東野圭吾さんの『架空犯』を読んだ感想をご紹介します”感想だけではなく、あらすじや小説の特徴、ネタバレなどもまとめています!
あらすじ
都議会議員と元女優の夫婦が、高級住宅地で起きた火災によって命を落とす。事故と思われたこの事件だが、捜査が進むにつれて、背後に隠された複雑な人間関係と、ある人物の大胆な計画が浮かび上がってくる――五代刑事は事件の真相を追い求める中で、愛憎、過去の過ち、そして家族の絆といった、様々な感情が絡み合った人間ドラマに直面する。
小説の特徴
- 緻密なプロットと予想を裏切る展開(どんでん返し)
- 登場人物たちの複雑な心情描写
- 『架空犯』という言葉と概念
前作
シリーズ1作目は『白鳥とコウモリ』です。『架空犯』は2作目ですので、刊行順通りなら『白鳥…』が先ですが、そんなに気にせず読んでも大丈夫だと思います。
主な登場人物
- 五代努
警視庁捜査一課の巡査部長。冷静沈着な性格で、事件の真相を追い求める - 山尾陽介
所轄の生活安全課警部補。五代と共に捜査に当たる - 藤堂康幸
被害者。都議会議員。元高校教師 - 藤堂江利子
被害者。元女優。康幸の妻 - 今西美咲
東都百貨店の外商員 - 永間和彦
故人。山尾の親友だった
感想
最近の東野圭吾さんらしい予想を裏切る展開と、人間の心の奥深くまで描かれたストーリーなんかが、面白かったと思います。ミステリー小説なんですが、人間の心の闇や、愛憎、そして家族の絆といった普遍的なテーマが描かれている印象でした。
高評価なポイント
- ストーリー展開の面白さ
先が気になり、一気に読んでしまいます - 伏線回収の見事さ
伏線が丁寧に回収されて最後にすべてのピースが繋がります - 読みやすさ
「東野圭吾の作品が読みやすい」は間違いないです - 五代刑事や登場人物の魅力
五代刑事の推理力や人間性に好感を抱けますし、登場人物の感情や運命に心を揺さぶられます - タイトルの秀逸さ
低評価なポイント
- 過去の作品との類似性・印象に残りにくい
ストーリーは確かに面白いですが、ものすごいインパクトのある感じではないと思いますし、過去の東野作品と似ている気もします(そういった作風なのかもしれません) - 一部の登場人物の行動原理に共感できない
物語の真相に近づくにつれて行動原理に対する疑問が膨らむかもしれません(リアリティに関して疑問があるということです) - シリーズ化の必然性
続編である必要があるのか?という疑問が浮かびます
ネタバレ
事件の発端は都議会議員・藤堂康幸と元女優の妻・江利子の焼死体発見です。現場の状況から、無理心中を偽装した殺人事件であることが判明。捜査が進むにつれて、被害者夫妻と、捜査を担当する刑事・山尾との間に、過去の繋がりがあることが明らかになります。山尾は、江利子と高校時代の同級生であり、藤堂は二人の教師でした。さらに、山尾の親友・永間和彦が過去に自殺していたという事実も浮上します。
事件の真相を隠蔽するため、山尾は自らが犯人であるかのように振る舞い、捜査を混乱させようとします。しかし、五代刑事は山 尾の行動に違和感を覚え、独自の捜査を開始します。
五代の捜査によって、江利子の過去が徐々に明らかになっていきます。彼女は高校時代、教師だった藤堂と関係を持ち、妊娠。し かし、その子供は堕胎されず、ひそかに育てられていたのです。その子供こそが、今西美咲でした。
美咲は、自分が江利子の隠し子であることを知り、複雑な感情を抱えながら成長します。そして、シングルマザーとして苦労しな がら娘を育てていた美咲は、江利子から心無い言葉を浴びせられたことで、衝動的に彼女を殺害してしまいます…。江利子の死を知った藤堂は、美咲を庇うために自殺に見せかけた偽装工作を行います。そして、山尾もまた、美咲を守るために『架空犯』を演じることを決意します。
美咲の父親が誰なのかは明言されていないと思います。ですが、山尾が美咲に対して抱く複雑な感情や、彼女を庇おうとする行 動などから、父親である可能性は示唆されている気がします。
- 真犯人は江利子の隠し子である今西美咲。藤堂康幸は、美咲を庇うために自殺に見せかけて偽装工作を行った。山尾刑事は、美咲の父親であると考えられ、彼女を庇うために捜査を撹乱した
- 今西美咲の動機は江利子から人格を否定する言葉を投げつけられたことへの衝動的な怒り。藤堂康幸は美咲を守るために、また、山尾刑事は美咲が自分の娘であることを知り、彼女を庇うために偽装工作を行った
まとめ
読み応えのあるミステリー小説を読みたい方、人間の心の奥深くまで描かれたドラマに触れたい方におすすめです 。ぜひ、手に取って読んでみてください。
この本を読んだ読者へのおすすめ
- 『白鳥とコウモリ』:五代刑事の過去を知ることができる
- 『容疑者Xの献身』:自己犠牲的な愛を描いた作品
- 『パラレルワールド・ラブストーリー』:記憶と現実が交錯するミステリー
コメント