天藤真さんによる傑作ミステリー小説『大誘拐』は、大胆なトリック、個性的なキャラクター、ユーモアあふれるストーリーなどが魅力の作品です。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています!
あらすじ
舞台は紀州、日本有数の大地主である柳川とし子刀自が、刑務所を出所したばかりの戸並健次ら3人組に誘拐される。ところが、とし子刀自が思わぬ行動に――。
身代金はなんと100億円!前代未聞の金額を巡り、警察、マスコミ、そして日本中を巻き込んだ騒動が…。果たして、とし子刀自の真の目的とは? 虹の童子と呼ばれる三人組は、無事に身代金を手に入れることができるのか?
特徴
- 誘拐ミステリー
大富豪の老婆が誘拐される事件! - ユーモア&人情味
ユーモアにあふれコミカルな物語!犯人や被害者を含め登場人物はどこか憎めない人間味あふれるキャラクター - どんでん返し
誘拐事件の真相は意外な方向に…!?
主な登場人物
- 柳川とし子刀自
紀州随一の大地主。82歳とは思えぬ知力と胆力、そしてユーモアのセンスを持つ - 戸並健次
スリの腕を持つ、今回の誘拐事件のリーダー格 - 秋葉正義
健次と共に誘拐を計画した、腕っぷしの強い男 - 三宅平太
借金苦から抜け出すため、誘拐に加担した若者 - 井狩大五郎
和歌山県警本部長。かつて柳川家に恩義を受けたことがあり、とし子刀自の救出に奔走する
感想
とっても面白かったです!『大誘拐』はそのタイトルのとおり誘拐事件を描いていますが、老いと死、家族の絆、反骨精神など、様々なテーマを感じとることができました。本格ミステリーらしさを重視して、論理的なトリックや緻密な構成を求めるとなると、設定の荒唐無稽さやトリックの実現可能性などが気になったりもします。ただエンターテイメント作品として、ストーリーの面白さやキャラクターの魅力、ユーモアは抜群だと思います!
ユーモアたっぷりでキャラも気に入りましたし、まさに昭和の名作といった感じでした。最初はちょっと読みづらいかもしれませんが、慣れれば、どんどん面白くなってくると思います。世間で名作と言われている作品を読んでみると、個人的に微妙なものもあったりしますが…、この作品はそんなことはありませんでした。
ポジティブな感想
- キャラクターの魅力
とし子刀自をはじめ、登場人物が個性的で魅力的です!とし子刀自の豪快さとユーモアには特に惹かれます!こんなおばあちゃん、ほんとにいないかな?と思ってしまいました - ストーリー展開の面白さ
予想外の展開の連続で最後まで飽きません!手に汗握る駆け引きやコミカルなやり取りが楽しいです。ほんとうにページをめくる手が止まらない! - 読後感の良さ
読後感はさわやか!
ネガティブな感想
- 現実離れした設定
身代金100億円という金額が高すぎ、テレビ中継を使った犯行などなど、現実離れした設定が登場します。ありえないな…と思う部分がでてくるかもしれません - トリックの複雑さ
身代金の受け渡し方法などトリックがやや複雑で理解しにくいかもしれません - 方言わからん
会話文の和歌山弁が読みにくいかもしれないです…
ネタバレ注意
誘拐事件の真の首謀者は人質であるはずの柳川とし子刀自だったわけですが、彼女は自身の死期が近いことを悟り、過去の戦争で子供を奪われたことへの復讐をかねて、残された財産を国に奪われないようにしていました。税金対策って感じだと思います。誘拐事件を利用して、子供たちにうまく相続しようと計画したわけです。他にも、5千万円という金額は安いとか、周囲の反応をみたいとかいう動機もあったと思います。
身代金を手に入れた戸並健次ら3人組は、それぞれの道を歩むことになります。秋葉正義は、くーちゃんとその娘の養子になり、堅実に暮らします。三宅平太は妹の借金を返すために身代金一千万円を使い、その後は真面目に働くことを誓います。そして戸並健次は、柳川家に戻り、木工職人としてとし子刀自のそばで暮らします。余った99憶9千万円はとし子がどうにかするみたいでした。
まとめ
天藤真さんの『大誘拐』は本格ミステリーとしての側面と、エンターテイメント小説としての側面を併せもった傑作ミステリーです。個性的なキャラクター、ユーモアあふれるストーリー展開、衝撃的な真相が魅力的です。
この作品を読んだ方におすすめしたい小説
『大誘拐』のようなユーモラスで爽快な作品としては以下の作品がおすすめです!
- 岡嶋二人『99%の誘拐』:知略を凝らした誘拐計画とユーモア溢れる会話が魅力の作品
- 東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』:毒舌執事と令嬢刑事のコンビが織りなす、コミカルなミステリー。
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