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エレファントヘッド|あらすじ・ネタバレ解説・考察

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 「エレファントヘッド」は白井智之(しらい・ともゆき)氏の長編推理小説で、パラレルワールドやタイムスリップが登場する特殊設定ミステリーです。この記事ではあらすじと真相、考察、感想などをご紹介します。

項目 説明
タイトル エレファントヘッド
評価 4.2
著者 白井智之
出版社 KADOKAWA
シリーズ
発行日 2023年9月
Audible版 なし
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あらすじ

 精神科医の象山晴太(きさやま・せいた)とその家族は順風満帆な人生を送っていた。実は象山には裏の顔があり、麻薬や殺人などを繰り返していた。ある夜、象山は繁華街で知り合った若い男をホテルへと連れ込み、卑猥な行為をする。翌日、象山の娘が彼氏を自宅に連れてくる。そこに現れたのは、象山がホテルへと連れ込んだ若い男だった。

 象山の不埒な行為によって、家族は一瞬で崩壊する。絶望の淵に立った象山は麻薬の売人から買ったシスマという薬物を試すことにする。シスマはやばい薬という触れ込みで、その効果はタイムスリップを伴うパラレルワールドへの転移だった…。

登場人物

主な登場人物をまとめます。登場するパラレルワールドの分だけ同じ登場人物が存在します。

名前 説明
象山晴太
きさやま・せいた
主人公
シスマで人生をやり直そうとする
象山季々
きさやま・きき
晴太の妻
女優
象山舞冬
きさやま・まふゆ
象山夫妻の長女
大学生の芸能人
象山彩夏
きさやま・あやか
象山夫妻の次女
高校生
裏島一年
うらしま・かずとし
象山晴太の患者
舞冬の恋人
晴太が買った男
ムイ 舞冬のマネージャー
敏腕

シスマの効果

シスマという薬物が重要なアイテムとなります。この薬を使うと、5時間時間をさかのぼり、パラレルワールドに移動します。物語の中では、パラレルワールドの主人公と、パラレルワールドに移動しなかった主人公の姿が描かれることになります。

主人公はシスマを2つ手に入れるため、さらに、パラレルワールドの数が増えます。そして、パラレルワールドの数だけ登場人物も増加します。例えば、主人公には妻がいるので、パラレルワールドの数だけ妻が存在することになります(妻0、妻1、妻2…といった具合です)。

シスマにはタイムスリップ以外に特殊なルールがあります。まとめると次のようになりますが、例外があったりします。

  • 主人公は夢の中でパラレルワールドの自分と会話や映像の共有ができる
  • 人が死ねば、別の世界でも同じ人物が死ぬ
  • タイムスリップによって5時間巻き戻るが、シスマだけは元に戻らない
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事件概要

主人公は二つのシスマを使って、自分自身以外に三人の自分を生み出すことになります。それぞれ環境に違いはありますが、とりあえず生活を続けます。ところがある日、主人公の次女・彩夏が爆死します。そして、長女の舞冬と妻の季々、マネージャーのムイなども殺されていきます。

犯人は複数いる主人公の誰かです。主人公達は夢の中で会話や映像の共有ができますが、基本的に自己申告です。そもそも、崩壊した家族を取り戻すためにシスマを使ったので、家族を皆殺しにする動機も見当たらないという状況です。

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ネタバレ解説

象山晴太は四人のはずですが、実はもう一人いて、合計五人となります。このうちの一人が犯人、というわけではなく、ややこしいことに、それぞれが殺人を実行しています。簡単にまとめると次のようになります。

  • 象山<幸せ者>と象山<死にぞこない>が舞冬と春を殺害
  • 象山<もぐら>が季々とムイを殺害
  • 象山<逃亡者>が彩夏のお腹の中にいた胎児を爆破し、彩夏も殺害

<もぐら>というのが五人目の象山で、実はずっと隠れていました。シスマは2つしかないので、合計四人までしか象山は生じないはずですが、2回連続でシスマを使えば1本手に入るという隠しルールによって、五人目が誕生します。<もぐら>は存在を知られていなかったため、特に細工はせず、堂々と季々とムイを殺しています。しかし、その他の殺人は人が死ねば他の世界でも同じ人物が死ぬというルールを使っています。

トリック

<死にぞこない>の世界で、春は崖から転落し死亡します。すると、<幸せ者>の世界でも春は死にます。この時、春は舞冬を乗せて高速道路を走行中でした。運転手の春が死んだので、車は事故を起こし舞冬も死にます。<幸せ者>の世界で舞冬が死ねば、他の世界の舞冬も死にます。きっかけになるは春の転落死ですが、これは偽メールでおびき出して落とし穴に落とすという手口です。

<逃亡者>と<もぐら>の世界で彩夏は父親である象山晴太にレイプされ、実は妊娠していました。<逃亡者>が彩夏を早産させて子供を爆破すると、<もぐら>の世界でも彩夏の子供が爆発します。この子供は彩夏のお腹の中にいるので、胎児が爆発すれば、彩夏も爆死します。そして、他の世界でも彩夏が死にます。

動機

順風満帆な生活を送っていた象山晴太ですが、シスマを使うことでいくつかの自分の人生(IFの世界)を知ることになります。そして、家族は自分を見捨てるという事実に気付きます。これが、家族殺害の動機になります。

結末

裏島一年が探偵役になります。裏島はエデン(麻薬の仲買人)にいくつものシスマを打たれ、途方もない量の人生を経験します。そして、何でも知っているような存在になります。この世に退屈していた裏島ですが、象山が起こした事件に興味をもち、推理で真相を解き明かします。

最後、象山はシスマを打ってタイムスリップして、またシスマを打ってタイムスリップ…という無限ループに陥り、同じ時間を何度も繰り返すことになります。使ったシスマは元に戻らないので、通常であれば無限ループに入ることはありません。しかし、『裏島が持っているシスマは例外』というルールがあり、これによって象山は裏島からシスマを貰う、シスマを打つ、タイムスリップするというルーチンを永遠に続けることになります。

象山がシスマを打つ理由は、船の爆発に巻き込まれて植物状態になってしまうからです。いずれにしても、生きたまま非常に退屈な日々を過ごすことになります。

考察

パラレルワールドが生じる理由や時間をさかのぼる理由、パラレルワールドなのに死ぬことだけは共有している理由などなどは深く考えてはいけません。理由を探っても小説の中には書いていないので、引き出しの中にタイムマシンがある!9と3/4番線という入口がある!ぐらいの認識で大丈夫だと思います。

量子力学などの言葉が登場するので、現実世界の知識などを用いてあれこれ考えたくなりますが、小説に書かれていること以外の内容を持ち込んでも意味はなさそうです。むしろ、作品にケチつけてるだけという感じになります。

いきなり登場したグラフや計算は、簡単なことを難しく説明して恥をかくというオチになっていました。グラフが出てきて戸惑いますが『近くでみるとスカイツリーはとってもデカく感じるけど、遠くからみると親指くらいの大きさだよね』みたいなことです(やけに馬鹿っぽい説明ですが)。

感想

ストーリーはかなりあっさりしていますが、推理やトリックがややこしい感じで、グロテスクな描写も多いです。読む人をかなり選びそうな内容だなと思います。普通のミステリーでいうと、いろいろ殺人が起きたけれども、それぞれ犯人が違って、しかも共犯者がいるという厄介なパターンです。そして、四つ子だと思ったら五つ子で、全員大嘘つきでした。

変わった作品にみえますが、小林泰三著「パラレルワールド」など、似たような本がないわけではありません。この作品のキャッチフレーズは『パラレルワールド・サスペンス・ミステリー!』で、「エレファントヘッド」もこんな雰囲気の作品です。

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