモンドが要求される。驚くべきことに、この誘拐事件はコンピュータによって完全に制御されており、警察を完全に出し抜く、前代未聞のハイテク犯罪だった。そして、この事件の身代金運び役として指定されたのは、他でもない、20年前の誘拐事件の被害者・生駒慎吾自身だった。

物語は、過去の誘拐事件と、20年後の誘拐事件の二つの視点から描かれ、過去と現在が複雑に絡み合いながら、息もつかせぬ展開で進んでいく。

小説の特徴

  • 誘拐ミステリー
    誘拐事件を題材にしたミステリー作品
  • 倒叙形式
    犯人が早い段階で判明し(犯人視点で進み)、犯行の過程などが描かれる
  • 復讐劇
    過去の事件の被害者が、復讐のために新たな犯罪を計画する
  • 昭和とハイテク犯罪
    昭和な社会を感じつつも、当時の最新技術であるコンピュータを駆使した犯罪トリックが登場

作風

  • スピーディーな展開
    序盤から緊迫感があり、物語が疾走するように進むため、ページをめくる手が止まらなくなります!
  • 緻密なトリック
    犯人の計画は非常に周到で、読者を唸らせるような巧妙な仕掛けが随所に散りばめられています!
  • 人間ドラマ
    犯罪の裏にある登場人物たちの孤独や葛藤、親子の絆といった心情が、直接的な描写は少ないながらも深く感じられます
スポンサーリンク

感想

ちょっと古い作品かもしれませんが、読んで楽しいエンターテイメント性の高いサスペンス小説だと個人的には思います!誘拐事件を扱ったミステリーでありながら、単なる犯人探しに終始しない、奥深い人間ドラマがあったと思います。過去の事件の影を引きずりながら、現代のハイテク技術を駆使して復讐を遂げようとする主人公の姿がいいですね。
まったくもって余談ですが…岡島二人さんは、エラリー・クイーンみたいなコンビ作家さんらしいです(井上夢人氏と徳山諄一氏の共同ペンネーム)。初めてこの事実を知ったときは、岡島二人の二人って、ふたりって意味だったのか!と思ったりもしました。

ポジティブな感想

物語のスピード感、緻密な計画、犯人への共感(犯人を応援したくなる)、そして時代を超越した設定が高評価なポイントです!

  • 斬新な設定とトリック
    画期的なコンピュータを駆使した誘拐トリックに驚くし興奮する!30年以上前の作品とは思えないです
  • スピーディーな展開
    物語のテンポが良く一気に読み進められる!物語の牽引力がすごいです
  • 犯人への感情移入
    復讐のために犯罪に手を染める主人公に同情します。つい、犯人を応援したくなる作品ですね
  • ラストの余韻
    ここはネタバレなしですので、詳しくは語れないですが物語の結末が好きです

ネガティブな感想

犯人の動機があいまいであること、後半の展開が少し冗長であること、トリックの現実性などがちょっと気になる部分ではあります。その他、登場人物の心情描写が不足している、結末があっさりしすぎているという点も挙げられます。ただ、作品全体の魅力を大きく損なうものではないです!

  • 技術的な古さ
    作品が書かれた時代が古い…というよりはIT関連の進歩が目まぐるしくので、コンピュータに関する描写に古さを感じますね
  • ご都合主義的な展開
    物語の展開が都合良すぎる、現実味がないと感じるかも…
  • 動機の弱さ
    犯人の動機が弱い、共感できないかもしれないですね(犯罪の動機なので、そもそも共感できるというのはおかしいですが)
スポンサーリンク

ネタバレ注意

生駒慎吾は父親の遺した手記を読み、20年前の誘拐事件の真相を知ります。そして、父親を陥れたリカード社の社長への復讐として、今度は自分がコンピュータを駆使して、リカード社社長の孫を誘拐する計画を実行。高度なコンピュータ技術と巧妙な計画によって、警察を完全に出し抜き、10億円相当のダイヤモンドを手に入れます。トリックといえるのかどうか微妙なところですが、簡単にまとめると以下のようになります。

  • コンピュータ制御
    音声合成ソフトを使って指示を出すことで、姿を隠す
  • 遠隔操作
    別荘のセキュリティシステムを遠隔操作し、一度も顔を合わせずに兼介(リカード社社長の孫)を誘拐
  • 身代金受け渡し
    複雑な指示を出し、警察を翻弄しながら、身代金を奪取。身代金の受け渡し役として、自ら飛び入り参加し、犯人と受け渡し役の一人二役をこなす
  • ダイヤのすり替え
    身代金受け渡しの際、本物のダイヤを偽物とすり替える
  • アリバイ工作
    カナダに滞在しているように見せかけ、アリバイを捏造
  • 超音波
    スキー場での指示に超音波を利用

結末

慎吾の計画はほぼ完璧に実行され、10億円のダイヤモンドは無事に奪取され、兼介も解放されます。警察は犯人を特定できません。しかし、最初の誘拐事件の実行犯である間宮だけは、慎吾の行動や手口から彼が犯人であることに気づきます。間宮は警察にその事実を告げることなく、慎吾と対峙し、20年前の事件の背景(イコマ電子工業が吸収されるしかなかった状況)を説明します。そして、慎吾を再びカナダへ送り出します。

考察

「99%の誘拐」というタイトルの意味は、作中では明確に説明されていません。完全犯罪が達成されたものの、間宮にだけ見破られた「残りの1%」を意味すると解釈されることが多そうです。また、復讐が完全に虚しいものであったことや、計画のわずかな不確定要素を指すという考察もあります。

次にオススメの推理小説

同じく岡嶋二人さんの作品『クラインの壺』もおすすめです。バーチャルリアリティを題材にした 斬新なミステリーで、こちらも時代を先取りしたアイデアが満載です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました