『逆転裁判2』は、2002年10月18日にカプコンから発売されたアドベンチャーゲームで、〈逆転裁判〉シリーズの第2作目です。この作品から新システムが導入され、捜査や推理の幅が広がりました。また、バッドエンドが実装されたことでも知られています。この記事では、各エピソードのあらすじや登場人物、ネタバレをまとめています。なお、時系列は第2話→第1話→第3話→第4話となっています。
第1話:失われた逆転
主人公である弁護士・成歩堂龍一は、開廷直前に何者かに殴られ、記憶を失った状態で法廷に立つことに――成歩堂は自分が弁護士であることすら思い出せないまま、婦人警官の須々木マコが恋人の男性警官町尾守を殺害した容疑で起訴された事件の弁護を引き受ける。記憶を失っても、成歩堂は依頼人を信じる気持ちが揺るがないが…。
登場人物
- 成歩堂龍一
記憶喪失になりながらも弁護活動を行います。彼の冒頭のセリフは前作の冒頭と同じであり、続編としての遊び心が感じられます - 須々木マコ
被告人。元気な婦人警官で、教育係だった糸鋸刑事を尊敬し、「〜ッス」という口癖が移っています。非常に運が悪く、「不幸の女神」の異名を持ち、裁判傍聴が趣味の法廷マニアで成歩堂のファンです - 町尾守
被害者。派出所勤務の警察官で、マコとの交際が噂されていました。高台から突き落とされ死亡し、死に際にダイイングメッセージを残します - 亜内武文
検事。成歩堂を一方的にライバル視しており、自信満々ですが相変わらず無能さが強調されています - 諸平野貴雅
目撃者。自称「ほぼ大学生」の浪人生で、プライドが高く他人を見下す癖があります。彼こそが成歩堂を殴った人物ですが、記憶喪失の成歩堂はそれに気づきません
ネタバレ
真犯人は諸平野貴雅で、諸平野は詐欺グループの一員でした。諸平野が携帯電話を落としてしまい、それを須々木マコが拾ったことが事件の発端になっています。マコと町尾巡査に携帯電話のデータを見られることを恐れ、パニックになった諸平野は町尾巡査を高台から突き落として殺害しています。
諸平野は成歩堂が落とした携帯を自分のものと勘違いして奪い、成歩堂はそれを逆手にとって彼が犯人であることを暴きます。
余談
諸平野の行為には計画性がないので、殺意を否定できるかもしれません。殺意が明確でなければ、殺人罪ではなく比較的刑罰の軽い傷害致死になります。町尾を突き飛ばしたのは、携帯を取り返したかったからであり、高い場所から落ちるとは思っていなかったという言い訳もできそうです。
第2話:再会、そして逆転
第1話の2カ月前――霧崎医院の院長霧崎哲郎が、医療ミスで多数の死者を出した看護師の潔白を霊媒で証明するため、綾里真宵のいる倉院の里を訪れる。しかし霊媒の最中に霧崎が殺害され、真宵が容疑者として逮捕されてしまう。成歩堂は再び真宵の弁護を引き受けることになる。
登場人物
- 霧崎哲郎
被害者。霧崎外科医院の院長で、医者としての腕は確かですが、神経質で評判が悪い人物です - 綾里キミ子
春美の母で、千尋と真宵の伯母にあたります。霊力が弱かったため家元を妹に譲った過去を持ち、分家の指導者として倉院の里の実権を握っています。娘の春美を溺愛しています - 葉中のどか
目撃者。超心理学を研究する大学生で、オカルトマニア。霧崎に霊媒を紹介した人物ですが、記憶力が悪い一面もあります - 葉中未実
のどかの姉。霧崎医院の看護師で、重大な医療ミスを起こし、交通事故で死亡したとされています - 綾里春美
真宵の従姉妹。8歳ながら霊媒師見習いとしては天才的な能力を持ち、成歩堂をサポートします - 狩魔冥: 新たなライバル検事。狩魔豪の娘で、13歳で検事になった後5年間無敗を誇る天才検事です。完璧主義でプライドが高く、鞭を常に持ち歩いています
- 綾里千尋
成歩堂の師匠。真宵に霊媒されて法廷に現れ、成歩堂の捜査に協力します。彼女の心にもサイコ・ロックがかかっています
ネタバレ
真犯人は、『葉中のどか』と名乗っていた女性で、実は生き延びていた姉の葉中未実と、その共犯者である綾里キミ子です。葉中未実は、医療ミスと交通事故で妹ののどかを死なせてしまった後、自身が大火傷を負ったことを利用し、のどかの顔に整形して成り代わって生きていました。霧崎医師が「死んだはずの葉中未実」を霊媒しようとしたことで正体が露見することを恐れ、霧崎を殺害しました。綾里キミ子は、自身の娘である春美を家元にするため、真宵に罪を着せて失脚させようと目論み、未実の犯行に協力しました。
余談
このエピソードから、探偵パートで相手が隠している嘘や秘密を見破る「サイコ・ロック」システムが導入されます。サイコ・ロックの解除は、真宵の従姉妹である綾里春美の霊力によって可能になります。
物語としては「姉妹」の関係が深く描かれており、千尋と真宵、舞子とキミ子、そしてのどかと未実の3組の姉妹が登場し、互いに重ね合わされる構図が特徴です。特に、妹の体を使って話す千尋と、妹の顔に成り代わって生きる未実という対称的な状況が物語の重要な要素となっています。
なお、未実は計画性のある殺人の罪に問われることになりますが、キミ子は殺人幇助となります。
第3話:逆転サーカス
有名なサーカス団「タチミサーカス」の団長立見七百人が殺害され、サーカスの花形マジシャンであるマキシミリアン・ギャラクティカ(マックス)が容疑者として逮捕される。マックスの大ファンである真宵に引きずられ、成歩堂はマックスの弁護を引き受けることになる。
登場人物
- マキシミリアン・ギャラクティカ(マックス)
被告人。本名「山田耕平」。空中飛翔を得意とする世界的マジシャンで、「ゴージャス」が口癖です。普段はキザですが、本性は小心者で田舎訛りが出ます - 立見七百人(団長)
被害者。タチミサーカスの団長で、ミリカの父。人望が厚く、団員全員に慕われていました - ミリカ
団長の娘で猛獣使い。本名「立見里香」。非常に無邪気で世間知らずであり、「サーカスの夢の世界が現実」と信じています - ベン
腹話術師。相棒の人形「リロ」がいないと会話がままならないほど口下手です - トミー
ピエロ。本名「富田松夫」。ダジャレ好きで陽気な性格ですが、サーカスの創設時からの古株で苦労人でもあります - アクロ
被告人。本名「木下大作」。元アクロバット芸人で、半年前の事故で脊椎を損傷し、車椅子生活を送っています。物腰の穏やかな人物です - バット
アクロの弟。本名「木下平」。兄と同じアクロバット芸人でしたが、半年前の事故で意識不明の重体となり入院中です
ネタバレ
真犯人はアクロです。動機は、半年前の事故で弟のバットが昏睡状態になり、自身も歩けなくなった原因が、ミリカの悪意なきイタズラ(ライオンの口に頭を入れる芸の最中に、バットのスカーフに胡椒をかけた)だったことへの復讐でした。アクロは脅迫状でミリカを呼び出しましたが、ミリカが脅迫状を伝言板に張り出したことで、それを目にした団長(アクロの恩人であり伯父)が愛娘を守るために代わりに指定された場所へ現れました。アクロは、自分が呼び出したのが団長であることに気づかないまま、上階からマックスの胸像を落として団長を殺害してしまいました。
余談
この事件は、サーカスという夢の世界の裏側で起こった現実の悲劇を描いています。誰もが根っからの悪人ではなかったにもかかわらず、避けられない現実から目を背けた結果、悲劇が起きたという悲しさがあります。
この殺人はミステリーでいうところの『人違い殺人』です。犯人の知らぬところでターゲットが部屋を交換していて、誤って別人を殺してしまったというようなミステリーは結構あります。犯人側からみるとただの勘違いですが、一般人や探偵側からみると、なぜ殺されたのかがよくわからず、捜査が混迷したりします。
法律用語では「具体的事実の錯誤」と呼ばれます。殺意があったのは間違いないですが、殺してしまったのは特に殺意のない人物でした。しかしながら、この場合でも、原則として殺人罪が成立します。
第4話:さらば、逆転
「全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー・グランプリ」の会場で、人気アクションスター藤見野イサオが殺害され、ライバル俳優の王都楼真悟が容疑者として逮捕される。しかし、その直後に真宵がプロの殺し屋虎狼死家左々右エ門に誘拐され、殺し屋は成歩堂に「王都楼の無罪判決」を要求する。成歩堂は、依頼人である王都楼が真犯人であることを知りながらも、真宵を救うために無罪を勝ち取らなければならないという究極の状況に陥ってしまう
登場人物
- 王都楼真悟
被告人。人気絶頂のアクションスターで、「トノサマン・丙!」の主役です。爽やかさを売りにしていますが、実際は他人を利用して使い捨てることに罪悪感を持たない人物です - 藤見野イサオ
被害者。王都楼のライバル俳優です - 華宮霧緒
目撃者。王都楼のマネージャーで、頭脳明晰ですが、他人に依存しやすい性格を持っています - 虎狼死家左々右エ門
殺し屋。依頼人との信頼関係を重んじ、現場に「サザエのカード」を残す流儀を持っています。真宵を誘拐し、王都楼の無罪判決を要求します。彼は、殺人罪に問われるべき真犯人の一人です - 天野由利恵
華宮霧緒の先輩マネージャー。2年前に自殺しました - 御剣怜侍
検事。前作の事件後失踪していましたが、この事件で復帰します。彼は弁護士と検事の真の使命は、真実を明らかにすることにあると語り、成歩堂と共に真実を追求します - 狩魔冥
検事。今回の事件の担当でしたが、狙撃され入院することになります
ネタバレ
真犯人の王都楼真悟は、プロの殺し屋である虎狼死家左々右エ門に藤見野イサオの殺害を依頼。動機は、藤見野が持っていた天野由利恵の遺書で、王都楼の過去の悪事が暴露され、名声が失われることを恐れたためです。しかし、王都楼は虎狼死家さえも信用しておらず、彼の犯行を密かに録画していました。この裏切りが露見したことで、虎狼死家は王都楼との契約を破棄し、彼を次の標的とすることを宣言します。
成歩堂(プレイヤー)は「王都楼に有罪を求めるか、無罪を求めるか」という困難な選択を迫られるが、真宵の機転と狩魔冥の到着により、最終的に王都楼が自白に追い込まれ、事件は解決となる。
狩魔冥は、この事件での敗北をきっかけに、父親である狩魔豪への依存から脱却し、御剣の言葉を受けて検事としての新たな道を歩むことを決意する。
余談
このエピソードでは、失踪していた検事御剣怜侍が復帰し、成歩堂の前に立ちはだかります。シリーズで初めてバッドエンドが登場するのもこのエピソードです。また『依頼人が絶対に無実』というシリーズの前提を覆し、弁護士としての成歩堂の信念を問い直し、無罪判決よりも大きなものがあることを示しています。
この事件からは信頼関係というテーマも読み取れます。王都楼のように誰も信じない人間は、最終的に自らを滅ぼします。一方、成歩堂と御剣は、真宵の救出という目的のために協力し、互いの役割を全うすることで真実を明らかにします。彼らは弁護士と検事が対立する立場にありながらも、互いを信頼し、真実から逸れないよう全力を尽くしていました。
真犯人は殺し屋に殺人を依頼し、自ら人を殺したわけではありませんが、殺人罪の共謀共同正犯(共犯、つまり同罪)、あるいは教唆犯として起訴される可能性が高いです。依頼したという証拠が不十分であると主張することはできそうですし、王都楼自身が法廷で有罪を認めた自白についても、殺し屋に命を狙われるという状況下での発言だったため、証拠としては不十分かもしれません。(拷問などで得られた自白は証拠にならないと憲法に定められています)